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クラシックカメラの名品をミニチュアサイズでデジタル化


駒村商会の「ローライフレックス ミニデジ」(標準価格41,790円) 。本体サイズは49×45×73mm(幅×奥行×高)。CR2リチウム電池1本で約2時間、連続動作する
 今回紹介するミニデジは、春に発売が発表されてから、筆者がずっと気になっていたアイテムだ。クラシックカメラ、それも二眼レフのデジタル版ミニチュアレプリカである。ミニチュアのカメラは意外に人気があるらしく、あちこちのショップでライカやニコンなど、往年の名機のレプリカを見かける。クラシカルなデザインと、ちょっとしたアクセサリー感覚で持ち歩ける気軽さが魅力なのだろう。

 ミニデジはドイツのローライ社が1960年代に製造していた二眼レフの名品、「ローライフレックス F2.8」のデザインを再現したミニチュアデジタルカメラだ。しかも発売しているのはローライ社の日本代理店。ホームページには、ほかのローライ社製品と並んで紹介されているのである。物欲を刺激された人は多いらしく、注文が殺到して発売が延期されてしまったという話も聞いている。

 二眼レフとは大きなレンズが縦に2つ並んでいるカメラのことだ。2つあるとはいっても、3Dなどの特殊な写真を撮るためではない。上のレンズはファインダー専用、下のレンズが実際の撮影を受け持っているのである。1つのレンズでファインダー用と撮影用を兼ねる一眼レフや、覗き穴式のレンジファインダーとくらべると、ある意味とてもゼータクなカメラなのだ。今では滅多に見かけることはないが、その魅力に取り憑かれてしまったファンも少なくないようである。

 二眼レフのローライフレックスは、最初の発売から75年が経った今でも生産が続けられている。筆者は何度か現行の「ローライフレックス 2.8 FX」に触れる機会があったが、カメラというより写真機と呼びたくなるような存在感と重厚な作りが印象的だった。

 ミニデジの外観もホンモノと同じく、金属で作られた精密機械の雰囲気が良く出ている。重さは100gほどしかないが、なにしろ小さいので重量感は十分。金属素材を多用してるため、質感は非常に高い。付属しているネックストラップもダークブラウンに塗装された皮革風だ。

 上面のカバーを引き起こすとフードに囲まれた0.9インチのTFT液晶ディスプレイが現れる。ホンモノは上レンズからの光を斜めに配置したミラーに反射させて上面のスクリーンに映し出しているが、実はミニデジの上レンズはダミーだ。普通のデジタルカメラと同じく、下レンズ側にある光学センサーの映像をディスプレイに映し出しているのである。


レンズ側から見て右にあるツマミなどはすべてダミー。下段レンズ右下のボタンで撮影モードと画像再生モードを切り替える 上面の0.9インチカラー液晶ディスプレイ。残念ながら解像度は低く、細かいディテールを確認するのは辛い

左は筆者愛用のローライ製35mmコンパクトカメラ。手のひらに収まるサイズだがミニデジと並べると巨大に見える
 撮影スタイルはカメラを胸の前に構えて上からディスプレイを覗き込む形になる。普通のカメラとはまるで違うので、はじめは少々戸惑うかもしれない。しかし、撮影位置を低くできるというメリットは大きい。たとえば子供やペットの写真を撮るときなど、相手と同じ目線で構図を決められるのである。また、撮られる側にしてもファインダーを通して覗かれているというプレッシャーを感じないらしく、自然な表情を追うことができる。

 レンズは5枚構成で焦点距離は9mm、F2.8。ピント調整不要の固定焦点式だ。筆者の印象では標準と広角の中間あたりの使いやすい画角に思えた。最短撮影距離は0.7mとなっているが、実際には1メートル以上離れてもボケてしまうようである。個人的にはもう少し近づいて撮影できると嬉しかった。

 シャッターボタンは正面から見て下段レンズ左下の隅にある。ホンモノと同じ位置だが、ボタンを押してから実際に撮影されるまで少々タイムラグがあるのが気になった。露出などはフルオートなので、撮影はだたシャッターを切るだけで良い。マニュアルで設定できるのは3段階の解像度の切り替えと、蛍光灯下で撮影するとき、画像に縞模様が出るのを抑えるための周波数切り替えだけである。

 おもしろいのは1枚撮影するごとに、横にあるクランクを回さなければならないという点。なんとフィルムを巻き上げるのである。もちろんデジタルカメラにそんな手順が必要なはずもなく、単なるギミックに過ぎないが、この操作があるだけでクラシックカメラを使っているような気分になってしまう。ちなみに筆者は巻き上げを忘れてシャッターが切れず、慌てたことが何度かあった(笑)。

 ミニデジで撮影した画像は縦横比1対1の正方形だ。これはローライフレックスが6×6判と呼ばれる正方形の画面サイズを採用しているからだろう。もっとも、上からファインダースクリーンを覗き込むスタイルのカメラを横に倒して撮影するのはムリがあるので、縦横の区別がない正方形にせざるを得ないのかもしれない。長方形の画像に慣れていると違和感はあるが、筆者は縦横を気にしないで撮りまくれるという点に魅力を感じた。長方形の画像が必要なら後からフォトレタッチソフトなどでトリミングすれば良いのである。

 光学センサは2メガピクセルのCMOS。画像補間機能で最大1,760×1,760ピクセルの高解像度画像が撮影できるほか、標準解像度の1,200×1,200ピクセルと低解像度の640×640ピクセルが選択できる。データ保存はSDカードまたはマルチメディアカード。画像の再生や消去はレンズの左下にあるボタンと本体裏側に並んだ3つのボタンを組み合わせて操作する。本体には外部機器と接続するインターフェイスが装備されていないので、撮影した画像をパソコンに転送するにはカードリーダーなどを用意しなければならない。


横にあるクランクを回して巻き上げないと次の画像が写せない(笑)。クランクの上に目立たない電源スイッチがある 撮影した画像の再生や消去といった操作は本体裏側に並んだ3つのボタンで行なう

 画質は期待したほどではない。性能だけでいえば少し前のカメラ付きケータイかオモチャのデジタルカメラに近いレベルだ。しかし、このミニデジで画質を語るのは無意味というものだ。カメラ好きにしてみれば、なによりもローライフレックスを使う雰囲気が味わえるという点が重要なのだ。眺めて楽しんでも良いし、ウンチクを語るネタにしても良い。気が向いたらアクセサリーがわりに首からさげ、目に付いたモノを写す。そんなカメラなのである。

 独特のレトロなデザインに惹かれる人も少なくないだろう。無骨なフォルムではあるが、ローライフレックスを知らない知人に見せてみたところ、「カワイイ」を連発していた。ちなみに、発売元のホームページからはプロモーションムービーがダウンロードできる。とてもポップなイメージ映像で、ミニデジがファッションアイテムのように紹介されている。ぜひ一見していただきたい。


撮影画像(1,200×1,200ピクセル)

とりあえずシャッターを切ってみた最初の一枚。上から覗き込むスタイルに慣れていないせいか妙な構図になってしまった 高台にある日本家屋を見上げるように撮影。逆光気味だったせいもあってか、なかなか渋い雰囲気 プランターに植えられたアサガオ

撮影画像(1,760×1,760ピクセル)

アサガオを高解像度で撮影。画像補間機能が働き、1,760×1,760ドットの画像になる 暗い木陰から明るい芝生の広場を狙った

関連情報

URL
  製品情報
  http://www.rollei.jp/pd/MiniD.html
  駒村商会
  http://www.komamura.co.jp/


(斉藤成樹)
2004/07/28 10:57
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