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トラッキングセンサーにレーザーを採用した次世代コードレスマウス


ロジクールの「MX1000 レーザーコードレスマウス」。オープンプライスで、直販サイトの価格は9,980円
 とうとう光学センサーにレーザーを応用したマウスが登場した。レーザーは今やCDやDVDといった記憶装置から照明やプレゼンテーション用のポインタまで、幅広く利用されているのはご存じの通り。それが今度はマウスに搭載されたのである。光学マウスはマウスパッドの表面などを光で照らし、その反射光で動きを感知している。従来の方式は、これにLEDの赤い光を使っていたが、今回紹介するロジクールのMX1000は目に見えないレーザーを利用しているのだ。

 レーザーとは波形、波長、位相がそろった特殊な光のことだ。小学校の理科実験でご記憶かと思うが、たとえば太陽の光をプリズムに通すとスペクトルと呼ばれる何色かの光の帯に分かれる。これは普通の光がさまざまな波長、つまり色を含んでいて、それぞれ屈折率が異なっているからだ。しかし、レーザーではそれが起こらない。言ってみれば混じりけのない、純度の高い光なのだ。

 レーザーは指向性や集光性が高く、大量の情報を扱うことができるという特徴がある。これをマウスの光学センサーに応用した場合、光を反射させる素材や色、また部屋の照明などから入り込むノイズ成分の影響を受けにくくなり、読み取り精度や感度が格段にアップするのではないだろうか。実際、MX1000では従来のLED方式に比べて20倍という高感度を実現しているという。

 MX1000の裏面、センサーを取り囲むベゼル部分に「832-852nm」という数字が書き込まれている。これはレーザーの波長を表わした数値だ。人の目でとらえられる光の波長は400nmから800nmといわれている。MX1000では、可視光よりもいくらか長い近赤外線帯域のレーザーを利用しているようである。

 子どもがいる家庭ではレーザーを直視したときの危険性が気になるかもしれない。光が目に見えないとなればなおさらだ。しかし、MX1000のレーザーはごく弱く、たとえレンズを通して直視したとしても害のない「クラス1レーザー」。目への影響は家電製品の赤外線リモコンと大差ないレベルと言えるだろう。

 センサーが受け取った信号は「MXレーザーエンジン」に送られる。これはマウスパッドなどに反射したレーザーの情報からマウスの動きを検出してパソコンに伝えるためのデータ処理ユニットだ。従来の光学マウスにも同様の働きをする部品が組み込まれているが、MXレーザーエンジンは1秒間に5.8メガピクセルを処理できるという性能を誇る。

 マウス本体とレシーバとをつなぐ無線通信部にも、通常の約2.5倍という高サンプルレートの「FastRFテクノロジー」を採用。高感度レーザーセンサーの性能を余すところなく発揮できる設計となっている。


 左右非対称のデザインで握り込むと手のひらにぴったりフィットする。左手でも扱えないことはないが、やはり右手用と考えた方が良さそうだ ベースステーションに本体をセット。変わったデザインで不安定そうに見えるがバランスは良く、不用意に倒れたりすることはない 本体の裏側にあるレーザーセンサー部。動作中でも光は見えない。横にリセットボタンとスライド式の電源スイッチがある

 MX1000を手に取った筆者の第1印象は「でかっ」。筆者が比較的小振りなマウスを常用しているせいもあって、72×130×44mm(幅×奥行×高)というサイズがやたら大きく見えてしまった。ショップなどで同等の製品に触れたことはあるが、目の前のマウスパッド上に置くと、ある種迫力さえ感じさせる存在感である。

 デザインはロジクール社製コードレスマウスの上級ラインに共通する左右非対称形。右手で扱うと指がボディの曲線に沿って自然にフィットする。快適さと安定性はかなりの高レベルだ。筆者は普段、無意識に力を入れて手首を浮かせるクセがあったらしく、大きなボディを深く握り込み、手のひら全体を上に乗せる体勢が意外に心地よかった。しかし大柄な分、手の小さいユーザーにはもてあます部分があるかもしれない。

 メインの左右ボタンはボディと一体化したシームレス構造。デザイン的にスッキリするだけでなく、細かいゴミやホコリが入り込みにくいという長所がありそうだ。左右ボタンの間にはチルト機能付きのホイールと、ホイールを取り囲むように配置された上下スクロールボタンがある。また、本体左側、ちょうど右手親指がかかる位置に3つのボタンが用意されている。タッチは軽からず重からず。しっかりとしたクリック感が小気味良い。


シームレスデザインで一見どこにボタンがあるかわからない。中央はチルト機能付きホイールとクルーズ(スクロール)アップ/ダウンボタンだ 本体の横、親指で操作する位置にあるフォワード/バックボタンとアプリケーションスイッチボタン 充電器、受信器、パソコンとのインターフェイス、3つの機能を兼ねるベースステーション。サイズは95×85×112mm(幅×奥行き×高さ)、重さ71g

 それぞれのボタンは付属の「Set Point」というコントロールソフトでスクロールやタスク選択など、好みの機能を割り付けることができる。インターネットのブラウジング程度ならキーボードに触れることなく、MX1000だけでこなせてしまうだろう。

 ポインタの動きは非常にスムーズで、素早い操作も微妙な操作もディスプレイ上で忠実に再現される。普通の光学マウスやコードレスマウスではポインタの動きが一瞬遅れるような違和感を覚えることがあったが、MX1000はそういったタイムラグが一切感じられない。高感度のレーザーセンサー、強力なデータ処理ユニット、大容量のワイヤレスシステムそれぞれが力を発揮しているといった印象だ。

 滑らかなポインタの動きに加え、MX1000にはマウスパッドを選ばないという大きな特徴がある。透明なガラスや光を反射する鏡面をのぞいて、ほとんどの素材に対応できるというのだ。実際、テーブルにステンレス製のパネルやピンストライプ柄のシャツなどを敷いて試してみたが、妙な動作は皆無だった。色にもほとんど影響を受けないようで、従来のLED方式との違いを実感させられる。

 電源は内蔵のリチウムイオンバッテリー。10分の短時間充電で約1日、4時間のフル充電で約21日と、従来品に比べて動作時間が大幅に伸びているという。キメ細かいパワーセーブ機能を備えており、ほんの数秒間放置するだけでバッテリー残量を表示する3個のLEDインジケータが消灯する。ちなみにパワーセーブ状態から復帰するときに引っかかるようなタイムラグがまったくない。マウスに触れさえすれば、見事なほどスムースにポインタが動き出す。

 充電器を兼ねたベースステーションは、押しつぶしたボールの一部を切り落としたような形状だ。正面にリセットボタン、後面に小型ACアダプタを接続するコネクタとパソコンに接続するケーブルがついている。こう言ってはなんだが、まるでモダンアートを思わせる奇抜な見た目とは裏腹に、171gあるマウス本体を載せてもどっしりと安定するバランスの良さが意外だった。


付属のコントロールソフト「SetPoint」。それぞれのボタンに好みの機能を割り付けることができる ポインタの移動速度や水平スクロール速度、また1回の操作でスクロールする行数なども指定可能だ 付属のACアダプタはコンパクトサイズでジャマにならない。PS/2コネクタ用の変換アダプタも付属する

 筆者は今でも自宅のデスクトップパソコンではボール式のマウスを使うことがある。中に溜まったホコリを掃除するのは面倒だが、ちょっとした誤動作に気を取られて作業のリズムを崩されることがないからだ。仕事で煮詰まっているときにポインタがどこかに飛んでいこうものならマウスを床に叩きつけたくなってしまうことだってある(笑)。しかし、MX1000にはユーザーをイラつかせるような動作が一切見受けられなかった。

 センサーの光が目に見えないのも気に入った点の1つだ。筆者は柄にもなく間接照明マニアで、仕事部屋は比較的薄暗くしている。そんな中で従来方式の光学マウスを使うと、時折手元から漏れ出てくる真っ赤な光が不気味に思えてしまうのだ。

 このMX1000はロジクール社製コードレスマウスのハイエンドに位置する製品。パソコンショップや家電量販店の店頭に並ぶ普及品と比べれば、直販サイト価格の場合で9,980円と高価格の部類にあると言わざるを得ない。しかし、誤動作がきわめて少なく、ユーザーの感覚にリニアに反応するポインティングデバイスを突き詰めた結果といわれれば十分に納得できるレベルだ。さらに言えば、「世界初」や「レーザー」という言葉に惹かれてしまう人も少なくないのではないだろうか。何を隠そう、筆者もそのクチなのである(笑)。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.logicool.co.jp/products/c_mouse/mx_1000.html
  ロジクール
  http://www.logicool.co.jp/


(斉藤成樹)
2004/10/13 10:14
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