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電子書籍以外にも写真・動画・音楽が楽しめる読書端末「Words Gear」


 ワーズギアから発売されている「Words Gear(ワーズギア:BKE-T3)」は、電子書籍をダウンロードして読むことができる読書端末。本製品では電子書籍はもちろんのこと、写真や動画、さらに音楽の再生にも対応している点が大きな特徴だ。


電子書籍に加え、写真/動画/音楽も再生可能なマルチメディアビューワー

Words Gear本体。実売価格は41,790円。連続再生時間は6時間で、充電はACアダプタ経由で行なう
 携帯電話におけるマンガコンテンツの普及などもあり、注目度は確実に高まりつつある電子書籍。今回紹介する「Words Gear」は、これら電子書籍を楽しむための専用読書端末である。松下電器産業 パナソニック システムソリューションズ社が開発・製造を担当しており、松下が2004年に発売して話題になった「ΣBook」の後継機とも言える製品だ。

 特徴をざっと紹介すると、こんな具合だ。

・5.6インチのワイドSVGAカラー液晶を装備
・電子書籍コンテンツをダウンロードして楽しめる
・写真も見られる
・音楽も聴ける
・動画も見られる

 コンテンツはPC上のユーティリティで管理され、SDカードもしくはUSB経由で本体に挿入したSDカードへ転送して利用する。写真や動画、音楽も再生可能であるなど、マルチメディアビューワーとしての性格が強い製品に仕上がっている。


表示の向きを選ばないユニバーサルデザイン。操作はすべて片手で可能

操作はE字型のタッチセンサで行なう。ちなみに手袋などをはめているなど、素肌が出ていない状態では操作は難しい
 筐体は上下が対称になったユニバーサルデザインで、読書の際はタテ、写真や動画を見る際はヨコにして使う。ちなみに「ΣBook」は液晶が2つ折りで、書籍をモチーフにした外観を持っていたが、本製品は液晶は1面のみとなっている。

 製品は105×152(幅×高さ)mmと、ほぼ文庫本サイズ。コンパクトではあるが、グリップ部分は単2型乾電池と同程度の直径があり、カバンの中での収まりはあまり良ろしくない。グリップ感があると言えばそうなのだが、正面から見て平坦な筐体を想像していると、実物を見てややギョッとするかもしれない。

 重量は約325gで、第5世代iPod(157g)の約2台分に相当する。「ΣBook」の520gよりは格段に軽いが、片手で長時間ホールドし続けるには厳しい重量かもしれない。筆者が試用した限りでは、片手で持ち続けられる時間はせいぜい15分が限界であった。従って、左右反転機能を活用して、左手が疲れたら反転させて右手でホールドといった具合に使うと良いだろう。

 本体操作は、「Eセンサー」と呼ばれるタッチセンサーで行なう。アルファベットの“E”の字に似た凹みに沿って指をすべらせることで、ページ送り/戻しといった操作が行なえるというものだ。ノートPCのタッチパッドと、iPodのクリックホイールが合体したような機構と考えればわかりやすい。

 このEセンサー。単純なページ送り/戻しだけであれば快適な操作が行なえるのだが、ライブラリとコンテンツ間を往復したり、表示項目を調整するといった細かい操作を行なうには、ある程度のコツを要する。

 また、片手で本体を握った状態のまま、親指をすべらせて操作するため、どうしても握りが浅くなり、持ち方が不安定になる。ストラップホールは用意されておらず、移動中などは扱いには気をつかう必要がある。この点は、複数ある利用シーンを想定した配慮が足りていないと感じた。

 なお、今回試用したのは評価機ということもあってか、電源投入時の3回に1回程度の割合でハングアップが発生し、工場出荷状態にやむを得ず戻す必要があった。製品版では改善されていることを期待したい。


裏面はギザギザのスリット状 下面にはイヤホンジャックとSDカードスロット、ボリュームスイッチが付属している。スピーカーは非搭載で音声出力はイヤホンのみ

上面にはACアダプタ端子、USBのminiBコネクタ、電源スイッチが並ぶ 画面サイズは、第5世代iPodのゆうに倍はある。動画などの視聴においては、モバイルプレーヤーやワンセグ端末に慣れた人であっても、新鮮な感動が得られる

コンテンツはダウンロード購入。書籍、コミックとも視認性は良好

コンテンツはSDカードスロットに保存。最大容量は2GBまでで、SDHCには対応していない
 Words Gearで再生できるコンテンツは、言うまでもなく電子書籍だ。電子書籍自体は、同社運営のポータルサイト「最強☆読書生活」からダウンロード購入できる。ダウンロードしたコンテンツは、SDカード経由で書き込むか、USB接続した本体とPCを繋いで転送する。なお、本製品自体は記憶領域を持っていないため、コンテンツはSDカードに保存した状態で利用する形になる。

 電子書籍コンテンツの閲覧では、ページをめくる効果も再現されており、片手だけの操作でペラペラとめくりながら読書が楽しめる。ページめくりで待たされる時間はほとんどなく、快適だ。ハイパーリンクで脚注にジャンプしたり、横書きに切り替える機能もあり、多彩なスタイルで読書を楽しめる。ちなみに、画面上に表示される文字のサイズは、1文字あたり3mm弱と、文庫本とほぼ同等だ。

 カラー液晶と言うこともあり、コミックの閲覧も快適に行なえる。今回試用した評価機にはサンプルコンテンツとして「時をかける少女」「ケロロ軍曹」などがプリセットされていたが、カラー・モノクロページとも高い視認性を誇っていた。液晶が5.6インチと大きいこともあり、携帯電話の電子ブックビューワーのように吹き出しの文字だけを拡大表示することなく、原寸のままで読めるのは魅力的である。

 ただ、液晶の視野角はやや狭く、ヨコ向き表示ではややストレスを感じた。また、TFT液晶ということもあり、蛍光灯の下では問題ないが、屋外での閲覧は厳しい。基本的には室内もしくは電車内で利用するべきだろう。


コンテンツの一覧画面。個々の書籍コンテンツと並列に、写真、動画、音楽といったフォルダが並ぶ 左右を切り替えて表示することが可能 こちらは右手持ちでの表示

電子書籍コンテンツを表示させたところ 縦横双方の表示に対応する 文字サイズは2~3mm角で、文庫本などとほぼ同等

設定画面。タッチセンサーの上下で項目を選び、外側へスライドさせて選択する 電子辞書とサイズを比較したところ

写真ビューワー機能で手持ちのJPEGコンテンツを再生する

 専用の電子書籍コンテンツはともかく、本製品で手持ちのコンテンツがどれくらい見られるかは気になるところ。そこで、いくつか実験をしてみたので、まとめて紹介しよう。

 本製品の写真ビューワー機能を利用すれば、JPEGに変換した手持ちのファイルを閲覧できる。詳細は写真をご覧いただければと思うが、スキャナで取り込んだ文書データが手元にあれば、それらをSDカードのDCIMフォルダ下に転送することで、閲覧が可能になる。文字サイズは1.5mm~2mm角とかなり小さいものの、なんとか読み取れる範囲である。文庫本大の画面サイズを持つ本製品ならではのメリットと言えるだろう。

 とはいえ、気になる点もいくつかある。1つは、写真ビューワーにはレジューム機能がない点。つまり、電源をいったんオフにしてしまうと、次に見る時は1枚目に戻ってしまうのである。ポータルからダウンロードした電子書籍コンテンツでは「しおり機能」が使えるのだが、写真ビューワー機能にはそれがない。従って、目的の画像を探す場合、サムネイル表示に切り替えて、表示させた所までスクロールしていくしかない。

 また、SDカードのDCIMフォルダ内に複数のフォルダがある場合、フォルダ名とは無関係にタイムスタンプが古いフォルダから順に読みにいく仕様になっている。フォルダ内の画像についても同様で、タイムスタンプが古いファイルから再生される。編集でタイムスタンプが書き換わった画像などは、ファイル名とは無関係に後回しにされてしまうなど、実用性は高くない。従って、あくまでおまけの機能と捉えたほうが良さそうだ。


写真ビューワーの機能を使い、JPEG化した新書のページを表示 比較元の電子書籍コンテンツと比べると、文字サイズは1.5~2mm前後と半分程度 同様に、比較のため用意したコミックの吹き出し部分を拡大したところ。文字サイズは同じく1.5~2mm程度だった

ASF形式の動画ファイルを大画面カラー液晶で再生する

 動画および音楽ファイルの再生についても触れておこう。

 動画ファイルはASF形式のみをサポート。ユーティリティ経由の書込みが推奨されているが、筆者が試用した範囲では「SD_VIDEO\V0001フォルダ」内にドラッグ&ドロップした場合でも再生可能であることがわかった。

 ユーティリティを使ってASF形式に変換した場合は、タイトルに独自の連番が付けられてしまうため、多数の動画を管理するのは若干困難である。なお、このソフトでASF形式に変換できる動画ファイルはMPEG形式に限られている。

 また、写真ビューワーと同様にレジューム機能を搭載しておらず、電源を切ると最初まで戻る。早送り/戻しが10倍速程度しかサポートしないことも含め、長時間の動画を見るには不向きかもしれない。もともと携帯動画の再生が目的であるとは言え、ハガキ半分ほどの面積がある大画面液晶を備えているだけに、非常にもったいないと感じる。

 なお、音楽プレーヤー機能については、読書しながらの再生も可能であるなどのユニークな機能を備えるが、SDカードからの読み込みが集中すると再生が途切れがちになるなど、やや難がある。こちらの改善も期待したいところだ。


動画再生時は横向きに表示する。再生時の占有サイズはハガキ半分程度と、かなり大きい 音楽プレーヤー機能のプレイリスト表示。画面は大きいものの、曲に関する情報量はそれほど多くない

価格面での課題は残るも意欲的な製品

 読書端末としての利用のほか、写真ビューワー、音楽プレーヤー、動画プレーヤーとしての顔も持った本製品。やや疑問の残る操作性はともかく、その多機能ぶり、さらにモバイルプレーヤーとしては最大級と言える画面サイズは非常に魅力的だ。

 問題は価格である。本体のみで4万円を超える実売価格は、やはりおいそれと手を出せるものではない。これでコンテンツが安価なら話は別だが、ほとんどのコンテンツは紙の書籍と同等の価格設定であり、こと価格に関するメリットはまったくないと言わざるを得ない。コンテンツのラインナップを見ている限り、ターゲットとするユーザー層もあまりはっきりしておらず、売る側も手探りであるように感じられる。

 もっとも、「ΣBook」に比べると、ハードウェアとしては大幅な進化を遂げており、ブレークまであと少しのところまで来ていると感じられるのは事実。特定作家のコンテンツとのセット販売といったキャンペーンも行なわれる一方、本稿執筆中もファームウェアのバージョンアップが行なわれるなど、意欲的な製品であることは間違いない。ハードウェア、サービスともに、さらなる進化に期待したい。


PCにインストールして利用するユーティリティ「Myブックケース」。コンテンツをダウンロードしたのち、読書端末本体に転送する機能を持つ ユーティリティからコンテンツの販売ページに直接アクセスが可能

関連情報

URL
  最強☆読書生活
  http://www.saidoku.com/


(山口真弘)
2007/01/31 11:03
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