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売れ筋ネットワーク対応メディアプレーヤー2機種を比較!


 昨年末から、ネットワーク対応のメディアプレーヤーが巷で人気だ。価格が2万円台と手頃なこともあり、主要各社の製品は量販店で入荷即完売を繰り返している。今回は現在売れ筋となっている2機種について、それぞれの使い勝手を比較してみたい。


そもそもメディアプレーヤーって何?

 メディアプレーヤーがどういう用途の製品か、まだイマイチ理解できない方もおられるはずだ。そこでまず、これら製品の概要を説明しておこう。

 パソコンでテレビを録画した場合、その番組はパソコンのハードディスクに保存される。その番組を鑑賞するには、これまではパソコン上で再生するしかなかった。オーサリングしてDVD化すればDVDプレーヤーでも鑑賞できるが、ライブラリを作るのでもない限り、わざわざ手間をかけてオーサリングするのは面倒だ。

 そこでネットワーク対応メディアプレーヤーの出番だ。本製品をテレビに接続したのち、家庭内のLANに接続する。パソコンにはサーバーソフトをあらかじめインストールしておく。こうすれば、パソコンの中にある動画ファイルをメディアプレーヤー側で呼び出し、テレビで鑑賞できるというわけだ。LANに繋がっていればどんな離れたところにあっても再生可能なので、例えば2階の自室にあるパソコンで録りためた動画ファイルを1階のリビングにある大画面テレビで見る、といった芸当が可能になる。再生・早送り・巻き戻しといった一連の操作はメディアプレーヤー側で行なうので、パソコン側は電源さえ入っていれば、他の操作は必要ない。

 ちなみに、多くのメディアプレーヤーは音楽ファイルや画像ファイルの再生にも対応しており、パソコン内のMP3ファイルをメディアプレーヤーに接続されたAV機器で聴いたり、デジタルカメラで撮った写真データを大画面テレビに出力して楽しむ、なんてこともできる。


売れ筋メディアプレーヤー2製品比較。操作性からハードウェアまで

(上から)アイ・オー・データ機器の「AVeL LinkPlayer」(購入価格24,800円)、バッファローの「LinkTheater」(同27,800円)。サイズの差はほとんどなく、奥行きもほぼ同一
 さて、今回筆者が購入したアイ・オー・データ機器の「AVeL LinkPlayer(以下LinkPlayer)」とバッファローの「LinkTheater」は、いずれも本体にDVDドライブを内蔵したネットワーク対応メディアプレーヤーだ。前述のようにパソコン内にあるファイルをテレビ上で再生できるほか、DVDプレーヤーとしても利用できる。さらに、DVDメディアに焼いたファイルを再生することも可能だ。リビングと自室にそれぞれ1台ずつ置けば、パソコン内のファイルをどちらの部屋でも見られる、という寸法である。

 両製品の操作体系は非常に似通っている。パソコン側にインストールするサーバーソフトの使い勝手をはじめ、サポートするファイル形式もほぼ同様、特定のファイルに対する挙動もほぼ変わらない。発売当初はNASへの対応が分かれていたが、今や両製品ともNAS対応となり、この点でも差はない。価格もほぼ同等だ。つまりどちらを選んでも大差はないのだが、細かい使い勝手では異なる部分も多い。以下にその代表的なものを紹介していきたい。

 まず再生時の安定性についてだが、まだ登場したてのジャンルということもあり、両製品とも安定性は高いとは言い難い。特にDivXで圧縮したファイルを再生中に早送り/巻き戻ししようとすると一旦ハングアップしたような状態になってしまうほか、実際そのままハングアップする場合もあった。そのような場合は本体を再起動するしかないのだが、アイ・オーのLinkPlayerは本体前面に物理的な電源スイッチがあるため、背面に手を回さなくとも再起動が行なえる。一方、バッファローのLinkTheaterは電源ケーブルを抜くしか手段がないため、本体をテレビラックから引っ張り出さなければならない。こうした点は実際使う側からすると、大きく使い勝手が分かれる部分である。

 リモコンの作りこみも若干差がある。LinkPlayerは、リモコンでボリュームの操作が可能(5段階可変)だが、LinkTheaterは消音のみ、つまり1段階だ。また、LinkTheaterのリモコンは、筆者が使用した範囲では感度が悪く、深く押し込むようにボタンを押さないと反応しないケースがあった。

 一方、バッファローのLinkTheaterは動画ファイルの再生時に経過時間(XX分XX秒)を本体前面のウィンドウに表示できるが、アイ・オーのLinkPlayerはこれができない。つまり、動画ファイル再生時には時間経過を確認する方法がないのである(ちなみにDVD再生時はきちんと経過時間が表示された)。


本体前面スイッチの数はLinkPlayer(写真上)が7個、LinkTheater(写真下)が4個 (写真左から)LinkPlayerとLinkTheaterのリモコン。両方とも使いやすいとまでは言い難い

 さて、操作性の面では大きな差はない両製品だが、装備する出力端子についてはどうだろうか。バッファローのLinkTheaterがコンポジット/Sビデオ/コンポーネント端子を装備、アイ・オーのLinkPlayerはコンポジット/Sビデオ/D4/DVI-I端子を装備している。コンポーネント端子やD4端子は、プラズマテレビなどに高画質で出力したいと考えておられる方には魅力的な仕様であろう。

 加えて、LinkPlayerでは背面にPCカードスロットも装備し、先日発表があったように公開予定のファームウェアを適用することで、デジタルカメラなどで撮影した画像をカードスロット経由でテレビに表示するという芸当も行なえるようになる。このほか、カードスロットには同社製の無線LANカードを装着できるなど、拡張性の高さは魅力だ。ただし、対応無線カードは今のところIEEE 802.11b規格の製品だけなので、動画を中心に使うのであれば有線で接続した方が良いだろう。

 また、これは筆者所有のマシン個体の問題かもしれないが、バッファローのLinkTheaterは、電源投入時にDVDドライブから「ブーン」とかなり大きな音がする。起動時のみの症状とはいえ、近い位置に設置しているとあまり気分の良いものではない。そのため筆者宅では、バッファローのLinkTheaterはリビングで、アイ・オーのLinkPlayerは自室の枕元で、というロケーションに落ち着いている。


本体背面ポートの比較。写真上がLinkPlayerで、写真下がLinkTheater。LinkPlayerはPCカードスロットも備える パソコン内のファイルはこのように表示される。両製品とも、タイトルが長すぎると途中までしか表示されないので注意が必要

結論、そしてメディアプレーヤーのこれから

 以上、両製品の機能面での違いを見てきた。筆者の中で、現状どちらの製品が良いかと言われると、アイ・オーのLinkPlayerが完成度が高いように思える。文中では取り上げていないが、本体の質感についてもアイ・オーのLinkPlayerが上だと感じた。今後のファームアップの内容いかんでは評価が逆転する可能性もあるが、リモコンや電源スイッチなど、ハード面で差をつけられている部分は大きい。

 最後に、ネットワーク対応メディアプレーヤーの今後の進化についても触れておこう。今後おそらく焦点になると思われるのが、現在サポートされていないWMV形式への対応だ。今のところ、各メーカーの製品ともWMV形式には対応していないが、そもそもチップを実装していない以上、既存製品のファームアップで対応することは困難だと思われる。おそらく新製品の投入という形で対応が実現すると考えられるが、WMV形式はシェアも高いだけに、どれだけ早く対応製品を市場に投入できるかが勝敗を左右しそうな気配だ。

 あと個人的には、見終わったファイルを削除できる機能がついてくれると嬉しい。外付けハードディスクをダイレクトに接続できる機能なんてのもあれば便利そうである。いずれにせよ、これからの展開が楽しみなジャンルと言えそうだ。


関連情報

URL
  アイ・オー・データ機器 AVeL LinkPlayer(AVLP1/DVD)
  http://www.iodata.jp/prod/multimedia/video/2003/avlp1dvd/
  バッファロー LinkTheater(PC-MP2000/DVD)
  http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/p/pc-mp2000_dvd/index.html


(後藤重治)
2004/03/31 11:01
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