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第23回:サーバー型電子マネーを知ろう(1)
オンラインゲームに強い「WebMoney」

 非接触ICカード型電子マネーに続いて、今回からサーバー型電子マネーの概要についても紹介していくことにしましょう。初回は株式会社ウェブマネーが提供する「WebMoney」です。


インターネットでの決済に適したサーバー型電子マネー

 「電子マネー」というと、最近ではどうしてもEdyやSuica、iDなどの非接触ICカードを思い浮かべることが多いかもしれません。実際、非接触ICカードが使える場所や利用者も急速に増えており、とても身近な存在になってきています。

 しかし、一部の利用者にとっては、もしかすると、いわゆるサーバー型の電子マネーの方が馴染み深いかもしれません。オンラインゲーム、音楽や映像などのコンテンツ購入など、インターネット上では古くから「サーバー型」と呼ばれる電子マネーが使われており、現在でも一般的に利用されています。

 サーバー型電子マネーについては第1回でも「仮想マネー」として紹介しましたが、文字通り、金銭的な価値をサーバーで管理する電子マネーの方式です。

 非接触ICカードでは、カード上のチップに金銭的な価値が記録されますが、サーバー型ではこの情報がインターネット上のサーバーで管理されています。利用者は、このサーバー上の金銭価値と関連づけられた十数桁の文字列(数字や文字など)をオンラインゲームやコンテンツ購入の際に入力することで決済ができるようになっています。

 非接触ICカードの電子マネーは、コンビニエンスストアやスーパー、飲食店、交通機関などの実際の店舗で利用されることが多いと言えますが、サーバー型は、文字列という情報を決済に利用するため、主にインターネット上のサービスで利用されています。古くからインターネットを利用している人の中には、一度は使ったことがあるという人も少なくないことでしょう。


サーバー型電子マネーの例。コンビニエンスストアで購入したカードの番号を支払いに利用する

 なお、サーバー型電子マネーに関しては、今年1月14日にまとめられた金融審議会による資金決済に関する制度整備についての報告書によって、今後、非接触ICカードやプリペイドカードなどと同様の規制(いわゆるプリカ法)が適用されることになりそうです。

 サーバー型電子マネーは、これまであまり規制がないサービスとなっていましたが、これにより、サービス提供事業者は発行した電子マネーの未使用分の二分の一を供託することになり、万が一、サービスが停止した場合でもユーザーの権利(金額)の一部が保護されるようになる見込みとなりました。

 事業者側の負担が大きくなるという問題はありますが、利用者の保護が整備されれば、これまで以上に幅広いシーンで、しかも安心してサーバー型電子マネーが使えるようになることでしょう。


10周年を迎えたWebMoney

 さて、本題に入りましょう。今回は、このようなサーバー型電子マネーの中から株式会社ウェブマネーが提供する「WebMoney」の概要を紹介します。

サービス名 WebMoney
サービス提供会社 株式会社ウェブマネー
サービス開始 1999年4月
使用技術 サーバー型
契約加盟者 1773社以上(2008年)
年間決済金額 315億(2007年実績)
URL http://www.webmoney.jp/
表1:基本情報


 WebMoneyは、1999年にサービスが開始された今年で10周年を迎えるサーバー型電子マネーです。非接触ICカードの電子マネーは2001年以降のサービス開始となりますので、電子マネーとしては先行してサービスが開始されていたことになります。

 ただし、急速に拡大した非接触ICカード電子マネーと異なり、利用場所がネット上に限られるうえ、着実な歩みを進めてきたため、電子マネーとしての規模はあまり大きくありません。

 同社WebページやIR資料などで公表されているデータを元にすると(IRリリース参照)、年間の決済金額は315億円ほど(しかもそのうちの約8割がオンラインゲームでの利用)、サービスの利用が可能な契約社数は1773社(2008年Q2実績)となっています。

 非接触ICカードのサービスは、いずれも数千億円規模の決済金額、数万店単位の加盟者数となりますので(参考:Edy 提携店舗7万5000店、発行枚数4040万枚、利用件数2400万件/月、2008年6月時点)、確かに規模としては大きいとは言えないでしょう。

 とは言え、一部報道などによると、非接触ICカード型電子マネーは、急速な規模の拡大を続けたことで、それに見合った収益獲得に難航しているケースも見られ、厳しい経営が続いているようです。

 同社も、08年Q2に特別損失の影響で純損失を計上していますが、これは一部事業(デビタと想定される)撤退の影響とされています。戦略方針としては、規模の拡大ではなく、オンラインゲームなどのニッチな市場へと集中し、そこで確実に収益を上げるというモデルと考えられ、この点も非接触ICカードの電子マネーとの違いと言えるでしょう。


英数字16桁による決済

 続いてサービスの概要について見ていきましょう。WebMoneyでの決済は、先に一定金額分の電子マネー(プリペイド番号)を購入し、それを実際の商品やサービスへの支払いに充当するプリペイド方式となります。

 プリペイド番号は「1234 5678 90ab cdef」のような16桁の英数字となっており、大きく3つの形態での購入が可能です。1つはカード式です。コンビニエンスストアやネットカフェなどで販売されているカードを購入し、裏側のスクラッチ部分を削ってプリペイド番号を入手します。


プリペイドカード型のWebMoney オンラインゲームなどインターネット上のサービスを利用する際に番号を入力して決済する

 2つ目はシート式です。コンビニエンスストアの店頭の場合は、電子マネーコーナーなどに陳列されている金額分のカードをレジに持って行くことでレシートなどに記載されたプリペイド番号を入手できます。また、ファミリーマートのfamiポート、ローソンのLoppiなどの端末でもプリペイド番号が記載されたシートを購入できます。

 最後はオンラインでの購入です。同社では発行された電子マネーをWeb上で管理することができる「ウォレット」というサービスを提供しています。このサービスは、IDを登録するだけで無償で利用できるようになっており、余った電子マネーをチャージして集めておいたり、集めた電子マネーから新たなプリペイド番号を発行したり、ログイン用のIDを使って決済できるサービスですが、クレジットカードや銀行決済によってウォレットに直接金額をチャージすることもできます。

 このサービスはには、通常の「ウォレット」と新たに登場した「ウォレット+」という2種類のサービスが存在します。主な違いは「ウォレット+」はクレジットカードでのチャージしか対応していない代わりに、チャージ金額に応じて「ゴールド」というポイントが付与される点です。そのほかの違いは以下の表にまとめておきますが、残念ながら両サービスのアカウントは個別に管理されるため、お互いに無いサービスを利用し続けるには、双方への登録が必要です。


ウェブマネーの「ウォレット」サービス。プリペイドカードの金額をまとめて保管したり、クレジットカードなどからチャージできる 新たに開始された「ウォレット+」。チャージはクレジットカードのみだが、チャージ金額に対して10%のポイントが付与される
ウォレット+ ウォレット
チャージ プリペイド番号 ×
クレジットカード 自由額面 固定額面
ネットバンク ×
コンビニ ×
ポイントサービス チャージへのゴールド付与 ×
プリペイド番号発行 ×
利用明細
ポイントパーク利用
ウォレットとウォレット+の違い



 このようにして、あらかじめプリペイド番号を用意した状態で、たとえばオンラインゲームでアイテムを購入するときにWebMoneyを選択し、16桁の番号(ウォレットサービス対応の場合はID入力によってチャージした金額からの決済も可能)を入力することで決済ができるというわけです。

 対応するサービスは、オンラインゲームでは「Final Fantasy XI」、「モンスターハンター フロンティア」、「信長の野望 オンライン」、「ラグナロクオンライン」、「ハンゲーム」、「メイプルストーリー」などほとんどのゲームがWebMoneyに対応している。

 そのほか、音楽配信の「MORA」、So-netのコンテンツコース決済、オンラインソフト販売の「Vector」、携帯電話向けSNSの「モバゲータウン」、動画配信の「Show Time」、電子書籍の「パピレス」などと、かなり多くのサービスで利用可能となっている。対応するサービスは非常に多いので、詳細は同社Webページを参照していただきたい。

種類 プリペイド
オートチャージ ×
決済方法 プリペイド番号
ID決済
購入方法 カード コンビニ
PC・ゲームショップ
ネットカフェ
シート コンビニレジ
コンビニ端末
オンライン ウォレットチャージ
(カード・銀行決済・セブンーイレブン)
チャージ金額 最大 10000円
単位 1000/2000/3000/5000/10000円
(Famiポート:900~10000まで1円単位も可)
失効 なし
送受信 メールアドレスを宛先とした送信、譲渡が可能
サービス概要


楽天ポイントとの交換、「ゴールド」によるアイテムの入手も可能

 ポイントサービスについては、2種類の側面で考える必要があります。WebMoneyでは電子マネー自体を「ポイント」という単位で表現するうえ、さらに「ゴールド」というこちらは純粋なポイントサービスが存在するため、混同しないように注意する必要があります。

 まず、電子マネー自体のWebMoneyですが、プリペイド番号やクレジットカードでのチャージに加えて、「ポイントパーク」と呼ばれる同社のアフィリエイトサイトを利用することでも貯めることができます。貯まるポイントは数十~数千ポイントとさまざまですが、会員登録やカードの作成、見積・査定などでポイントを貯めることができるので、これを利用するのも手でしょう。


スポンサーサイトの利用でWebMoneyを貯めることができるポイントパーク

 また、貯めたWebMoneyは電子マネーとして利用するだけでなく、「楽天スーパーポイント」への交換が可能となっています。このため、WebMoney自体を使って楽天で買い物をすることはできませんが、一旦、ポイントに交換してからであれば、楽天での買い物にも利用できることになります。

 交換レートは1対1で、WebMoney1ポイント=楽天スーパーポイント1ポイントに交換することができます。しかし、交換には2営業日ほどの期間がかかるうえ、さらに5%の手数料がかかります。余ってしまったWebMoneyを消費する目的なら、楽天ポイントに交換するのもひとつの方法ですが、純粋に楽天で欲しいものを買うなら、カードのポイントサービスなども考慮してクレジットカードでの決済した方がお得と言えるでしょう。

 一方、ポイントサービスとして提供されている「ゴールド」は、前述したウォレット+、および同社が提供しているアフィリエイトサイト「ポイントパーク」向けのサービスとなり、ポイントが付与される条件が限られています。


 具体的にはウォレット+でクレジットカードからWebMoneyにチャージすることで、チャージ金額の10%のゴールドポイントが付与されます。

 10%というレートはチャージに対するポイントサービスとしては破格と言えるうえ、ポイントパークでもたとえばクレジットカードの作成で1500ポイント程度が付与されますので、お得感の高いサービスと言えます。

 ただし、貯まったゴールドの使い道は限定されます。現状は、ローズオンラインというオンラインゲームで利用できる「金塊」という武器アイテム(150G)に交換できるなど、アイテムなどへの交換が主になります(今後さらに種類が増える予定)。

 もちろん、ゴールドを再びWebMoneyにチャージすることもできますが、この場合のレートは「5000ゴールド=WebMoney100ポイント」と低くなってしまうため、あまり得策ではありません。


WebMoneyは楽天スーパーポイントと等価で交換できる(手数料は必要) ゴールドポイントはウォレット+でクレジットチャージすることで貯めることができる。貯まったゴールドポイントはアイテムなどと交換可能
利用ポイント なし
チャージポイント ウェブマネー ウォレット+ クレジットチャージ分の10%をGOLDで
(カードポイントも)
アフィリエイト ウェブマネーポイントパーク サイトから提携サービス利用、加入でポイント獲得
ポイント交換 電子マネーに換金
(ポイントのチャージ)
5000ゴールド=100ポイント
他ポイントへの交換 楽天スーパーポイント 1ポイント(WebMoney)
 =1ポイント(交換手数料5%必要)
他ポイントへの交換 ちょコム 525円分
 =500ポイント(WebMoney)
特典 オンラインゲームのアイテムなど
募金 スペシャルオリンピック
日本赤十字
ユニセフインターネット募金
赤い羽根共同募金
日本盲導犬協会
ポイントサービス


安全・安心な電子マネー

 このように、WebMoneyについて紹介してきましたが、サーバー型の中でもWebMoneyの特徴と言えるのは、手軽さと安心感と言えます。

 手軽さについては紹介した通りです。コンビニなどで手軽に購入できるうえ、支払いの手間もかかりません。また、これは次の安心にも関係しますが、メールアドレス宛にWebMoneyを送信することもできるようになっており、WebMoneyという通貨に両者が同意できれば、個人間取引にも手軽に利用できます。


メールアドレスさえわかれば、相手にWebMoneyを送信することもできる

 安心については、2点挙げられます。1つは支払いに際して、クレジットカード番号、個人情報などを送信する必要が一切ないことです。情報漏洩、フィッシング詐欺などの被害に遭う心配がないうえ、そもそもクレジットカードを所有していない未成年などでも利用できます。

 もう1点は、利用できるサイトが健全である点です。WebMoneyでは提携時に必要なサイトの審査基準が厳しく設けられており、アダルトサイトなどでの利用ができないようになっています。

 サーバー型の電子マネーはクレジットカードを所有できない未成年者が利用することが想定されますが、このような際でも匿名性が悪用されてしまうことを防げることになります。メールアドレス宛の個人間取引と組み合わせて、プレゼントやお小遣いの一部として渡すという使い方も想定できるでしょう。

 このほか、募金活動などでも利用されているなど、非常に安全に、安心して使える電子マネーとなっています。今後の展開次第では、さらなる普及も見込めるでしょう。


関連情報

URL
  電子マネーWebMoney
  http://www.webmoney.jp/

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清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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