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デジカメと持ち歩くエプソン「Photo Fine Player P-2000」


エプソンの「Photo Fine Player P-2000」。実売価格は6万円前後

本体正面
 筆者は昨年10月にキヤノンのデジタル一眼レフ「EOS 20D」を購入した。おおむね満足して使っているが、若干の不満はある。カメラ自体のオートフォーカス性能は高いのだが、ピントの合う位置と、撮影者が思うところと微妙に差があったりして、結果としてはピンボケ(ピントずれ)してしまうことが少なくない。

 そして、そのピントを本体背面の液晶モニタで確認しようとしても、1.8インチ液晶モニタでは撮った画像を細かいところまでは確認できない。今ではコンパクトデジカメでも2インチ以上のモニタが採用されているケースもあり、大きなボディのわりに役に立たないと感じることも少なくない。デジタル一眼レフカメラは最近のヒット商品ゆえ、聞いてみると回りの購入者も同じことを感じている人は多いようだ。

 そこでなにか画像チェック用に良いものはないかと探すことにした。ノートパソコンを利用するのが一番かと思われるが、撮影環境によっては難しい。交換レンズを数本入れているカメラバックに、ノートパソコンを追加して持ち運ぶには、まだまだ大き過ぎる。もう少しコンパクトなものはないかと探しているうちに、エプソンの「Photo Fine Player P-2000」を見つけたので試してみることにした。

 製品の詳細なスペックはメーカーホームページを参照いただくとして、概要は以下の通りだ。

・3.8インチ液晶搭載、解像度640×480ピクセル
・40GBのストレージデバイスとして使用が可能
・JPEGの画像を拡大表示できる(RAWは拡大不可)
・MPEG-4ファイル(AVI)を動画再生できる(MPEG-1は再生不可)
・MP3ファイルを再生できる

 製品名の“Photo Fine”があらわすように主は写真、おまけで動画と音楽が楽しめる仕様だ。筆者の個人的感覚では写真:7.5、動画:2、音楽:0.5くらいと感じている。今回は画像チェック用にどれくらい使えるかを主にご紹介しよう。

 外観は写真の通りで、操作は正面右に配置されたボタンで行なう。OKボタンの回りは4方向ボタンとなっている。記録メディアは上部にコンパクトフラッシュ(マイクロドライブにも対応)と、SDカードのスロットが用意されてる。それ以外のメディアは、非対応だがCFアダプタで動作する可能性はある。


上面にCFカードとSDカードのスロットがある バッテリーは専用タイプ 側面にAV端子、ヘッドホン端子、電源端子、USBポートが並ぶ

 バッテリーは下部に専用のリチウムイオンバッテリーを挿入する形で、充電は本体に装着した状態で行なう。背面にはスピーカーがあり、動画再生時にはここから音が聞こえ、側面のヘッドホンジャックを使用すると当然スピーカーはオフとなる。大きさは厚みがあるので、そこそこボリューム感を感じる。とはいえ、ノートパソコンとは比較にならないほどコンパクトで、アウトドアに持っていけないことはないだろう。


背面にはスピーカーを備える 製品には専用スタンドも付属する

 「Photo Fine Player P-2000」を最初に触った印象はインターフェイスがわかりやすく、ほとんどの操作は取扱説明書を読むことなく直感的に使用できる点だ。メニュー構成もしっかりしており、おおむね予想した画面や選択肢が表示される。


メイン画面。操作は簡単だ 設定画面 画像選択画面

 デジカメで撮影した画像の転送速度は以下の通りだ。CFカードはEOS 20Dで使用しているバッファロー製とSanDisk製、SDカードはハギワラシスコム製の転送速度が2M/10M/20Mの3製品で比較してみた。ファイルは20Dで撮影した画像281ファイル、469MBをすべてのメディアの評価で使用した。

製品名 転送速度
・コンパクトフラッシュカード
バッファロー RCF-G 512MB 4分8秒
SanDisk UltraII 1GB 3分58秒
・SDカード
ハギワラシスコム HPC-SD512M2(20MB/s) 3分36秒
ハギワラシスコム HPC-SD512TP(10MB/s) 3分38秒
ハギワラシスコム HPC-SD512T(2MB/s) 3分39秒


 CFカードでは速度差が確認できたが、SDカードは転送速度による差はほとんど確認できなかった。転送速度に関しては、すべてのメディアにおいて遅いという印象だ。撮影中のデジカメからメディアを抜き取り、P-2000に挿して転送、デジカメに戻す一連の時間は5分近くかかってしまうだろう。このため、撮影対象によっては、シャッターチャンスを逃さないようにあらかじめ複数のメディアを用意して、他のメディアで撮影中に転送する方法で使用することをお奨めしたい。カードのデータを直接閲覧することもできるが、HDDに転送してから確認した方がアクセスがスムーズだ。転送時にコピーか移動かは設定メニューから選択できる。


EOS 20Dで撮影した画像。解像度は3,504×2,336ピクセル
 HDDに転送したデータを閲覧してみる。クックッと手にHDDの振動を感じる。フォルダをOKボタンで選択、続いて画像を選択すると640×480ピクセルの画面に合わせて表示される。画質は抜群に綺麗で、3.8インチの画面サイズもあり、EOS 20Dの液晶モニタとは比較にならないクオリティだ。

 Displayボタンを押すと撮影時のExif情報が表示される。もう1度押すとヒストグラムの表示も可能だ。ただし、モニタの表面処理が最近のノートパソコンと同じツルピカタイプなので、屋外での閲覧はかなり見にくくなってしまう。日景や屋内に待避して閲覧するか、黒い衣服を着用して少しでも見やすくする工夫が必要だろう。


20Dの画像を100%表示 Exifのデータ表示 ヒストグラム表示

 表示される画像のサイズは、撮影したデジカメにより異なる。筆者が使用しているEOS 20DとIXY Digital 55では、縦横比と解像度が異なるため表示される倍率も違っている。画像操作はOKボタンを押すと1ステップ拡大し、Cancelボタンで縮小する。Cancelボタンを長押しすると最初の倍率に一気に戻すことが可能だ。

 それぞれの倍率はEOS 20D(3,504×2,336ピクセル)の場合で「100→112→129→152→185→235→322→511→1,242%」、IXY Digital 55(2,592×1,944ピクセル)の場合で「100→114→133→160→200→266→400→800%」となっている。


EOS 20D

EOS 20D撮影画像(以下同)の112%表示 129%表示 152%表示

185%表示 235%表示 322%表示

511%表示。これが等倍表示に一番近い 1,242%表示

IXY Digital 55

IXY Digital 55で撮影した画像。解像度は2,592×1,944ピクセル IXY Digital 55の画像を100%表示(以下同) 114%表示

133%表示 160%表示 200%表示

266%表示 400%表示。ほぼ等倍表示 800%表示

 アスペクト比がP-2000と同じ4:3のIXYはそこそこ規則性のある拡大率だが、3:2の20Dは拡大率が端数となっている。IXYは400%でほぼ等倍表示となる。20Dの等倍表示は548%なので、511%が一番等倍に近い表示だ。普段パソコンのディスプレイで画像を確認している感覚で言えば、等倍表示を100%と表示して全画面表示を18%(20Dの場合)、25%(IXYの場合)と表示してくれた方がわかりやすいかもしれない。

 とはいえ、デジカメ本体のモニタでは確認できなかったピントも見えるので撮影時には強い味方となる。拡大した状態でOKボタンの回りの4方向ボタンを押すと画面内で移動できる。次の画像に移動するには全画面表示(100%)まで戻る必要がある。画質面では優れているが、レスポンスにはやや不満が残った。画像を拡大する場合、全画面表示から次のステップに拡大する時20Dの場合5秒ほど、IXYの場合3秒ほど待たされた。ただし、それから先の拡大はタイムラグを感じることなく動作していた。

 撮影した画像からベストショットを選択しアルバムとして登録、スライドショーを実行することもできる。もちろん、そのままP-2000のディスプレイで楽しむことも可能だが、テレビに出力して大勢で鑑賞するなんてことも行なえる。スライドショーの演出は、画像の切替パターンが数種用意されていて、MP3ファイルをBGMとして設定することも可能だ。動画再生機能と同様、単なるのストレージデバイスや画像確認デバイスではなく、楽しめる要素を持たせていることは製品の方向性として評価できる。


スライドショー スライドショーで画像が切り替わっているところ USBで接続するとドライブとして認識される。CFのデータはフォルダごとコピーされる

 筆者としては写真の再生利用がメインだが、一応動画に関してもコメントしておこう。動画はCFカードなどにコピーして取り込めるが、標準的にはUSBケーブルで外部ストレージデイバイスとして認識させパソコン側から転送する。パソコンからは外付けHDDと同じ見え方となるが、好き勝手に保存してもP-2000側ではファイル認識してくれないため、「PC_DATAフォルダ」にコピーする。

 ファイル名はロングファイル名や2バイト文字に対応していない。このため、DOSと同じく英数字8文字、拡張子3文字でないとP-2000上では文字化けしてしまう。サポートするファイル形式は、MPEG-4とMotion JPEG。DivXでエンコードした画像も一応再生できたが、MPEG映像には対応していない。

 実際にHDDからファイルを転送し再生しようとするとエンコード方式によって再生できないケースは多い。手持ちの動画をそのまま再生するには再エンコードなどが必要となるケースもあり、完成度はイマイチな感じがする。また、動画の長さによって再生開始までに時間がかかり、14分のAVIファイルは映像が始まるまでに11秒、44分のファイルは18秒、110分のファイルは30秒ほど待たされた。画質は画面の字幕も問題なく認識できるクオリティだが、筆者が使用した範囲では音ズレが頻繁に発生した。なお、レジューム機能は備えておらず、途中でP-2000を止めてしまうと長い映像は早送りで自ら頭出しを行なわなければならない。


航空機で使用。バッテリーはそこそこ持つ
 先日、中部国際空港(セントレア)から香港まで3~4時間のフライトで実際に動画再生を試してみた。バッテリーは実質2時間少々だが、離着陸時に電子機器を使用できないこともあり、フライト中は十分持った。ACアダプタは240V対応で、コンセント形状を変換するアダプタを持参すれば海外で充電することも可能だ。前述の通り、動画再生は音ズレが激しく、男女の会話では絵と声が逆になったりともう1つ楽しむことができなかった。動画に関しては、エンコードのノウハウがないと使いこなしは難しいかもしれない。ちなみに、香港のパソコンショップでもP-2000は販売されていて、海外製の動画プレーヤーを画質面で圧倒していた。ファイルの互換性や音ズレなど、まだまだ課題があるが、画質面でのアドバンテージは明らかなので機能面の改善を望みたい。

 もちろん、動画はおまけと割り切り、画像ビューワーとしてみると画質面の魅力は十分だ。まだまだ改善して欲しいところも少なくないが、ファームウェアの更新によりRAW画像への対応も広がるなど徐々に進歩している。さらに熟成して、レスポンスや拡大倍率を改善すればデジカメの強い味方になるはずだ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.i-love-epson.co.jp/products/photofine/p2000/p20001.htm
  I Love EPSON
  http://www.i-love-epson.co.jp/


(奥川浩彦)
2005/04/27 10:56
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