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コンビニやマクドナルドなどで普及が進むNTTドコモの「iD」

 前回までのプリペイド型に引き続き、今回から後払い式となるポストペイ型の電子マネーについて紹介していきます。まずはNTTドコモが提供している「iD(アイディー)」について見てみましょう。





チャージ無しで使える携帯電話ベースの電子マネー

 NTTドコモが提供している「iD」は、いわゆるポストペイ型の電子マネーです。

 これまでに紹介してきたEdyやSuica、nanaco、WAONなどは、あらかじめチャージしておいた金額から商品やサービスの代金を支払う方式でしたが、ポストペイ型となるiDは後払い式のため、事前のチャージが必要ありません。残高を気にすることなく、手軽に使える電子マネーというわけです。

 サービスの開始は2005年12月。当時はクレジットサービスであるDCMX(詳しくは後述)の開始もあり、NTTドコモが金融業に進出するということで大きな話題になりました。それから2年半が経過し、現在では708万人(2008年4月現在)の会員を誇るサービスにまで成長しています。

サービス名 iD(DCMX/DCMXmini)
サービス提供会社 NTTドコモ
サービス開始 2005年12月
使用技術 Felica
発行枚数 会員数:708万人(2008/4)
決済端末台数 32万台
決済上限額 カードによって異なる
サービス概要


iD

 708万人という会員数は、発行枚数2000万枚を超えるSuicaなどに比べると少ないという印象を持つかもしれませんが、Suicaのうちおサイフケータイでの利用となるモバイルSuicaの会員数は110万人(2008年6月現在)となっています。それと比較すると携帯電話での利用率は非常に高く、携帯電話ベースの電子マネーの代名詞と言って良いほどに成長しつつあると言えるでしょう。

 なお、iDには三井住友カードが提供するカード型の電子マネー(専用カード、クレジット一体型カード)も存在するため、携帯電話だけのサービスというわけではありません。





クレジットカードの「DCMX」、携帯電話料金で支払える「DCMX mini」

 身近な存在である反面、iDは電子マネーの中でもわかりにくいサービスの1つでもあります。その原因は、略語的な英字の名称にもあると言えますが、決済手段との関係が複雑な点が大きいでしょう。

 ポストペイ型の電子マネーは、通常、その決済にクレジットカードを利用することで後払いを実現しています。この決済方法は、基本的にiDでも同じです。

 このため、iDを利用する際は、決済に利用するクレジットカードを登録する必要がありますが、このクレジットカードとして以下の表のような対応クレジットカード以外に、NTTドコモがサービスを提供している「DCMX」を利用できるようになっています。
iD対応カード三井住友カードiD(専用カード)
DCMX(NTTドコモ)
三井住友カード
イオンカード
セゾンカード
ユーシーカード
ローソンCSカード
オリコカード
ライフカード
セントラルファイナンス
VJA(銀行系カード)
iD対応クレジットカード

 つまり、電子マネーの「iD」もクレジットサービスの「DCMX」も同じNTTドコモのサービスであることから、サービスを混同してしまうことがあるわけです。

 しかも、DCMXには、通常のカードが発行される「DCMX」、年会費が必要な「DCMX GOLD」に加えて、カードを発行せずに利用料金を携帯電話の料金と一緒に請求する「DCMX mini」と呼ばれるクレジットサービスが提供されています。

 ポストペイ型の電子マネーは決済にクレジットカードを使うことから利用者が制限されてしまう場合がありますが、DCMX miniは月に1万円までという限度額が定められているものの、携帯電話からすぐに加入でき、親権者の同意があれば中学生以上で加入することができます(支払い方法がクレジットカードの場合はDCMX以外では利用不可)。

サービス名 DCMX mini DCMX DCMX GOLD
媒体 携帯電話 携帯電話/カード
申し込み オンライン/ドコモショップによる即日入会 オンライン/書類申し込み後審査
限度額 1万円/月 利用状況によって異なる
支払い方法 一括のみ 一括/分割/リボ
請求処理 携帯電話料金と一緒に請求* 登録口座からの引き落とし
年会費 無料 無料(2年目以後ショッピング利用ない場合は1,312円/年) 15,750円
未成年の利用 中学生以上(親権者の同意必要) 高校生以上(親権者の同意必要)←
独自ポイント 2~3%(ドコモプレミアム会員向け) 2~3%(ドコモプレミアム会員向け)
ショッピングポイント --- 1ドコモポイント/100円 5ドコモポイント/100円
DCMXラインナップの違い


 そろそろ混乱してきそうなので、図でまとめましょう。iDは、電子マネーサービスと決済サービスの2つの組み合わせによって成立しています。このうち、決済サービスに関しては一般的なクレジットカード会社以外に、NTTドコモも提供しています。それがDCMXやDCMX miniとなり、中でもDCMX miniを利用すると対応カードがなくてもすぐにサービスを利用することができるというわけです。

 なお、iDでは決済用のクレジットカードは2枚まで登録することができるようになっています。これにより、ショッピングによるクレジットカードポイントを貯めたい場合に、必要に応じて利用するクレジットカードを切り替えるということもできるようになっています。






利用範囲拡大、マクドナルドや海外での利用も

 利用できる店舗は、コンビニエンスストアではローソン、ファミリーマート、サークルKサンクス、am/pmとなっています。最大手のセブン-イレブンとミニストップでは利用できませんが、それ以外のコンビニで広く対応しています。

コンビニエンスストア セブン-イレブン ×
ローソン
ファミリーマート
サークルKサンクス
ミニストップ ×
am/pm
交通機関 JR ---
私鉄 ---
バス ---
その他 マクドナルド、イオングループ、コカ・コーラなど
ネット決済 メールやQRコード経由で携帯サイトで決済
海外利用 グアム、上海、北京
利用店舗の一例


 また、iDはマクドナルドでの利用が可能となっていますが、単なる決済だけでなく、クーポン、オーダー、マーケティングと組み合わせた展開がなされているのが特徴となっています。

 具体的には、専用アプリを利用して「かざすクーポン」と呼ばれるクーポンを携帯電話にダウンロードします。このクーポンを店頭のリーダーにかざすとクーポンの情報が読み込まれ、オーダーが完了します(ドリンクなどの選択は必要)。その後、支払いにiDを利用すれば、携帯電話だけで、メニュー選択やオーダー、支払いが完了するのです(Edy決済に対応した店舗も一部存在する)。

 マクドナルドのようなファストフードでは、顧客の回転率を高くすることが売上の向上につながります。メニューを見て迷う時間、オーダーで戸惑う時間、支払いで金銭を授受するというカウンタータイムを短縮することができれば、それだけでも大きなメリットとなるわけです。

 同時に、会員情報と組み合わせることで顧客のオーダー傾向を詳細に分析できたり、特定の顧客に訴求するためのターゲッティングも可能となるなど、さまざまなメリットも考えられるでしょう。


マクドナルドの「かざすクーポン」

 このほか、iDは海外でも使える電子マネーとしても注目を集めています。グアム、上海、北京と一部のみですが、海外の飲食店やショッピングセンターなどで利用することができます(中国ではDCMX miniの利用は不可)。





 ポイントサービスについては、他のポストペイ型電子マネーと同様に、基本的には登録したクレジットカードのポイントサービスを利用することになります。

 しかし、10月1日から、このような従来のクレジットカードポイントに加えて、ドコモプレミアムクラブ会員向けのポイントサービスが開始されました。これにより、プレミアムクラブ会員が、特約店での買い物に「DCMX」「DCMX mini」を利用すると、クレジットカードのショッピングポイントとは別に、さらに2~3%のドコモポイントを獲得できるようになりました。

 注目は、DCMX miniでもポイントが貯まる点です。DCMX miniはクレジットカードではなく、携帯電話料金と一緒の支払いとなるため、これまではポイントサービスを受けることができませんでしたが、今回の新サービスによりポイントを貯めることが可能となったわけです。

 また、プレミアクラブのプレミアステージ会員は、貯めたドコモポイントをDCMXやDCMX miniの決済代金として使うことも可能となりました。これにより、電子マネーで貯めたポイントを再び電子マネーとして使うことが可能となったわけです。

 NTTドコモの携帯電話以外では使えないというのが最大の欠点ではありますが、使い勝手や利用範囲、特典などの多い電子マネーと言えるでしょう。

iD対応カード 三井住友カードiD(専用カード)
DCMX(NTTドコモ)
三井住友カード
イオンカード
セゾンカード
ユーシーカード
ローソンCSカード
オリコカード
ライフカード
セントラルファイナンス
VJA(銀行系カード)
iD対応クレジットカード


関連情報

URL
  iD
  http://id-credit.com/
  DCMX
  http://www.dcmx.jp/

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2008/10/16 11:09

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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