アイ・オー・データ機器の「USBグラフィック(USB-RGB)」は、ディスプレイをUSB接続で利用するためのアダプタだ。USBケーブル1本で手軽にマルチディスプレイ環境が構築できるほか、外部出力ポートを持たないノートPCから外部ディスプレイへの出力も行なえる。
■ USBでマルチディスプレイ環境を構築できる
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「USBグラフィック」。標準価格は11,130円。本体はUSB-LANアダプタの大型版といった体裁だ
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USBグラフィックは、USBポートからのディスプレイ出力を可能にするアダプタだ。通常、アナログD-sub15ピンのコネクタから出力されるべき映像信号を、USBポートから出力してしまおうという製品である。
これによって、マルチディスプレイ環境をプラグ&プレイで構築できるようになり、一時的にマルチディスプレイ環境を構築したいという場合に非常に役に立つ。何より、増設用のディスプレイポートがなくても、USBポートを利用して手軽にマルチディスプレイ環境を構築できるのは有り難いところだろう。
なお、同様の機能を持った製品として、数年前からロングセラーを続けている海連の「サインはVGA(関連記事)」が挙げられる。長らく競合製品がない状態が続いていたサインはVGAにとって、USBグラフィックは初めて登場した本格的なライバル製品だと言って良いだろう。
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手のひらサイズ。重さは約50g
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USBminiBコネクタを装備。PCとの接続に利用する
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■ 手のひらにおさまる小型筐体。接続はケーブル1本で完了
本体は手のひらにすっぽり収まるサイズ。D-sub15ピンのコネクタとUSBminiBコネクタ以外は、LEDが1つだけというシンプルな外観である。
接続方法は、本製品とディスプレイの間をD-sub15ピンのアナログディスプレイケーブルで、本製品とPCの間をUSBケーブルで接続するだけ。電源はバスパワー供給されるため、ACアダプタなどは必要ない。PC側にドライバとユーティリティを事前にインストールする必要はあるが、それ以外は文字通りケーブル1本で接続が完了する。
接続中は、ユーティリティがタスクトレイに常駐する。画面解像度や色数などの設定は、タスクトレイのアイコン経由か画面のプロパティから行なう。なお、いわゆるマルチディスプレイモードのほかに、ミラーモードにも対応しているので、手元の画面と接続先のプロジェクタで同じ画面を表示してプレゼンを行なうといった用途にも対応する。このほか、画面を回転表示することも可能だ。
同時使用台数の上限は2台まで。競合製品に比べるとやや少なめではあるが、実用上は特に支障はないだろう。ちなみに搭載メモリは32MBとされている。
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D-sub15ピンのコネクタを装備。ディスプレイとの接続に利用する
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実際にケーブルを接続したところ。コンパクトで場所をとらない
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■ 動画の再生を苦にしないハイパフォーマンス
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増設用ディスプレイポートを持たないノートPCでも、手軽にマルチディスプレイ環境を構築できる
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というわけで、実際に接続してみた。今回は、筆者がふだん使用しているマルチディスプレイのセカンダリ側(DVI接続)を外し、本製品経由での接続を試みた。PCはPentium 4の2.4GHz、メモリ2GBという構成である。
まず最初に、テキストエディタのウィンドウを表示させてみた。ウィンドウをドラッグして移動させている間に多少の引っかかりを感じたが、表示自体はまったく問題がない。普段の環境がデジタル接続のため、文字がややにじんで見えるのが気になるくらいだ。このあたりは、普段利用している環境によっても感じ方が異なるだろう。
次にWebブラウザ。こちらもまったく問題なく表示が行なえる。試しにYoutubeの動画を再生してみたが、コマ落ちなどはまったくなく、快適な再生が行なえた。プライマリ側のディスプレイに移動させてみても、差も感じられなかった。
続いて、Windows Media Playerで動画ファイルを再生してみた。競合製品であればこのあたりからコマ落ちが激しくなり、通常接続との違いが目に見えて感じられるようになるが、本製品は何ら問題なく再生が行なえる。これには少し驚かされる。
その後もいろいろなアプリケーションを試してみたが、筆者の環境ではほぼ問題ない結果が得られた。CPUの使用率も30%前後と安定しており、ほかの作業に支障をきたすこともない。ざっと利用しただけだが、パフォーマンスはかなり高いと見てよさそうだ。
なお、さまざまなテストを行なった中で、ウィンドウごと固まってしまい、まったく動かないという結果に終わったのが「Second Life(英語版)」である。これはパフォーマンスの問題ではなく、グラフィックカードが対応していないが故の問題と思われる。その証拠に、固まった最中の操作は、ウィンドウをプライマリ側のディスプレイにドラッグして戻すと、きちんと反映されていた。
このように、アプリケーション側の制約で動作しないソフトは少なからず存在しそうだ。ゲームなどを主体に利用したいと考えているユーザーは、注意したほうが良いかもしれない。
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添付CDのメニュー画面。余談だが「USBグラフィック」というそのまんまなネーミングは、もうひとひねりが欲しいと感じる
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画面解像度の設定は、タスクトレイに常駐するアイコンから可能。ミラーモードや回転などの設定も可能
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画面のプロパティからも画面解像度の設定が可能。表示では「Display Link Adapter」上の「I-O DATA USB-RGB」となっている
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デバイスマネージャ上の表示。「USB Display Adapters」と「ディスプレイ アダプタ」の2カ所に、本製品絡みの表示がある
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■ マルチディスプレイの敷居を低くする魅力的な製品
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Second Lifeのように、もともとビデオカード自体に制限が明示されている場合は、表示できない可能性がある。特定のアプリケーションを動作させたい場合は、導入前にできるだけ情報を収集しておきたい
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前述の「Second Life」のように、アプリケーションによる制約は存在するものの、USB接続で動画再生を苦にしないパフォーマンスの高さは非常に魅力的だ。DVDやテレビを“ちょい見”しながら、プライマリ側のディスプレイで作業をするという用途にも、問題なく対応できる。これなら、一時的にマルチディスプレイを利用する場合の利用にとどまらず、日常での利用もOKだろう。
気になるのは、解像度が4:3では最大1,400×1,050、ワイドではWXGA(1,440×900)までしか対応しないこと。昨今のディスプレイの大型化、およびワイド化の傾向を踏まえると、UXGA(1,600×1,200)、WSXGA+(1,680×1,050)以上に対応しないのは、やや心もとなく思えてしまう。競合に当たる「サインはVGA」がこれらに対応するドライバをリリースした直後だけに、本製品にも今後のアップデートを期待したいところだ。
また、接続方式がアナログ(D-sub15ピン)であることは、映像の品質を重要視するのであれば、ややネックとなるかもしれない。なお、ラトックシステムからDVIに対応した競合製品の発売が予定されており、デジタル接続にこだわるのなら、そちらの評価を待ってから判断するのも悪くはないだろう。
とはいえ、1万円を切る実売価格や、増設の容易さや取り回しのよさなど、手軽にマルチディスプレイ化が行なえる製品として、本製品は高く評価できる。マルチディスプレイの快適さを経験したことがない初心者から、すでに導入済みのユーザーのリプレース、3台目の増設まで、幅広いユーザーに対応する製品だと言えるだろう。
■ URL
製品情報
http://www.iodata.jp/prod/multimedia/ga/2007/usb-rgb/index.htm
アイ・オー・データ機器
http://www.iodata.jp/
(山口真弘)
2007/07/18 11:08
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