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FM電波に飛ばしてMP3をラジオで聴こう! 「FMTM-101」


サン電子のFMトランスミッタ「FMTM-101」。標準価格は5,980円。
 MP3プレーヤーを使っていて、ちょっと物足りない気分になったことはないだろうか。せっかく良い音楽があるのに、みんなで聴けないときだ。CDやMDならメディアを取り出し、そのへんにあるプレーヤーにかければ良いが、MP3プレーヤーはそうもいかない。外部入力端子付きのオーディオ機器にケーブルで接続しなければならないのだ。

 MP3プレーヤー内の音楽データを手軽にスピーカーで鳴らしたい。そんなニーズに応えてくれるのが、FMトランスミッタだ。使い方は簡単。プレーヤーからヘッドホンやイヤーレシーバーを引き抜いて、代わりにトランスミッタのジャックを差し込む。あとは、ラジオのスイッチを入れチャンネルを合わせるだけで良い。

 トランスミッタは、ヘッドホン端子からの音声出力を電波に乗せて送信するアクセサリー。受信にはFMラジオを使うため、部屋にあるミニコンポでも、通勤時に使うカード型ラジオ、あるいはFMチューナー付きケータイでも、とにかくFM放送が聴ける機器ならOK。ワイヤレスだからジャマなケーブルに悩まされることなく、どこにでもあるラジオをスピーカー代わりに使える。1台あると何かと役に立つアクセサリーなのだ。

 今回紹介するのはSUNTACの「FMTM-101」は、手のひらにすっぽり収まってしまうコンパクトなFMトランスミッタだ。角が丸められたボディは真っ白のプラスチック製。サイド部分にメタリックシルバーの太いラインが入る。持ってみると、ほどほどの重量があり、質感も悪くはない。見ての通り、iPodを意識してデザインされていると言って良いだろう。もちろんiPod専用ではなく、ヘッドホン出力端子のあるオーディオ機器ならば接続できる。

 iPod風のデザイン以上に目立っているのが上部に突き出ている吸盤だ。こんなものが小さな箱の上に乗っていると、なんだか小さなパラボラアンテナに見えてくる。まるで、昔のスパイ映画に出てくる小道具といった雰囲気だ。もちろん飾りではない。ここにiPodの背面をくっつけると、ちょうど斜めに立てかけたような形で一体化できるのだ。そのままデスクの上に置けば、ディスプレイが見やすい角度になる。アヤしげな外見とは裏腹に、なかなか考えられたデザインと言えるだろう。吸盤は、上下に首を振るように角度が調整できるし、横のネジを締め込んで固定することもできる。iPodよりも小さなプレーヤーは水平にして上に載せ、FMTM-101をスタンド代わりにするのも良いだろう。


iPodを本体上部にある吸盤に吸着させたところ。もちろん、他の携帯型音楽プレーヤーなどでもOKだ 逆に吸盤を利用して本体を固定することも可能。筆者は車のフロントウィンドウや、デスクトップパソコンの横にくっつけて使用してみたが、使い勝手は悪くなかった

 操作系はいたってシンプル。本体横にスライド式の電源スイッチと周波数を切り替えるスイッチ、反対の面に外部電源用のコネクタがついているだけだ。送信する電波の周波数は88.2MHz、88.6MHz、89.0MHzの3種類から選べる。一般のFM放送よりも少しだけ高い周波数だが、どれも大抵のラジオなら受信可能な帯域だ。ほかの無線機器、あるいは地域FM局などの周波数と重なってしまった場合にも素早くワンタッチで切り替えられるのが良い。また、デジタルチューニング方式を採用しているので、安定性も抜群。ダイヤル式のような細かい調整はできないが、ちょっと触っただけで周波数が変わってしまうなんてことはない。受信側のラジオもデジタル方式なら、周波数ズレによる雑音に悩まされることもないだろう。

 余談になるが、筆者には子供のころトランスミッタをオモチャ代わりにして遊んだ記憶がある。ラジカセやマイクをつなげて好き勝手な曲をかけ、ラジオDJの真似事をしていたのだ。今でこそ、MP3プレーヤーのアクセサリーとして広まりつつあるトランスミッタだが、筆者の中ではオモチャとしての印象が強い。

 そんなせいもあってか、音質については期待していなかった。理屈から言っても、アナログ出力を電波に乗せ、それを受信再生するわけだから、プレーヤー本来の音質よりも相当に落ちるだろうと考えていたのだ。実際、歪みと雑音だらけのヒドい製品を使ったこともある。ところが、FMTM-101を通した音を聴いて驚いてしまった。イイのである。プレーヤーにつなげたヘッドホンで聴くのと同等とまでは言わないが、個人的な評価ではFMラジオ放送と大差ないレベルだ。オモチャどころか、オーディオアクセサリーの1つとして常用しても良いとさえ思える。筆者のトランスミッタに対するイメージは偏見だった。今後は改めることにしたい。

 安定性と音質はかなりの高レベルだが、電波の届く範囲はどうだろう。FMTM-101は法律上、「微弱電波機器」としての規制を受けている。微弱電波機器とは、ほかに影響のない、ごく弱い電波だけを使う無線機器という意味だ。規制の内容を見てみると、実用的に利用できる距離は数メートル程度となるが、実際どの程度まで使えるのか試してみた。

 まず、6畳ほどの部屋の中。この条件なら、トランスミッタとラジオをどのように置いてもクリアなステレオ音声を受信できた。次に、壁を隔てた隣の部屋。距離にして3メートルほどだ。ここでも問題はない。少々危うくなってきたのは、壁2枚を挟んで6、7メートルの距離になってからだ。ちょっとラジオを動かすとノイズが入ったり、モノラルに切り替わってしまうことがあった。以上の結果から、実用的には5メートル前後と考えて良さそうだ。見通しの良い場所なら、10メートル程度まではいけるかもしれない。参考までにFMTM-101をパソコンや、待ち受け状態の携帯電話の近くに置いてみたが、受信側の音に気になるような影響はなかった。


本体横にあるスイッチはスライド式の電源スイッチと周波数を切り替えるスイッチのみで、操作方法はいたってシンプル。ちなみに反対側には外部電源用のコネクタがある 吸盤の後ろにはヘッドホンジャックへ接続するためのケーブルが出ている。長さは10cmほどで、色は本体と同じ白色だ。アンテナは外部型ではなく、内部に格納されているようだ

 本製品は単4乾電池2本を使用して動作する。説明書には、乾電池使用時の動作時間は特に記載されていなかったが、試用期間中、電池が切れる気配はなかった。トランスミッタとは言え、ごく弱い電波を送信するだけだから消費電力も多くはないのだろう。さらに、30秒間信号の入力がないと自動的に電源が切れる省電力機能も備えている。他製品の数値から考えても数十時間は動きそうだ。なお乾電池のほかにも、別売のACアダプタやシガーライターソケットアダプタから電源をとることができる。

 また、個人的に気になった点を2つほど挙げておこう。まず、ヘッドホンジャックにつなげるケーブルが10cmほどしかないという点。特に車内で使う場合には物足りなく感じてしまう。もちろん長すぎればプレーヤーと一体化させるときはジャマになるだけだし、車には延長ケーブルを積んでおけば良いだけの話なのだが。もう1つは吸盤部分。FMTM-101の大きな特徴だが、残念ながら取り外せないのだ。正確に言えば、吸盤そのものは固定用のネジを抜くだけで取り外せる。しかし、支柱部分が2cmほど出っ張ってしまうため、服やバッグのポケットに入れるとき、どうしてもジャマになってしまう。小さなアクセサリーに対してワガママな意見かもしれないが、本体性能が良いだけに、ちょっと気になってしまうのである。

 実際に使ってみて便利だと実感したのは、やはり車の中。一般的なカーステレオに外部入力端子はないが、FMラジオは大体備え付けられている。トランスミッタが本領を発揮するシチュエーションだ。さらに、FMTM-101は吸盤を使ってアンテナ近くのウィンドウに固定できるため、カーステレオのラジオでも非常にクリアな音を聴くことができる。筆者の周りでも、MP3プレーヤーの愛用者は増えていて、みんな早々と手に入れた新譜をiPodに詰め込んで持ち歩いている。FMTM-101は、そんな連中を車に乗せるときは必需品になりそうだ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.sun-denshi.co.jp/scc/bb/fmtm101/fmtm101.html
  サン電子
  http://www.sun-denshi.co.jp/


(斉藤成樹)
2004/03/10 11:03
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