Broadband Watch logo
バックナンバー

Ajax、Ruby on Rails、Web 2.0。2005年を彩ったWebテクノロジー
[2005/12/27]
コンピュータ博物館で考えた「できない」と「今はできない」の違い
[2005/10/20]
誤解から賞賛へ。Ajaxで再評価されたJavaScriptから学ぶこと
[2005/09/08]
多様化する個を集めて新しい価値を生み出す「Wisdom of Crowds」
[2005/08/11]
自分のためがみんなのためになる。「Folksonomy」による情報分類
[2005/07/28]
部屋番号のないマンションとPermalinkの共通点
[2005/06/30]
Webそのものがプラットフォームになる。次世代のWebの在り方「Web 2.0」
[2005/06/16]
ブログと共に普及期に入ったRSSと、Web創世記から繰り返される議論
[2005/06/02]
「ソーシャルブックマーク」に見る、共有することで生まれる面白さ
[2005/05/19]

自分のためがみんなのためになる。「Folksonomy」による情報分類

rss

Folks+Taxonomy=“Folksonomy”〜みんなで分類

 Folksonomyという言葉をご存知でしょうか? これは「Folks(人々)」という単語と、「Taxonomy(分類学)」という言葉から造られた造語で、「みんなで分類する」ということを表している言葉だそうです。僕も今年の初めくらい聞いたばかりの言葉ですが、前々回にお話したWeb 2.0の議論の中でも、良く話題に上るテーマの1つのようです。

 Folksonomy の表わす「みんなで分類する」は、単に情報の分類だけを“協力して”実現していきましょう、というように聞こえますが、実際は少々異なります。

 例えば、Yahoo! JAPANには、決められたカテゴリ分けにより分類したディレクトリサービスがありますが、これは決められたカテゴリを決まった人たちで分類している、という点でFolksonomyではありません。また、「みんな=不特定多数の人間」で「共通のカテゴリ」による分類を協力してやっていくのというのも、Folksonomyとはちょっと違うようです。

 つまり、Folksonomyとは、「不特定多数の人」が「それぞれ自分のために分類」して、その分類された結果を何がしかの方法で集約あるいは接続し、全体としての分類とみなしましょう、という考え方だそうです。

 大リーグのニュースがあったときに、Aさんはそれを「野球の松井のニュース」と見て「ニュース」や「野球」、「松井」という分類に加えるかもしれません。一方のBさんはそれを「松井に関するスポーツビジネスのニュース」と見て「ビジネス」や「松井」という分類に加えるでしょう。これらを総合すると、この大リーグのニュースには「ニュース」「野球」「松井」「ビジネス」と分類されたことになります。

 これが決められたカテゴリを持って情報を分類する場合、果たしてこのニュースは「ニュース」カテゴリなのか「ビジネス」カテゴリなのか、はたまた「松井」カテゴリなのかといった問題が発生してきます。そうではなく、「この情報はAさんによってはこう、Bさんによってはこう分類された」という切り口で見ていこう、それがFolksonmyの考え方です。例えば、AさんもBさんもこのニュースを「松井」という分類に入れているので、AさんとBさんは「松井」という分類で繋がりますよ、ということです。

 Folksonomyというのは何か、どういった考え方なのかといったことに関してはWeb上でも数多く議論がなされ、Web上で検索してもFolksonomyに関する詳細や有益な解説がたくさん見つかります。ということで、ここではFolksonomyそのものについてはこの程度軽く触れる程度にしておいて、具体例を見ていくことにします。





ソーシャルブックマークとFolksonomy

 Folksonomyは、最初の回で紹介したソーシャルブックマークを構成する重要な概念になっています。はてなブックマークdel.icio.usのようなソーシャルブックマークには「タグ」と呼ばれる機能がついていて、それがこの Folksonomyという考え方を実装したもの、と言えます。

 例えば僕の7月17日のブックマークには、「RSS 2.0と Atom 1.0の比較」という記事がブックマークされています。そして、このブックマークには[rss][atom]というタグがつけてあります。つまり、僕はこの記事はrssやatomの話題だと思ってその2つのタグをつけた、という結果です。

 こうして情報にタグをつけて分類しておくと、後日自分がほかにrssやatomというタグをつけた情報をまとめてみることができます。ここまでは、単なるカテゴリ分けによる分類とほぼ同じですね。僕がrssに分類したブックマークの一覧がその具体例に当たります。


rssに分類したブックマークの一覧

 一方、ソーシャルブックマークでは、この記事をブックマークしたほかの人たちはどうか、ということがわかります。僕と同じ記事をブックマークした人の一覧を見てみましょう。他のひとがどんなタグをつけているかというと、[rss][atom]以外にも[xml]や[semanticweb]、それから[ソフト開発]や「プログラム]といったタグをつけている人もいます。情報の分類の仕方というのは人それぞれだというのがよくわかります。


「RSS 2.0と Atom 1.0の比較」につけられたタグの一覧

 さて、次がFolksonomyの本領発揮です。rss タグをクリックすると、みんなが[rss]というタグをつけた注目の情報がずらっと表示されます。注目すべきは、ここに表示されているのがRSSというテクノロジに関する非常に有益な情報であるという以上に、自分がそれまで知らなかったRSSに関する情報も載っているということです。


[RSS]タグがつけられたブックマーク一覧

 最初は自分のために[rss][atom]というタグをつけた。けれど、自分が行なった分類は全体の一部となり、みんなのための分類になっている。rssというタグで全体に横串をさしたページを見ると、自分では知らなかった、自分がつけたタグに関連する情報が一覧できる。Folksonomyという言葉が表す「みんなで分類」とは、まさにこのことです。





後づけだったはてなブックマークのタグ機能

 Folksonomy はソーシャル・ブックマークにとっての重要な概念だと述べましたが、実ははてなブックマークのタグ機能は後からつけられたものだったりします。

 もともとはブックマークされたサイトから自動抽出したキーワードでつながっていく、というのがはてなブックマークのコンセプトでした。例えばいまご覧になられているこの記事をブックマークすると、そこから「Folksonomy」とか「ソーシャル・ブックマーク」といった特徴的な単語をコンピュータが抽出して、同じキーワードが抽出されたほかのエントリーとつなげる、という具合です。実際にこのシステムは動いていますし、はてなブックマークの特徴の1つでもあります。例えばキーワード「RSS」でつなげたページを見ていただけると良いでしょう。

 ブックマークをするたびにタグをつけてもらうという行為は意外と面倒なのではないか、それなら自動で特徴語を抽出したほうが便利なのではないか、と考え、あえてFolksonomyを外して考えたシステムだったのですが、どうやら僕らはかなり思い違いをしていたようです。キーワードでも情報のつながりは表現できていたのですが、そのつながり具合は del.icio.usなどのつながりとだいぶ性質が違う、機械的で硬い繋がりでした。

 決められたカテゴリにしたがって情報を分類しようとすると、決まってこの情報はどのカテゴリに分類すべきかと頭を悩ませることになります。1人でも悩んでしまうのに、それが1,000人、10,000人にもなれば大騒ぎです。実際、はてなダイアリーのキーワード機能でも、ユーザーみんなでカテゴリ分類をしようと試みたことがあるのですが、分類にまつわる議論が絶えず、結局その機能自体を廃止にしています。

 与えられたカテゴリなんていうトップダウンの仕組みではなく、おのおのが勝手に分類、しかもタグのように気楽につけられてるようなもので分類して、それをアグリゲート(集約)して価値ある情報を抽出しましょう、というボトムアップの仕組みがFolksonomyの考え方。それに対して僕らがキーワード抽出でやろうとしていたことは、疑わしきトップダウンの仕組みだったんですね。

 そこでしばらくしてタグ機能を追加してみたのですが、やはりWebのような無限の広がりがある環境での分類と発見という意味においてはこちらの方に分があるようです。それから、最初は面倒そうだと思っていたタグつけも、やってみると案外楽しかったり。ここが一番意外なところでした。

 一方で、特定のキーワードで任意の話題を追いかけるとか、タグにならなそうなマイナーだったり固有名詞としての意味合いが強いキーワード、例えば人名や地名といったものは、やはり機械による自動抽出がうまくいきます。ということで、はてなブックマークはキーワードとタグの2つの分類軸がある、ちょっと変わったソーシャル・ブックマークになりました。





タグ機能搭載サービスが目立つ昨今

 さまざまなサイトでの試行錯誤を通じて、何かしらたくさんのものがあってそれを分類するのにはタグつけによるFolksonomyは有効に働く、そのためにはユーザーにタグつけをするための動機つけを与えられるかどうかが重要ということがよくわかってきました。そしてWeb2.0的な試みを行なっているWebサイトで、この考え方を応用しているところが増えてきました。

 例えば先日オープンしたTagzaniaは“Tagging the planet”ということで、実在する場所にタグをつけてFolksonomyしてしまおうというサービスです。任意の緯度/経度にタグつけすると、それがGoogle Maps APIを使って作られた地図上に表示されます。


Tagzania
http://www.tagzania.com/

 それから、O'Reilly Radar。O'Reilly Radar は複数のインターネット・ビジョナリーらが更新するブログの集まりなのですが、それぞれの記事にタグがつけられていて、例えばO'Reilly Raderの中全体からweb 2.0タグのついているものだけを読む、ということができるようになっています。


O'Reilly Radar
http://radar.oreilly.com/

 以前より有名なところでは Web 2.0 的サイトの代表格とも言われる、写真共有サービスのFlickr。ここは写真にタグをつけて、タグによって似たような写真がつながるようになっています。地図の Tagzania もそうですが、タグによって分類されるべきは特にテキストデータに限ったわけではなく、あらゆるデータに応用が可能といえるでしょう。タグは、データのためのデータ、つまりはメタデータなんです。


Flickr
http://www.flickr.com/

 タグ一覧の表示の仕方を見ていると、そのタグの使用頻度などに従ってフォントの大きさが大きかったり小さかったり……というものがよく目につくと思います。はてなブックマークやO'Reily Radarにもありますね。こういったタグの表示方法を“TagCloud”なんて言いますが、その名も「TagCloud」というサービスではRSSフィードからタグを抽出してTagCloudを作ってあげるから、フィードにタグつけしてみてね、なんてことをやっているようです。


TagCloud
http://www.tagcloud.com/

 なんだか、前回のPermalinkに引き続き Web2.0 関連の話題で、まるで「Web2.0解説」みたいな連載になってきましたが、Folksonomyに関してはここまで。増え続ける情報に対して、ゆるやかでインターネットに適した分類方法を考えてみるFolksonomy、これがなぜ次世代のWebにとって重要な考え方なのか、お分かりいただけたでしょうか。

 みなさんも何にタグつけしたら面白いことができるか、考えてみてください。


関連情報

URL
  はてな
  http://d.hatena.ne.jp/
  naoyaのはてなダイアリー
  http://d.hatena.ne.jp/naoya/
  NDO:Weblog
  http://naoya.dyndns.org/~naoya/mt/

2005/07/28 10:52

伊藤直也
はてな取締役最高技術責任者。はてなの新サービスの企画・開発を行なう。個人でRSS検索「FeedBack」、Amazonアフィリエイト支援ツール「amazletツール」なども開発。自身のブログでも技術やブログ関連の話題などを紹介している。(写真撮影:近藤淳也)
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.