バッファローの「WLI-U2-SG54HP」は、バー状の細長い筐体を採用した無線LANアダプタだ。ノートパソコンの天板などに貼り付けて使用するため、従来のUSB接続型無線LANアダプタに比べ、邪魔になりにくいのが大きなメリットだ。
■ バーのように細長い筐体を採用したUSBタイプの無線LANアダプタ
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「WLI-U2-SG54HP」の製品パッケージ。標準価格は3,885円
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これまでのUSBタイプの無線LANアダプタといえば、長さがおよそ8~10cm程度で、パソコンのUSBポートに直接差し込んで利用するスタイルが一般的だった。従って、ポートからまっすぐ突き出た形で利用することになり、USBポートの配置によっては存在を邪魔に感じることも多かった。
このため、各社とも延長ケーブルを添付したり、スイングコネクタを同梱するなどさまざまな工夫をしていたが、どちらかというと受信状態を良くするために角度を調整するニュアンスが強く、取り回しについてはあまり考慮されていなかったのが現状だ。
今回紹介するバッファローの「WLI-U2-SG54HP」は、ノートパソコンの天板などに取り付けることを前提に、20cmを超えるバー状の筐体を採用した無線LANアダプタだ。着脱の手軽さよりも、利用中に邪魔にならないことを優先した設計である。なお、同社では本製品を「Stick型」、従来タイプを「Key型」と呼称しているが、従来タイプをスティック型と呼称するメーカーも多いことから、今回の記事中では「バー型」という表現で統一している。
やや推測の域を出ないが、従来のUSBタイプの場合でも、多くのユーザーは常にパソコンに接続した状態で利用しており、頻繁に取り外すユーザーはそう多くないのではないかと思われる。ノートパソコンをずっと机上に置きっぱなしにしているユーザーや、家庭内で持ち運んで使うユーザーにとって、本製品のコンセプトは理にかなっているだろう。もちろん、オフィスと会議室の間で往復するような場合にも便利だ。
一方、ノートパソコンを保護ケースに入れて自宅と会社の間で持ち運ぶユーザーの場合、無線LANアダプタは頻繁に着脱せざるを得ないだけに、本製品のコンセプトはむしろ合わないかもしれない。自分の利用スタイルを見極めた上で、従来タイプが本製品のようなバー型か、どちらかをチョイスするのが良さそうだ。
なお、本製品は液晶ディスプレイの背面に装着したり、壁に貼りつけるといった具合に、デスクトップパソコンでも便利に使える。従来モデルでも同じことはできないわけではなかったが、本製品は吸盤を用いて本体を貼り付ける構造を採用しているだけに、設置も容易だろう。
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製品本体。今回使用したノートパソコンはThinkPadということもあり、本製品とはカラーリング的にもベストマッチだった
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従来のUSBタイプ(手前)と並べたところ。本製品の大きさが良くわかる
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■ 取付は吸盤で、多少の段差は問題なし。ThinkPadにベストマッチ
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同梱品の一覧(CDや説明書は除く)。奥から順に本体、USBケーブル、吸盤、吸盤取付用の円形プラシート
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では実際に取り付けてみよう。
製品には2個の吸盤が付属しており、これらを利用してノートパソコンの天板に取り付ける方式になっている。表面がザラザラするなどして吸盤が機能しない時は、同梱の円形プラシートを貼り付け、そこに取り付けると良い。
吸盤で取り付ける関係上、天板からは若干浮いた形になるため、天板に多少の段差があっても対応できるメリットがある。例えば、レッツノートのように、天板中央に凸部があるノートパソコンでも、問題なく取り付けが行なえる。
パソコンとは添付のUSBケーブル(40cm)を使って接続する。製品側に接続するminiBコネクタは90度曲がった構造を採用するなど、細かい使い勝手に配慮されているが、どちらかと言えば、かさばりやすいパソコン側のコネクタをスイング式にするなどの工夫が欲しかった。
ちなみに今回は手持ちの「ThinkPad X60」に取り付けてみた。無線LANを内蔵していないグレードのモデルである。天板の表面処理の関係で吸盤ではしっかり固定できず、前述の円形プラシートを介して取り付けたが、つや消し黒の筐体色がThinkPadときわめて近いこともあり、一見すると純正のオプションのように見える。悪くない感じだ。
余談だが、全長22cmという筐体の微妙な長さはやや気になる。22cmというのは、A4の短いほうの辺(21cm)よりわずかに長く、コネクタ部分も含めるとはみ出してしまう。コネクタ部分を考慮してもB5の短辺に収まるよう、本体の長さがあと5cmほど短ければ、さらに取り回しは良くなったと思う。
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ThinkPadに取り付けたところ。B5ノートであれば写真のように横向きの装着がベターだろう
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レッツノートW5に設置したところ。吸盤を利用して取り付けるため、多少の段差ならば影響はなさそうだ
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■ 11b/gに対応し、ハイパワーモードをサポート。接続性は良好
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吸盤を利用して取り付けるため、天板との間には6~7mmほどのスキ間が生まれる。天板中央に突起があっても干渉せずに済む
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話が前後するが、規格やスペックについてもひと通りチェックしておこう。
本製品はIEEE 802.11b/gに対応したモデルで、IEEE 802.11aやIEEE 802.11nドラフトには対応していない。また、インフラストラクチャモードのみをサポートしているため、アドホックモードでは利用できない。ただ、アドホック自体はあまり需要があるとは思えないので一般的な用途では問題ないだろうが、特殊な使い方をしている場合は要注意だ。
OSはWindows XP/2000に対応し、Windows Vistaへも対応を予定している。従って、Windows Me/98で利用する場合には、同社従来品などの中から選択する形になる。無線LANセキュリティはWPA(TKIP/AES)やWEPをサポート。IEEE 802.1XやWPA2には非対応だが、コンシューマ用としては許容範囲だろう。
特徴的な筐体ということで、消費電力が気になるところだが、従来タイプのモデルと大差ない。言うまでもないがバスパワー駆動なので、ACアダプタなどは付属しない。
最後にパッケージに書かれた“隅々までよく届くハイパワー”というキャッチコピーを確かめるべく、簡易な接続テストを行なってみた。筆者宅には無線LANの電波が届きにくい死角エリアがあり、それが故に通常は有線LANを利用しているのだが、本製品ではそれらの場所でも問題なく接続を確立することができた。これまでさんざん試してつながらなかった場所なので、ちょっとした感動である。
続けて、同じバッファローの従来モデル「WLI-U2-KG54」も同じ条件で試してみたが、こちらが頻繁に切断されるのに対し、本製品ではほとんど切断されることはなかった。これがバー状の筐体設計に拠るものなのか、それとも単にハイパワーモードの恩恵によるものなのか、この結果だけでは切り分けが難しい(WLI-U2-KG54はハイパワーモード非対応)のだが、これまで無線LANがつながらなくてあきらめていた場合でも、試してみる価値はあると感じられた。
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天板に吸盤が直接取り付けられないため、同梱の円形プラシートを貼り、そこに装着している。取り外しも容易だ
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USB延長ケーブルを介し、アンテナのように壁面に取り付けることも可能
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従来のUSBタイプ(写真右)が横に突き出すのに比べ、本製品(同左)はスペースをとらなくて済む
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■ もっと評価されて良いコンセプトの製品
パソコン周辺機器マーケットにおいては、本製品のようなユーザーの利用シーンを想定した製品開発は二の次で、いかに単品のロットを増やして1台あたりのコストを下げるかの話になるのが常だ。筐体についても、OEM元が用意したリファレンスデザインをそのまま用いて金型は一切起こさないなど、コストがかかる部分は徹底的に切り捨てられる傾向が強い。
バッファローによれば、本製品は金型をイチから起こしたとのことで、コンセプトに対する同社のこだわりが感じられる。無線LAN分野での同社の高いシェアを考慮すると、こうした製品開発は造作もないことだろうが、単価の安い製品で実際にここまでするメーカーは少ない。開発姿勢がもっと評価されて良い製品だと言えよう。
デメリットとして挙げられるのは、サイズ的にノートパソコンの短辺、つまり、タテ向きに装着するのが困難な場合があること、あとはパソコン本体とのカラーマッチングだろう。つや消し黒の筐体は、今回筆者が使用したThinkPadにはベストマッチだったものの、それ以外のノートだとちょっと違和感があるかもしれない。
同社の無線LANアダプタは基本的にPCカードタイプが黒、USBタイプが白の筐体を多くのモデルで採用しており、そうした意味で今回の製品はイレギュラーな筐体色ということになる。さすがにカラーバリエーション展開は考えにくいが、ユーザーとしては気になる部分だけに、なんらかの対応を期待したい。
また、添付のケーブルがもう少し柔らかめのほうが取り回しがしやすいのでは、と感じたが、いずれにせよ製品の性能そのものは非常に満足度が高く、買って後悔することはないだろう。無線LANアダプタの購入を考えている人にとっては、選択肢に入れて良い製品だと言えそうだ。
■ URL
製品情報
http://buffalo.jp/products/catalog/network/wli-u2-sg54hp/
バッファロー
http://buffalo.jp/
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(山口真弘)
2007/02/14 11:02
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