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インストール不要! USBメモリから起動するファイル完全削除ツール


「USBから使える クイック!ファイル抹消」。価格は11,340円。Windows XP/2000 Professional SP4以降に対応し、複数クライアント用のコーポレートエディションも用意されている
 今回紹介するアイテムは、ちょっと変わったソフトウェアだ。製品の箱を開けるとUSBフラッシュメモリが1つ、USB延長ケーブルが1本、あとはマニュアル、クイックガイド、ユーザー登録ハガキなど、ペーパー類だけが出てくる。パッケージソフトではお馴染みのインストールディスクが見あたらない。それもそのはず、ソフトウェアはUSBフラッシュメモリ内に組み込まれていて、そのままパソコンのUSBポートへ差し込むだけで起動できるのである。これなら常に持ち歩けるし、必要になったらサッと取り出せる。まさにクイックな使い心地のアイテムだ。

 ライフボートの「USBから使える クイック!ファイル抹消」は、文字通りファイルを消すためのユーティリティソフトだ。しかし、一般的な「削除」ではなく、あえて「抹消」という言葉を使っている点に注意していただきたい。ただ消すのではなく、跡形もなく消し去ってしまうのである。なぜファイルを消すために専用のツールを利用する必要があるのか。言うまでもなくセキュリティ確保のためだ。

 一般的なパソコンのファイルシステムには、実際にファイルを記録しているエリアとは別にファイル情報を管理しているエリアがある。ちょうど倉庫と在庫リストの関係だ。問題は、普通にファイルを削除しても倉庫には手を加えられず、在庫リストから外されるだけだという点。つまり、削除して消えたように見えても、データそのものはディスク上に丸ごと残っているのである。この痕跡を探し出して元の状態に復元するのはそう難しいことではないという。現に、ゴミ箱を空にしたあとでもファイルを復活できるユーティリティソフトが存在しているのだ。

 自宅で個人的に使っているパソコンなら、消してしまったファイルのことまでいちいち気にする必要はないだろう。しかし、持ち歩くモバイルノートは紛失や盗難の可能性があるし、デスクトップでは処分したり売り払うときなど、削除済みファイルからの情報流出に注意する必要がある。顧客情報や部外秘の情報を扱うようなビジネスユースではなおさらだ。

 筆者の場合、外出中に知人のパソコンを借りることがあるため、こういったファイル抹消ソフトを利用する機会が多い。借りておいて用が済んだら自分のファイルを消しまくると言うのも、なんだか相手を信頼していないようで失礼に当たるのではないかと思われるかもしれない。しかし、もしそのパソコンから何らかの情報が漏洩したとしたら、かえって相手に迷惑をかける結果になりかねないのである。情報の削除はパソコンを借りる側にとってマナーなのではないかと考えている。


パッケージの内容はUSBフラッシュメモリとUSB延長ケーブルのほか、マニュアルなどのペーパー類のみ。インストールディスクがないのがちょっと寂しい(笑) VTEC社製のペン型USBフラッシュメモリ「V-Drive」に独自のソフトウェアを組み込んだ製品となっている

オープニングロゴに続いて表示されるメニュー画面。パソコンにインストールする場合は最下部の「製品のインストール/アンインストール」ボタンを利用する
 「USBから使える クイック!ファイル抹消」の使い方は普通のフラッシュメモリと同じように、USBポートに差し込むだけである。Windows XPでは動作選択ダイアログボックスが表示されるので、「プログラムの実行」を選べば良い。最初に起動するボタン式のメニューからは各機能の呼び出しのほか、通常のソフトのようにパソコンへのインストールを選ぶこともできる。起動方法に違いはあるが、使い勝手はUSBからでもインストールした状態でも同じだ。

 メニューボタンの1番上にある「ファイルを選んで抹消」を選ぶと、メイン画面が表示される。左側にフォルダ一覧、右側にファイルの一覧というエクスプローラ風のデザインだ。扱い方もエクスプローラと共通しており、消したいファイルをポイントしてマウスの右ボタンをクリックするという形式。複数のファイルやフォルダを1度に処理したい場合は、ドラッグ&ドロップの要領で下部のパネルに移動させるという操作法も使える。

 上部のツールバーに並んだボタンを利用すれば、ゴミ箱や空き領域、またドライブ全体の抹消を選択することもできる。筆者が便利だと思ったのは「空き領域の抹消」。Windowsのディスククリーンアップを実行したあと、「空き領域を抹消」でドライブの現在使われていないエリアにあるデータの痕跡をクリアするのである。この作業を定期的に行なっていれば、情報流出の危険性は最低限に抑えられるはずだ。


メイン画面はエクスプローラ風のデザイン。マウスの右ボタンクリックやドラッグ&ドロップなど、操作性もエクスプローラに似ている ファイル検索機能も搭載されている。ファイル名、作成日時、サイズ、拡張子などの指定が可能だ

3種類の抹消方式が用意されている。特に重要なデータ以外なら処理速度が速い「高速セキュリティ」がお勧め
 ファイル抹消の方式には数多くの種類がある。なかには十数種類の方式をサポートしたユーティリティソフトもあるようだが、多すぎてもどれを使えば良いか迷ってしまうことにもなりかねない。そこで、「USBから使える クイック!ファイル抹消」では、必要にして十分な3種類の方式に絞り込むことで実用性を高めている。

 1つ目の「高速セキュリティ」は、ファイルが記録されていたエリアを別の無意味なデータで上書きしてしまうというもの。一般にはゼロクリアと呼ばれる方式だ。ディスク上に残ったわずかな磁気を読み取る特殊な装置を使えば復元できる可能性があるとのことだが、普通の用途ならこれで十分と言えるだろう。

 2つ目の「完全セキュリティ」には、「DoD5220.22-M」という規格名が付けられている。かのペンタゴン、米国国防総省が採用する軍事機密レベルに対応した方式だ。ゼロクリアに手の込んだ処理を加え、特殊な装置をもってしても読み取れないレベルを実現しているそうである。

 最後の「最高セキュリティ」は、ピーター・グートマン氏が提唱したアルゴリズムによる、文字通り最高レベルの方式だ。実に35回にも及ぶ処理を繰り返し、データを跡形もなく消し去る。理論上、どんな手段を使っても復元は不可能とのこと。オーバースペックと言ってしまえばそれまでだが、ここまで徹底した方式が用意されているのは心強い。

 手軽さと使いやすさについては高いレベルにある「USBから使える クイック!ファイル抹消」だが、この手のソフトの宿命として処理時間がかかるという点は覚えておいていただきたい。前述したように、普通のファイル削除作業は管理情報を書き替えるだけなので、かなり大きなファイルでもあっという間に終了してしまう。

 ところが本製品では、データが格納されていたエリアの隅々にまで手を加えるため、それなりに時間がかかってしまうのである。ファイルのサイズが大きくなれば、その分だけ多くの時間がかかるという点も普通の削除とは異なる点だ。ドライブの性能やデータが格納されている状態によって変わるため一概には言えないが、筆者の個人的な感覚では「高速セキュリティ」でファイルコピー程度、「完全セキュリティ」ではその数倍、「最高セキュリティ」では、さらにその数倍以上の時間を必要とするようである。


抹消処理中は進捗状況を知らせるウィンドウが表示される。高レベルのセキュリティで大きなファイルを処理すると相当な時間がかかることも 処理終了後には抹消証明書を作成して保存、印刷することができる。このほか処理前後のディスクイメージを表示させることも可能だ

 「USBから使える クイック!ファイル抹消」は、VTEC社のペン型USBフラッシュメモリ「V-Drive」をベースにしているようだ。側面にロゴの入ったステッカーが貼り付けられている点を除けば、外観は通常の製品と変わらない。もちろん、プログラムを組み込んだエリア以外はパソコンからリムーバブルメディアとして認識され、普通のフラッシュメモリと同じようにデータを記録することもできる。

 本体は全長8cm、厚さ1cmほど。上端にはペンのようにポケットに挟み込めるクリップとストラップなどを通すための小穴が開けられている。横に赤い光の点滅でデータ転送状態を知らせるインジケータ。その隣には不用意な書き込みを防止するスライド式のプロテクトスイッチがある。これは本体に埋め込まれるように配置されているので、爪の先よりはボールペンなどを使った方が確実に操作できるようである。

 ちなみに製品パッケージをよく見ると、発売元のライフボートや販売元のメガソフトと並び、開発元としてアメリカン・メガトレンドという会社が名を連ねている。「American Megatrends, Inc.」。三角形のマークを見ればピンとくる自作派パソコンユーザーも多いハズ。BIOSで有名な、あのAMIだ。


サイド部分にあるスライド式のライトプロテクトスイッチ。大きめのインジケータはデータ転送時に赤く点滅する 付属のUSB延長ケーブルはプラグ部分が透明なタイプだった。製品名をプリントしたステッカーはちょっと違和感があるかも(笑)

関連情報

URL
  製品情報
  http://www.lifeboat.jp/products/uqfm/uqfm.html
  ライフボート
  http://www.lifeboat.jp/


(斉藤成樹)
2005/08/31 11:01
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