サンコーから発売されている「icombi」は、Bluetoothを採用したiPod専用のワイヤレスヘッドフォンだ。本製品を用いることで、iPod本体はカバンの中に収納したまま、ヘッドフォンだけで再生/停止や早送り/早戻し、ボリュームの調整といった操作が行なえる。iPodのイヤホンをわずらわしいと感じているユーザーにとっては大変魅力的な製品だ。
■ BluetoothアダプタをiPodに装着し、ヘッドフォンで再生
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サンコーのiPod専用Bluetoothヘッドフォン「icombi」。標準価格は15,800円。パッケージ中央にあるのがBluetoothアダプタだ
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本製品は、ヘッドフォンとBluetoothアダプタのセットで構成されている。BluetoothアダプタをiPod本体に装着し、Bluetoothを用いてヘッドフォンとワイヤレス通信を行なう仕組みだ。第3、第4世代のiPod、iPod photo、iPod miniに対応している。
Bluetoothアダプタのサイズはコイン1つほど。iPodのヘッドフォンジャックと、リモコン用コネクタの2カ所に差し込んで使用する。電源はiPod本体から供給される。
ヘッドフォンの形状は、いわゆる耳かけスタイル。左側面には電源ボタン、右側面には再生/一時停止、前曲、次曲、音量大、音量小のボタンがついており、ワイヤレスでiPodを操作できる。基本的にはiPodのワイヤードリモコンと同じことができると考えて良い。重量も100gを切るなど軽量であり、折りたたんで携行できるので邪魔にならないだろう。
一方、ヘッドフォンはiPodからの給電で動作するBluetoothアダプタと異なり、別途充電する必要がある。フル充電時で約11時間という長時間再生が可能なため、ひんぱんに充電する必要こそないものの、iPod本体と合わせて2つのデバイスを充電するのを面倒に感じる人も多いかもしれない。ちなみに充電には付属ACアダプタまたは付属USBケーブルを用いるが、コネクタが汎用的なUSBミニBコネクタではなく、専用コネクタである点は残念だ。
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いわゆる耳かけ式のヘッドフォン。付属のACアダプタもしくは専用USBケーブルで充電する
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BluetoothアダプタをiPodに装着したところ。サイズは小さく、ホールドボタンの操作を妨げることもない
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■ ヘッドフォンから基本操作が可能だが、多少の難点もあり
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ヘッドフォン右側面の操作パネル。ホールドを除き、iPodのリモコンでできることはすべて行なえる
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本製品のウリは、ヘッドフォン側面のボタンでiPodをワイヤレス操作できることだ。iPodを取り出さずに再生/一時停止などの操作が行なえるのは確かに便利だが、操作のたびに、いちいち手を耳の高さにまで持っていくのは意外と面倒だと感じた。もちろん、カバンの中に入れているiPodを取り出す手間を考えると便利だが、iPodが胸ポケットなど手の届く位置にあれば、直接本体を操作してしまうだろう。この辺は、個人の使い方にかなり左右される部分と言えそうだ。
ちょうど十文字に配置されている前曲、次曲、音量大、音量小のボタンだが、慣れるまではどのボタンがどのキーなのか、非常にわかりにくい。使い続けていると「右手をあてたときに親指が触れる位置にあるのが音量小だな」とわかるようになるのだが、それまではとりあえず押してみて挙動を確認しなくてはならない。次期モデルでは、ボタンの形状によって違いがわかるようにするなど、改善を期待したいところだ。また、タクトスイッチを採用したボタンはかなり硬くて押しにくいので、こちらもいまひとつという印象である。
また、iPodを常用する者として気になるのが、Bluetoothアダプタを装着した際のiPodのバッテリーの持ち時間だ。筆者手持ちの第4世代iPod(40GBモデル)で連続再生を試みたところ、Bluetoothアダプタを装着した状態で、7時間30分の連続再生することができた。Bluetoothアダプタなしで連続再生をした場合は15時間持ったので、ちょうどバッテリーの半分を消費した計算になる。もっとも、連続再生時間が半減したとは言え、「それでも7時間以上再生できる」という解釈も可能だ。こちらについても、ユーザーの使い方によって評価は大きく変わるのではないだろうか。
■ リンクが確立されてから再生開始
再生を行なう際の流れとしては、電源を投入→ヘッドフォンとBluetoothアダプタのリンク確立→操作可能、という順番になる。ヘッドフォンとBluetoothアダプタのリンク確立にかかる時間は早くて数秒、長くて十数秒程度だ。ヘッドフォン側からiPodが操作できる状態になると、BluetoothアダプタのLEDの点滅間隔が長くなる(3秒程度)。
いろいろ試したところ、効率のよい起動の順序は以下の通りだと思われる。
(1)まずiPodの電源を投入(Bluetoothアダプタ装着済み)
(2)iPodの再生ボタンを押す→BluetoothアダプタのLEDが点滅しはじめる
(2)ヘッドフォンの電源を投入→ヘッドフォンの再生/一時停止ボタンが点滅しはじめる
(3)リンクの確立(数秒~十数秒)
(4)再生
これ以外の順番でも再生は可能だが、Bluetoothアダプタを装着した状態で先にiPodの電源を入れ、再生ボタンを押すと、自動的にヘッドフォンを探しに行ってくれるのでボタン操作が1つぶん省略されることになる。
なお、ヘッドフォン側の電源をオフにするなどしてリンクが切断されると、BluetoothアダプタのLEDの点滅が激しくなった後、一時停止を経てiPodがスリープ状態になる。無駄に電源を消費することはない。かなり気の利いた挙動だ。
■ スリープから復旧の際、iPod本体の操作が必要なことに注意
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ヘッドフォンを装着したところ。重量も80gと軽く、長時間かけ続けても快適
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大きさの比較。ヘッドフォンは持ち運びの際は折りたためる構造
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本製品の操作方法は初心者にもわかりやすく、戸惑うことはまずないと思われるが、いったんiPodがスリープ状態になったあとの復旧手順だけは、おそらくすべての利用者が戸惑うのではないかと思われる。
もともと本製品は、iPodからの給電によってBluetoothアダプタを動作させているため、iPodがスリープ状態にあるときはアダプタの電源はオフになっている。従って、iPodの電源をヘッドフォン側からオンにすることはできない。
そのため、本製品を使ってiPodの曲を聴こうとすると、まずiPod本体側のボタンで先に電源を投入しなくてはならない。つまり、「iPod本体はカバンの中、ヘッドフォンだけで操作」というのはあくまでリンクが確立してからの話で、最初はiPod本体の操作が必要なのだ。よって、ひんぱんにスリープさせるような使い方をしていると、その都度iPodを取り出さなくてはならず、少々面倒である。
もっとも、1度起動したら長い時間再生し続けるという使い方であれば、ほとんど気にならないだろう。ユーザーの使い方によって大きく評価が変わる点だと言えそうだ。
これ以外の問題点として、iPodをカバンの中に入れて再生する場合、収納の仕方によっては電波が届きにくくなり、まれに音が切れる(一時的に無音状態となる)ことが挙げられる。環境による具体的な差まではテストできなかったが、Bluetoothが2.4GHz帯を用いている以上、金属の遮蔽物があると影響がでる可能性が高いだろう。あとは単純に遮蔽物の厚みに依存するのではないかと思われる。服のポケットに入れておく場合などはまず問題はなかった。
室内利用では、iPod本体を机の上に置いておき、ヘッドフォンをしたまま室内をウロウロできるので非常に快適だ。材質にもよるが、壁をまたいでの受信も問題なく行なえるので、たまに室外に出たりしながら音楽を聴き続けることも問題ない。
■ 価格だけの価値はある製品。長時間の連続再生に最適
音質については、一般的な有線のヘッドフォンと比べてもほとんど遜色なく、赤外線方式の一部のワイヤレスホンのようにノイズが乗ることもない。価格こそ15,800円と少々高めだが、それだけの価値はある製品だと言えるだろう。iPod標準添付のイヤホンからの買い替えを考えているユーザーにも勧められる。
iPod本体をスリープから復旧させるたびにiPod本体を操作しなければならないため、こまめにオン・オフを繰り返すスタイルよりも、いったんオンにしたら長時間聴き続けるという使い方のほうが、快適度はアップする。通勤通学などで長時間聴き続ける場合や、室内で長時間音楽を楽しむ用途に適した製品であると言えそうだ。
[お詫びと訂正]
初出時、icombiの対応機種について第2世代のiPodを記載しておりましたが、正しくは対応機種に含まれておりません。訂正してお詫びいたします。
■ URL
製品情報
http://www.thanko.jp/icombi.html
サンコー レアモノショップ
http://www.thanko.jp/index.html
(kizuki)
2005/05/25 11:00
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