Broadband Watch logo

周辺機器をケーブル1本でまとめて利用! 汎用ドッキングステーション


 ターガス・ジャパンから発売されている「ACP5001APZ」は、ノートPCなどと組み合わせて利用できる汎用のドッキングステーションだ。外部ディスプレイやマウス、キーボード、スピーカー、LANケーブルを本製品に接続しておけば、1本のUSBケーブルを経由してすべての機器がノートPCから利用できるというユニークな製品である。


USBハブ+LANアダプタ+サウンドカード+サインはVGA?

「ACP5001APZ」本体。実売価格は17,500円。上面の左右2箇所に滑り止めのウレタンが貼られており、ここにノートPC後部を載せて使う

背面にはコネクタがズラリと並ぶ
 ACP5001APZは、1本のUSBケーブルでノートPCと接続し、さまざまな機能拡張を実現する汎用のドッキングステーションだ。一口で機能を説明するのは難しいが、USBハブをはじめ、USBポート経由でLANに接続するアダプタや、USBのオーディオアダプタ、さらにUSBをVGAに変換するディスプレイアダプタを一体化させたデバイスだと考えれば良い。モバイルタイプのノートPCにオプションで用意される、据置用ドッキングステーションの汎用タイプという位置付けだ。

 本製品の背面には以下のコネクタが装備されており、さまざまな周辺機器を接続できる。

・USB 2.0×2
・USB 2.0パワーポート×2
・オーディオジャック(IN、OUT)
・シリアルポート(D-Sub9ピン)
・ディスプレイ(D-Sub15ピン)
・LANポート(100BASE-TX)

 通常であれば、ノートPCに接続する周辺機器やLANケーブルを本製品にまとめて接続しておけば、ノートPCを持ち出す際に1本のUSBケーブルを抜くだけで済む。モバイルノートをデスク上で使用する際、さまざまな周辺機器やケーブルを接続する手間をわずらわしく感じているユーザーにとっては、非常に魅力的な製品だと言えよう。

 USBポートには、マウスやキーボード、USBメモリやHDDなどの記憶装置、さらにプリンタやスキャナなど、一般的なUSB機器の接続が可能だ。ユニークなのは「USB 2.0パワーポート」で、バスパワーでの動作が困難なポータブルHDDなどを接続するために、USBの制限を越えた1Aの電流を供給する特殊な仕様となっている。

 特徴的な機能としては加えて、「グローバルサスペンドモード」と「オールウェイズオン機能」が挙げられる。前者は、ノートPCのサスペンドモードと連動して、本製品もサスペンドに入る機能。後者は、ノートPCとの接続が切れた場合でも、USBポートに電源を供給し続ける機能だ。ノートPCを接続しない状態で、iPodなどの携帯音楽プレーヤーの充電を行ないたい場合に便利だ。


4つのUSB 2.0ポートのうち、色が黒い右側の2ポートはUSBの制限を越えた1Aの電流を供給する。ポータブルHDDなど消費電力の大きな機器の接続に便利だ 本製品を接続するとパソコン側のスピーカーは強制的にオフになる。オーディオOUT(左から2番目のコネクタ)に、ヘッドホンや外付けスピーカーを接続すると良い。シリアルポートはモデムの接続をサポートする 本体左側面には電源ジャックと、ノートPCとの接続に利用するUSB(Bコネクタ)を備える

接続互換性は高い。高速機器の利用には注意

モバイルタイプのノートPCとの組み合わせが前提ということもあり、幅はB5サイズ相当

ノートPCの後部に敷いたところ。ノートPC底面に空気の流れができることにより、放熱性も高まるとしている
 本製品で気になるのは、接続した周辺機器が一体どの程度のパフォーマンスで利用できるかという点だろう。1本のUSBケーブルですべての機器との通信を行なう以上、当然ながら帯域は取り合いになる。ケーブル1本でまとめて着脱できるのがいくら便利でも、接続の互換性が低かったり、通信速度が遅くてもたつくようであれば話にならない。

 というわけで、筆者の環境で試した結果を1つずつ紹介していこう。まず、LANについてだが、通常の利用形態においてまったく問題がみられなかった。Webブラウジングもメールも、PC本体のLANポートを使っている場合と体感的に変わらないパフォーマンスを発揮する。LAN経由でDivX形式の動画データの再生も試みたが、コマ落ちらしき症状はまったくなかった。

 USBポートについては、マウス・キーボード・USBメモリ・HDDをテストしてみたが、こちらも直結状態と変わらない使い勝手であった。マウスについては、標準的な3ボタンマウスのほか、ロジクール製マウス「MX510」を同社のユーティリティ「SetPoint」がインストールされた状態で使用してみたが、拡張ボタンもきちんと動作した。仕組みそのものは一般的なUSBハブと同じだと推測されるので、これは当然の結果と言えるだろう。

 USBポート経由の動作で、唯一問題が見られたのはDVD/CDドライブだ。読み出しに関してはまったく問題なく、DVDソフトの鑑賞も問題なく行なえるのだが、B's Recorderを用いてCD-Rへ書き込みを行なった際に何度かエラーが発生した。エラーは毎回発生するというわけではなく、ドライブもきちんと認識されているのだが、直結状態では問題なく書き込めることを考えると、やはり少なからず影響はあるようだ。

 ちなみにメーカー側では、デジカメやスキャナなど複数の高速機器の同時使用は避けるよう推奨している。記録型DVDをはじめ、データ転送にデリケートな機器については注意したほうが良さそうだ。


本製品に各種周辺機器やケーブルを接続し、さらにノートPCとUSBケーブルで接続した状態。USBポート数が少ないノートPCでも同時に多くの機器を使えるメリットがある ノートPCの横に置いて使用することも当然可能だ。USB機器を頻繁に抜き差しする場合はこのほうが便利だろう

外部ディスプレイ出力機能は描画速度に難あり。やや用途を選ぶ仕様

 外部ポートの利用時に、もっとも大きな制限があるのはディスプレイである。

 外部ディスプレイを利用する場合、出力方式は3パターンある。1つは単純にノートPCのディスプレイの内容を外部ディスプレイに出力する「プライマリ」モード。2つ目は、ノートPCのディスプレイと外部ディスプレイに同じ内容を表示する「ミラー」モード。最後に、ノートPCのディスプレイと外部ディスプレイを並べ、つなげて表示する「エクステンド」、いわゆるマルチディスプレイモードである。

 この外部ディスプレイ、仕様上はSXGA(1,280×1,024)までの解像度がサポートされているのだが、描画速度はかなりの制限がある。あくまでも感覚的な数値であるが、解像度をXGA(1,024×768)、表示色数を16ビットカラーに落とした状態でも、フレームレートに換算するとおよそ4fps程度のパフォーマンスしか出せない。マウスカーソルを動かせばワープしまくり、動画は紙芝居レベルの動きである。これがSXGA(1,280×1,024)になると、さらにぎこちない動きになり、実用に耐えない。


本製品を経由し、外部ディスプレイに映像を出力したところ。写真左は同じ画面を並べる「ミラー」モード、右はマルチディスプレイ環境を実現する「エクステンド」モード


 従って、エクセルのワークシートのような静的な画面を表示し、それを参照しながらプライマリ側で作業をするのなら十分に利用可能だが、頻繁に画面の書き換えが発生するアプリケーションの表示は不向きである。Webページのスクロールさえも遅れてついてくるレベルなので、ノートPC側でネットを見ながら外部ディスプレイで動画を鑑賞するといったことは難しい。低解像度のノートPCにおいて、本製品を経由して高解像度の外部ディスプレイで作業するという目的には向かないと言えそうだ。

 ただ、外部ディスプレイを接続した場合でも、前述のLANのスループットや、ノートPC側のディスプレイのパフォーマンスには影響が見られなかった点は率直に評価したい。外部ディスプレイ接続時に他の機器のパフォーマンスにまで影響を及ぼすことがあれば本末転倒だが、さすがにそこまではいかないので、外部ディスプレイが実用に耐えないと判断すれば単純にディスプレイをつながなければ良い。


外部ディスプレイの解像度は、タスクトレイに常駐するユーティリティを用いて設定する。ちなみにこのユーティリティのデザインは「サインはVGA」とほぼ同一 外部ディスプレイ接続時の画面のプロパティ。「TARGUS USB2.0 VGA DOCK DEVICE」として認識されている

利便性の向上に高い効果あり。利用方法にマッチすれば買い

 モバイルタイプのノートPCを持ち運ぶ際、周辺機器の着脱は非常に面倒なものだ。本製品を用いれば、わずか1本のUSBケーブルを着脱するだけで、多数の周辺機器の着脱がまとめて行なえる。1スピンドルのノートPCや、USBポートが少ない古いノートPCを使っているユーザーにとっては、非常に便利な製品だと言えるだろう。

 試用結果からもわかるように、パフォーマンス的にはかなりいっぱいいっぱいの感はある。特に外部ディスプレイの利用時には、その傾向が顕著だ。しかし、ネットの閲覧やメール、ビジネス文書のやりとりでは十分なパフォーマンスが得られるので、あとはそれらがユーザーの使い方にどのくらいマッチしているかという問題だけだろう。過度なパフォーマンスを追求せず、利便性の向上を目的としたデバイスと考えれば、他にない製品ということもあり、非常に魅力的なのは間違いない。

 価格についても、USB経由で外部ディスプレイに出力する「サインはVGA」が単体で1万円弱することを考えると、LANアダプタ機能とUSBハブ、サウンドカードなどの機能を備えながら17,500円という直販価格は妥当なところだろう。ちなみに本製品(ACP5001APZ)から外部ディスプレイ端子を省いた1万円を切るコンパクトモデル「PA095Y01BZ」もラインナップされているので、価格と用途に応じてチョイスすることをオススメする。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.targus.com/jp/product_details.asp?sku=ACP5001APZ
  ターガス・ジャパン
  http://www.targus.com/jp/

関連記事
USB接続LANアダプタとUSBハブが合体! ロジテック「LAN-TX/U1H2」
USBでお手軽マルチモニタ環境を実現!「サインはVGA」


(kizuki)
2006/05/10 10:57
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.