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サッシや窓のすき間に通せる「LAN用すき間ケーブル」


 NTTアドバンステクノロジの「LAN用すき間ケーブル」は、サッシや窓のすき間に通して配線できる耐衝撃性に優れたLANケーブルだ。一般的なカテゴリ5規格に準拠した8芯タイプの製品で、ADSLやCATV、FTTHなどに使用できる。折り曲げ可能でサッシや窓のすき間に通すことが可能な本製品は、これまでのLANケーブルのイメージを大きく覆すものだ。今回は、実際の使い勝手から内部の構造までを探ってみようと思う。


厚さ1mmで折り曲げ可能。サッシや窓のすき間に通せるLANケーブル

NTT-ATの「LAN用すき間ケーブル」。購入価格は4,987円。パッケージはいたってシンプルで、量販店で売るためというよりも、業者向けの資材という雰囲気だ
 内部に8本の芯線を持つ一般的なLANケーブルは、モジュラケーブルなどと比べると固く、取り回しも悪い。そのためケーブルメーカー各社は、被ふく材やシールドに工夫を凝らすことで、フラットタイプやスリムタイプなど、取り回しのよいケーブルを開発してきた。俗に言う“きしめん”タイプなどがこれに当たる。

 これらフラットタイプのLANケーブルは、あくまでケーブルの厚みを目立たせないための仕様であって、家具やサッシに沿って鋭角に曲げることは考慮されていない。カーペットの下に敷くような用途には使えるが、曲げたり、折り返して良いというものではない。また、防水加工もされていないので、屋外での利用も不可能だ。

 折り曲げ可能でサッシや窓のすき間に通すことが可能な「LAN用すき間ケーブル」は、上記のようなLANケーブルのイメージを大きく覆す存在だ。メーカーリリースによると、1万回にも及ぶ窓の開閉実験に耐えたとあり、かなりハードな用途を想定していることがわかる。ケーブル本体は、防水防塵仕様になっているため(ローゼット部などを除く)、屋外での利用も可能である。

 本製品を利用することで、これまでLANケーブルの敷設が難しいとされていた場所でネットワークを利用できるようになる。LANケーブルの敷設が難しい場合、無線LANを導入するというのも1つの選択肢だが、扉が鉄製だと電波が遮断されて通信ができない場合があるなど、決して万能であるとはいえない。セキュリティポリシーとして、無線LANが利用できない企業もあるだろう。

 そんなとき、本製品を使うことで屋内屋外を問わず、安定してネットワークを利用することが可能となる。ケーブルさえ通してしまえば、有線での接続もできるし、無線LANアクセスポイントを設置すればその先での無線LAN環境構築も可能となる。


折り曲げ、貼り付けには少々コツが必要

ローゼットを分解したところ。フラットケーブルは3方向どこからでも引き出すことが可能。壁面へはネジで固定する
 さて、製品の仕様を見ていこう。本製品は、通常の丸型LANケーブル部分約15cmと、ローゼット部分を、厚さ1mm程度のフラットケーブル(すき間ケーブル)でつないだ構造になっている。製品名こそ「LAN用すき間ケーブル」となっているが、両端ともRJ-45端子というわけではなく、一方がRJ-45端子、もう一方はRJ-45の口が付いたローゼットになっているので、正確にはLAN“延長”ケーブルといったほうが正しいかもしれない。

 フラットケーブル部は約50cmで、全体の長さはおよそ70cmほどになる。丸型LANケーブル部分とフラットケーブル部分は絶縁テープで巻かれてつながれており、ゴミやホコリが侵入しないように加工されている。一方のローゼットは防水防塵仕様ではないため、室内と室外にまたがって配線する場合は、ローゼットを屋内側に設置することになる。

 本製品のウリであるフラットケーブル部は、幅14mmのプラスチックシートの中央に8本の芯線を並べ、フィルムを貼って固定したものである。厚さは公称1mmとなっているが、芯線が中央に寄って配置されているので、実際にはもっと薄く感じる。市販されているフラットタイプのLANケーブルも薄さ1~1.2mm程度とされているが、それよりもかなり薄い印象だ。芯線が中央に寄っているため厚みは均等ではなく、断面は凸型である。


ローゼット部分はかなり大きめな印象だ 他のLANケーブルとの比較。(左から)本製品、市販のきしめんタイプのフラットLANケーブル、一般的な丸型LANケーブル

床のレールに沿って本製品を貼り付けたところ。サッシや窓のすき間への敷設も可能だ
 サッシなどに貼り付ける際は製品付属の両面テープを用いるが、上記の通りフラットケーブルが凸型になっているので、全面に両面テープを貼り付けるのではなく、一段下がった両端の部分に細い両面テープを貼り付ける(図1)。両面テープ自体にそこそこ厚みがあるため、サッシの形状にピッタリ合わせて曲げるのは少々コツがいる。

 製品には、ケーブルに型をつけるヘラも付属しており、固くて曲がらないというわけではないのだが、型をつけながら両面テープで思い通りに貼る作業はかなりのテクニックを要する。自信のない人は、手先が器用な人にやってもらったほうが良さそうだ。

 この両面テープはかなり強力で、貼り付ける先が壁紙の場合、はがすと壁紙ごとはがしてしまう危険性がある。金属面に貼るのでもない限り、はがして貼り直すのは不可能と考えたほうが良い。また、製品の説明書に「一度折り曲げた部分を反対側に折り返して使用しないでください」と記載されているように、いくら衝撃に強いといっても、何度も折り曲げるのは避けたほうが良いようだ。


付属品一式。LANすき間ケーブルの本体のほか、両面テープ、ヘラ、RJ-45延長用コネクタ、取付用ネジなどが付属する ケーブルの断面が凸型になっていることもあり、両面テープは両側の部分に貼り付ける形になる

図1:
フラットケーブル断面の模式図。8本の芯線が幅14mmのプラスチックシートの中央に寄って並べられているため、断面は凸型となる。芯線の両側の2本のみが太く加工されており、間にある6本の芯線を衝撃からガードする構造だ。両面テープを貼る場合は両側の一段下がった部分に貼る

独自の工夫で耐衝撃性をアップ

ケーブルの素材はプラスチックシート
 次にフラットケーブル部を詳しく見ていくことにする。フラットケーブルの素材は、写真では薄い金属板にも見えるが、実際には前述の通りプラスチックシートである。金属素材であれば、サッシの形状に合わせて折り曲げた形状がそのまま維持されるはずだが、実際にはそうもいかない。見た目と少々使い勝手が異なる部分である。

 ケーブル内部の8本の芯線は、一般的な丸型LANケーブルの芯線よりもかなり細い。断面をよく見ると、両端の2本の芯線だけが太くコートされており、真ん中の6本の細いケーブルを挟み込むようになっている。つまり、ケーブルに大きな衝撃が加わった場合でも、両端の2本の芯線が衝撃を吸収し、間にある6本の芯線にダメージが加わらないようになっているのだ。このあたりの細かい工夫の積み重ねが、製品リリースにある「1万回の窓の開閉実験」に耐えることができた理由であると思われる。


ケーブル断面。凸型になっていることがわかる 内部の芯線を、一般的な丸型LANケーブル(左)と比較したところ。かなり細めであることがわかる

丸型LANケーブル部とフラットケーブル部の接合部

実用性は大。今後のさらなる改良にも期待

 試用した感想としては、多少のコツはいるものの、サッシや窓のすき間への取り付けによって窓の開閉に影響が生じることはなかった。扉のレール部に設置した場合も、多少の段差は生じたが、開け閉めに問題はなく、十分に実用になると感じた。どのような環境にでも100%対応できるとは言えないが、これまで配線をあきらめざるを得なかった環境において、LANケーブル敷設の可能性をもたらしてくれるメリットは大きい。

 ただ、ローゼットがかなり大型である点や、一端の丸型LANケーブルの材質が非常に固いこともあって、取り回しは必ずしも良いとは言えない。長さ50cmのフラットケーブル部も、ユーザー側で長さを調節できないため、シビアな耐衝撃性や防水・防塵を要求されない環境では市販のきしめんタイプのフラットケーブルを用いたほうが便利な場合もありそうだ。いずれにしても、ユーザーが自分の利用環境を見極めた上でチョイスすることが必要となるだろう。

 本製品は一端がLANケーブル、もう一端がローゼットという構成だが、個人的な希望としては、両端ともにローゼットという構成のほうが、ユーザーにとってわかりやすく応用も利く製品になるのではないかと思う。ローゼットそのものの小型化、そして低価格化も含め、今後よりいっそうの進化を期待したい製品である。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.ntt-at.co.jp/news/2004/release43.html
  NTTアドバンステクノロジ
  http://www.ntt-at.co.jp/

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(kizuki)
2005/02/16 10:43
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