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三洋電機の「ICR-RS110M」。実売価格は2万円前後
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三洋電機のラジオ付きICレコーダー「ICR-RS110M」は、2008年に発売された「ICR-RS110MF(製品ページ)」から付属品のマルチクレードルを省き、メインユニットだけを独立させた製品だ。
とは言っても、単純に価格を抑えた廉価版ではない。単体でも十分に魅力を発揮する、ICレコーダーの枠を超えた機能と性能が魅力の製品なのである。「ICR-RS110MF」との違いは、マルチクレードルとその周辺機器の有無、それに付属microSDカードの容量が1GBとなっている点のみ。
ラジオを聴いたり録音するだけでなく、語学などの学習用やポータブルオーディオプレーヤーとして、さらに会議や講演の記録から楽器演奏などのライブ録音まで、これ1台で幅広くこなせる多機能が魅力の1台だ。
ICR-RS110M本体は、シルバーとブラックを組み合わせたユニークなツートーンカラーが印象的だ。本体サイズは49.5×18×113.5mm(幅×奥行×高)、重量はバッテリーを含めて約92g。スリムで控えめなデザインが主流のICレコーダーとしては存在感がある。
フロントパネルは左右非対称で、左側の丸く盛り上がった部分が単3形バッテリーの収納エリアになっている。ボタン配置は右寄りだが、手に持っての操作は左右どちらでも問題ない。筆者の場合は右手よりも、むしろ左手の方が扱いやすいと感じた。バッテリー収納部の膨らみが指かかりになり、バランスが取りやすいのだ。
上端の1列に並んだ5つのボタンは、ラジオ聴取中はプリセット選局ボタン、音声データ再生中はA-B間リピートといった再生機能やファイル分割などの編集機能をワンタッチで呼び出すファンクションボタンとして機能する。手元に置き、メモをとりながら片手で操作するときに非常に便利な配置だ。
ドットマトリクス式の液晶ディスプレイは、一辺が約22mmの正方形。オレンジ色のバックライト付きだ。小さめの画面に多くのアイコンや文字を表示するため、少し離れると読み取りにくくなることも考えられるが、音声ガイダンスと電子音による確認機能があるので不便は感じない。
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液晶ディスプレイの下には計11個のボタン。上下左右対称の配置で適度なクリック感があり、操作しやすい
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上端に小さなボタンが5つ並ぶ。ラジオ聴取時はプリセット選局、再生時は各種の機能を呼び出すボタンとして動作する
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■ タイマー機能は最大5件。保存メディアはmicroSD
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側面のカバーを開けるとUSBポートとmicroSDカードスロットが現れる。最大8GBのmicroSHDCカードに対応する
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ステレオマイクは本体の上端、左右の角に内蔵されている。スタンドは用意されていないが、裏面にスピーカーを搭載しており、このまま高性能なICレコーダーとして利用できる。また、ヘッドホンとマイクを接続する3.5mmステレオミニピンジャック、電源ボタンやメニューボタン、それにmicroSDカードスロットやUSBポートは側面に配置されている。
語学学習番組や音楽番組の録音に便利なタイマー機能は日時や曜日、繰り返しなどを5件まで指定可能。それぞれの録音データは専用フォルダに振り分けられ、日時や周波数を組み合わせたファイル名が付けられる。再生時にはA-B間リピート、指定秒数をさかのぼって再生するセンテンス、任意のポイントにワンタッチでジャンプするインデックスといった機能が利用できる。
また、マイク録音時の音量を一定レベルに自動調整するALC、音声を感知して無音部分では録音を一時停止するVAS、エアコンなどのバックグラウンドノイズを低減させるローカットフィルタ、ボタンを押した後に指定した時間が経ってから録音を開始するセルフタイマーといった機能を搭載。ラジオ付きICレコーダーとしての機能は申し分ないレベルだ。
しかし、しばらくICR-RS110Mを使っていると、語学学習や会話の記録用だけではもったいないという気がしてくるのである。低音から高音までクリアに再生する音質の良さのせいだ。
実際、プリセット付きの5バンドグラフィックイコライザーを搭載していたり、プレイリストが利用可能だったりと、オーディオプレーヤーとしても十分な機能を備えているのである。単なるラジオ付きICレコーダーというよりは、多機能多目的なサウンドデバイスと理解した方が良いのではないだろうか。
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右側面にステレオマイクを接続する3.5mmミニピンジャック。左側にはヘッドホン接続用のジャックがある
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ミニBタイプのUSBポートと間違えそうになるが、これはオプションのマルチクレードルと接続するIOポートだ
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■ MP3とリニアPCMによる録音に対応
ICR-RS110Mの多機能ぶりは録音方式を見ても明らかだ。32/64/128/192kbpsと4段階の音質が選べるMP3形式に加え、リニアPCM録音をサポートしているのである。これは音声データを圧縮せずに記録する方式。長時間録音には大容量のストレージを用意する必要はあるが、音質は16bit、44.1KHzと、音楽CDと肩を並べるレベル。非可逆圧縮されたMP3形式などと異なり、PCに転送して加工する場合の音質劣化を抑えられる。コンサートやイベントの記録、またオリジナルCD作成のマスター音源作成などに利用価値の高い機能なのである。
本体にはメモリを内蔵しておらず、スロットに挿し込んだmicroSDカードにデータを記録する。容量が自由に選べ、内部と外部との使い分けを意識する必要がないのがメリットと言えるだろう。付属する1GB容量のmicroSDカード(ICR-RS110MFは2GB)には、32kbpsのMP3形式で最大約66時間、リニアPCMでは約1時間20分の録音が可能となっている。また、本体をUSBでPCに接続すれば、そのままmicroSDカードリーダライターとして使用できる。
電源は付属の単3形ニッケル水素充電池「eneloop(エネループ)」、または単3形アルカリ乾電池1本を使用する。eneloopは、本体にセットした状態でUSBバスパワーによる充電が可能だが、できれば専用の充電器(製品URL)を使用したいところである。汎用品なので入手しやすく、電池自体は他の機器と共用することができるので経済的だ。
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ドットマトリクス式の液晶ディスプレイはオレンジ色のバックライト付き。多くのアイコンや文字が表示されるが視認性は悪くない
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裏面にモノラルスピーカーを内蔵する。電源には単3形eneloop以外に単3形アルカリ乾電池も使用可能だ
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■ マルチクレードルのセットモデルも用意
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オプションのマルチクレードル「ASX-SP500」。実売価格は1万2000円前後。ICR-RS110MFには標準で付属している
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最後に、ICR-RS110MFでは付属品となっている専用のマルチクレードル「ASX-SP500(製品URL)」についても触れておこう。大きさは193×100×124.5mm(幅×奥行×高)で、重量は約620g。縦型のパネルとスタンドが一体化した安定感のあるデザインだ。なお、両製品をセットにした「ICR-RS110MF」は実売3万円前後で販売されている。
黒いメッシュの左右内側に50mm径、0.5Wの高音質大型スピーカーを内蔵。FM/AMそれぞれの外部アンテナ端子とACアダプタ端子を備える。ICR-RS110M本体をパネルの中央にセットすると、下の窪みにあるコネクタと接続。音声出力、アンテナ、電源供給がクレードル側へと切り替わる仕掛けだ。本体にeneloopが入っている場合には充電器にもなる、文字通りマルチな機能の専用クレードルである。
このマルチクレードルと一体化したICR-RS110Mは、その外観も音質もまるでミニコンポのようである。外部アンテナが利用できるので語学学習番組や音楽番組を安定して受信、録音できるし、PCなどから転送した楽曲データなどを大音量で楽しめる。ポータブル専用と割り切れば必須ではないが、ICR-RS110Mの性能をフルに引き出してくれる魅力的なアクセサリーである。
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スタンドの基部にACアダプタとAMラジオ用ループアンテナのコネクタ、パネル裏にFMラジオ用アンテナの接続端子がある
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ICR-RS110Mをセットしたマルチクレードル。デスクの上などに置いておくと、まるでミニコンポのように見える
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■ URL
ポーダブルラジオレコーダー製品情報
http://www.sanyo-audio.com/lineup/index.html#radio_recorder
三洋電機
http://www.sanyo.co.jp/
(斉藤成樹)
2009/03/04 11:09
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