今回紹介するのは、電話ライクな音声通話を無料で実現したP2P音声通話ソフト「Skype」。本ソフトの魅力は、なんといっても高音質な音声だ。筆者だけかもしれないが、こもらない、非常にクリアな「Skype」の音声で会話していると、相手と同じ空間で話しているような不思議な感覚に陥る。また、ファイアウォールやNATを超えるため、ネットワークの設定をする必要がなく、カンタンに使えるのもポイントだ。
Skypeから固定電話や携帯電話にかける場合は有料になるが、国内外を問わず低価格で電話をかけることができる。Skypeは通話機能だけではなく、ビデオやテキストチャット、ファイルの転送機能も備えており、音声通話に秀でたインスタントメッセンジャーと言っていいだろう。
■ 音質やレスポンスがいい音声通話。安全性の高さにも注目!
「Skype」で音声通話を楽しむには、PCで使用できるマイクが必要となる。テキストチャットも使えることも考えると、やはり両手を空けられるヘッドセットが便利だ。家電量販店やPCショップなどで1,000~2,000円程度で購入できる。セッティングに関しては公式サイトのガイドページを参考にして頂きたい。
それでは早速「Skype」をインストールしてマイアカウントを取得しよう。マイアカウントの登録では、氏名やSkype名(ID)、パスワード、メールアドレス等を入力していく。氏名は登録相手の「Skype」に表示されるものなので、本名にするのかニックネームにするのか慎重に決めよう。メールアドレスはパスワードを忘れた時の再確認に使われる。ちなみに、入力必須項目はIDとパスワードのみ。気軽に始められるのが嬉しいところだ。
次に、「Skype」メンバーをコンタクトリストに追加していく。氏名やSkype名、メールアドレスから検索可能だ。コンタクトリストにメンバーが追加されたら、そのメンバーをダブルクリック。すると、「トゥルルルルル……」という電話で御馴染みの呼び出し音が鳴り続け、相手が着信に応答すると直ぐに音声通話が始まる。使用感覚は電話と同様、手順は少なく操作カンタン。
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マイアカウントの登録に必要なのはIDとパスワードの入力のみ。この後メールアドレス、国名、都道府県名の入力もあるが必須ではない
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「コンタクトの追加」画面。このように、IDやメールアドレスを入力して検索していく
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こちらは「Skype」のメイン画面だ。コンタクトリストのメンバーをクリックすると、画像やメッセージが表示される
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ツールの設定から“プライバシー”を選択。慣れるまでは通話の許可を「コンタクトリストのユーザーのみ」に設定しておくと良い
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「Skype」を使い始めたときにまず驚くのが音質の良さだろう。携帯電話はもちろんのこと、固定電話よりもクリアに聴こえる。これはマイクの性能や感度によって異なるかもしれないが、小さな物音もノイズとしてではなく生活音として素直に聴ける。モノラル音声なのだが、両耳で聴くタイプのヘッドセットを使っていると、遠く離れた友人と話しているのに同じ部屋で話している感覚が得られるほどだ。もちろん、音声の遅れも感じられない。この通話品質の高さが「Skype」をオススメしたい一番のポイントである。また、WEBカメラを接続しているば、通話状態からビデオ映像を送ることができる。
また、1対1だけではなく、最大5人同時に通話できる「会議通話」も嬉しい機能だ。2人で会話している時に、コンタクトリストからメンバーを右クリックして、「会議通話に招待」を選択すれば会議通話になる。会議通話を始めたメンバーがホストになるのだが、ホストのPCには他の参加者よりも高い負荷がかかる。なるべく、高性能なPCで回線速度が速い人をホストにしたほうが安定するようだ。
テキストチャットは、最大48人での同時チャットに対応。また、オフラインのメンバーにもチャットでメッセージを送ることができる。送信相手には、ログインした瞬間にチャットウィンドウで通知される仕組みだ。ファイルの転送は、コンタクトリストや通話中のウィンドウにファイルをドラッグ&ドロップするだけ。複数のファイルも同時に転送できる。
「Skype」では、やり取りされる音声、テキストメッセージ、ファイルなどの内容は、256ビットの暗号鍵を利用したAESという強固な暗号化技術で守られている。会話の内容を盗聴されたり、メッセージやファイルの内容を盗み見られるなどは絶対にないと断言はできないが、実用上はほぼないと考えて良いだろう。安全性の高さも「Skype」を利用する利点だ。
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通話中は、メインウィンドウに相手の名前や画像、通話時間が表示される
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通話中にビデオ映像を送信。相手から送られてきた映像の左下に、自分の映像が表示されるという省スペース設計。別ウィンドウでの表示もできる
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5人で会議通話中。声を出しているメンバーの画像周辺は、音声レベルに連動して灰色に光る
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こちらは5人のメンバーがテキストチャットに参加している画像。一度に複数のメンバーへファイルを転送することも可能
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■ 「SkypeCast」を使えば最大100人まで同時に会話ができる!

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作成した「SkypeCast」のトピックはサイトで公開される
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「Skype」は会議通話により最大5人で音声通話ができるが、「SkypeCast」プレビュー版を使えば、なんと最大100人で音声通話を楽しめる。これは、「Skype」を使いWEB上で会議通話をするもので、会議場所となるトピックを作成すると、SkypeCastディレクトリに登録され誰でも参加可能な状態になる。いわば、音声が使える全Skypeユーザー共有のコミュニティスペースという感じだ。
「SkypeCast」のポイントは、主催者が参加者1人1人のマイクをミュートにしたり、参加者を退席させたりといった権限を持てる点にある。例えば、ミュートを使って話す人を限定すれば、ネットラジオを運営できることになる。また、ミュートを解除してリスナーから意見を求め、そのやり取りを他のリスナーに聴かせたりすることも可能だ。リスナー参加型のネットラジオも、手軽に実現できるのだ。
「SkypeCast」を主催するには、まず「SkypeCast」のトップページから「SkypeCastの作成」をクリックしてトピック名や概要、開始時刻、継続時間等を設定する。継続時間は最低15分から設定可能で、この時間を過ぎるとディレクトリから参加できなくなるが、トピック内での会話は続けられる。
実際に主催者を含む7人で試してみたのだが、音質はモノラルAMラジオのような感じで「Skype」の会議通話よりも落ちる。とはいうもののラグはほとんど感じられない。パスワード等の入室制限機能が用意されていないのは少々残念なところだが、現時点ではあくまでもプレビュー版。今後どのように変化していくのか期待せずにはいられないところだ。
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「SkypeCast」を主催するときの設定画面。開始時間は今すぐから28日後まで指定できる
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主催者を含めて7人で「SkypeCast」。こちらは主催者側の画像だ
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■ 固定電話や携帯電話とも通話可能なサービス「SkypeOut」
「Skype」では、固定電話や携帯電話へ通話ができるサービス「SkypeOut」を有料で提供している。例えば日本の固定電話へかけた場合は1分2.66円、携帯電話へは1分17.5円だ。これは市内や市外、時間帯問わず一律の料金となる。もちろん海外への通話も可能。各国への通話料はこちらの料金表に詳しく掲載されている。ちなみに、110や119といった緊急通話には対応していない。
「SkypeOut」の通話料は安いの? と聞かれると、電話会社や割引サービス等によって差があるので一概には言えない。筆者が「価格.com」が提供している「固定電話料金比較」で調べてみた限りでは、国内通話では、各社の割引プランを適用した価格より「SkypeOut」のほうが1分あたり0.1円程度安い場合もある。少なくともお得感のある通話料と言えよう。なお、課金は1分単位となっている。
さて、実際に「SkypeOut」を試して使い勝手や通話品質をチェックしてみた。本サービスを使うには、あらかじめ“クレジット”を購入しておく必要がある。クレジットは1,500円単位での購入となり、支払いはクレジットカードやPayPalなどに対応。また、1カ月間に購入できる限度額が決まっていて、例えばクレジットカード払いの場合、初めて「SkypeOut」を使う時は3,000円分が限度となる。限度額は「SkypeOut」を使う期間が長くなればひと月ごとに増えていくようだ。
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プルダウンメニューから通話相手の国を選んで電話番号を入力。電話番号はコンタクトリストにを登録できる
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通話中は、通話時間と通話料が表示される。この場合は携帯電話にかけているので1分17.5円と表示されている
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クレジットの購入が完了したら、あとはメイン画面の「ダイアル」をクリックしてダイアル先の国名をプルダウンメニューから選び、電話番号を入力するだけ。通話中の音質は、固定電話や携帯電話で通話している時と良く似ている。
実用性は十分だと感じた筆者は「SkypeOut」を使い、あるサービスのカスタマーセンターに電話をかけ、住所や電話番号などの変更手続きをしてみた。自動音声案内のプッシュボタン操作にも対応し、オペレーターには住所や電話番号、12桁の管理番号をすんなりと伝えることができた。一度だけ数字の“2”について聞き返されたものの、それ以外は一発OK。この結果はネットワーク環境によって変わることも考えられるが、今回試した限りでは満足な音質、レスポンスを得られた。
携帯電話との通話では、若干音声の遅れが気になった。携帯電話はドコモのFOMAを使用、「SkypeOut」から発信した音声が、携帯電話から聞こえるまでの時間は約0.6秒程度であった。これは、通話相手に声が届くまでの時間なので、通話相手からの反応が聞こえるのは約1.2秒となる。固定電話では自然に話を進められるレベルだったが、携帯電話では何度か会話が被ることがあった。ワンテンポおいて話すように意識する必要はありそうだ。
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通話履歴は「マイアカウント」ですぐにチェックできる。画像は、1分単位の課金なので5分間の通話料が表示されている
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法人企業の電話番号を800万件から検索できる「JWord 電話帳」では、検索結果から1クリックで「SkypeOut」による通話が可能
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また、Skypeでは有料サービスとして、固定や携帯電話からの通話をSkypeで受けられる「SkypeIn」も提供されている。「Skype」はWindowsだけではなく、Mac OSやLinux、さらにはモバイル端末用OSとなるPocket PCでも利用できる。また、「Skype」を内蔵した無線LAN携帯電話も発表されており、PC以外にも広がりを見せている。
Skype未経験の方は、Skype同士の通話やメッセンジャーとしての利用などは無料なので、周囲に既存ユーザーがいなくても、友人などと誘い合わせて、ぜひ一度「Skype」の便利さを体験してみていただきたい。
■ URL
Skype
http://www.skype.com/intl/ja/
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西野滋仁 オンラインゲームで真っ直ぐに敷かれた人生のレールから飛び出し、5年の歳月を個人サイトの運営につぎ込み、インターネットこそ我が人生と言い切る弱冠26歳。現在、ソーシャルネットワークサービスで人間関係の再構築に奮闘中。 |
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