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第5回:駅を中心として急速に普及する「Suica」

 今回紹介する非接触ICカード型電子マネーは「Suica(スイカ)」です。定期券や乗車券の代わりに利用されることで普及したSuicaですが、電子マネーとしても幅広い場所での利用が可能な高いシェアを持つ電子マネーです。





JR東日本が提供する非接触型電子マネー

 Suicaは、JR東日本が提供している非接触IC型乗車カード・電子マネーサービスです。鉄道の乗車カードとしてのサービスは2001年から開始されていますが、電子マネーとして店頭などでの利用が正式に可能になったのは2004年からです。

サービス名 Suica
サービス提供会社 JR東日本
サービス開始 2004年3月(電子マネー)
使用技術 FeliCa
発行枚数 2,415万枚(うち電子マネー対応2,105万枚、2008/03)
提携店舗数 33,750店(2008/03)
利用件数 101万件/日(2008/04 PASMO含む)
サービス概要


 Suicaの発行枚数は、2008年3月時点で2415万枚となっていますが、このうち電子マネーに対応したカードの発行枚数は2,105万枚となっており、地域限定のIC型乗車カードながら、現時点でのシェアはEdyに次ぐ2位となっています。

 カードの形態も豊富です。JR東日本が発行している単体のカードでは、無記名の「Suicaカード」、記名式の「My Suica」、そして定期券が一体となった「Suica定期券」があります。Suicaカード、My Suicaとはともに1枚2000円、Suica定期券は定期券の料金で発行できますが、いずれもデポジットとして500円が含まれており、この500円はカードを返却すると返金されます。

 また、同社が発行するクレジットカード「VIEWカード」と一体化した「VIEW Suicaカード」も提供されており、提携先の違いにより、「LUMINEカード」や「ビックカメラSuicaカード」、「JALカードSuica」などの各種カードを利用できます。これらのカードはクレジットカードとして利用できるだけでなく、後述するオートチャージでの利用にも不可欠です。


無記名式の「Suicaカード」 記名式の「My Suica」

Suica定期券 VIEW Suicaカード
専用カード Suicaカード 2,000円(デポジット500円含む)
My Suica(記名式) 2,000円(デポジット500円含む。再発行可)
Suica定期券 定期券料金(デポジット500円含む。再発行可)
会員証一体型 ---
クレジットカード一体型 VIEW Suica
LUMINEカード
ビックカメラSuicaカード
JALカードSuica
キャッシュカード一体型 みずほ
おサイフケータイ NTTドコモ
au
ソフトバンク
カード種類の一例





利用場所の拡大で利用件数も急増

 利用可能な店舗数は、JR東日本のニュースリリースによると2008年3月時点で3万3750店となっていますが、すでに4万店を超えるという報道もあり、「駅ナカ」と呼ばれる駅構内の店舗のほか、駅の外の店舗へも着実にエリアを広げています。

 2008年4月には1日の決済件数が101万件を超えたという発表もあり、SuicaとPASMOを合計した月間の決済件数では、発行枚数で劣るEdyを超えているという報道もなされるほど、利用頻度も上がっているようです。なお、決済件数ではセブン&アイ・ホールディングスのnanacoが月に2800万件でトップであり、これに次ぐ2位をSuicaとPASMO、Edyで争っているという状況です。

 とは言え、コンビニエンスストアでの普及状況に関してはまだ店舗ごとの差があり、首都圏のファミリーマートとam/pm、関東、東北、東海、近畿および三重(ICOCAと相互利用)のミニストップでは対応が進んでいるものの、セブン-イレブンやローソン、サークルKサンクスでは今のところ利用できません。Suicaは駅を中心に展開する電子マネーということが特徴と言えるでしょう。

コンビニエンスストア セブンイレブン ×
ローソン ×
ファミリーマート 首都圏および宮城県、新潟県の一部
サークルKサンクス ×
ミニストップ 関東、東北、東海、近畿および三重
am/pm 首都圏
交通機関 JR JR東日本、TOICAエリア、ICOCAエリア
私鉄 PASMOエリア
バス PASMOエリア
利用店舗の一例


【お詫びと訂正】
 初出時、ミニストップの利用可能地域を関東1都6県としておりましたが、現在は関東、東北、東海、近畿および三重県にエリアが拡大しています。また、ファミリーマートも首都圏以外に宮城県、新潟県の一部で利用可能になっています。お詫びして訂正いたします。





オートチャージは対応カードが必要

 Suicaはプリペイド式の電子マネーであり、利用にはチャージが必要になります。チャージできる場所もやはり駅が中心で、自動券売機やカード販売機、のりこし精算機(現金チャージのみ)、対応店舗のPOSレジを利用します。

 チャージ金額は最大2万円で、1000円/2000円/3,000円/4000円/5000円/1万円から選択できます。

 チャージに関するSuica最大の特徴は、オートチャージに対応している点です。あらかじめ設定しておいた金額を下回ると、クレジットカードから自動的に一定の金額をチャージすることができますので、プリペイド式電子マネーならではの残高不足という悩みから開放されます。

 ただし、オートチャージの利用には以下のような条件があります。
  • VIEW Suicaカードを利用していること
  • オートチャージ可能なのは改札通過時のみ
 このため、これらの条件を満たさない前述したSuicaカード、My Suica、Suica定期券などではオートチャージを利用できません。オートチャージを利用したい場合は、Suicaの購入方法にあらかじめ注意が必要でしょう。

 なお、オートチャージの金額の設定については、駅構内のビューアルッテに設置されているカード用端末を利用することで変更できます。

コンビニエンスストア セブンイレブン ×
ローソン ×
ファミリーマート 首都圏
サークルKサンクス ×
ミニストップ 関東1都6県
am/pm 首都圏
交通機関 JR JR東日本、TOICAエリア、ICOCAエリア
私鉄 PASMOエリア
バス PASMOエリア
チャージ方法





モバイルSuicaでケータイでも使える

 携帯電話での利用に関しては、NTTドコモ、au、ソフトバンクのどのおサイフケータイにも対応しています。


モバイルSuica

 モバイルSuicaに関しては、2007年末に新幹線にチケットレスで乗車できるモバイルSuica特急券サービスが開始されるなど、乗車券としての機能に注目が集まっていますが、このモバイルSuicaを電子マネーとしても利用できます。

 モバイルSuicaには、2種類のサービスが用意されています。ひとつは通常のモバイルSuica、もう1つがクレジットカードの登録が必要ない「EASYモバイルSuica」というサービスです。

 EASYモバイルSuicaは、手軽に利用できる反面、通常のモバイルSuicaで可能なクレジットチャージ、定期券としての利用、Suicaグリーン券、モバイルSuica特急券、JR東海「EX-ICサービス」、再発行といったサービスが利用できません。2つのサービスの違いを考慮した上で、利用するサービスを選びましょう。

 どちらも、携帯電話にアプリをダウンロードして利用するといった使い方は同じですが、通常のモバイルSuicaはクレジットカードの登録が必要になります。対応クレジットカードをあらかじめ用意してからアプリをダウンロードし、会員登録を行いましょう。

 チャージは、通常のICカードと同様に券売機などでも可能ですが、通常のモバイルSuicaの場合は登録したクレジットカードを利用して、携帯電話からオンラインでチャージすることができます。ただし、ICカードタイプのSuicaと異なり、VIEWカードを登録した場合でもオートチャージは利用できません。

 携帯電話を機種変更した際も、モバイルSuicaの移行が可能です。旧機種のモバイルSuicaアプリで機種変更手続き(項目を選択するだけ)を実行すると、センター側に情報が一時的に保存されます。この状態で、機種変更後の新機種からモバイルSuicaにログインし、同様に機種変更手続きを実行すると、センターから旧機種の情報を取得し、金額などの情報が引き継がれます。

 機種変更に関しては、非常にシステマチックで手間のないように工夫されているサービスと言えるでしょう。


機種変更手続きも手軽に行える




独自のポイントサービスを利用可能

 ポイントサービスについては、2007年6月から開始された「Suicaポイントクラブ」を利用できます。

 事前登録が必要ですが、加盟店でのSuicaを利用したショッピングに対して、金額に応じたポイントが付与されるようになっていますので、複数の加盟店で貯めたポイントを再び電子マネーとしてSuicaにチャージできます。

 ポイントが貯まる加盟店は、「ecute」などの商業施設、駅ナカの自動販売機や売店、車内販売などの駅関連施設が圧倒的に多いものの、紀伊國屋書店や時間貸駐車場のタイムズ、紳士服のコナカ、洋服の青山などの駅以外の店舗も含まれています。ポイントの割合は店舗によって異なりますが、100円、もしくは200円で1ポイント程度となっています。

 なお、通常のICカードとモバイルSuicaを併用している場合でも、Suicaポイントの口座は共通化することができるようになっており、それぞれで貯めたポイントを合算することができるようになっています。

 このほかSuicaのポイントサービスで特徴的なのは、外部のポイントサービスとの交換も手軽にできる点でしょう。他ポイントからSuicaポイントへの交換では、Yahoo!ポイントやWAONポイント、ANAマイルなど、他のポイントサービスで貯めたポイントを一定のレートでSuicaポイントに交換できます。もちろん、交換したSuicaポイントは電子マネーとしてチャージすることもできます。

 また、提携先によっては外部ポイントを直接電子マネーに交換することも可能となっており、たとえばビックカメラSuicaカードを利用している場合は、ビックカメラでの購入時に付与されたビックポイントをSuicaにチャージできます。

 一方、Suicaポイントから他ポイントへの交換では、Yahoo!ポイントやWAONポイントからSuicaポイントへの交換が可能となっています。この2つのポイントに関しては、前述しちょうにSuicaポイントからの交換もできますので、相互交換ができるということになります。

利用ポイント サービス固有 Suicaポイント 1ポイント/100円、1ポイント/105円、1ポイント/200円
(紀伊国屋書店、コナカ、青山、駐車場など)
提携先サービス ---
チャージポイント VIEWカード 6ポイント/1000円
ポイント交換 電子マネーにチャージ Suicaポイント 100Suicaポイント→100円
ビューサンクスポイント 400ポイント→1000円
ビックカメラSuicaカード 1000ビックポイント→1000円
JALカードSuica 1万マイル→1万円
みずほSuicaカード 1000マイレージポイント→5000円
他ポイントへの交換 Yahoo! 100Suicaポイント→85Yahoo!ポイント
WAON 100Suicaポイント→90WAONポイント
ビューサンクスポイント 100Suicaポイント→40ビューサンクスポイント
他ポイントからの交換 洋服の青山 100AOYAMA→50Suicaポイント
ANA 1万マイル→1万Suicaポイント
えきねっと 100えきねっとポイント→250Suicaポイント
お財布.com 1コイン→1Suica
コナカ 100コナカポイント→50Suicaポイント
ジー・プラン 10G→10Suicaポイント
ちょコム 100円分→90Suicaポイント
NetMile 100mile→50Suicaポイント
PeX 1000PeXポイント→90Suicaポイント
ポイントオン 20ポン→9Suicaポイント
モッピー 10モッピーポイント→9Suicaポイント
Yahoo! 100Yahoo!ポイント→85Suicaポイント
WAON 100WAONポイント→90Suicaポイント
ポイント交換の概要


 ただし、ポイントによっては一定の手数料が発生するケースがあります。たとえば、Yahoo!ポイントとの相互交換では100ポイントあたり15ポイントの手数料がかかり、WAONポイントでは100ポイントあたり10ポイントの手数料がかかります。交換によって、別の店舗でポイントを利用できるようになるメリットはありますが、電子マネーとして利用できる金額が減少する場合もあるので注意が必要でしょう。


関連情報

URL
  Suica
  http://www.jreast.co.jp/Suica/

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2008/09/11 11:03

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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