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ROM領域にアプリケーションを内蔵したリコー「ハイブリッドCD-R」


 リコーから発売されている「ハイブリッドCD-R」は、アプリケーションなどを収録するROM部分と約600MBの空き容量を持つCD-R部分を、1枚のディスクにまとめたアイテム。早い話、CD-ROMとCD-Rの特徴を合体させた製品だと考えれば良いだろう。

 CD-ROMとCD-Rが合体したことで、これまでなかった新たな活用方法が考えられるようになる。例えば、CD-Rにデータを書き込むためにはライティングソフトが必要だが、そのライティングソフトをCD-ROM部分にあらかじめ収録しておけば、ライティングソフトがない環境でも書き込みが可能となる。また、ROM部分に収録したソフトウェアのバージョンアップデータをCD-R部分に追記して使うといった活用法もあるだろう。これまで「ソフト」「メディア」が別々に必要だったのが、本製品ならこれ1枚で足りてしまうというわけだ。

 リコーではこれらの技術を使ったCD-Rを「RR」シリーズと称し、いくつかの種類の製品を発売している。本稿執筆時点では、パスワード付きCD-ROMが作成できる「KIMITSU(キミツ)」、インターネットサービスのログインIDを保存して持ち歩ける「NetKeyholder」、電子アルバムソフトを収めた「Moobum(ムーバム)」の3製品が発表されている。

 今回はその中から、個人情報保護に有効とされるセキュリティ製品「KIMITSU(キミツ)」を試用してみたい。


リコーの「KIMITSU」。購入価格は600円 RRメディアの外観は、通常のCD-Rと変わらない。下部には「COMPACT DISC Recordable」のマークも見られる

ライティングソフトを内蔵し、パスワード付きのCD-Rが作成可能

RRメディアを挿入すると表示される起動画面。右下にはRRメディアのロゴマークが表示されている
 KIMITSUは、あらかじめCD-ROM部分にライティングソフトと暗号化ソフトが書き込まれており、これ1枚でパスワード付きのCD-Rを作成することが可能なメディアだ。盗難・紛失などでメディアが他人の手に渡っても、パスワードがない限りファイルを参照できないので、情報漏えいの可能性は極めて低くなる。しかも、ライティングソフトを別途用意する必要がないので、これ1枚で書き込みから閲覧まで完結させられるのが嬉しい。

 では、実際の使い方を見ていこう。本製品をPCのCD-R対応ドライブに挿入すると、まずCD-ROM部分からライティングソフトが起動する。ウィザードに従って書き込みたいファイルを指定すると、ファイルが自動的に圧縮され、同製品のCD-R部分に書き込まれる。このあたりの流れは、一般的なライティングソフトの挙動と変わらない。ちなみに書き込み時にはパスワードのほか、データの有効期限の設定が行なえる。


初回利用時にはドライバインストールが必要。インストール後はPC本体の再起動が必要になる 「KIMITSU」のメイン画面。ここで書き込みたいファイルを指定する

 書き込みが完了すると、PCからは通常のCD-Rとして読めるようになる。また、最大20回の追記が可能となっており、追加したデータはタブを用いて切替が可能となっている。

 書き込み時に指定したデータの有効期限を過ぎると、ファイルの中身を見ることができなくなる。具体的には、ファイルをハードディスクに展開するためのボタンが出現しなくなり、ファイル名を参照することしかできなくなるため、期限を区切った形でのデータの配信などに威力を発揮しそうだ。


「KIMITSU」はパスワード以外に有効期限も設定できる。ちなみに、パソコンの日時設定を変える程度では、有効期限を過ぎたデータを取り出すことは不可能だった データを書き込んでいるところ。一般的なライティングソフトと流れはほとんど変わらないが、「データの暗号化」のプロセスがあることに注目

輸送時のセキュリティ強化に大きなメリット

 単体でパスワード付きCD-ROMが作成できるのは便利だが、使い勝手にかなりクセがある。1つは、CD-Rにどれだけの量のデータを書き込めるのか、ドラッグ&ドロップするまで分からない点だ。

 本製品は書き込み時に自動的にファイルが圧縮されるため、エクスプローラ上で表示される容量通りに書き込むことができない。このため、1回の書き込みでCD-ROMの容量ギリギリまで使い切る、といった利用方法には向いていない。むしろ、20回までのデータ追記が可能であることから、小容量のデータを次々書き足していくという使い方を前提にしたほうが良いだろう。


マイコンピュータから本製品を参照したところ。通常のリムーバブルメディアとして認識される。ボリュームラベルも自由に付けられる 「KIMITSU」内部をエクスプローラで参照したところ。「ドキュメント」フォルダにはPDF形式のマニュアル、「Launcher」には各種ドライバやアプリケーションが収録されている。書き込んだデータはフォルダ「SessionXX」(「XX」部分は追記された回数を表す数字)に圧縮されて記録される

 もう1つは、書き込まれたファイルの内容を見るためには、必ずハードディスクに展開しなければならない点。本製品では、データを書き込んだ時点で1つの圧縮ファイルにまとめられているので、通常のエクスプローラから参照できないのは仕方がないとしても、内容を確認するたびにハードディスク上にコピーが残ってしまうのは、セキュリティ的に気になるところだ。例えば、ハードディスクにコピーしたファイルをCD-R排出時に消去するかどうかの選択ができれば、使い勝手はより向上するだろう。


コピーしたいファイルを選択し「ハードディスクに展開」ボタンをクリックするとファイルがコピーされる。なお、有効期限を過ぎると「ハードディスクに展開」ボタンが表示されなくなる(画像右)


 そういった意味では、むしろ本製品は重要データを安全に“輸送”するためのツールとして使用するべきだろう。例えば、支店や取引先に対してマスターデータを配布し、有効期限内にハードディスクへ展開してもらう、という使い方だ。輸送中に盗難に遭ったり、紛失したとしても、パスワードがわからない限りデータの読み取りは不可能なので、第三者への漏洩の可能性は低くなる。ライティングソフトを内蔵しているので、CD-R領域にデータを追記して送り返すこともできる。ネットワーク経由では送信が困難な数百MBのデータの配信に威力を発揮するだろう。


データ展開時には、機密データである旨を知らせるアラートが表示される 展開時にはパスワードが必要となる。ただし、ファイル名自体はパスワードがなくても参照することが可能

アプリケーション内蔵のメリットがある場合にオススメ

 「KIMITSU」は1枚あたり約600円と、CD-Rとして見た場合は少々高額な印象は否めないが、セキュリティ機能付きのライティングソフトが同梱されている点を踏まえると、かなりリーズナブルであると考えることもできる。

 もっとも、競合するソリューションが多いのも事実だ。例えばBHA社のライティングソフト「B's Recorder GOLD8 Security(標準価格6,000円)」は、パスワード付きCD/DVDの作成機能を備えているほか、パスワード保護されたデータとそうでないデータを共存させることもできる。機能的にまったく同一というわけではないので一概に比較はできないが、こちらの場合は市販のCD-Rをそのまま使えるため、枚数が多い場合は選択肢に入ってくるだろう。

 また、単に大容量データの安全な輸送ということであれば、ハードディスクやフラッシュメモリにセキュリティソフトを組み合わせるといった方法のほか、専用線を用いた通信という手段も考えられる。本製品の場合、アプリケーションを内蔵するという強みがあるわけだが、現実的には用途やコストをみながら最適なソリューションを選ぶことになるだろう。

 今回紹介した「KIMITSU」を含むリコーの「RR」シリーズは現在までに3製品が発表されている。現状ではまだニーズよりもシーズが先行している感は否めないが、これまでになかった製品だけに、さまざまな応用例が出てくることが考えられる。ホームページ上で将来の登場が予告されているDVDバージョンも含め、製品の特徴を生かした展開を期待したい。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/media/rr/
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/


(kizuki)
2005/08/24 10:56
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