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スクロールパネルが特徴的なロジクールのモバイルマウス「V500」


 ロジクールの「V500 Cordless Notebook Mouse」は、ホイールの代わりにスクロールパネルを採用した小型のワイヤレスマウスだ。パネル表面で指をスライドさせることにより、チルトホイールと同じ、上下左右のスクロールを実現している。解像度も1,000dpiと、モバイルマウスとしてはかなり高性能な部類に入る。


2.4GHz帯を採用、洗練されたギミックに好感

ロジクールの「V500 Cordless Notebook Mouse」。直販サイトの価格は7,480円。色はプレミアムシルバー&ライトコバルト。本体の素材は、上面がプラスチックで、下面がアルミ
 「V500」を手にとってまず感じるのは、その小ささ。ワイヤレスマウス、特に海外製品の場合、日本人の手には何かと大きく感じることが多い。しかし本製品は、日本マーケットでの展開を強く意識したせいか、かなり小振りなサイズになっている。実寸は、折りたたみ式の携帯電話よりも一回り大きい程度で、持ち運びにも便利である。

 重量は65gで、仮に単4電池2本を20gと見積もっても計85g程度と非常に軽い。同社のレーザー式ワイヤレスマウス「MX1000」が171g、「Cordless Optical Mouse for Notebooks」が121g(バッテリー挿入時)なので、実に50~70%程度の軽さである。筐体は上面がプラスチック、下面が金属(アルミ)で、バランスがとれていて使いやすい。

 マウス後部には、小型のUSB無線レシーバーを収納できるようになっている。底部のボタンをスライドさせるとマウス後部がポップアップし、レシーバーの抜き差しが可能になるとともに、マウスの電源がオンになる仕組みだ。極めて合理的な設計と言えるだろう。底部ボタンのスライド方向は、直感的に逆が正しいようにも感じるが、マウス使用中にボタンがひっかかって誤動作しないための工夫なのかもしれない。


USB接続の無線レシーバーは本体後部に収納が可能。後部をポップアップさせると出し入れが可能になる USB無線レシーバー(中央)は、一般的なUSBメモリ(手前)と比較してもかなり小さくスマートだ

 本製品は、通信帯域として2.4GHz帯を採用している。無線LANやBluetoothに使われているのと同じ帯域で、障害物に強いという特長がある。試しに本製品に厚手のフトンをかぶせて動作させてみたところ、きちんとポインタをコントロールできた。通常利用においては障害物が問題になることはまずないだろう。ワイヤレスマウス特有のひっかかり感もなく、有線マウスとほぼ同じ感触で使える。ワイヤレスマウスの進化というものを、つくづく実感させられた。

 その反面、2.4GHz帯の採用で心配されるのが、電池の持ち時間、さらに電波の混信の問題だ。前者については、消費電力の大きいDS-SS方式ではなく、FH-SS方式を使用しているため、無線LANのモジュールのようにバッテリーをガンガン消費するということはなさそうだ。2週間ほどしか試用していないため実際の持ち時間は不明だが、公称では単4電池2本で2カ月使用できるとされている。後者については、筆者は同じ2.4GHz帯を用いるIEEE 802.11gに準拠した無線LAN機器を使用しているが、マウス・無線LAN双方に特に影響を感じなかった。実利用においては特に問題はないだろう。

 本製品で特筆すべきなのは、センサーの穴が本体のかなり前方についていること。ボールマウスに慣れた方はご存知だと思うが、手首を支点にしてマウスを動かす場合、ボールの位置がマウスの前方にあればあるほど細かいコントロールができる。光学式のマウスでもこれは同様だが、最近の製品は機構上、センサー穴が後方近くにあったり、左右のどちらかに大きく寄っていることが多い。その点、本製品はコントロールしやすいマウス前方にセンサー穴が配置されている。細かいことだが、使い勝手を向上させるための工夫として見逃せないポイントだ。


同社製品の中ではかなり小型の部類に入るパッケージ。余談だが、スクロールパネルに書かれた移動方向を表す三角マークは、あまり意味がないと思うのは筆者だけだろうか マイクロソフトのIntellimouse Explorerとの比較。ちなみに左右ボタンの入れ替えも可能なので、左利きの人でも安心だ

上下左右への動きに対応した「スクロールパネル」

 本製品の最大の特長は、なんと言っても新設計の「スクロールパネル」にある。スクロールパネルは、基本的にノートパソコンのタッチパッドと同じ仕組みで、指をスライドさせることで画面スクロールができる。上下はもちろん、左右への動きにも対応しているので、いわゆるチルトホイールと同じ動きが可能である。ちなみにこのスクロールパネル、iPodのスクロールホイールと同様、指でなでた時に小さく「カチカチ」という音がする。ちなみにこの音は、オフにすることができない仕様になっている。

 スクロールパネルの前部と後部は、いわゆる「クルーズアップ」「クルーズダウン」になっており、タッチすることで連続スクロールを行なえる。もっとも、通常のホイールに相当するパネル面と「クルーズアップ」「クルーズダウン」を行なうパネル面の境目は非常にあいまいで、何行かスクロールさせるつもりで指をスライドさせたら、何画面分も連続スクロールしてしまった、ということが頻繁に起こってしまう。

 また、本製品は物理的なホイールがオミットされているため、「ホイールクリック」に相当するボタンがない。つまり3ボタンマウスではなく、純然たる2ボタンマウスなのだ。ホイールに何らかのファンクションを割り当ててマウスを使っている方は、購入前に、こういった制限があることを知っておいたほうが良いだろう。


後部をポップアップさせることで光学センサー部の電源が入り、使用可能となる 後部をポップアップさせたところ。なお、スクロールパッドは指の腹でなでるのは難しく、指先でなでる形になるので、爪を伸ばしている女性などは若干操作しづらいかもしれない

スクロールパネルは“酔いやすい?”

 さて、本製品をしばらく使い続けていたところ、筆者は「乗り物酔い」に似た症状になりやすいことに気づいた。

 一般的なホイールの場合、回転させる際に指先に抵抗があるので、ホイールを回した際の感触から「だいたいこれくらい画面がスクロールするだろう」と無意識に計算し、次に読む部分に目線を移す。

 しかし本製品はその構造上、指先の感触だけでは、どれだけ画面がスクロールするかは見当がつきにくい。スクロールさせたつもりが画面は静止したままだったり、逆に一気に数ページ分スクロールしてしまったり、といったことが頻繁に起こる。そのため、目線があっちに行ったりこっちに行ったりし、結果的に目が疲れ、乗り物酔いに近い症状になってしまうのだ。

 この問題は意外と深刻で、しばらく使い込めばコツをつかめるだろうと思っていたが、筆者の場合は2週間使い続けていまだに解消されない。付属のユーティリティ「SetPoint」で細かく移動量を調整してみたが、あまり効果はなかった。指先の器用さにも左右されると思うが、スクロール量が厳密でないと困るという人や、パソコンの操作時に画面を凝視する癖のある人にとっては、若干不安の残る操作性かもしれない。


モバイルマウスとして秀逸。ますますの改良に期待

 ワイヤレスマウスの製品特長として「有線マウスと変わらぬ操作性」というのはもはや言い尽くされた感があるが、それはどれもメーカー本位のキャッチコピーであり、実際に使ってみると……な製品が多かった。しかし、本製品の操作性はまさに有線マウスのそれであり、ワイヤレスマウス特有のひっかかりをまったく感じない。サイズもコンパクトで、モバイル用のマウスとしてひとつの究極形に達していると言える。

 それだけに、スクロールパネルの操作にコツが必要で「クルーズアップ」「クルーズダウン」の機能が使いにくい点、さらにホイールクリックという基本的な機構がオミットされている点は惜しい。これらの点が改善されれば、まさに究極のモバイルマウスになるだろう。いずれにせよ、ユーザーを選ぶ製品であることは間違いないので、購入の前に、自分の利用スタイルに合うかどうかを慎重に判断する必要がありそうだ。


底部のスイッチをスライドさせると、マウスの後部がポップアップし、同時に電源が入る仕組み。小さなスライドスイッチは電池蓋(右)の開閉に使用する 持ち運び用のポーチが付属するなど、モバイルを前提とした仕様だ

関連情報

URL
  製品情報
  http://www.logicool.co.jp/index.cfm/products/details/JP/JA,CRID=2135,CONTENTID=9508
  ロジクール
  http://www.logicool.co.jp/


(後藤重治)
2005/03/16 10:56
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