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　パナソニックコミュニケーションズのネットワークカメラ「BL-C31」は、インターネット上に動画データを配信できるだけでなく、家族の様子を確認したり、あるいは防犯用途にも利用できる多機能製品だ。

　今回試用したBL-C31はIEEE 802.11b/gに対応した無線LAN機能を搭載したモデル。機能は同等で、有線LAN専用の「BL-C11」も同時リリースされている。右肩部に小型バーアンテナがない点を除けば、デザインはほぼ共通だ。なお、今回試用したモデルは技術試作機のため、製品版とは仕様が一部異なる場合がある。

　外観は上部が丸められた箱形。リング状ベゼルの中央にカメラを収めた球形のケースがはめこまれており、ちょうどトラックボールを立てかけたように見える。小さなスピーカーユニットを思わせる重量感のあるデザインだが、約200g（BL-C11は約170g）と意外に軽く、壁や天井に取り付けても落下の不安はない。

　前面にはカメラの右下にプッシュボタンを兼ねたインジケータランプと赤外線センサーが縦に並んでいる。底面には無線LANと有線LANの切り替えスイッチやLANコネクタと電源コネクタ。三脚などに固定するためのネジ穴は背面と底面に用意されている。

　撮像素子は1/4インチ、32万画素のCMOSセンサーを採用。筆者の見たところではCMOSセンサーにありがちなくすみがないナチュラルな発色という印象だった。画角は左右43度、上下32度。1度に見渡せる範囲は広いとは言えないが、歪みがなく、自然な遠近感をもった映像が得られる。


背面には三脚用ネジ穴と、壁に取り付けたネジなどに引っかけるための穴。下部には切り欠きがあり、LANケーブルや電源ケーブルを真後ろに出すことができる	底面の凹んだ部分に無線・有線切り替えスイッチ、LANケーブル用コネクタ、電源用コネクタが配置されている。フロントパネル側には三脚用のネジ穴がある

Webブラウザで表示したオープニング画面。管理者としてログインするにはあらかじめ登録したユーザー名とパスワードを入力する必要がある

　カメラを収めた丸いケース部分は二重構造になっていて、外側が左右、内側が上下に回転することでパン、チルトを実現している。範囲は左右±50度、上へ10度、下へ40度。カメラ自体の画角と合わせると左右143度、上下82度が全視界だ。球形ケースの回転は素早く滑らか。音も気にならないほど静かだ。まるでアニメに登場するロボットのモノアイのようである。なかなか愛嬌のある動きなので、眺めていると退屈しない（笑）。

　個人的にちょっと残念だったのは撮影距離が50cm以上と、クローズアップ撮影を苦手としている点だ。もっとも、斜め下方向の視野を重視した設計からもわかるとおり、壁や天井など比較的高い場所に設置し、室内を見下ろすように映し出すという用途を前提にしているようである。極端な接写ができなくても欠点とはいえないだろう。

　このカメラの特徴の1つは暗い場所にも対応できるという点だ。周囲の光量が不足すると自動的に「カラーナイトビューモード」へと切り替わり、わずか1ルクスの照度で撮影が可能だという。ちなみに普通の室内は300ルクスから400ルクス前後といわれている。1ルクスといえば、ほぼ真っ暗に近い状態だ。

　試しに部屋の照明を小さな常夜灯だけにして撮影してみたところ、被写体のディテールは映し出されているし、はっきりとではないが色も見分けられた。カラーナイトビューの名前はダテではないようだ。これなら夜間の暗い店舗内や室内の監視、また子どもやペットの寝顔を撮影するのにも利用できるだろう。


部屋の明かりを消し、小さな常夜灯の光だけで撮影。画質は荒れているが、被写体の形や色が見分けられる。「カラーナイトビューモード」の威力だ	高解像度の640×480モード。最短撮影距離ギリギリまで寄ったため少々ピントが甘くなっているが、1メートルほど離れればクッキリした映像が得られる

センサーのしきい値と感度の設定画面。数多くの機能をカバーするため、上部のタブと左側の項目を組み合わせた、少々複雑なメニュー構成となっている

　BL-C31には、撮影している室内の動きを検出するために2つのセンサーが搭載されている。これを利用して、例えば室内に誰かが入ってきたら、その場面の映像をメールで送信するという動作を自動的に行なうよう設定できるのだ。また、これらのセンサーの検知履歴を1日に1回、一括してメールで知らせてくれる「おしらセンサー」という機能も搭載している。

　センサーの1つは「人感センサー」と呼ばれる、赤外線放射を利用した一種の温度センサー。人やペットの体温に反応するのだ。カメラ本体から見て左右約30度、上下約85度、距離5メートル前後の範囲に人が入れば、ほぼ確実に検出できるようである。ただ、周囲の気温が体温に近い場合や距離が遠すぎる場合、あるいはガラス越しといった条件は苦手としているようだ。もう1つは動作センサー。こちらは撮影している画像データの変化を検出する。遠距離やガラス越しの被写体にも有効だが、風に揺らぐカーテンなど、関係のない動きに反応してしまうことがある。

　どちらも一長一短あるが、BL-C31では2つの長所を組み合わせることで高い精度を実現しているのだ。用途に合わせてしきい値と感度を細かく調整できるので、例えば小さなペットの動きは無視するといった設定も可能だ。家族の帰宅を確認するといった用途のほか、防犯などにも役立ちそうである。

　BL-C31の操作や設定は基本的にパソコンから行なうことになるが、専用のコントロールソフトは必要ない。Internet ExplorerにActivXコントロールを追加し、Webブラウザ上で操作するという形を取っているからだ。カメラのIPアドレスをブックマークしておけば、インターネット上のページを見るのと同じ要領でカメラが扱えるのである。

　メインとなるビューワー画面は左に操作バー、右に画像表示エリアという構成。操作バーには、カメラのパン・チルトを制御する4方向ボタンをはじめとして、8カ所までの方向プリセットボタン、動画、静止画モードの切り替え、解像度や画質の調整といった機能が用意されている。スナップショットを保存するためのボタンは画像表示エリアの上だ。

　カメラはクリック＆センタリングと呼ばれる方法でも方向を変えられる。表示画像上の中心にしたい位置にマウスポインタを移動させ、左ボタンをクリックするだけで良いのだ。方向ボタンを使うジョイパッド的な操作に不慣れでも、これなら1発操作で見たい方向にカメラを向けることができるだろう。

　表示画像上でマウスのホイールを回転させるか、あるいは右ボタンをクリックすると、画像の中央部分を最大10倍にまで拡大することができる。光学ズームではなく、画像の一部を拡大するデジタルズーム方式なので多少の画質低下は避けられないが、操作に対してリニアに反応するレスポンスの良さが魅力だ。


ビューワー画面は左に操作バー、右に画像表示エリアという構成。カメラの方向変更とズームは画像上のマウスクリックやホイールの回転で操作できる	最大10倍まで拡大できるデジタルズームを搭載している。画質は落ちてしまうが、レスポンスが良好で実用性は高い

　このほか、曜日や時間を指定して定期的に映像を保存する機能や、画像データをメールで送信したりFTPサーバーにアップロードする機能などを搭載。一部機能はインターネットサービス対応のテレビシステムや携帯電話からでも操作できる。

　また、サーバー機能を内蔵しているので、設定を済ませてしまえばパソコンの電源を切っていても単独で動作する。松下電器産業が運営する「みえますネット」などのダイナミックDNSサービスを利用すれば、ライブカメラとして撮影した映像データを手軽にインターネット上に公開することもできるのだ。

付属のセットアップユーティリティ。「カメラセットアップ」を選ぶとIPアドレスなどの初期設定を自動的に行なってくれる

　なお、付属CD-ROMにはIPアドレスなどの初期設定を自動的に行なってくれるユーティリティのほか、撮影した画像をパソコンに録画するソフトの試用版が収められていた。

　カメラの性能とは直接関係ないが、最後にBL-C31/C11のユニークな機能を紹介しておこう。「かくれンズ」だ。本体前面のボタンを押すとレンズ部分がボディ内側に向けて回転し、文字通り隠れてしまうのである。当然、この機能が有効な間は一切撮影できない。撮られる側のプライバシー保護に役立つだけでなく、レンズをホコリや汚れから守ることもできるという一石二鳥の機能だ。

　BL-C31はコンパクトなボディーに数多くの機能を詰め込んだ本格的なパソコン周辺機器である。しかし「人感センサー」、「おしらセンサー」、「かくれンズ」など、パナソニックというより、むしろナショナルブランドを思わせる機能とネーミングを採用しているあたり、家電製品のような親しみやすさを感じてしまう。家族全員でパソコンを使うファミリーユーザーにお勧めしたい一品だ。

■ ＵＲＬ
　製品情報
　 http://panasonic.co.jp/pcc/products/hnetwk/lineup/camera/bl-c31.html
　パナソニックコミュニケーションズ
　 http://panasonic.co.jp/pcc/

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（斉藤成樹）
2005/07/27 10:58

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