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オンキョーの「SE-U33G(S)」。店頭販売価格は1万円前後
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筆者の家には結構な量のLPレコードが残っている。特にアナログにこだわりがあるワケではないのだが、ときどき聴きたくなるような盤もあるし、ジャケットを額縁に入れて壁に飾ったりもしている。ジャマではあるが、愛着があるせいかどうしても処分できないのである。今回紹介する品は、そんなレコードに関係した製品、オンキヨーのUSBデジタルオーディオプロセッサ「SE-U33G(S)」だ。
デジタルオーディオプロセッサとは、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換してパソコンに送り出す、あるいは逆にパソコンから送られてきたデジタル信号をアナログ信号に変換してアウトプット端子やヘッドフォン端子から出力する機器のこと。SE-U33G(S)も、機能的にはデジタル音声データを録音再生するユニットだ。しかし、フォノイコライザーを内蔵しており、レコードプレーヤーをそのまま接続できるという大きな特徴を持っているのである。
デジタルオーディオ全盛の今では知らない人が多いかもしれないが、レコードプレーヤーの出力方式は、ほかのオーディオ機器とは異なっている。昔のオーディオアンプが専用のフォノ入力端子を備えていたのはこのためだ。現在のようにライン入力端子しかない機器で正常に再生するためには、何らかの補正を行なわなければならない。この役目を果たしているのが、SE-U33G(S)にも内蔵されているフォノイコライザーなのだ。
フォノイコライザー自体は今でも手に入れることができるし、現行のレコードプレーヤーにはそのままライン入力端子に接続できる製品もあるようだ。パソコンでレコードの音をデジタル録音するのなら、こういった機器を揃えるという手もある。
しかし、SE-U33G(S)なら以前使っていたレコードプレーヤーがそのまま活用できる。筆者のように昔集めたレコードとプレーヤーを捨てきれず、ジャマとは思いながらも部屋に置いている場合、あるいは押し入れや物置きの片隅に保管している場合もあるだろう。SE-U33G(S)は、そんな人たちが手軽に使える製品なのだ。
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フロントローディングタイプのプレーヤーに乗せて撮影。ちなみにレコードは筆者のコレクションからビートルズの青盤
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前面にはヘッドフォンとマイク用のミニジャック。右のボリュームはヘッドフォン音量と入力レベル調整
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筆者自身は、レコード盤を大きなジャケットから注意深く取り出してターンテーブルに載せ、ホコリを払って外側のフチに針を落とすという作業が嫌いではない。が、やっぱり面倒ではある。そのため、どうしてもレコードを聴く機会が減ってしまうのだ。
しかし、いったんデジタルデータ化してパソコンに取り込んでしまえば、CD-Rに焼いてCDプレーヤーで聴いても良いし、MP3プレーヤーに転送して持ち歩いても良い。その気になれば編集や加工も自由自在だ。MDなどに録音しておくより、はるかに柔軟に扱えるのである。
さらに、アナログ音源には聞いているうちに音質が変わってしまうという弱点がある。レコード盤のミゾは繰り返し針でひっかくことで変形してしまうのだ。汚れ、カビ、キズなどでダメになってしまうことも珍しくない。気に入ったレコードは、再生用と保存用に2枚買うという人さえいたくらいなのだ。カセットテープなどの磁気テープも時間が経てば音質が落ちてしまう。アナログ記録の経年劣化を避けることは難しいのである。
しかし、デジタルデータならそんな心配は無用。いつまでも劣化することなく、録音したときの音が聴ける。貴重なアナログ音源の保管方法としては理想的なのではないだろうか。
■ 老舗の音響機器メーカーならではのこだわりも
フォノイコライザーはともかく、音声データの録音再生ならパソコンだけでできるじゃないかと思うかもしれない。たしかにその通り。デジタルオーディオプロセッサはパソコンのサウンド機能を独立させたようなユニットなので、なくても困りはしない。しかし、良い音を楽しみたいとなると話は違ってくる。
パソコンのサウンド機能は意外に軽視されているのではないだろうか。もちろんAV機能を重視したモデルもあるが、比較的安価なパソコンではオマケ的な扱い、とりあえず音が出れば良いという程度の部品で構成されている場合が少なくない。
その点、SE-U33G(S)はオーディオ機器用の高品位パーツを採用することで、高音質と低雑音を実現している。例えば、デジタル信号とアナログ信号とを変換するDACは24bit/192KHzという高ビットレート、高サンプリングレートに対応したWolfson社の製品だ。再生時は16bit/48KHzまでの対応となるが、それでもCDの16bit/44.1KHzというスペックを上回る。
また、音声データ処理にもVLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)というオンキヨー独自の技術を盛り込み、徹底的に雑音を排除している。老舗の音響機器メーカーの製品だけあって、各所にこだわりが見える設計だ。
デジタルオーディオプロセッサの利点は、ほかにもある。電気的な雑音の影響を受けにくいのだ。パソコンはハードディスクや冷却ファンなど、雑音を出しそうな部品を詰め込んだノイズ発生機のようなものなのである。実際、筆者が使っているノートパソコンは、なにも音を鳴らさない状態で音量を上げると「ブ~ン」という音が聞こえてくる。ところが、同じマシンに接続したSE-U33G(S)は、同じように音量を上げても、ほとんど無音なのだ。オーディオのアナログ回路は周囲の雑音の影響を受けやすく、できるだけ発生源から離しておく方が良い。そういった意味でも、デジタルオーディオプロセッサ使う意味はある。
SE-U33G(S)とパソコンはUSBケーブルで接続する。アナログオーディオ機器専用に設計されているらしく、光など、デジタルオーディオ用の入出力には対応していない。本体についているのはボリュームとスライドスイッチが2つずつというシンプルな構成。一般的なオーディオ機器を扱った経験があれば操作に迷うことはないだろう。
電源はバスパワーというUSBインターフェイスから供給する方法をとっている。オーディオマニア的にいえば、専用電源を用意して欲しいところだが、コストや使いやすさを考えれば妥当といえそうだ。実際、音質に不満を感じたことはなかったし、むしろUSBケーブルを差し込むだけで動くという軽快さに魅力を感じた。
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左からアース端子、入出力端子、USBインターフェイス。オーディオで標準的な形状の入出力端子には金メッキが施されている
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右側面のスライドスイッチ。左のスイッチをUSBに設定すると、S/N比110dBという高音質の再生専用モードになる
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■ 編集ツールとして「DigiOnSound4 L.E.」が同梱
対応OSはWindows XPまたはWindows 2000。CPUは800MHz以上の製品が推奨されている。ただ、これは付属のサウンド編集ツール「DigiOnSound4 L.E.」が要求するスペックのようで、SE-U33G(S)自体はもっとロースペックのパソコンでも問題なく動作する。筆者は500MHzクラスのCPUを搭載したノートパソコンに接続してサウンドデータを再生させていたし、Windows 98SE付属のサウンドレコーダーを使って、短時間ながら録音することもできた。
「DigiOnSound4 L.E.」は、高速非破壊型エンジン搭載でストレスのない快適な操作が可能なサウンド編集ツールだ。SE-U33G(S)に付属しているのは、ONKYO特別仕様版。クラックルノイズなど、アナログ音源の雑音を除去する機能を備えている。クラックルノイズとは、レコードでよく聞かれる「パチパチ」「プチプチ」といった音のこと。ヒップホップ系やR&B系の曲では効果音的にクラックルノイズを入れたりもしているが、普通に音楽を楽しむ人にとってはジャマモノでしかない。デジタル録音時にこういった雑音を除去し、クリアな状態で保存することができるのである。
最後にレコードプレーヤーを接続する際の注意点をあげておこう。針の種類だ。レコード針にはいくつかの種類があるが、このうちSE-U33G(S)が対応しているのはMMと呼ばれる方式。出力が大きく、寿命がきても針先だけを簡単に交換できるという特徴がある。現在では、このMM方式のシェアが高いそうだ。しかし、以前にはMCといった異なる方式を採用するレコード針も多かった。手持ちのレコードプレーヤーを確認してみて、もしMM以外の方式なら、別に対応機器が必要になることもあるので気をつけていただきたい。
■ URL
製品情報
http://www2.onkyo.com/jp/product/products.nsf/pview/SE-U33G(S)
オンキヨー
http://www.onkyo.com/jp/
(斉藤成樹)
2004/04/07 11:02
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