■ PC用ハンドセットとして利用可能なコードレス電話
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パイオニアコミュニケーションズのUSB対応コードレス電話機「TF-FS22M-R」。標準価格は19,000円
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この電話機には留守番電話機能がついていない。ハンズフリー機能もない。ナンバーディスプレイには対応していないし、子機の増設もできない。今時、珍しいとも言えるほどシンプルなコードレスホンである。しかし、TF-FS22M-Rはタダの電話機ではない。電話回線に接続するモジュラージャックとは別に、パソコンにつなげるためのUSBインターフェイスを搭載しているのだ。
インターネット上では、インスタントメッセンジャーやポータルサイトでの音声チャットなど、ほかのユーザーとの会話を楽しむ手段が普及している。こういったサービスを利用する場合、パソコンに内蔵されているマイクとスピーカー、あるいはヘッドセットと呼ばれるマイク付きヘッドホンを使うのが普通だ。USBで接続したTF-FS22M-Rも、これらと同じようにパソコン用のマイクとスピーカーとして機能するのである。
もちろん、一般的な電話機として使うこともできるし、モジュラーケーブルとUSBケーブル双方を接続しておき、必要に応じて機能を切り替えることもできる。IP電話用としても気になる製品ではないだろうか。
F-FS22M-Rの外見は、一般的なコードレスホンの子機と変わらない。充電台の上にハンドセットを載せる、おなじみの形だ。ただし、親機にあたるユニットはなく、その機能が充電台の中に組み込まれている。こうしたスタイルは、個人ユーザー向けとして広まりつつあるようだ。
ハンドセットを置く部分は、スモークがかった透明のプラスチック製。その内部に丸くて大きなイルミネーションがある。これは電話がかかってきたときに点滅するほか、常に点灯させておくことも可能。発光色はブルーかオレンジ、または2色が数秒ごとに切り替わるパターンが選べる。明るさはかなりのもので、暗い部屋の中ではまぶしいほどだ。
ボディの色は赤とメタリックグレーのツートン。アーバンレッドと呼ばれているが、赤と言うよりは濃いピンク、ラメ入りのマニキュアを思わせる。ちなみに、同じデザインでUSBインターフェイス非搭載の姉妹モデル「TF-FS21-A」はブルー系。白やグレー系の色を基調とした電話機が多い中、一際目立つ存在だ。
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待ち受け状態でもイルミネーションを点灯させられる。ベッドサイドに置くには明るすぎるほどだ
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親機を内蔵した充電台。アンテナなどの突起物はないが、一般的なコードレスホンの充電台と比べると、二回りほど大きい
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■ ハンドセットの操作系統は携帯電話の感覚に近い
親機は、背面にモジュラージャックとUSBインターフェイス、それにACアダプタの差し込み口があるだけで、スイッチの類は一切ない。すべてハンドセット側からリモート設定する方式だ。
ハンドセットの操作は、リング状の4方向ボタンと中心にある決定ボタンがメイン。これはケータイに採用されている配置に近く、直感的に扱うことができる。液晶ディスプレイの文字列は12桁2行。最下段には、各機能の状態を知らせるステータス行がある。
電話帳は100件分。漢字やひらがなの表示には対応していないが、登録番号の上3桁を自動認識し、090なら携帯電話、050ならIP電話というように、一目で見分けられるマークを付けてくれる。また、よくかける相手の電話番号を10件分登録できる「お気に入りダイヤル」や、設定した時刻にメロディが流れる「モーニングコール」といった機能もある。
受話口から聞こえる音声はかなり大きく、騒がしい場所でもハッキリと聞き取れる。従来機より通話音量を大きくできるようにしてあるそうだ。着信音は一般的な呼び出し音のほか、G線上のアリア、ユーモレスク、ラデツキー行進曲などの着信メロディが選べる。こちらも十分すぎるほどの音量なので、静かな場所では無音に設定してしまうと良いかもしれない。筆者は音を消してデスク上に置いていたが、明るいイルミネーションが点滅するおかげで着信を見逃すことはなかった。
USB接続は、Windows 98SE以降のOSに対応している。設定は非常に簡単。専用ドライバをインストールする必要はなく、OS側で準備している標準ドライバを利用する。ただ、筆者の環境ではパソコンが少々古かったせいか、Windows Updateからファイルをダウンロードする必要があったが、これもウィザードの指示に従うだけ。最近の機種ならば、OSのインストールディスクをセットする手間さえかからないだろう。USBケーブルを接続すれば、「USB Cordless Handset」または「USBオーディオデバイス」として認識されるはずだ。
ケーブルを差し込み正常にセットアップされたら、メッセンジャー等で使用するマイクとスピーカーを「USB Cordless Handset」か「USBオーディオデバイス」に設定すれば、準備完了。ハンドセットの右下にある「PC」ボタンを操作するたびに電話回線とパソコンが切り替わる。パソコン側に設定しておくと、効果音や音楽が受話口から聞こえてくる。拡声モードにすれば、簡単な外部スピーカーとしても使えそうだ。もちろんマイクとしても利用でき、送話口に向かって話せば音声データとして認識される。
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ハンドセットのディスプレイ部分。グリーンのバックライト付き。普段はデジタル時計が表示されている
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親機背面。上の差し込み口にUSBケーブル、左下にACアダプタ、右下にモジュラージャックをそれぞれ接続する
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■ PCの音に連動した「PCお知らせ機能」には、ちょっとした落とし穴も……
TF-FS22M-Rを、パソコンに接続すると「PCお知らせ機能」も使えるようになる。パソコンが出す音に連動して、着信音を約10秒間鳴らすという機能だ。効果音を設定しておけば、メッセンジャーの呼び出しやメールの到着を電話の着信音で知ることができるのである。
なかなか面白そうではあるが、実はちょっとした落とし穴がある。それは、パソコンから出るすべての音に反応してしまう点だ。音楽を再生するときなどは無効にしなければならないし、効果音を多用していると、操作するたびに着信音が鳴り響くという事態に陥りかねない。常用するというよりは、必要な場合にだけ有効にするべき機能だろう。
ちなみに筆者はデスクの前を離れるときに設定していた。着信音はパソコンのスピーカーから出る音より耳につきやすく、家の中なら少々離れていても聞き取れる。着信通知だけでなく、簡単なアラームとしても利用できるのだ。
留守番電話がついていなかったり、子機の増設ができなかったりと、家族で共用する電話機としては今ひとつ不満が残るかもしれない。現代のライフスタイルからすれば、普段の通話はケータイ中心、固定電話は友達とゆっくり話すときに使うことが多いのではないだろうか。さらに部屋にはパソコンがあり、あるいはIP電話を利用していたりもするだろう。そういう人たちのニーズに応えるのがTF-FS22M-Rだ。シンプルではあるが、実績あるメーカーの製品だけあって、基本機能はしっかりと押さえられている。
今回試用してみて印象的だったのは、当たり前ではあるが、コードレスホンと同じ感覚で音声チャットが利用できるという点だ。普通ならヘッドセットをつけてパソコンの前に座り込まなければならない。しかし、コードレスなら話しながら冷蔵庫の中を物色したり、ベッドに寝転がったりできるのである。ハンドセットを耳に当てているせいもあってか、チャットに参加しているという意識が薄らぎ、電話で話しているような気分になるのだ。
実を言うと、筆者はヘッドセットでのチャットには少々抵抗がある。知人に白い目で見られたことがあるからだ。確かに怪しげな機械を頭に付けてパソコンの前に座り、ヘラヘラ笑いながら話している姿はブキミだろう。その点、TF-FS22M-Rは普通の電話と見分けがつかない。と言うより、正真正銘のコードレスホンなのである。傍目にも長電話をしているようにしか見えないはずだ。これなら誰はばかることなく、大イバリでチャットに集中できそうである。
■ URL
製品情報
http://pioneer-pcc.jp/select/homecoderess/FS12/fs22.html
パイオニアコミュニケーションズ
http://pioneer-pcc.jp/
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(斉藤成樹)
2004/03/24 11:05
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