気になる! itemズ

　たいていのパソコンユーザーならば、USBフラッシュメモリを利用したことがあるだろう。USBポートに差し込むだけで気軽に使え、HDDや磁気記録メディアのように取り扱いに気を使う必要もない。最近ではデザインのバリエーションが豊富になり、アクセサリー感覚で数百MBのデータを気軽に持ち歩ける。今のパソコンライフには不可欠なアイテムの1つだ。

　今回紹介するサンディスクの「クルーザーマイクロ」も、そんなUSBフラッシュメモリの一種。しかし、他の製品とは大きく違う点がある。それはアプリケーションのインストールできる点だ。従来の単純なストレージデバイスから進化した、パソコンでの作業環境を丸ごと持ち歩ける新しいタイプのUSBフラッシュメモリなのである。

　ポイントは、サンディスクなどが中心となって制定した「U3」という規格。これに対応したUSBフラッシュメモリとアプリケーションを組み合わせれば、いつでもどこでも同じ操作で効率の良い作業を進められる。さらに個人情報や各種設定、データなどはクルーザーマイクロ内に保存できるため、使用したパソコンに一切足跡を残さずに済む。もちろん、パソコン間でのデータのシンクロといった面倒な作業とは無縁。便利なだけでなく、セキュリティという点でも優れたアイテムなのである。

　今までもUSBフラッシュメモリから起動して動作するアプリケーションがないわけではなかったが、特定の用途を目的に開発された専用品ばかりだった。しかし、U3では数多くの対応アプリケーションが用意され、必要に応じてダウンロード、インストールして使うことができるのが特徴。この自由度の高さが従来品との大きな差だ。


側面のツマミをスライドさせるとUSB端子が現われる。この白い部分はインジケータを兼ねており、動作中は赤く発光する	ボディには大きなメーカーロゴとともに「U3」のマークが入る。ちなみに付属のネックストラップにもサンディスクの文字がプリントされている


スライド部のツマミは中央がくぼんでいて指先をかけやすい。付属ネックストラップの先端にも手早く取り外せるバックルを採用している	パッケージには本体のほか、マニュアル、リーフレット、ネックストラップ、ジョルダンの「乗換案内」インストールCD-ROMが含まれている

タスクトレイにある「U3」アイコンのクリックでポップアップするランチパッド。操作性はWindowsのスタートメニューに似ている

　クルーザーマイクロには、いくつかのアプリケーションがプリインストールされている。「U3」の使用方法をビジュアル的に解説する「ランチパッドツアー」をはじめ、データを同期させる「CruzerSync U3 Edition」、各種パスワードを管理する「SignupShield パスワード」、ウイルス対策ソフトの「Avast! Antivirus」、インターネット電話ソフトの代表格「Skype」といったラインナップだ。このほか、パッケージにはジョルダン製「乗換案内 U3 Edition」のインストール用CD-ROMが付属している。

　これらのアプリケーションの起動に用いるのが、ランチパッドだ。フラッシュメモリ内に設けられた仮想CD-ROM領域から自動起動し、タスクトレイに常駐するアプリケーションランチャーである。ワンクリックでポップアップするという操作性やウィンドウデザインがWindowsのスタートメニューと似ており、ほとんど同じ感覚で扱える。ランチパッドはクルーザーマイクロ内にインストールされているU3アプリケーションを一覧表示して起動させるという用途以外に、各種設定、プログラムの追加や削除、フラッシュメモリの残量表示といった機能を備えている。

　アプリケーションの追加は非常に簡単。ランチパッドの右側にあるメニューから「プログラムの追加」をクリックして、接続先を指定するとブラウザウィンドウが立ち上がり、ダウンロード可能なソフトウェアのリストが表示される。この中から好みのものを選び、あとはウィザードの指示に従うだけだ。

　ダウンロード以外の方法も同様、手間はかからない。付属の「乗換案内 U3 Edition」を例にすると、ランチパッドが起動している状態でパソコンのドライブにCD-ROMをセットし、中のインストーラを起動するだけ。インストール先が固定されているためフォルダなどの指定は不要。確認ボタンをクリックした後、しばらく待ってさえいればランチパッドのメニューに登録され、そのまま使用可能になる。


ランチパッドにはリストからのアプリケーション起動のほか、プログラムの管理、言語設定、パスワード設定、空き容量の表示といった機能がある	U3の使用法や設定法をビジュアルに解説するランチパッドツアー。操作に慣れてきたら空き容量を稼ぐために消去してしまっても良いだろう


「Avast! Antivirus U3 Edition」。このほか、「CruzerSync U3 Etition」、「SigneupShield パスワード」、「Skype」がプリインストールされている	ジョルダンの「乗換案内 U3 Edition」。300MB近い容量を消費するので、必要に応じてインストールすると良い

アプリケーションのインストールはランチパッドの「プログラムの追加」から。2カ所のダウンロードセンターが選べる

　U3対応アプリケーションはサンディスクやU3が用意したダウンロードセンターで配布されている。原稿執筆時点では、有料の製品やそのトライアル版、また無料で使えるフリーソフトなど、数十種類のアプリケーションがラインナップされていた。これだけ揃っていれば普段の作業はクルーザーマイクロだけで対処できてしまいそうである。

　ダウンロード可能なアプリケーションの中に筆者が普段から使用しているWebブラウザの「Firefox」とメーラーの「Thundarbird」、それにMicrosoft Officeと互換性のあるOpenOffice.orgの「ビジネススイート」を見つけた。早速ダウンロードして、インストールした後、あちこちのパソコンに差し込んで使ってみたが、まったく違和感がない。

　同じソフトを同じ設定で使っているのだから当たり前の話ではあるのだが、他人のパソコンを気兼ねなく、まるで自分のパソコンのように扱えるというのは妙な感覚だった。気になる点と言えば、フラッシュメモリのデータ読み出し速度がHDDよりも遅いため、アプリケーションの起動に少々時間がかかることくらい。ただ、これもいったん動き出してしまえば意識せずに済む程度だ。


ダウンロードセンターに接続するとブラウザウィンドウが表示される。ダウンロードとインストールはリスト右にあるボタンをクリックするだけだ	U3ホームページにもU3 SOFTWARE CENTRALというダウンロードセンターが用意されている。日本語に対応しており、ラインナップも豊富だ


インストール作業は自動的に起動するプログラムウィザードが進行してくれる。ユーザーがやることは確認ボタンをクリックする程度だ	ダウンロードしたWebブラウザ「Firefox for U3」。メニュー項目などは英語だが、日本語の環境でも不自由なく使うことができた

　今回試用したのは容量1GBのモデルで、初期状態での空き容量は930MBほど。しかし、これに前述のアプリケーションをすべてインストールすると、残りは280MB程度になってしまう。不足ではないが、後々のデータ保存を考えるとキツいかなとも思える数字だ。多数のアプリケーションを利用したい場合には、余裕を見て2GBモデルを選ぶのが正解かもしれない。なお、U3の機能についてはWindows XPとWindows 2000に対応OSが限られるが、ポータブルストレージメディアとして従来のUSBフラッシュメモリと同じように扱うだけならMacintoshなどでも問題なく動作する。

　クルーザーマイクロの本体サイズは22×58×9mm（幅×奥行×厚）で、重量が約12g。通常のUSBフラッシュメモリと変わらない軽量コンパクトな仕上がりだ。特徴は中空の柄の中で本体がスライドする方式を採用しているという点。ちょうど繰り出し式のカッターナイフを想像していただければ良いだろう。普段はボディ内部に収納されているUSB端子が、側面の白い部分にあるツマミを押し込むようにして動かすと現れるというシカケになっている。ワンタッチで出し入れでき、ラフに持ち歩いても端子部を傷つける心配がなく、キャップをなくす心配もない。良く考えられたデザインと言えるだろう。

　残念ながら今回の原稿には間に合わなかったが、「クルーザータイタニウム」というモデルもリリースされている。こちらは、クルーザーマイクロの機能はそのままに、外装を強靱なチタン合金で覆ったヘビーデューティー仕様のU3フラッシュドライブだ。これならキーチェーンやウォレットチェーンにつけても心配ないだろうし、ネックストラップで首から提げればインゴット風のペンダントに見える。アクセサリーが苦手な筆者だが、こういうアイテムなら常に身に付けていても良いだろうと思ってしまった。

■ ＵＲＬ
　製品情報
　 http://www.sandisk.co.jp/retail_u3cruzerMicro.html
　サンディスク
　 http://www.sandisk.co.jp/

（斉藤成樹）
2006/08/02 11:03

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