「QUICPay」は、JCBが中心となって展開しているポストペイ型電子マネーで、コンビニエンスストアやガソリンスタンドなどで幅広く利用されています。その詳細に迫ってみましょう。
■ ポストペイ型2強の一角
電子マネーのサービスをプリペイドとポストペイに分けたとき、ポストペイ型の2強の一角を担うサービスと言えるのが、今回紹介する「QUICPay」です。
ポストペイ型電子マネーには、前回紹介したNTTドコモの「iD」、そして今回の「QUICPay」、さらに次回紹介する予定の「Smartplus/Visa Touch」がありますが、QUICPayはiDに次ぐ会員数を誇っており、現在、iDとのサービス競争を繰り広げています。
QUICPayの会員数は2008年5月時点で415万人、端末台数は14.3万台と発表されています(モバイル決済推進協議会資料より)。ポストペイ型トップのiD(700万人以上)に比べると少ないものの、プリペイド方式のWAON(2008年6月時点で490万枚)とほぼ同等となっています。
電子マネーと言うと、EdyaやSuicaが真っ先に思い浮かぶこともあり、知名度としてはそれほど高くないかもしれませんが、着実に普及しつつあるサービスと言えるでしょう。
サービス名 |
QUICpay |
サービス提供会社 |
モバイル決済推進協議会 |
サービス開始 |
2005年4月 |
使用技術 |
Felica |
発行枚数 |
会員数:415万人(2008/5) |
端末台数 |
14.3万台 |
決済上限額 |
2万円/1回 |
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サービス概要
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■ 広範囲なプラットフォームで普及を狙う
前述したとおり、QUICPayはポストペイ方式となるため、基本的に電子マネーサービスと決済手段となるクレジットサービスを組み合わせて利用することになります。
利用可能な媒体は、専用カード、クレジットカード一体型、そしておサイフケータイと大きく分けて3つ(後述するnanaco一体型もある)です。専用カードは文字通りQUICPayのみに利用できるカードで、組み合わせて利用するクレジットカード会社から発行してもらうことで利用できます。すでにQUICPay対応クレジットカード会社の会員である場合は、この方法での利用が便利でしょう。
続いての一体型カードは、クレジットカードにQUICPayの機能が一体化されたカードです。こちらはQUICPayに対応したクレジットカードを持っていない人が新たにQUICPayを利用したい場合にお勧めです。クレジットカードとQUICPayの申し込みを一度に行うことができます。
最後のおサイフケータイは、携帯電話を決済に利用したい人向けです。対応カードが必要になりますが、すでに所有している場合はオンラインの手続きだけでQUICPayを利用することができます。
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おサイフケータイでのQUICPay
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このような形態があるQUICPayですが、ライバルと言えるiDと比べると、プラットフォームが幅広いことがわかります。auやソフトバンクモバイルなどのNTTドコモ以外のおサイフケータイでも利用できるのはもちろんですが、ポイントサービスなどを考慮すると事実上DCMXの選択が有利となるiDと異なり、幅広いカードを選択肢として検討することができます。
利用状況などに合わせて、柔軟な使い方ができるのが魅力のサービスと言えるでしょう。
専用カード |
QUICPayカード |
クレジットカード |
JCBカード |
ティーエスキュービック(トヨタファイナンス) |
セゾンカード |
オリコカード |
UFJカード |
セントラルファイナンス |
オーエムシーカード |
アイワイカード |
エスコートカード |
USCカード |
日専連 |
UCカード |
NCクマモトカード |
ほくせんカード |
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QUICPay対応カード
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■ nanacoとの連携も魅力
また、プリペイド方式の電子マネーであるnanacoとの連携が図られている点もQUICPayならではの特徴と言えます。
nanacoはセブン&ワイホールディングスが提供するプリペイド方式の電子マネーですが、カードの裏面をよく見ると「QUICPay」のマークが入っていることが確認できます。nanacoをQUICPayのカードとしても利用するには、アイワイカード(アイワイカードサービスが発行するクレジットカード)に加え、オンラインなどからの事前の登録が必要になりますが、これにより同じカードをnanacoとしても、QUICPayとしても利用することが可能になります。
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nanacoにはQUICPayの機能も搭載されている。ただし、利用にはアイワイカードが必要で事前登録も必須
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この連携は、利用範囲の拡大という点でも大きな意味を持ちます。現状は、nanacoが使える場所ならどこでもQUICPayを使えるというわけではありませんが、コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブンでQUICPayを利用できるのは大きな魅力です。
もちろん、ポイントなども考慮する必要はありますが、nanaco一体型のQUICPay以外もセブン-イレブンで利用することができますので、近所や職場の近くにセブン-イレブンがある場合は利用を検討すると良いでしょう。
コンビニエンスストア |
セブン-イレブン |
○ |
ローソン |
○ |
ファミリーマート |
× |
サークルKサンクス |
○ |
ミニストップ |
× |
am/pm |
× |
交通機関 |
JR |
- |
私鉄 |
- |
バス |
- |
その他 |
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昭和シェル
ENEOS
ロイヤルホスト など |
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QUICPay対応カード
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■ DCMX mini対抗となる「おサイフくんQUICPay」
このほか、QUICPayには、「おサイフくんQUICPay」と呼ばれる特殊なサービスも存在します。
この「おサイフくんQUICPay」は、トヨタファイナンスが提供しているサービスで、言わばNTTドコモの「DCMX mini」の対抗と言われているサービスです。
前述したとおり、QUICPayを利用するには対応するクレジットカードが必要になりますが、おサイフくんQUICPayは対応クレジットカードを持っていない場合でも手軽に加入することができます。
と言っても、電子マネーとして利用した料金を携帯電話の料金と一緒に請求するDCMX miniと異なり、請求自体はトヨタファイナンスのクレジットサービスで行われます。通常のクレジットカードサービスと異なり、カードが発行されず(カード番号は発行される)、キャッシングやカードローンが利用できず、明細もインターネット経由でのみ参照できるという簡易的なクレジットサービスとQUICPayと組み合わせたサービスと言ったところでしょう。
このため、DCMX miniのようにオンラインで即時入会というわけにはいかず、オンラインでの申し込み後、口座振替の依頼書を送付する必要があります。また、20歳未満の場合も利用できず、入会には所定の審査も行われます。
DCMX miniと比べて、限度額が高く、支払い方法の変更(分割やリボ)なども可能と柔軟性が高い点のが特徴ですので、こういった点に魅力を感じる場合は利用するメリットがあるでしょう。
サービス名 |
DCMX mini |
おサイフくんQUICPay |
対応携帯電話 |
NTTドコモ |
NTTドコモ、au、SoftBank |
申し込み |
オンライン/ドコモショップによる即日入会 |
オンライン申し込み後、口振書類送付 |
審査 |
なし |
あり |
限度額 |
1万円/月 |
10万円/月 |
支払い方法 |
一括のみ |
分割、リボへの変更も可能(ネット経由) |
請求処理 |
携帯電話料金と一緒に請求 |
口座振替 |
年会費 |
無料 |
無料 |
未成年の利用 |
親権者の同意があれば可 |
不可 |
ポイントサービス |
なし |
5ポイント/1000円 |
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DCMX miniとおサイフくんQUICPayの比較
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■ ポイントはカードのサービスを利用
最後にポイントですが、QUICPayの場合、独自のポイントサービスというものは提供されていないため、基本的にカード会社のポイントサービスを利用することになります。
ちなみに、nanaco一体型QUICPayを利用している場合、セブン-イレブンでの支払いにnanacoを使うと100円で1ポイントが貯まりますが、QUICPayを利用すると200円で1ポイントのnanacoカードポイントと、200円で1ポイントのアイワイカードポイントの組み合わせでポイントが貯まります。合計したレートは同じでも、貯まる場所が別々になることを覚えておくと良いでしょう。
このほか、QUICPayでは頻繁にキャンペーンが提供されており、特定の店舗における一定の利用料金を一口として豪華賞品のプレゼントが当たる場合などもあります。QUICPayのホームページなどをチェックしておくと良いでしょう。
■ URL
QUICPay
http://www.quicpay.jp/
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