シール状のラベルを簡単に作れるラベルプリンタ。現在、バリエーションも増加しており、液晶画面やキーボードを省略したPC接続専用タイプも増えている。
今回紹介するブラザー工業の「ピータッチ2430PC」もPC専用タイプの1つ。編集用ソフトやドライバを自動的にインストールする仕組みを持ち、初心者にも扱いやすいのが特徴の製品だ。
■ PC接続前提の小型筐体。ボタン類は最小限
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ブラザー工業のラベルプリンタ「ピータッチ2430PC」。標準価格は1万2800円
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「ピータッチ2430PC」は、PCに接続して利用するのが前提だけあって、ボタン類は天面にある2つだけ。非常にすっきりとした外観になっている。
本体サイズは67×188×111mm(幅×奥行×高)。奥行きが長いので、USB接続式の外付けHDDと同じようなスペースに設置できる。重量は570g(本体のみ)と、見た目と比べて軽い印象だ。
正面にはラベルの排出口、左側面には透明の小窓があり、本体カバーを開けることなく、ラベル残量や種類を確認できる。背面にはPC接続用のUSBポート(ミニBタイプ)、ACアダプタ差込口、印刷モード切替スイッチが並んでいる。
本製品とPCはUSBケーブルを使って接続するが、バスパワー駆動には対応していない。電源には、単3形アルカリ乾電池6本または同梱のACアダプタを利用する必要がある。
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ラベルは本体正面から排出される
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左側面の小窓から、ラベル残量などが確認できる
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背面にはUSBポートや印刷モード切替スイッチなどを備える
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透明小窓がある左側面はカセットカバーになっており、正面の矢印部分を押すことで開けられる。内部には乾電池やテープカセットの収納部がある。このテープカセットを交換することで、好みの色や幅などのラベルが印刷できるわけだ。なお、本製品では3.5/6/9/12/18/24mm幅のテープに対応している。
印刷方式は熱転写/感熱方式。テープカセット内にあるインクリボンをラベル部分に転写する仕組みで、基本的に単色印刷になる。ただ、テープカセットの種類によって白地に赤文字、青地に黒文字といったバリエーション印刷も可能だ。
なお、ラベルプリンタを継続的に利用していくには、消耗品の追加購入が欠かせない。本製品の場合、対応テープカセットの中心価格帯は1本当たり1050~1890円前後。カセットケースの再利用が可能なリフィルテープ(サーマル紙タイプ)は最も安いもので473~735円となっている。
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本体側面のカバー内にはテープカセットや電池の収納部がある
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テープカセットを取り外したところ
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テープカセット。左下の部分からラベルが出てくる
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■ USBマスストレージを利用したお手軽印刷モード
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本体背面の印刷モード切換スイッチを「EL」にしてPC接続すると、USBマスストレージとして認識される。そのストレージからラベル作成ソフトも起動できる
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それでは実際にセットアップしてみよう。とにかく手軽にラベル印刷したい場合は、本体背面のモード切替スイッチを「EL」にするのがオススメだ。
この状態でテープカセットを装着、さらにACアダプタとUSBケーブルを接続して電源スイッチをオンにすると、自動的にドライバ類のインストールが開始され、数十秒程度で作業が完了する。その後、ポップアップ表示された編集ソフト「P-touch Editor Lite」を起動させれば、ラベル印刷に必要な準備はすべて整ったことになる。
ここまでのセットアップ作業を見てみると、USBメモリをPCにはじめて接続した際のドライバインストール作業に挙動が似ていることがわかる。これは本製品がプリンタではなく、マスストレージとしてOS側が認識しているからだ。
実際、印刷手順を確認してみると、「P-touch Editor Lite」で印刷を実行した際、マスストレージ上の特定領域に印刷データを保存されている。その上で、本製品側でデータを検知して、印刷を開始する仕組みになっている。つまり、プリンタドライバをインストールすることなく、印刷を実現しているのだ。
実際、ELモードでPCに接続していると、1.45MB容量のストレージが追加されていることが確認できる。一方、プリンタドライバの一覧画面には本製品に相当する名称はない。また、「P-touch Editor Lite」はこのストレージ上に保存されており、PC側にインストールせず文字入力や編集、印刷が行える。手軽な操作感実現のため、さまざまな工夫が行われていることに驚かされた。
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2430PCのストレージ内に保存されているファイル
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ストレージにはドライブ文字が割り当てられ、一般的なプロパティも参照できる
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■ インストール不要で利用できる「P-touch Editor Lite」
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ELモード時に使う編集ソフト「P-touch Editor Lite」
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「P-touch Editor Lite」自体についても、紹介しておこう。本ソフトは、シンプルなインターフェイスながら、日常的なラベル印刷に必要な機能が揃っている。フォントや文字サイズ、太字・斜体・下線といった装飾などの項目を設定できる。
製品にセットしたテープの幅は、「P-touch Editor Lite」が自動認識するため、特にユーザー側で意識する必要はない。また、テープ長は入力文字数に応じて、自動調整される。もちろん、0.1mm単位で手動設定も可能だ。
一風変わった機能は、画面キャプチャによるイメージ挿入機能だろう。これは、PCのデスクトップ画面上をドラック操作で範囲指定すると、指定領域をラベルにコピーできるものだ。ラベル幅の制限もあるため、極端に大きな画像はキャプチャできないが、アイコンなどアクセント的なものを印刷する際には有効だろう。
また各種オブジェクトの位置調整にマウスが使える点も、単体利用可能なキーボード搭載型ラベルプリンタと一線を画す部分だと言える。
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フォントに「メイリオ」を選択しての印刷結果。ひらがなの「し」など、斜め線の部分は多少のドットっぽさが出ている
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画面キャプチャー機能を使えば、デスクトップ画面を範囲指定してそのまま印刷できる
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Windows Vistaの「コンピュータ」アイコンを取り込み、実際に印刷してみた
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印刷自体もボタンを押すだけと簡単。ラベルカットも自動で行われる。また、複数枚印刷や連番印刷にも対応する。熱転写方式を利用しているので動作音も非常に静か。印刷中のテープ送りにともなって多少発生する程度であり、待機中ならほぼ無音だ。
■ 同梱CD-ROMを使えば、より高度な印刷も可能
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Eモードでは通常のプリンタドライバをインストールして使う。より本格的なラベル印刷ソフト「P-touch Editor」にも対応
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手軽さが追究された「ELモード」に対し、「Eモード」はより本格的な印刷のために使用するモードだ。こちらはごく標準的なプリンタ同様、専用ドライバをインストールして利用する。ラベル入力ソフト「P-touch Editor」とともに同梱CD-ROMからセットアップし、Eモードに切り換えた本製品を接続すれば準備完了だ。
なお、Mac OSで利用する場合も同梱CD-ROMから専用ドライバと「P-touch Editor」が必要になる。前述のELモードはWindows専用であり、Mac OS使用時はEモードでの接続が前提である点に注意しよう。
「P-touch Editor」が持つ代表的な機能としては、表作成機能がある。これは表計算ソフトのセルを扱う感覚で操作でき、セル同士の結合やセルごとの文字揃えなどにも対応している。また、QRコードやJANコードなど20種類の規格に対応したバーコード機能も用意している。
このほか、テキストやCSV、EXCELなどのファイルからデータを読み込んでの連続印刷、顔のパーツを組み合わせてオリジナルの似顔絵を作る「モンタージュ」などの機能が搭載されている。基本機能に特化した「P-touch Editor Lite」からのステップアップにはぴったりの高機能ぶりだ。
ちなみに筆者の環境では、ドライバのインストール時に「通常使うプリンタ」の設定が2430PCへ自動的に変更されていたようだ。5KB前後のテキストファイルを印刷する際、「印刷枚数500枚」と出てしまって少々驚いた。普段、複数のプリンタを併用していないユーザーは前もって設定を確認しておくといい。
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バーコード作成機能を搭載。QRコードも印刷できる
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オリジナルの顔イラストを作れるモンタージュ機能
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■ PC用キーボード&マウスによる操作性が魅力
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いろいろな印刷を楽しめる
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以上、本製品を試用してきたが、実売1万円前後の手頃な製品ながら、PCソフトとの連携によって強力な文字入力や編集機能を備えているのが魅力だ。また、行書体などの特殊なフォント、画像などが簡単に印刷できる点も、単体型ラベルプリンタと比較した場合のメリットと言える。使い慣れたPC用キーボードやマウスで操作できる部分も忘れてはならない。
特にWindows環境で利用可能な「ELモード」による印刷機能は、シンプルな接続性かつ必要十分な編集機能を実現している。初心者以外にも、余計なソフトをPCにインストールしたくないと考える中上級ユーザーにも受け入れられる部分だろう。
本体サイズも比較的コンパクトで、収納性も良い。一般的な家庭でもDVDやCD-Rケースのラベルから、子供の持ち物に貼る名札シール、ポストに貼る表札がわりなど、用途は広いと感じた。
■ URL
製品情報
http://www.brother.co.jp/product/labelprinter/info/pt2430pc/
ブラザー工業
http://www.brother.co.jp/
(森田秀一)
2009/03/11 10:38
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