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ダミーモデルもラインナップ! ネットワークカメラ「Qwatch M」


清潔感のある白いボディはキッチン用品を思わせる「Qwatch M」外観。本体サイズは約80×110×100mm(幅×奥行×高)。重量はTS-MCAMが410g、TS-MCAM-Gが430g
 今回紹介するアイ・オー・データ機器の「Qwatch Mシリーズ」は、イーサネット、つまりLANに接続するタイプのネットワークカメラだ。パソコンからのリモートコントロールでカメラの方向をはじめとした各種の設定を操作できるほか、撮影したデータを自動的にメールで送信したり、FTPサーバーへアップロードすることが可能。ダイナミックDNSサービスを利用すれば、ライブカメラとしてインターネット上に公開することもできる。

 どちらかと言えば、ホビーユースというよりも防犯や監視といった用途を想定しているようではあるが、面倒なネットワーク接続設定などが自動化されており、誰にでも手軽に使えるカメラに仕上がっている。

 外観上では、厚みのあるプレートを逆“L”字形に折り曲げたフレームからマグカップのような円筒を吊り下げたデザインが特徴だ。底面に付属のスタンドを取り付けるとフレームは“コ”の字形になる。筆者はなんとなくコーヒーメーカーやフードプロセッサといったキッチン用品を思い浮かべてしまった。パソコン用のカメラとしては少々風変わりかもしれないが、実はコンパクトで非常に使い勝手の良いデザインである。大きな凹凸がないので、棚の上のような水平面でも壁のような垂直面でも収まりがよく、また純白を基調としたボディーカラーはどんなインテリアにも溶け込みやすい。


カメラの全視野は上下74.7度、左右272.6度。天井近くに設置するよう設計されているらしく、水平より上にレンズを向けることはできない

USBサーバー機能を備えているので、USBポートに接続したフラッシュメモリなどのストレージデバイスに撮影したデータを直接転送できる
 カメラユニットはフレームから吊り下げられた円筒部の中に収められている。横方向の動きは円筒が左右に、縦方向の動きはレンズ部分が上下に回転する方式を採用している。速度は素早くはないが室内の様子を眺めるのに調度良い程度。少々動作音が耳につくものの、モーターのトルクは十分以上で、指先でつまんだ程度では止めることはできないほど力強い。

 カメラの可動範囲は左右±120度、上下は+5度から-45度。吊り下げ式を採用していることからもわかるとおり、天井近くの高い場所から斜め下方を見下ろすような撮影に向いたデザインと言えるだろう。

 撮像素子は30万画素のCMOSセンサー。メガピクセルクラスのカメラを搭載する製品も見かける昨今では目立つスペックではないが、解像度はVGAまでサポートされており、実用上の不満はない。人の目に近い自然な視野に加え、2倍と4倍のデジタルズームを装備。細かい倍率調整には対応していないが、パソコンからのリモートコントロールで見たい場所を素早く拡大できる使い勝手の良さは魅力だ。また、2ルクスという低照度での撮影が可能なのも大きな特徴。レンズ下に設けられた補助ライトを点灯させれば、完全に照明を落とした状態でも約2mの距離まで映像をとらえることができる。

 フォーカスはレンズの周りに可動リングが取り付けられていて、これを回すことでピントを合わせるマニュアル式。パソコン側から操作することはできないものの、シンプルで信頼性の高い方式だ。最短撮影距離の20cmから50cm前後まではシビアな調整が必要だが、多少距離を取ればピント合わせ不要のパンフォーカス的な使い方も可能なので不便を感じることはないだろう。


最大のVGA(640×480)表示。少々暗めの室内光で撮影。左のパネルでカメラの方向やズーム倍率、ライトの点灯と消灯などを操作する カメラ動作設定メニューからはVGA、QVGA、QCIFと解像度が3段階に切り替えられるほか、画質の調整やマイクのオンオフといった設定が可能

 Qwatch Mに搭載されている機能の中で目につくのがiobbスマート設定だ。これはアイ・オーが運営するダイナミックDNSサービス「iobb.net」への接続を自動設定してくれる機能である。これを使えばQwatch Mをライブカメラとしてインターネット上に公開できるだけでなく、携帯電話からQwatch Mを操作して映像を閲覧するといったことが簡単にできるようになる。iobb.netは、同社の該当製品ユーザーなら無料で利用できる。デモカメラの映像も公開されているようなので、ぜひ1度ご覧いただきたい。

 このほか利用価値が高い機能として、温度の変化で人の動きを検知する人感センサーや、パソコンを介さずにQwatch M本体のUSBポートに接続したストレージデバイスへ撮影したデータを保存するUSBサーバー機能が挙げられる。両者を組み合わせれば、部屋に入ってきた人の映像データをUSBフラッシュメモリに自動保存するといった使い方が可能だ。

 さらに最大4台のカメラの映像を一覧表示するマルチビュー、人感センサーやタイマーと連動した自動メール送信やFTPサーバーアップロード。また、円筒形のカメラモジュールがフレーム内側に向きを変え、物理的に撮影不能にしてしまうというファミリーユース向けのプライバシーモードなどが用意されている。


中央やや上、半透明のカバーがかかった部分が人感センサー。レンズ下のくぼみに白色LEDの撮影補助用ライトが組み込まれている プライバシーモードではカメラモジュールが回転してレンズを隠してしまう。本体のボタンでもパソコンからでもワンタッチで設定可能だ

4台のカメラに対応したマルチビューモード。動画表示ではないが、右下にあるドロップダウンメニューで画像の更新間隔を調整できる アイ・オーが運営するダイナミックDNSサービス「iobb.net」への接続設定を自動的に行なってくれる

TS-MCAM-GとダミーのTS-MCAM-MUを並べてみる。手に持てば重量の違いが感じられるが、こうして外観を見るだけでは区別できない
 Qwatch Mのラインナップは有線LAN接続のベーシックモデル「TS-MCAM(27,720円)」と、IEEE 802.11g準拠の無線LANに対応した「TS-MCAM-G(33,285円)」で構成されていたが、最近「TS-MCAM-MU(9,975円)」というモデルが追加された。

 TS-MCAM-MUは、いわゆるダミーだ。外観こそQwatch Mそのものだが、中身のカメラモジュールが入っていないのである。とはいえ、付属のACアダプタを接続すればアクセスランプやステータススランプが点灯する。リモートコントロールではなく手動ではあるが、円筒形のカメラユニットが左右に回転する。外装の素材やプリントされたロゴはもちろん、半透明のカバーから覗く内部の基板やコネクタ類にいたるまで、すべてホンモノと共通しているらしい。裏面のラベルにはシリアルナンバーまで刻印されているという凝りようである。

 用途はもちろん防犯だろう。ダミーカメラには想像以上の防犯効果があるらしい。さすがに空き巣の心理状態まで想像しかねるが、一方的に覗かれているかもしれないというプレッシャーの抑止効果は大きいのではないだろうか。小心者の筆者など、ドライブスルー式ファーストフード店のカメラを通した注文でさえ緊張するし、訪問先にインターホンにカメラが付いていようものなら、ボタンを押さずに玄関前から電話をかけてしまうほどである(笑)。

 単なる飾りとしては少々高価なTS-MCAM-MUだが、ただそこにあるだけで「撮ってるゾッ」という雰囲気をリアルに演出できる。設置する側からすればコストを半分以下に抑えられるし、メンテナンスの必要がないというのは大きなメリットだろう。防犯監視用として複数のQwatch Mを導入するのなら、TS-MCAM-MUを紛れ込ませるのも良い手ではないだろうか。


背面には壁掛け用のフック穴とケーブルを通す溝。多数のスリットが刻まれているが、発熱はほとんどないようである 付属のスタンドを取り外せばカメラ用の三脚などにも設置できる。ネジ穴は金属で内張りされており、耐久性が高そうだ

付属のIPアドレス設定ユーティリティ。CD-ROMから起動することもできるが、パソコンにインストールした方が使い勝手は良い
 Qwatch Mではパソコンに映像を表示させるためにInternet ExplorerとActiveXを利用する。このActiveXコントロール「TS-MCAM Viewer」は本体内のファームウェアに組み込まれているようで、Qwatch Mにアクセスしさえすればパソコン側にダウンロードされる。IPアドレスなどがわかっていれば、CD-ROMからビューワーをインストールするといった手間はかからない。ただ、筆者が試用した環境ではInternet Explorerのセキュリティアップデート「Q912812」がインストールされていると正常に動作しなくなる場合があったという点を付け加えておく。

 重量が400gを超えているだけあってボディ各所は質感が高く、仕上がりの良さを感じさせてくれる。防水加工されてはいないので風雨にさらされるような場所には対応しないが、屋内なら手の届かないような場所に設置しても故障知らずで働いてくれそうだ。モノを撮すカメラとしての機能は平均的な水準ながら、ネットワーク関係の機能とメカニズムとしての信頼性の高さが際立つ一品である。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.iodata.jp/prod/network/videoserver/2005/ts-mcam/index.htm
  アイ・オー・データ機器
  http://www.iodata.jp/

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(斉藤成樹)
2006/05/17 10:54
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