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総務省、コロケーション問題に関する公開ヒアリングを開催

総務省の会議室で開催された公開ヒアリング
 総務省は情報通信審議会電気通信事業部会接続委員会の公開ヒアリングを開催。Yahoo! BBを手がけるソフトバンクの孫社長やイー・アクセスの千本社長、NTT東西の相互接続推進部長らが出席し、NTTが提示した接続約款の改正案やYahoo! BBのスペース占有問題についてさまざまな意見が交わされた。

 公開ヒアリングでは、まずNTT東西がコロケーションの保有期間を変更するといった接続約款の変更案を説明。これに対し、アッカやイー・アクセス、BBテクノロジー(Yahoo! BB)など各社が意見を述べるというスタイルで進められた。

スペース占有問題への改正案をNTTが提示

 NTT東西が提案している接続約款の変更案は、コロケーション手続きの一部を変更し、実際に利用していないにもかかわらずスペースだけを占有してしまう事業者に対し、占有できる期間を短くするとともに保留だけでも費用がかかるように改正しようというもの。

 収容局内に機器を設置するためのスペースを確保するには、事業者がNTTに対し相互接続点調査申し込みを行なう。これを受けてNTTは収容局の調査を1カ月程度で行ない事業者に回答する。事業者は、この回答から3カ月以内に判断し必要であれば相互接続点設置申し込みを行なう。

 これまでの約款では、この設置申し込みを行なってから1年間、無償で収容局内のスペースを保有することができた。事業者はその後工事を行なうが、工事が完了しユーザーへのサービスをはじめるまではNTTからコロケーションスペースの費用が徴収されることはなかった。

 このルールを利用して、Yahoo! BBが実際に使われていないにもかかわらず大量のスペースだけを確保(保留)してしまい、結果的に競合他社がユーザーにADSL接続サービスを提供できなくなってしまうケースが多発しているという。

 こういった問題を解決するためにNTT東西が提示した改正案は、保留期間を短縮するというもの。相互接続点調査申し込みの回答を受け取ってから、無償でスペースを確保できる期間を6カ月間に短縮。それ以降は工事やユーザーへのサービス提供を行なっていなくてもスペースの提供は有償となる。

余っているのにたりないコロケーションスペース

 NTT東西によれば、事業者がDSLサービスを提供できるように約1900の収容局、架数(ラックを設置できるスペースの数)で約5万6000、MDF端子数で約2500万のリソースを確保したという。

 それにもかかわらず、Yahoo! BBから大量の申し込みを受けたためリソース不足が発生してしまった。不足が生じているのは315の収容局で、架数1577、MDF端子数で71万1300。

 NTT東西としてもDSLAMなどに最新技術を導入することで、たとえばADSLの試験サービス時は1架あたり192回線、1回線あたり約1.5Wと約4円がかかっていたものを2001年12月以降は1536回線、0.6~0.8W、0.5円まで改善。事業者からの要求に対応できない収容局を51、架数では304まで削減した。

 もっともこれ以上の設備増強はコスト的にも難しいという。たとえば、ビルのフロアそのものを増床する場合、試算では36平方mあたり7千万円、電源設備の増設では特別高圧化工事を行なった場合2億円/ビル程度もかかる。

 現状では、DSL加入者数が120万であるのに対し2500万回線分のリソースを確保しており、保留されているコロケーションスペースが多いことを考えると、大規模な投資を行なうにはリスクが大きいという主張である。

 このほかにもNTT東西自身が手がけるフレッツ・ADSLなどでも他社と同様のルールを適用する「イコールフッティング」や、リソースの枯渇情報に注力して情報提供を行なっていくなどの改善策を説明した。

Yahoo! BBは日本のADSLを危機的状況に陥れる

アッカの坂田社長(写真右)とイー・アクセスの千本社長(左)。写真は会議が始まる前に撮影したもので、まだ穏やかな雰囲気
 これに対しアッカ・ネットワークスの坂田社長は、現状のままだと2002年の早い時期には新たなADSL回線が提供できなくなると訴え、基本的なNTTの改正案に賛意を示しながらも、より一層の改善を求めた。

 具体的には、短縮後の保留期間は6カ月ではなく3カ月でよいのではないかと提案。コロケーションスペースの申し込み数にも上限を設けてはどうかといったもの。また、すでに予約されている分についても、一旦保留を解除して新しいルールのもとで再配分すべきだと主張した。

 NTTの大崎局での具体的な事例を交えながらYahoo! BBのスペース占有問題を指摘したのはイー・アクセスの千本社長。大崎局でYahoo! BBが占有しているスペースを調査したところ、ラックが取り付けられているのは十数架、このうち電源が入っているのは4架、実際に使っているのは2架に過ぎなかったという。さらに、ラックすら取り付けられていないスペースが40架分、別のフロアにも20架分のスペースがあったが、これもYahoo! BBに押さえられていたと指摘した。

 このラックが取り付けられていない60架だけでも6万7000程度のADSL回線が収容できる。大崎局が持つ一般加入回線は全部で5万回線。この数値だけを見ても、健全な計算にもとづいてスペースを占有しているのか疑わしいとした。

 また、徹底的な情報開示とイコールフッティングを改めて要望。MDFや電源、スペースは利用実績に応じた割当制にしてはどうかと提案。加えて米国でもADSL回線が100万を超えた時期にコロケーションルールの改正が行なわれた事例を引き合いに出し、日本でのルール改正の必要性を訴えた。

Yahoo! BBの矛先はNTT東西へ

占有しているリソースの解放を求められるソフトバンクの孫社長
 NTT東西、アッカ、イー・アクセスからスペース占有問題を指摘されたYahoo! BBは、孫社長自らが対応。過去にさかのぼって保留分を新たなルールで運用すべきだとの考えについては、法秩序を維持するという観点から特定事業者にとって不利な取り決めを行なってはならないと反論した。

 また、リソースが不足しているNTTの説明にも疑問を示した。「情報開示が不足しており、本当の実態が知らされているのか疑わしい。さらに、政府は2005年には4000万回線の高速インターネット通信を国民に提供する計画を立てており、現状でリソースが不足してしまうこと自体に問題がある」。

 もっともNTTに対しては強く要求するYahoo! BBだが、肝心の自社ユーザーへの情報開示は進んでいない。多くのユーザーは曖昧なサポート情報に振り回され、開通までの長い待ち時間を不安に過ごしているのだ。情報を得る立場のときには開示を強く訴え、提供する立場のときにはおざなりになる。いささか身勝手な企業姿勢だと思われても仕方がない。

リソース解放を迫るアッカやイー・アクセス

 続いて行なわれた意見交換では、すでに大量のスペースを占有し保留状態に置いているYahoo! BBに対し改善を求める声が相次いだ。

 「(ADSLなどの通信事業に対する)挑戦者はたくさんいる。そして、みんなが多くのユーザーを抱えている。現実的な解決策として、Yahoo! BBには自主的に占有しているリソースを解放していただき、柔軟に挑戦者間で運用を行なってはどうか」(イー・アクセスの千本社長)。

 これに対し孫社長は「自主的な解放は場合によってはあり得る。もっともNTTの徹底的な情報開示が必要だ」と従来の主張を繰り返し「未発表の事業もある。それをほかの事業者に開示することはできない」とした。実績や実需でリソースの割り当てを行なう場合の根拠として、将来のビジネスプランを開示せよといった考え方はおかしいとの反論だと思われる。

 ここで総務省サイドから出た発言は非常に現実的なものだった。「お金を払っていない予約だったらただの仮予約みたいなもの。本当に欲しいのだったら急いでお金を支払うのが普通では。航空券などのチケットだって同じようなもの」。

 これにイー・アクセスの千本社長が「今のYahoo! BBは、仮予約でいっぱいになってしまい、がらがらの飛行機を飛ばさざるを得なくなっている状況と同じだ」とすかさず賛同。

 その後も「(Yahoo! BBが)場合によっては(占有しているスペースを)あげますよと押さえている人が言う。使ってもいないのにそれはおかしい」(千本社長)、「事業計画はいいから来月には工事をしなければならないといったシバリも必要では」(坂田社長)といった意見が続出。

 この時点ですでに予定時間を30分弱オーバーしており意見交換はうち切られてしまった。

Yahoo! BBは自らの考え方を改める時期

 NTT東西が示した改正案に対しては「不十分だ」という意見が多いものの方向性については各社が賛同、「今後」ではなく「すでにYahoo! BBが占有・保留しているリソースを解放できるのか」に焦点が集まった。

 確保済みのリソースを手放したくないYahoo! BBは矛先をNTTに向ける。対してNTT東西、アッカ、イー・アクセスはリソース解放を強く迫る。スペース占有問題がほかの事業者やユーザーに被害を与えていることを具体的な事例をもって指摘されてもなんら具体的な解決策も示さなかったYahoo! BBは、非難されても仕方がない。

 「リソースを占有してしまうことによって特定の事業者しかADSLなどの通信サービスを提供できなくなる。よりすぐれたサービスを用意してもユーザーに提供できなくなるわけで、これは大きな問題だ」(千本社長)といった発言からもわかるように、ユーザーにとっても特定の事業者がADSLを独占することにメリットはほとんどないのだ。

 アッカやイー・アクセスの主張が受け入れられるかどうかは、来週にも決まる。


□総務省
http://www.mha.go.jp/

笠井 康伸
2001/12/19 18:11

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