■ iPodなどと組み合わせて使えるヘッドマウントディスプレイ
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iTheaterVの直販サイト価格は41,790円。映像信号はNTSC/PAL/SECAMをサポート
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美貴本が展開するブランド「MIKIMOTO Beans」が発売する「iTheaterV」は、iPodやAV出力端子を持つ機器の映像信号を、メガネの形状をしたディスプレイの内部に表示するというデバイスだ。いわゆる、ヘッドマウントディスプレイと呼ばれる種類の製品である。
こうしたヘッドマウント型のディスプレイ製品のメリットは、主に2つある。1つは大画面ディスプレイを設置できない環境において、場所をとらずに大きな画面サイズを提供してくれること。本製品では「2.5m先に65インチ相当」の大画面が実現できるとされており、省スペースながら大画面での映像鑑賞を楽しみたい用途にぴったりだ。室内はもちろんのこと、例えば車での移動中に後部座席で映画を楽しんでもらうといったニーズにも合致するだろう。
もう1つは、視聴時のプライバシーを確保してくれること。本製品の場合は本体内部に液晶パネルが2つ内蔵されており、両眼で見ることによって1つの大画面に見えるという仕組みになっている。映像を外部に投影するといった仕組みではないため、外からはどんな映像を見ているのかわからないという特徴がある。プライバシーを確保しつつ映像を視聴したい場合に使えそうだ。
価格は4万円前後とそこそこ高価であり、どの程度の実用性があるのか気になるところ。1週間ほど試用した結果をお伝えする。
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手に持ったところ。正面から見たイメージはなかなかサイバー
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反対側から見たところ。メガネをかけている場合は、その上から装着する形になる
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■ 「2.5m先に65インチ相当」の大画面。解像度はVGA
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iTheaterVの装着例
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製品は、メガネに似た形状を持つディスプレイ部とコンバータ部で構成されている。ディスプレイとコンバータは直付けのケーブルで接続され、コンバータから先は接続する機器に合わせて添付のケーブルを交換する構造になっている。iPodはもちろんのこと、コンポジット端子を持つDVDやビデオなどの機器であれば、本製品と接続して使用できる。
本体重量は70g。数字だけ聞くと軽量に思えるが、これはケーブルを含まない値で、両耳と鼻の3点で支える構造もあって、重量感は幾分感じられる。30分程度の映像であれば問題ないだろうが、2時間程度の映画などの場合は、装着したままで正面を向いて座っているというのは疲れが出るかもしれない。
解像度はVGA(640×480ピクセル)で、従来モデル「iTheater」のQVGA(320×240ピクセル)と比較して大幅にグレードアップしている。画面サイズについても、従来品のイメージサイズが「2.5m先に50インチ相当」だったのが、本製品では「2.5m先に65インチ相当」に大型化されている。
製品にはノーズパッドが2種類付属し、鼻の高さに合わせて付け替えるようになっている。ちなみにメガネをかけている場合は、その上から本製品を装着することになる。
コンバータ部は、百円ライターをひとまわり大きくした程度のサイズ。リチウムイオン充電池を内蔵しており、USB経由で充電する。約4時間の充電で、約4~5時間の使用が可能だという。
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本体側面にはカナル型イヤフォンを備える
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接続図。メガネ型のディスプレイをコンバータに接続し、さらにiPodなど映像ソースとなる機器に接続する
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■ 「映画館のよう」な視聴感。仰向けでの視聴スタイルも
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覗き窓に相当する部分のアップ
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本製品を使用して映像を視聴した感想としては、中央にスクリーンがあり、周囲が暗くなっているという点で「映画館のよう」な視聴感はある。巨大なスクリーンというよりは、ミニシアターの中央座席に座って、スクリーンを凝視しているような感覚だ。
スクリーンのサイズについては、メガネのような外観から受ける大画面への期待感が大きかったせいか、実際に見てみると新鮮な感動はそれほど得られなかった。
映像については、iPod Videoの映像ソース(320×240ピクセル)であることを割り引いて考える必要はあるが、iPod自体での視聴時と比べると、発色や輪郭のにじみが気になった。このため、輪郭がはっきりしているアニメ、洋画の字幕読み取りは厳しそうだ。こうした症状には明るさやコントラスト、明度彩度の調整である程度対処可能だと思われるが、本製品ではこうした機能が用意されていないのは残念だ。
なお、今回試用した個体では、RGBのR、つまり赤の位置だけが微妙にズレており、赤青メガネで立体視しているような感覚になった。個体に依存する点なのかもしれないが、一応お伝えしておく。
余談だが、筆者はスクリーンの真正面に座って映像を長時間鑑賞するというのが苦手で、仰向けに寝たまま天井に映像が投影されればラクだなぁ、と思うことがよくある。本製品を使えば、それに近い視聴スタイルも現実味を帯びてくる。仰向けで本製品を装着した状態であれば、本体の重さもそれほど気にならないからだ。ニッチな用途であることは承知の上だが、個人的にはむしろ、そうした用途を提案すべきではないかと感じた。
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内部に2枚の液晶パネルがあり、覗くと1つの映像として見える仕組み
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付属のコンバータ。これを介してiPodやDVDなどを接続する。ちなみにボリュームを調整する機能も付属する
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■ 「プライバシー確保」のニーズには合致。あとは価格か
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iPodをはじめとする機器を接続するためのケーブルが複数付属する
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本製品は、メガネのような外観を持つがゆえに、装着するだけで眼前に巨大スクリーンがあらわれると期待交じりの先入観を持ってしまいがちだ。そのため、過度な期待をしていると、実際に使ってみた時に期待はずれと感じるかもしれない。
もっとも、特定の映像ソースをとにかく大画面で、かつ、プライバシーに守られた状態で視聴したいというニーズには、本製品はたしかに合致している。映像はお世辞にも美しいとはいえないが、iPodの映像をソースとして用いている時点で、ハイビジョン並みのクオリティを追求しているわけではない。なにより、冒頭に書いたメリットのうち、視聴時にプライバシーを確保してくれるという点については、これ以上のソリューションはないだろう。
比較対象となる製品が同価格帯で他にないだけに、購入の決め手となるのは、4万円前後という実売価格をどう評価するかだろう。本製品は実際に使って見ないことには評価が難しいとも言え、購入を考えている方はデモを行なっている取扱店を探し、じっくりと確認されることをお勧めしたい。
■ URL
製品情報
http://www.mikimoto-japan.com/beans/beans_hmd/next/products/i_theater_v/i_theater_v.htm
MIKIMOTO Beans
http://www.mikimoto-japan.com/beans/index.htm
(山口真弘)
2007/09/19 10:57
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