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e-Taxにも対応! ソニーのICカードリーダー「PaSoRi」新モデル


 ソニーから非接触ICカードリーダーライター「PaSoRi(パソリ)」の新製品、「RC-S330」が発売された。EdyやSuicaなどに加え、新たに公的個人認証サービスにも対応。住民基本台帳カードを使った確定申告にも利用できるマルチな製品だ。


「NFC」に対応し、対応ICカードが拡大

PaSoRiの新製品となる「RC-S330」。実売価格は3000円前後
 RC-S330は、USB接続型のICカードリーダライター。最大の特徴は、「NFC(Near Field Communication)」と呼ばれる国際標準規格をサポートした点だ。これによって、利用可能な非接触ICカードの種類が一気に増加した。

 具体的にはMIFAREと呼ばれる「ISO/IEC14443 Type A(以下、Type A)」、住民基本台帳カードなどで採用されている「ISO/IEC14443 Type B(同、Type B)」を新たにサポートした形になる。

 確定申告をするための電子納税システム「e-Tax」など、オンラインでの行政手続きに欠かせない「公的認証サービス」だが、利用には住民基本台帳カードが必要になる。カード自体は、表面にIC接触端子が露出している否かで2種類に分けられ、どちらが発行されるかは自治体によって異なる。

 このうち、接触端子が露出するタイプは「コンビ型」と呼ばれ、接触端子を通じた通信および端子を使わない無線通信のどちらをもサポートする。一方、露出しないタイプは「非接触型」であり、端子を使わない無線通信のみに対応する。

 公的個人認証サービスに対応するICカードリーダーの中には、接触端子での通信のみに対応するタイプもあるが、RC-S330では双方に対応していて汎用性が高い。なお、Webサイト「公的個人認証サービス ポータルサイト」では、自治体別のICカードリーダライター対応状況が確認できるので、目を通しておくのも良いだろう。


CD-ROMやUSBケーブルが同梱されている USB接続ケーブルの差し込み口 本体中央にはFeliCaロゴが彫り込まれている

 もちろん、FeliCaも従来通りサポート。Type A、Type Bと合わせて合計3方式に対応するマルチぶりが大きな魅力だ。

 本体サイズは約60×100×10mm(幅×奥行×高)で、非接触ICカード類のサイズとほぼ同程度の面サイズ。筐体はプラスチック製。重量は約35gと軽量だ。PC接続用に利用する1m長のUSBケーブル(長さ約1m)は取り外しも可能。なお、RC-S330側のコネクタはミニBタイプになっている。

 カラーリングは、黒を基調としたデザイン。意匠も最小限で、天面にFeliCaプラットフォームアイコンが彫り込まれている以外はソニーのロゴが表示される程度。例えば、動作状況を示すLED類もない。底面にはシリアルナンバーや「総務省指定」マークの書かれたラベルが貼られている程度だ。

 対応OSはWindows Vista/XP/XP MCEで、Vistaでは64bit版もサポートしている。また、家庭用ゲーム機「プレイステーション 3(PS3)」にも対応。PS3のファームウェアが「2.60以降」であれば、本製品と組み合わせてEdy関連の機能が利用できる。

 このほか製品には、「カードホルダー」が付属する。これはICカードをリーダー部に固定するための針金状の部品だ。本体底面のへこんだ部分に引っかけて使い、カードのズレ落ちを防げるというものだ。


Suicaとのサイズ比較 付属品のカードホルダーを利用したところ

EdyやSuica対応のアプリを同梱

付属CD-ROMからドライバや関連ソフトウェアをインストールしよう
 RC-S330の利用には、付属CD-ROMからドライバや関連アプリケーションをインストールするだけ。なお、説明書にも記載されているが、本製品をPCに接続する前にドライバ類のインストールを完了させる必要がある。

 基本となるドライバ「FeliCaポートソフトウェア」以外は、使用するカードや目的サービスに応じてインストールソフトウェアを選択すれば良い。Edyの入金や履歴閲覧をするには「EdyViewer」、Suicaの利用履歴を見るための「SFCard Viewer 2」、公的個人認証サービス用の「PC/SC アクティベーター for JPKI」などだ。このほか、FeliCa対応カードでPCをロックできる「スクリーンセーバーロック2」も用意されている。

 なお、「かざしてナビ」をインストールしておけば、タッチと同時にICカード関連ソフトをまとめたランチャーが自動起動するようになる。


自己診断機能を使って動作状況も確認できる コンロールパネルからも、設定の一部変更も可能だ

 日常的に使えそうなソフトの1つは、やはり「EdyViewer」だろう。電子マネー「Edy」の残高確認やオンラインでの入金などが可能だ。また、決済機能もあり、Amazon.co.jpなどの一部ショッピングサイトの支払いに利用できる。

 また、電車やバスを多用する人は、「SFCard Viewer 2」も重宝しそうだ。Suicaはもちろん、PASMOやKitaca、TOICA、ICOCA、PiTaPa、nimocaなど全国各地で提供されている交通系ICカードの残高を確認できる。利用履歴は最大20件分をテキストファイルに出力できるが、入金には対応しない。


電子マネー「Edy」の残高確認などに使える「EdyViewer」 「Suica」などのICカード乗車券の残高を確認できる「SFCard Viewer 2」 PS3にRC-S330を接続し、自己診断を行ったところ。残高確認も可能だ

公的個人認証サービスを利用するには?

住民基本台帳カード。筆者の地元では、表面にIC接触端子が露出している「コンビ型」が発行された
 ここからはRC-S330で新たに対応した公的個人認証サービスの使用法について、簡単に紹介していこう。

 まず大前提となるのが、住民基本台帳カードの取得だ。これは居住する市区町村の窓口で、有償で発行してもらえる。発行ルールは地域ごとに異なるが、運転免許証などの写真付き本人証明書を役所窓口に持参すれば、即日発行できるケースが多い。

 また、オンラインでの公的個人認証サービスを利用するのであれば、写真なしの住民基本台帳カードでも特に問題ないようだ(本人証明書として使うための、写真付き住民基本台帳カードもある)。

 もう1つ、住民基本台帳カード内に電子証明書を格納してもらう手続きも必要になる。住民基本台帳カード単体では、公的個人認証サービス、ひいてはe-Taxを利用できないので、忘れずに申し込んでおこう。基本的にはカード発行と同時に申請できるはずだ。

 筆者の地元では、カードおよび電子証明書の交付手数料は各500円、合計で1000円の費用がかかった。なお、住民基本台帳カードおよび電子証明書には、ユーザー自身が暗証番号とパスワードを設定する必要がある。

 電子証明書格納済みの住民基本台帳カードとRC-S330を用意したら、次にWebサイト「公的個人認証サービス ポータルサイト(URL)」から「JPKI利用者ソフト」をダウンロードする。このソフトを使うと、電子証明書に記載されたデータを確認できる。メッセージに従ってカードをセットし、前述の電子証明書用パスワードをここで入力する。

 認証が成功すれば、氏名や生年月日、住所、証明書の発行者(知事名)などが確認できるはずだ。これで晴れて、e-Taxなどの利用準備が整ったことになる。


「JPKI利用者ソフト」。e-Tax利用時にも必須 ソフト単体で、電子証明書の確認が行える

e-Taxなら「平成20年分確定申告特集」をチェック!

「平成20年分確定申告特集」内の確定申告書等作成コーナー。通常の確定申告であれば、このページの手順に沿っていくと良いだろう

手続きの途中で電子証明書の送信を求められる
 オンラインでの確定申告にあたっては、平成19・20年のどちらか1回に限って、最高5000円の税額控除を受けられる措置が設けられている。この控除措置をきっかけに、はじめて電子申告にトライする人も多いのではないだろうか。

 「とにかく個人として確定申告だけできれば良い」という人は、国税庁のWebサイト「平成20年分確定申告特集(URL)」をまずはチェックして欲しい。

 筆者が調べた限りでは、国税電子申告・納税システムである「e-Tax」というWebサイトもあるのだが、こちらは大規模法人も含めた納税者をターゲットにしているため、説明などでわかりにくい部分があると感じた。「e-Taxソフト」という名称の納税用ソフトも配布されているが、個人が使うには機能が多すぎて使いにくい印象だ。

 その点、「平成20年分確定申告特集」は良い意味で情報がコンパクトに抑えられており、一般的なWebサービスのユーザーIDに相当する「利用者識別番号」の取得、ルート証明書のインストール、Webブラウザの「信頼済みサイト」設定、ICカードリーダーを使った電子証明書の登録などが、Webサイトのガイドに従っていくだけでほぼ完了するように工夫されている。個人レベルであれば、「平成20年分確定申告特集」をチェックすればじゅうぶんだと思われる。

 具体的な手続きだが、まずは「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、冒頭に利用者識別番号取得および初期登録が行える。この際、電子証明書を送信する。ただ、作業自体は、前述のJPKI利用者ソフトで自身の証明書を確認する感覚とほぼ同等と言って良い。

 この作業が完了すれば、申告用の書類作成もWebブラウザ上から行える。書類作成を一時中断して、後日再開することもできる。なお、Windows OSからの利用はInternet Explorerが必須となっている。


1台ですむマルチさが魅力。対応ソフトの増加にも期待

もちろん、おサイフケータイも利用可能だ
 RC-S330は、従来からある非接触ICカードリーダライターの基本的な機能を備えつつも、これまで一般的とは言えなかった住民基本台帳カードの読込に対応。従来であれば微妙に規格の異なる2製品をそれぞれ買う必要があったものが、1つにまとめられる点は非常に大きな評価できると言えるだろう。

 実売価格も3000円程度で、他製品と比較しても標準的な価格設定で、コストパフォーマンス性も高い。1度購入しれば末永く使えるカテゴリの製品でもあるし、RC-S330を選ぶ意義は大きいと思う。

 ハードウェア的にも3つの無線規格をサポートしており、あとはアプリケーションさえ揃えばさまざまな発展が考えられる。今後も継続したアップデートにも期待したいところだ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.sony.co.jp/Products/felica/pcrw/rdw_rcs330.html
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/

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(森田秀一)
2009/02/18 11:06
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