Broadband Watch logo

ホームネットワークオーディオで家族円満? オンキヨー「NC-500X」


オンキヨーの「NC-500X」。標準価格は52,500円
 歳とともに音楽との距離が遠のいていく方は少なくないであろう。筆者が体験したカラオケにおける脱落のステップはこんな感じだ。

・現役世代…概ねヒット曲はカバー(主に20代前半まで)
・脱落ステップ1…「これ誰の曲」「175R」「175Rね」(主に30歳前後)
・脱落ステップ2…「これ誰の曲」「175R」「誰それ?」(主に30代後半以降)

 思い起こせばバブルの時代、スナックでカラオケ三昧の後、タクシーを呼んでから3時間も待たされた時代が懐かしい。すでに遠い昔に脱落ステップ2を経験した筆者であるが、実は中学になった娘の成長とともに音楽との距離が縮まりつつある。わざわざCDプレーヤーにディスクをセットしてリビングで構えて聴くことは少ないが、パソコンやMP3プレーヤーといった身近なIT機器の存在も影響して徐々に復活を感じている。そんな筆者が導入したホームネットワークオーディオを紹介しよう。

 筆者が考えたのは、MP3化したファイルを蓄えるファンレス、省エネのサーバーPCと今回紹介するオンキヨーのネットワークレシーバー「NC-500X」を無線LANでつなぐものだ。サーバーPCを常時稼働しておけば、「NC-500X」で蓄えた音楽ライブラリをいつでも再生できる。パソコンの操作に不慣れな妻や娘でも簡単に再生ができ、父はせっせとCDをMP3化することで感謝され存在感が向上、さらにIT投資に理解が得られ、家族円満となる構想だ。

 「NC-500X」は、LAN経由でインターネットラジオが聴け、サーバーPCに構築した音楽ライブラリもLAN経由でストリーミング再生できる製品だ(AM・FMチューナーも搭載するが今回は省略する)。

 インターネットラジオは、オンキヨーが提携しているImerge LTD.の登録局から受信可能で、ラジオ局はジャンル、ロケーション(国名、地域名)、ランゲージ(言語)から選曲していく。洋楽を聴かれる方には利用価値は高く、筆者の好きなJAZZを例にとると10局が選択できた。ただし、放送時間外なのかネットワーク障害なのか放送局がなくなったのか不明だがStream Access Errorと表示され受信できない局もあった。購入前に受信できる放送局について知りたいと思うのだが、情報公開はされていない。一番利用価値の高そうなジャンルの局数は、筆者が調べた範囲では以下の通りなので参考にして欲しい。また、ロケーションは39カ国で、日本ではNHKとニッポン放送があった。ランゲージは英語、スパニッシュ、日本語の3種類。

Unclassified:19局 Alternative&Punk:2局 Blues:2局 Classical:18局 Country:5局 EasyListening:14局
Electronica/Dance:8局 Folk:4局 Gospel:16局 HipHop/Rap:1局 Jazz:10局 Pop:86局
R&B:9局 Rock:119局 SocialRadio:81局 TalkRadio:58局 World:23局 Period:67局
*2004年5月14日現在


背面にLANポートがある。無線LANコンバータと接続して家中どこでも聴ける様に設定。プラネックスの「GW-EN11X」はデザインもフィット
 サーバーPCの条件について考えてみよう。妻と娘が音楽を聴く時間は、概ね筆者が帰宅する前だ。よって、いつでも聴けるホームネットワークオーディオの構想では24時間省エネで稼働するパソコンが望ましい。そこで、今回はCPUにVIA Eden(C3)600MHzを搭載した「Be Silent M6000」を使用してみた。ファンレスによる低騒音性に加え、消費電力も実測で25W、1日12円くらいとタワーPCと比較すると1/5程度で、省スペースで設置場所にも困らない。このPCにWindows XPのリモートデスクトップを設定して、他のPCから操作を行なえばキーボード、マウス、ディスプレイの接続も不要となる。

 Net-Tune CentralをインストールするサーバーPCに求められるスペックはPentium III 600MHzとなっていたが、VIA Eden(C3)600MHzでも問題なく動作した。ただし、CPU負荷率が上がるとうまく転送できないようで、Celeron 2.4GHzのPCでも同じ現象が確認できたが、実用的には問題はなさそうだ。一方、ネットワーク負荷には意外と強く、大容量のファイル転送やダウンロード時にも影響は受けなかった。

 無線LANアクセスポイントは、以前から使っているバッファローのIEEE 802.11bに準拠した製品を、「NC-500X」側にはプラネックスの無線LANコンバータ「GW-EN11X」を使用してみた。黒とシルバーのボディは、「NC-500X」とのデザインのマッチングもバッチシだ。「GW-EN11X」の設定完了後、「NC-500X」を接続し、確認のためにインターネットラジオを選択すると曲が流れた。筆者は今回初めて非PC製品をネットワーク接続してみたが、特別問題を感じることはなかった。なお、オンキヨーでは無線LANではWAVEファイルは転送不可としている。MP3に関しては単独ではもちろん、同じアクセスポイントからMPEGファイルをバッファローのPlay@TVにストリーミングしても音途切れはなかった。


 一通りの動作確認が終わったので、MP3のファイルをNet-Tune Centralにデータベース登録していこう。ハードディスク上のファイルを移動する必要はない。フォルダを指定していけば自動的に登録されていく。ただし、ジャンル、アーティスト、アルバムと分類されるがMP3に埋め込まれたタグ情報が正確に入力されていないと綺麗に分類されない。また、「NC-500X」本体のディスプレイは、日本語(2バイト文字)対応されていないので英数字、半角カタカナでないと認識されない。

 全角文字に対応していれば、曲情報をWebサイトなどからコピー&ペーストすれば簡単に済むが、半角カタカナやローマ字となると自力で入力するしかない。一からはじめる場合はまだ問題は少ないかもしれないが、おそらくこの製品を購入する方はすでにMP3ファイルを持っていると考えるとデータ再入力にかなり手間がかかってしまう。

 また、このNet-Tune Centralで、筆者が一番気になったのは、エディタの編集能力だ。例えば、アルバム全曲のジャンル、アーティスト名、アルバム名を入力する場合、1曲ごとにウィンドウを開かないと編集ができない点だ。今回、1,000曲ほど登録をしたため、フリーソフトの「Super TagEditor」で極力完成状態にした上でNet-Tune Centralに取り込むことにした。Net-Tune Centralでなければ作業できないのがプレイリストの登録だ。

 たとえば好きなアーティストのアルバム数枚からお気に入りを登録しておけばまとめて長時間演奏も可能なのだが、アルバム単位はもちろん複数の曲をまとめて登録することができない。1曲ごとにドラッグ&ドロップして確認の[OK]をクリックする操作を数十回繰り返すしかない。ある程度のところで我慢して使用することにしたが、さすがに1,000曲の登録にはまる1日を費やしてしまった。


静音PCをサーバーにして、リモートデクストップで操作 MP3ファイルをそのままデータベース化すると情報がない

前面液晶にはアルバム名のほか、曲名やアーティスト名が表示可能
 かなり厳しくコメントしているが、筆者自身は「NC-500X」がかなり気に入っている。残念ながらソフト(Net-Tune Central)に関しては、筆者としては満足のいくレベルではなかったが、ハードウェアと違って後からのバージョンアップも可能なので、今後に期待したいところだ。

 一方、LANによるストリーミングに対応したプロトコル「NTSP」(Net-Tune system protocol)の出来も悪くないし、オーディオ機器としての性能も問題ない。今も隣の部屋に設置した「NC-500X」を鳴らしながら原稿を書いているが、リモートデスクトップで入ったサーバーPC上のNet-Tune Centralからボリュームを変更したり、選曲したりできるのも意外と便利だ。サイズもコンパクトなのでスピーカーと無線LANコンバーターをセットにして、寝室や娘の部屋を行ったり来たりしている。

 もう少し安くなれば、複数台(同じLAN上に3台まで可能)購入していつでも誰でも好きな曲を聴けるようにできたらと思ったりもしている。さらにサーバーPCからコントロールできるのだから、きめ細やかな自動再生機能なども追加してもらいたいところだ。あるいはもっと情報開示を行なって、有志によるアドインソフトなどが発展しやすい環境を作るのも良いかもしれない。

 ちなみにこの「NC-500X」に新たにインターネットラジオ局を自力で登録する方法を紹介しているページもある。オンキヨーでは、動画に対応したNet-Tune対応ネットワークAVプレーヤー「NC-501V」も発売しており、この路線は継続されると思われるので、さらなるステップアップを期待したいアイテムと言えよう。

 新しいAV機器が来ると、映画や音楽を楽しむ機会が一気に増える。「NC-500X」のおかげで久々に音楽を楽しんでいる。中学、高校の頃はレコードを(貧乏だから)擦り切れるほど聴きこむので、1曲終わると次のイントロが頭に浮かぶほどだったが、繰り返し聴く回数も減り、記憶力の低下も相乗して今では聴き終わると頭から消え去ったりしている。CDも大人買いしてコンプリート版など買おうものなら、何年も経っているのに聴いたことがないディスクもあったりする。筆者の当面の目標は井上陽水の「NO SELECTION」(16枚組)、JAZZの帝王マイルス・デイビスのプレステッジ時代(8枚組)とクリフォード・ブラウンのエマーシー時代(7枚組)のコンプリート版のMP3化だ。加えて娘と妻の新作もせっせとMP3化している。ホームネットワークオーディオが家族円満に効果があったかと言えば、「お父さん、早く登録してよ」。まだまだ、父の努力が足りないようで。


コントローラー画面 ライブラリー構築の道は険しい。自分のCD以外に家族円満のためには努力が必要だ

関連情報

URL
  オンキヨー
  http://www.onkyo.com/jp/
  製品情報
  http://www2.onkyo.com/jp/product/products.nsf/pview/NC-500X(B)(※アンプ内蔵)
  Be SilentM6000(イーレッツ)
  http://www.e-lets.co.jp/product/m6000.htm
  GW-EN11X(プラネックスコミュニケーションズ)
  http://www.planex.co.jp/product/bwave/gwen11x.shtml


(weekone)
2004/06/09 11:05
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.