Broadband Watch logo

音楽用MDをパソコンのデータストレージにするHi-MD対応ドライブ


ソニーの「DS-HMD1『PIT-IN』」。実売価格は15,000円前後。本体サイズは約86×79.3×22.9mm(幅×奥行×高)で、重量約100g。MDウォークマンを思わせるシンプルなデザインだ
 今回紹介するソニーの「DS-HMD1『PIT-IN』」は、Hi-MDやMDをパソコン用のリムーバブルストレージメディアとして利用するためのドライブユニット。Hi-MDに約1GB、80分のMDには約300MBのデータを記録することができる。特別なライティングソフトやドライバのインストールは不要、パソコンとはUSBケーブルで接続するだけというお手軽さが魅力のアイテムだ。

 Hi-MDとはMDの上位規格のこと。Hi-MD規格のディスクカートリッジは従来のMDとまったく同じ大きさだが、記録密度を高めることで約45時間、データサイズにして約1GBという大容量を実現している。さらに従来のMDでも、このHi-MDと同じ方式でフォーマットすれば約300MBのデータを記録することができるようになる。パソコンのデータ記録用としては今ひとつ目立たない存在だが、注目に値する製品なのだ。

 ボディは光沢のある滑らかなプラスチック製。シルバー、ブラック、グリーン、レッドの4色がラインナップされている。サイズは約86×79.3×22.9mm(幅×奥行×高)、重量は約100gほどだが、手に持つと意外に軽く感じる。MDウォークマンとはまたひと味違った質感だ。非常にシンプルな外観から想像できるとおり、PIT-IN自体には音楽などの録音再生機能はない。さまざまな機能を省き、パソコン用データストレージ専用とすることでコストを抑えているのだろう。

 ボディにはスライド式のオープンスイッチとリリースボタン、それにデータアクセス状態を知らせるLEDインジケータが配置されているだけ。接続端子はミニBタイプのUSBポートのみである。電源はパソコンのUSBポートから供給するバスパワー方式なので、バッテリーやACアダプタなどは必要ない。


上面にある黒いリリースボタンを押すとLEDインジケータが消灯し、ディスクカートリッジが取り出せる状態になる 本体左横にはミニBタイプのUSBポートがある。電源はこのUSBから供給するバスパワー方式なので、ACアダプタなどは必要ない

前面のツマミを右に動かすとドライブが少しだけ口を開け、ディスクカートリッジが飛び出してくる。MDウォークマンなどでお馴染みの方式だ
 パソコンとの接続はUSBを利用する。マスストレージクラスに対応しているので、単なる外部記憶装置として使うのならドライバなどソフトウェアのインストールは不要。ケーブルをUSBポートに差し込みさえすればリムーバブルストレージとして認識される。あとはエクスプローラなどでフォルダやファイルをドラッグ&ドロップすれば良い。

 個人的な話で恐縮だが、筆者がこのPIT-INに興味を持ったのは、余ったMDを有効に活用できると思ったからだ。ポータブルオーディオとしてはメモリカードプレーヤーやHDDプレーヤーを使う機会が増えたため、以前よりMDの使用頻度が低くなってしまったのである。

 もちろん今でも、自宅やクルマで音楽を聴くときには使っているし、会議やミーティングの音声記録、また楽器演奏の生録などにも活用している。しかし、量販店で買いだめしたり、出先で何枚かずつ買い足すなんてことを繰り返してきたせいか、部屋の棚には封も切っていないMDが大量に眠っている状態なのである。計画性がないと言われればそれまでだが(笑)、これを利用したくなるのは当然のことだろう。

 PIT-INを使ってみて特に印象深かったのは予想以上の手軽さだ。実は事前に目を通した資料に、従来のMDはHi-MD方式で初期化し直すという記述があったため、「1枚1枚フォーマットするのは手間と時間がかかるな」と思っていたのである。

 ところが、実際にはそんな面倒な作業とは無縁だった。録音済みのMDでもプレーヤー側で全曲消去してブランク状態にしておきさえすれば、そのままPIT-INで利用できるのだ。逆も同様、データ記録に利用していたMDをプレーヤーにセットして全曲消去すれば、また曲が録音できるようになる。フォーマットが違っているとは言え、それをユーザーに意識させない使い勝手の良さは大きな魅力だ。


左が容量1GBのHi-MD。ディスクカートリッジの大きさは右の音楽用MDとまったく同じだが、ケースは2まわりほど大きい
 大容量のHi-MDとコストパフォーマンスに優れたMDを必要に応じて使い分けられる点にも注目したい。Hi-MDなら1枚にCD-ROM 1.5枚分。大容量データのバックアップにも十分対応できるキャパシティだ。ほかのメディアと比べると少々高価な部類に入るようだが、使い勝手の良さとスペース効率の高さはDVDに迫るものがあるだろう。

 一方のMDは量販店などで安価に入手できるだけでなく、必要なら街角のコンビニや文具店でも簡単に購入できる。もちろん手持ちのMDを流用しても良い。容量面ではHi-MDに及ばないものの、例えばデジカメで撮影した画像データを知人に配るといった用途に気軽に使えるだろう。惜しむらくは、Hi-MDやMDがパソコン用ストレージとして少々影が薄いという点だ。筆者の周りにはユーザーがおらず、ファイルを受け渡すにも、ディスクカートリッジだけをやりとりするというわけにはいかなかった。さらなる普及を期待したいところである。

 PIT-INのスペック表によれば、Hi-MDでの最大書き込み速度は最大9.83Mbps、通常のMDでは約半分の最大4.37Mbpsとなっている。数値的には少し前のメモリカードなみの速度だが、実際はどうなのだろうか。参考までに筆者の環境で100MBのファイルを使い、ストップウォッチでコピー終了までの時間を測ってみた。結果は、Hi-MDでの書き込みが3分30秒、読み込みは2分10秒。普通のMDでは書き込みに7分40秒、読み込みは3分45秒。同じサイズでもファイル数が増えると時間もかかるようになるようである。決して高速とはいえないが、リムーバブルストレージとしては十分実用に耐え得るスピードといえるのではないだろうか。かすかにシーク音が聞こえる点を除けば、メモリカードリーダー・ライターを使っているのと同じような感覚だ。

 今回はパソコン用ストレージデバイスとしての機能を重視してしまったが、PIT-INには音楽データを扱う手段も用意されている。付属の音楽管理ソフト「SonicStage Ver.3.1」を利用して、CDやインターネット上の音楽配信サイトからパソコンに取り込んだ楽曲データをMDに転送することができるのだ。再生には別にMDプレーヤーが必要だが、ネットワークウォークマン風にも使いこなせてしまうのである。ソニーの製品だけあって、PIT-INは単なるパソコン周辺機器に止まってはいないようだ。


製品には音楽管理ソフト「Sonic Stage 3.1」が付属。インターネットの音楽配信サービスを利用して、MDなどに音楽データを転送できる Sonic Stage 3.1ではCDからリッピングした楽曲データをMDへ転送することが可能。ネットワークウォークマン風の使いこなしにも対応する

関連情報

URL
  製品情報
  http://www.ecat.sony.co.jp/computer/drive/products/index.cfm?PD=21291&KM=DS-HMD1
  Sony Drive
  http://www.sony.jp/


(斉藤成樹)
2005/06/29 10:56
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.