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ベッドの中でも使えるポインティングデバイス 「空中マウス」


Gyration社の「空中マウス」。販売価格は15,540円前後。輸入雑貨やオモチャの店で見かけるようなパッケージだ
 あまりにもストレートすぎて、逆に意外さを感じさせるネーミングの本製品は、文字通り空中で使えてしまうマウスなのである。それもゲーム機のコントローラーのような方向ボタンを押す方式ではない。手に持ち、空中で上下左右に動かすと、その通りにディスプレイ上のポインタが動く。まるでゲームで遊んでいるかのような気分にさせる新しいタイプのポインティングデバイスだ。

 空中で使うモノをマウスと呼ぶのはムリがあるかもしれない。むしろ、空中マウスはネズミというよりゾウかアリクイをイメージさせるカタチなのだ。しかし、名前にウソはない。そのままデスクに置くだけで2ボタン+ホイールのコードレス光学マウスとして使えるのだ。1台2役、なかなかスグレモノの製品なのである。ちなみに英語での商品名は「Gyration Ultra Cordless Optical Mouse」。透明なプラスティック越しに商品が見えるパッケージは、いかにもアメリカ的。つい手に取ってみたくなってしまう。

 今時のマウスはわずらわしいコードを引きずらなくても良いし、光センサーの採用で中に溜まったゴミを掃除する必要もなくなっている製品が多い。とはいえ、平らなスペースがないと役に立たないという点に変わりはない。ところがこの空中マウスは、ただ手に持ちさえすればポインティングデバイスとして働いてしまうのだ。部屋でくつろぎながらパソコンを使いたいときなど、AV機器のリモコンと同じ感覚で操作できるし、ベッドに寝転がったまま、あちこちのホームページを見て歩くこともできる。

 また、ビジネスの場でも活躍するだろう。たとえばプレゼンテーション中、スクリーンのポインタを動かすためにテーブルに歩み寄ったり、オペレーターに指示を出したりする必要がなくなる。話のリズムを崩すことなく、思い通りに演出できるようになるのだ。


真横から見るとこんなカタチ。マウスというよりデフォルメされたゾウかアリクイに見えてしまう ひっくり返したところ。上部の鼻先(?)にある光センサが何かに遮られると普通の光学マウスに切り替わる

空中での使い方はやはり独特

裏側にあるトリガーを押すことで、空中での操作が可能になる

4カ国語で書かれたイラスト入りのリーフレット。日本語版のマニュアルも付属している
 マウスと同じようなカタチをしているとはいえ、空中での使い方は独特だ。手前半分を包み込むように握り、裏側のくぼんだ部分にあるトリガーボタンに人差し指をかける。家電製品のリモコンとほとんど同じ握り方だ。この状態でトリガーボタンを押しながら空中マウスを動かすと、ディスプレイ上のポインタも動くのである。動作は想像していたよりもはるかに素直だった。むやみにポインタが飛び回ることはないし、少々乱暴に振り回してもしっかりと付いてくる。微妙な動きはぎこちなくもあるが、慣れと感度の調整で対処できるレベルといえるだろう。

 トリガーボタンを押していなくても、クリックやホイールでのスクロールは可能だ。ただし、空中では握るように持つため、上側に出ている親指一本で普通のマウスと同じ操作をこなさなければならない。これがなかなかの難問だった。ポインタを目的の位置まで動かして左ボタンをクリックするという程度ならば問題もなかったが、細かく素早くとなると指がついて行かなくなってしまうのである。

 とはいっても、これは欠点のうちには入らないだろう。何から何まで空中で行なおうとすること自体ムチャなのだ。必要ならデスクの上に置きさえすれば良いのである。そのために普通のマウスとしても使えるように設計されているのではないだろうか。

 マニュアルには、空中で操作するときの姿勢が写真入りで解説されている。要はマウスを持ってポインタを動かしたい方向に腕を動かせば良いわけだが、これではすぐ疲れてしまう。プレゼンテーションなど、人前で操作するときの見映えも良くはないだろう。

 マニュアルを参考にあれこれやってみたところ、ヒジは固定し、手首のスナップを利かせてマウスを支える角度を変えるようにするのが良いようだった。これなら肘掛けに腕を置いた状態でも、立ったまま腕を下ろした状態でも自然に操作できる。筆者の場合、背もたれに寄っかかり、組んだヒザの上に腕を置くというダラケきったスタイルでインターネットを楽しんでいた。おかげでイスにふんぞり返りながらパソコンを使うクセがついてしまったほどだ。


ディスプレイにマウスを向けることなく操作ができる空中マウス

 空中で使っていたマウスを平らなスペースに置くと、そのまま普通のコードレス光学マウスとして使えるようになる。スイッチ操作のたぐいは一切必要ない。裏側にある光センサーが自動的にモードを切り替えてくれるのだ。もちろん空中モードへの切り替えも同様、ただ手に取るだけで良い。

 もちろん、普通のマウスとしての性能は十分以上だ。動きはスムーズだし、反応の遅れやポインタの不自然な動きは全くなかった。ボタンが大きく、クリックの感触も心地良い。ただ高さがあるためか、ホイールの位置が遠いように感じた。手が小さい人は指を伸ばさないと届かないかもしれない。

 デザインは丸みが強調されていて、どことなくユーモラス。左右対称なので右手でも左手でも同じように扱える。筆者は右利きだが、ムービーの再生や停止といった単純な操作は左手で行なう機会が多かった。マウス本体とペアになるレシーバは、無線LANアクセスポイントのような外見。前面にいくつかのインジケーターが並んでいる。これはGyration社から発売されているキーボードを利用するときのためのもので、空中マウスでは点灯しない。

 電源は内蔵のニッケル水素バッテリ。携帯電話のようにトレイに置けば自動的に充電される。連続動作時間は約5時間だ。レシーバはUSBインターフェイスから電源を供給する方式。すべてのユニットが濃いネイビーブルーでカラーコーディネイトされている。


レシーバユニット。左端のインジケータが電波の送受信を確認するステータス。そのほかは無線キーボード用だ Gyration社のロゴマーク入り充電台。ACアダプタを差し込んで利用する。ケータイの卓上トレイと間違えそうになった 充電台に置いてもなんとなくユーモラス。上部のインジケータがゆっくり点滅する

 空中マウスは電波を利用しているので向きを気にする必要がない。赤外線を利用するタイプとは違って、レシーバから数メートル程度の距離なら間に障害物があっても影響ないのだ。しかし、実際に使ってみるとディスプレイの方に空中マウスを向けてしまう人が多いという。

 実をいえば筆者もその1人だった。わかってはいても、気が付くとディスプレイを狙っているのである。リモコンを使うときの習慣として身に付いてしまっているらしい。特に問題があるわけではないが、プレゼンテーションをスマートに演出したい方は注意していただきたい。余談となるが、米国では個人ユーザーが多く、日本ではプレゼンテーション用に購入する企業ユーザーが多いそうである。


リモコン感覚で使うと、ついついディスプレイに空中マウスを向けてしまいがち レシーバから極端に離れていない限り、だらけたスタイルで利用しても支障はない

空中マウスの鍵はジャイロスコープにあり

 ちなみに、空中マウスが空中で機能するカギはジャイロスコープにある。ジャイロスコープとは、回転するコマの軸が常に同じ方向を指す性質を利用したセンサーの一種で、回転軸にかかる力を測ることで物体の動きを知ることができるのである。現在ではコマではなく、圧電素子の振動を利用するもの、微細加工技術を応用したもの、レーザーを利用するものなど、いくつかのタイプが開発されている。

 ジャイロスコープは、GPS衛星からの電波を受信できない場合の補助手段としてカーナビゲーションなどに組み込まれている。前後、左右、上下と3方向に対応する軸があれば、基準点からの相対位置が計算できるのである。また姿勢制御にも応用されており、ラジコンのヘリコプターや二輪走行バイクのほか、かのセグウェイにも内蔵されている。

 そして、空中マウスには「Micro Gyro 100」という小型のジャイロスコープユニットが内蔵されている。パソコンのポインティングデバイスやコントローラーのために独自開発された製品だ。耳を近づけると、かすかにうなるような高周波音が聞こえてくる。このユニットが発している音なのだろう。空中マウスでは上下と左右の2方向の動きを検出しているようである。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.innotech.co.jp/gyration/index.html
  イノテック(日本代理店)
  http://www.innotech.co.jp/


(斉藤成樹)
2004/04/28 11:31
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