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いつでもどこでも暗記に役立つコクヨのデジタル学習ツール「memoribo」


コクヨの「memoribo(メモリボ)」。標準価格は7,140円。今回試用したブラックモデルはUSBプラグのカバーがシルバーでボタン類がブラック。他のカラーはこれらの部分がホワイトで統一されている
 穴のあいた小さな紙片を100枚ほどリングでまとめた「暗記カード」。誰でも1度くらいはお世話になったことがあるだろう。さほどマジメな学生ではなかった筆者でさえ、愛用していた暗記モノの定番アイテムだ。今でも電車やバスの中で真摯にカードをめくっている人を見かけると、妙に懐かしい気分になってしまう。

 今回紹介するコクヨの「memoribo(メモリボ)」は、この暗記カードのデジタル版だ。手のひらにすっぽり収まる小さなボディながら記憶容量は暗記カード20冊分。カード2,000枚に相当する問題と答えのデータは、USBで接続したパソコン上の専用アプリケーションで管理できる。移動中の車内など、空いた時間にいつでもどこでも使える学習ツールである。

 本体の大きさは一般的なUSBフラッシュメモリの倍といったところだろうか。98×40×15mm(横×縦×厚さ)、重さは電池を含めて50gほどだ。ホワイト、ブラック、ブルー、グリーン、ピンクと5色のバリエーションが取り揃えられており、何気なく手に取るとコンパクトタイプのMP3プレーヤーと間違えてしまいそうになる。

 ボディの片端はキャップになっていて、取り外すとUSB端子が現われる。この部分をUSBフラッシュメモリのようにパソコンのUSBポートへ直接接続できるほか、付属の延長ケーブルを使って手元に引き出しても良い。使い勝手はUSBフラッシュメモリやMP3プレーヤーなどとまったく同じだ。問題と答えはモノクロのドットマトリクス液晶ディスプレイに交互に表示される。2バイト文字で最大8桁3行。16、24、48ドットの3サイズから選べる明朝体風の見やすい文字だ。操作は独立した電源ボタンと設定ボタンに4方向ボタンと中央の選択ボタンというシンプルなデザイン。いずれも軽いクリック感があり、指先で押しやすい。


ボディ片端のキャップを取り外すとUSBプラグが現われる。そのままパソコンに接続しても良いし、付属の延長ケーブルを使っても良い 裏蓋をスライドさせてCR2032ボタン型リチウム電池を2個入れる。コンビニなどでも手に入る一般的な電池だが、ランニングコストが気になるところ

設定画面では出題順序のシャッフルや自動表示、また問題と答えを入れ替えるといった多彩な表示モードが選べる
 製品にはあらかじめは旺文社の「英単語ターゲット1900」から抜粋引用したデータが収録されていたので、何はともあれ使ってみることにする。4方向ボタンの左右でカードを前後に送り、中央の選択ボタンを押せば答えが表示される。ちょっと指先を動かすだけでテンポよく暗記作業を進められるというのはなんとも快適だった。ポイントは、この操作が片手だけで可能だという点だ。

 ホンモノの暗記カードは片手でカードを支え、もう一方の手でページをめくる両手操作(?)が基本だったが、メモリボは吊革や手すりにつかまりながらでも完璧に操作できる。さらに、スライドショーのように3秒ほどのインターバルをおいて問題と答えを自動表示していくモードを備えているので、手元を気にすることなく暗記に集中しやすい。表示する順序をランダムにしたり、問題と答えを入れ替えたり、あるいは覚えてしまったカードを表示させないようにするなど、多彩な出題モードが選べるという点もデジタル系アイテムならではだろう。単なる暗記カードのシミュレーターには終わっていない。

 細かい話だが、視線の移動がないのも筆者が気に入ってしまった点だ。暗記カードの場合、まずカードの表に目を通し、めくった裏側へ視点を移すわけだが、一夜漬け後の朝には、この動作がやけに負担だった記憶がある。ただ一点を見つめていれば良いメモリボの方が疲れた目には優しいのではないだろうか。

 ちょっと残念だったのはディスプレイにバックライトがないことだ。地下鉄の車内など、周りの人の位置によっては照明が遮られ、手元が暗くなってしまうことがあるからだ。とはいえ、コントラストは5段階に調整できるし、モノクロ液晶特有のエッジが効いた表示なので、本や雑誌が読める程度の明るさなら視認性に問題はなさそうである。


通常の16ドット表示。英文なら48文字まで表示できるので、単語だけでなく定型文の学習にも応用できるだろう ディスプレイに問題が表示されている状態で4方向ボタンの中央にある選択ボタンを押すと、その問題に対応する答えが表示される 最大の48ドット表示。4方向ボタン左上の設定ボタンを押すごとに、16/24/48ドットと表示フォントが切り替わる

 メモリボ本体内のデータをパソコンを利用して管理するのが付属CD-ROMに収録された「ソフトメモリボ」だ。Windows 98SE以降に対応したメモリボ専用アプリケーションである。メインウィンドウは左側にカード、右側にその内容という視覚的にわかりやすい構成。表計算ソフトのセルを操作するような要領で、問題と答えを書き込んだり編集したりすることができる。また、コクヨの製品ホームページからデータをダウンロードし、そのまま利用しても良い。原稿執筆時点では漢字、日本史、世界史と3種類のメモリボ用カードファイルが無償で提供されていた。

 もちろん、ユーザー自らソフトメモリボ上でカードを作成することもできる。暗記カードを使ったことがあればご存じだろうが、問題と解答を書き込むという作業自体が暗記に役立つので、既成データを使うより実践的な利用法といえるだろう。セルを1つずつ埋めていくのに手間取るようならワープロやエディタなどでCSV形式のテキストファイルを作成し、一気にインポートするという手も使える。パソコンとの接続はUSB 1.1だが、やりとりするデータは大きくはないので、速度面での不満を感じることはないだろう。

 ソフトメモリボにはデータ管理以外にもう1つの機能がある。それは、パソコンの画面上で暗記カードをシミュレートできる点だ。メモリボと同じく、シャッフルなどの表示モードをサポートするほか、自動表示のスピードを3段階に変更できる。自室ではパソコンでこの機能を利用し、外出時にはメモリボを持ち歩くという、マルチな活用も可能なのだ。


ソフトメモリボの操作は表計算ソフトを扱う要領。セル内を直接書き替えられるほか、編集ボックスからデータを入力することもできる データ転送ウィンドウ。パソコン内に保存されているカードの一覧から必要なデータを選び、メモリボ内に転送。書き戻しや削除も可能だ

ソフトメモリボに搭載されている暗記カードモード。ウィンドウ下部に用意されているボタンでメモリボと同じように操作できる 暗記カードモードはメモリボと異なり、問題と答えの同時表示が可能。また、自動表示のインターバルを3段階に調整することができる

 メモリボが表示できるのは、かな、アルファベット、記号などのほか、JIS第一水準とJIS第二水準に含まれる文字に限られている。また、16ドットや24ドットフォントでは複雑な漢字が省略された表記になってしまうことがあるようなので、漢字検定対策など、難解な文字が頻出するような問題には注意が必要だ。

 少々気になるのは電源のコスト。メモリボはCR2032ボタン型リチウム電池2個で連続300時間使用可能だ。平日、通勤や通学の途中に1時間程度使うとすれば1年以上はもつ計算だが、CR2032はコンビニエンスストアなどで購入すると1個300円近くする。使用頻度が高ければランニングコストは無視できなくなるかもしれない。もっとも、この電池、安売り店や量販店では1個100円程度で入手できる場合があるようなので、見かけたらいくつかまとめ買いしておくという手もある。

 パッケージの内容はメモリボ本体、CD-ROM、USB延長ケーブルとCR2032ボタン型電池2個。パソコンにソフトメモリボをインストールすればすぐに使い始められる。短めのハンドストラップも付属しているが、ちょっと空いた時間に素早く使えるよう、もっと長いストラップを取り付けて首から提げるのも良いだろう。

 暗記という作業を必要としていない人にとっては、メモリボの7,140円という標準価格は割高に感じられるだろう。パソコン関連機器として見れば決して多機能とはいえないし、容量や表示の制限があるため、応用範囲は広くなさそうである。しかし、誰もが手軽に使える電子文具、学習ツールとしての完成度は満足できるレベルと言って良いのではないだろうか。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.kokuyo.co.jp/stationery/e-bungu/memoribo/
  コクヨ
  http://www.kokuyo.co.jp/


(斉藤成樹)
2006/01/25 11:15
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