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「ソーシャルブックマーク」に見る、共有することで生まれる面白さ

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 突然ですが、ひょんなことからBroadband Watchで連載を担当することになりました、株式会社はてなの伊藤直也です。「え、誰?」という声が聞こえてきそうですが、そこはあまり気になさらずさらっと流していただくとして(笑)、この連載では、最近僕が面白いと思ったインターネット上のサービスとか、近頃のインターネットの先端はこうなっている、みたいなことを書いていこうかなと思っています。

 栄えある連載第1回目は、近頃話題のソーシャル・ブックマークについて……と、その前に「アルファギークって何?」という点を説明しておきましょう。





アルファギークって?

 「ギーク(Geek)」という言葉はご存じですか? 日本語で言うと「おたく」に近い言葉ですが、微妙に異なるニュアンスで使われています。「おたく」はどちらかと言えばネガティブなイメージですが、「ギーク」はコンピュータが好きな人や、そういう人を捉えたポジティブなニュアンスの言葉です。

 みなさんの周りにも、1人や2人はギークがいるのではないでしょうか。デジタルガジェットのことになると目の色を変えて嬉しそうに語る人や、プログラミングの話になると突然元気になる人、そんな微笑ましい(?)一面を持った人たちのことです。むしろ「自分こそがギークだ!」なんて人もいるかもしれませんね。

 さて、アルファギークというのは、ギークにアルファがついてなんだか強そうなイメージがありますが、これはインターネットのビジョナリー(先見の目を持った人)として有名なTim O'Reilly氏が使った言葉です。

 はてなのブログサービス「はてなダイアリー」には、はてなダイアリー内で使われる言葉を辞書のように共有できるキーワード機能があります。このキーワードでアルファギークを調べてみると、

はてなダイアリー - アルファギークとは

 産業を変化させる力を持つ新しい技術に早いうちに飛びつき、ああでもないこうでもないといじくっているうちに、技術が進むべき方向性を示し始める、先鋭的で飽きっぽいエンジニア


 などと解説されています。ギークの中でも、例えば今後主流になるであろうプログラミング言語とか、新しいハードウェアやサービスなどに真っ先に飛びついては、ああでもないこうでもないと言ってる人たち、といったところでしょうか。

 と、いうわけで恐れ多くもアルファギークな視点で、僕の引き出し、つまりはブックマークから、面白くてイケてる近頃のインターネットを見ていきましょう、というのがこの連載の趣旨です。どうぞよろしくお願いします。





ソーシャル・ブックマークサービスが流行するこの頃

 さて、そんなギークな人たちの間で流行っているものの1つに「ソーシャル・ブックマーク」があります。連載のタイトルがブックマークということでつながりもあることですし、今回はソーシャル・ブックマークを取り上げてみたいと思います。

 ソーシャル・ブックマーク。初めて聞かれた方も多いかもしれません。mixiやGREEが友達とつながるソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)なら、ソーシャル・ブックマークはブックマークが他の人とつながるサービスです。

 まずは実例を見ていただいたほうがわかりやすいでしょう。僕が働くはてなでは、「はてなブックマーク」というソーシャル・ブックマークサービスを提供しています。また、海外だとその先駆けであるdel.icio.usなどが有名です。


はてなブックマーク
http://b.hatena.ne.jp/

はてなのソーシャルブックマークサービス。登録したページから自動でキーワードを抽出するほか、コメントで感想もつけられる
del.icio.us
http://del.icio.us/

海外のソーシャルブックマークサービス。ブックマークにつけたタグ情報を使って他のユーザーと連携できる

 どちらのトップページにも、なにやらインターネット上のページへのリンクが並んでおり、その下には赤く「○○users」「and ○○ other people」の文字が見えているでしょう。実は、このユーザー数がソーシャル・ブックマークの肝だったりします。

 つまり、ソーシャル・ブックマークはみんなでブックマークを共有することで、盛り上がってるニュースやページを知ったり、他の人がどんなページをブックマークしているかを知ることができるサービスなのです。

 例えば僕のブックマーク(naoyaのブックマーク)を見て下さい。ここには僕がWeb上で読んで面白かったページを、コメントつきで放り込んであります。


はてなブックマーク - naoyaのブックマーク
http://b.hatena.ne.jp/naoya/

 一見すると、ただのリンクの羅列なのですが、自分以外の人もブックマークしているページには「○○users」のリンクが表示されていますね。また、それをクリックすると他の人のコメントを一覧することもできます。そこからその人のブックマークを辿りつつ、何人からブックマークされているかという数値を指標に、面白いページを探していくことができます。

 もうひとつ、はてなブックマークでは「お気に入り」、del.icio.us では「inbox」と言われている機能も重要です。お気に入りに他のユーザーを何人か登録しておくと、彼らがブックマークしているページをお気に入りでまとめて閲覧することができるのです。面白いページをあちこちからガンガン集めてくる人とか、どこからかすごく有用な記事を集めてくる人が世の中にはたくさんいます。そんな人たちを見つけて自分のお気に入りに登録しておけば、それだけで旬なネタがどんどん配信されてくるのです。


はてなブックマークの「お気に入り」機能。他のユーザーのブックマークに登録された情報をまとめて取得できる




共有されてこなかったものを共有してみる面白さ

 ソーシャル・ブックマークサービスは他にもいろいろありますし、それぞれに異なる機能やコンセプトがあります。例えばはてなブックマークは、キーワードを自動で抽出して、それによって他の人とつながるようになっています。一方のdel.icio.us は「tag(タグ)」とよばれるマーキングによってつながるようになっています(tagを使ってつながるサービスは、Folksonomyなんて呼ばれていたりします)。そういった1つの1つの機能も面白いのですが、それではソーシャル・ブックマークというサービスそのものの面白さとは、いったいどこにあるのでしょうか。

 従来、ブックマークや自分でクリッピングした情報は、自分だけが知っている場所に管理されてきました。ブラウザのお気に入り、新聞の切り抜き、その他もろもろ。それはあまり人に見せるようなものではなかったですし、見られても困るという人も多いかもしれません。

 そして、ソーシャル・ブックマークはその発想を転換して、「共有されるなんて思ってなかったものを共有したらどうなるだろう?」という視点で作ってみたらこうなった、というところがポイントです。

 共有するということは、自分のものが公開されるだけでなく、人のものも見ることができます。全員のものに目を通す、ということは人間には難しいですが、コンピュータになら可能です。コンピュータに全員のものを見てもらうことで、そこから流行のものを抽出したり、その人が必要としているものだけ見せたり、といったことができるようになりました。

 この共有されてこなかったものを共有してみた、というのは何もソーシャル・ブックマークに限ったことではありません。例えばソーシャル・ネットワーキングも、誰と知り合いかという情報を共有することでコミュニティが形成されています。自分が誰と知り合いか、なんていう、一見そんなこと知って何が面白いのか「?」な情報も、共有してみるとああいう姿になったりします。

 一方で、はてなフォトライフFlickrのように、写真を共有するサービスもあります。自分がデジカメ撮影した写真を公開していると、いつのまにやらいろんな軸でそれがつながります。はてなフォトライフ - さくらを見てください。


はてなフォトライフを「さくら」のキーワードで検索

 春一番、桜の写真を撮ってみなさんがアップロードしたら、こんなページができあがりました。いろんなひとが撮った写真が、「さくら」というキーワードでつながってるんですね。自宅の押入れのアルバムにひっそりとしまわれてきた写真をひっぱりだして、ネットで共有してみたらこんな綺麗なページができあがりました。

 世の中には、「そんなもの共有されるわけがない」と思われているものだらけです。その視点をちょっとだけ変えて、「他の人と共有してみたらどうなるか」という意識で周囲を見渡してみてください。面白いものが生まれそうな気がしませんか?


関連情報

URL
  はてな
  http://d.hatena.ne.jp/
  naoyaのはてなダイアリー
  http://d.hatena.ne.jp/naoya/
  NDO:Weblog
  http://naoya.dyndns.org/~naoya/mt/

2005/05/19 11:16

伊藤直也
はてな取締役最高技術責任者。はてなの新サービスの企画・開発を行なう。個人でRSS検索「FeedBack」、Amazonアフィリエイト支援ツール「amazletツール」なども開発。自身のブログでも技術やブログ関連の話題などを紹介している。(写真撮影:近藤淳也)
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