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シンプルで直感的な操作ができる! ソニーICレコーダ「ICD-AX70」


ソニーの「ICD-AX70」。10月21日発売で、実売価格は1万円前後。シルバーとピンクのカラーバリエーションがある
 ソニーの「ICD-AX70」は、少々ユニークなICレコーダだ。USBポートやメモリカードスロットはなく、ボディのあちこちに大きなボタンやスイッチが配置されている。あえて、パソコンとの連携機能や先進的なユーザーインターフェイスを捨て去っているのだ。

 その代わりに、まるでカセットテープレコーダを使っているようなシンプルでわかりやすい操作性を実現している。デジタル機器にありがちな複雑で難しそうというイメージを一掃した、誰にでも扱いやすいデジタルレコーダなのである。

 カセットテープのような感覚で利用できるとは言っても、デジタルレコーダとしての基本性能はしっかりとしたものだ。記録ファイル形式はMP3で、周波数特性は最高75Hzから20KHz。オーディオプレーヤーとしても利用できそうな音質である。ストレージとして容量1GBのメモリを内蔵。メモリカードなどの外部メディアは利用できないが、ステレオ高音質モードで11時間55分、モノラル長時間モードでは288時間10分、つまり最大で連続12日間以上の長時間録音が可能となっている。

 再生に関してはリピートや指定区間の繰り返し、+100%から-50%まで再生速度を調整できるデジタルピッチコントロール、聞きたい部分を素早く見つけられるイージーサーチ機能などを搭載。このほか、録音した音声を設定した時刻に自動再生するアラーム、ある程度の大きさの音を自動的に記録するVORといった実務的な機能を備える。


上辺部にあるヘッドホン端子とマイク端子。緑と赤に色分けされた上、大きなイラストが描かれているので接続ミスの心配がない 左端の小さな穴が空いた丸い部分が内蔵ステレオマイク。スライド式のホールドスイッチは電源スイッチを兼ねている

電源は単4形アルカリ乾電池2本。このほかACアダプタやリチャージャブルバッテリーも利用できる
 電源は単4形アルカリ乾電池2本。連続動作は録音で最大65時間、ヘッドホンによる再生なら40時間、内蔵スピーカーによる再生でも15時間にも及ぶので、ランニングコストは気にならない。ヘビーに使うのなら別売オプションのACアダプタやリチャージャブルバッテリを利用しても良いだろう。

 外観は近頃のスマートなポータブルオーディオ機器とは異なる雰囲気だ。大きさは46.0×22.0×115.5mm(幅×奥行×高)。重量は単4形アルカリ乾電池を含めて85gほど。全体的なデザインは少し前のストレート型携帯電話を思わせる。また、大画面の液晶ディスプレイは真四角に近い形状。照明はないが表示が大きく、とても見やすい。ボディ端の左右にステレオマイク、フロントパネルの下部に直径28mm、出力300mWのスピーカーが内蔵されている。


ボディに書き込んである文字のほとんどが日本語。ボタンやスイッチは形状が異なるので指先の感触だけで識別できる 背面の金具を引き起こすと簡単なスタンドになる。ペンや指先がデスクに触れたときに出る雑音を防ぎたい場合などに有効だ

大型の録音ボタンと再生ボタンにはインジケータランプが埋め込まれていて、録音再生時には点灯し続ける
 ディスプレイとスピーカーの間には、インジケータランプを内蔵した大きな録音ボタンと再生ボタンが配置されている。この2つを含め、すべてのボタンやスイッチがメカニカル方式を採用しているのが大きな特徴と言えるだろう。タッチ式とは異なり、指先に操作した手応えがダイレクトに伝わってくるのだ。

 しかも、ホールドにはスライド式、音量調整や再生速度調整はシーソー式というように、動きに合わせた形状のボタンやスイッチが採用されているため、指先の感触で判別しやすいし直感的な操作が可能なのだ。これは照明が落とされたプレゼンテーション会場での録音など、手探りで扱いたい場合に力を発揮しそうである。

 ICD-AX70の操作性は、グラフィックスとタッチパネルに最小限のボタンを組み合わせたユーザーインターフェイスとは方向性が異なっている。使用頻度の低い詳細機能設定には階層メニュー風の方式が採用されているものの、それ以外は1つのボタンやスイッチに対して1つの機能が割り振られているのである。先進性よりもダイレクトな操作感とシンプルでわかりやすい操作性が優先されているのだ。

 この姿勢はマニュアルの実用性を重視した表記にも反映されているようである。録音した音声はファイルやデータといったカタカナ語ではなく「用件」と呼ばれているのだ。音質についてはサンプリング周波数やビットレートといった専門的な用語ではなく、高音質、標準、長時間の3種類。マイクの設定では、高感度が「会議」、低感度が「口述」というように具体的な用途をイメージしやすい表現が採用されているのだ。


液晶ディスプレイは正方形に近い大画面。照明はないが表示が大きく、少々暗い場所でも読み取りやすい カセットテープユーザー向けの簡単ダビングガイドにはケーブルの接続法などがイラスト入りで解説されている

付属のプラグ一体型マイクは単一指向性。特定の方向にだけ感度が高いので、周囲の雑音を避けて録音したい場合などに便利だ
 さらに、ICD-AX70では付属品も充実しているのが大きな特徴だ。パッケージには、プラグ一体型の小型単一指向性マイク、ステレオイヤーレシーバ、ステレオミニピンプラグ付きのオーディオケーブル、モノラルとステレオを変換するミニプラグアダプタ。それにキャリングケースと単4形アルカリ乾電池2本まで含まれている。まさに至れり尽くせりといった内容である。

 別売オプションとして用意されているACアダプタ「AC-E30L」と、単4形リチャージャブルバッテリ「NH-AAA」を除けば、必要と思われるアクセサリー類がひと通り同梱されたオールインワンセットなのだ。アナログ録音機器からデジタル録音機器へ移行するためのスターターキットとして最適なのではないだろうか。

 ICD-AX70は、スペックだけで見れば物足りなく感じられることがあるかもしれない。何しろ、アナログのステレオマイク端子とステレオヘッドホン端子があるだけで、デジタル入出力の手段が用意されていないのだ。メモリスロットもないため、内蔵メモリの1GBだけですべてをまかなわなければならないのである。しかし、ICD-AX70はオーディオプレーヤーではない。会議の記録、音声メモ、語学学習といった用途なら、これでじゅうぶんというのが筆者の印象だ。

 テープとは桁違いの長時間録音が可能な上、音質の劣化もない。なによりアナログ機器を使い慣れた人が抵抗感なく扱えるようデザインされているという点は特筆に値する。最新機器の操作は複雑で難しいという先入観を持ってしまっているユーザー、あるいは、いまだテープレコーダが手放せないユーザーにぜひ1度使っていただきたいアイテムである。


ジッパー付きの専用キャリングケース。内部のポケットに全アクセサリーの収納が可能だ プラグ一体型単一指向性マイク、イヤーレシーバー、アナログオーディオケーブル、変換プラグなどの豊富なアクセサリーが付属している

関連情報

URL
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/ic-recorder/ax70/index.html
  ソニー ICレコーダ製品ページ
  http://www.sony.jp/products/ic-recorder/


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(斉藤成樹)
2008/10/15 11:42
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