ウィルコムは30日、同社の事業に関する勉強会を開催した。勉強会には常務執行役員の土橋匡氏、執行役員の瀧澤隆氏、執行役員の喜久川政樹氏が出席。ウィルコムの現状や今後の展開について説明が行なわれた。
■ W-ZERO3は「シンクライアントとしても優秀」
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左から常務執行役員の土橋匡氏、執行役員の瀧澤隆氏、執行役員の喜久川政樹氏
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瀧澤氏は、Windows Mobile 5.0を搭載したW-SIM対応端末「W-ZERO3」の法人展開について説明。「W-ZERO3は法人向けの引き合いも多く、どこまで供給できるか大変だが準備を進めている」と述べ、「Windows MobileはWindowsとの親和性が高く、音声通話やメール以外にWordやExcelといったアプリケーションも使える。法人のモバイルユーザーの7、8割はこの端末でカバーできるのではないか」と自信を示した。
インテリシンクのデータ同期ソリューション「Intellisync Mobile Suite」にも対応しており、社内グループウェアやDBをW-ZERO3のモバイル環境で利用できる。また、シトリックスが提供予定のクライアントソフトやサーバーを導入することで、W-ZERO3をシンクライアントとして利用することも可能だという。瀧澤氏は「シンクライアントはPCとしてまともに使えないのに大きさだけはPC並み。W-ZERO3の重さは220gと小型で、画面の大きさを除けばW-ZERO3に軍配が上がるのでは」と付け加えた。
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インテリシンクで外出先から企業内のイントラやDBにアクセス
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Citrix採用でW-ZERO3の新クライアント化も
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■ 「ユーザーの使いやすさ」こそがウィルコムの考えるFMC
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執行役員の喜久川政樹氏
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喜久川氏は今回の勉強会の主旨に関し、「10月から11月にかけて多くの発表や端末リリースを行なってきたが、このあたりで我々が何を考えているかを総括したい」と説明。ウィルコムの考えるFMC(Fixed Mobile Convergence、固定と携帯の融合)の在り方を中心に話を進めた。
喜久川氏は「FMCに関しては、電話番号や請求書を一本化する、IPベースで固定とモバイルを統合する、さらには固定事業が厳しいからモバイルで補完するなどの話が上がっているが、これらはいずれも事業者側のニーズで、ユーザーからのメリットはわかりにくい状況だ」と指摘。「請求書の一本化は便利かもしれないが、電話番号が一本化されて家庭の電話がすべて携帯電話に転送されても辛いだろう」と付け加えた。
それではウィルコムの考えるFMCとは何か。喜久川氏は「FMCとして考えたわけではなく、結果としてモバイルに固定を取り込んだ」と前置いた上で、「重要なのはユーザーの使いやすさであり、使われている固定環境へいかにうまく無線を取り込んでいくかが重要」とコメント。「通信とその周辺のレイヤーで、ユーザーのライフスタイルやビジネススタイルに最適な環境を目指す」ことを方針として掲げ、「資本関係がニュートラルなため、移動体収入を固定に補填するといったことも考えずに済む」とした。
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喜久川氏は「一般的なFMCの定義は事業者のニーズではないか」と指摘
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通信を通じて最適なライフスタイルやビジネススタイルを提供する事業者に
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■ VoIPによる固定電話との音声定額も視野に
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アッカ・ネットワークスとの提携によりADSLサービスも展開
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ADSL、AIR-EDGE、音声定額を最適な組み合わせでユーザーに提供する「マルチパック」
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喜久川氏はPHSデータ通信サービス「AIR-EDGE」を例に挙げ、「AIR-EDGEでイントラネットにアクセスするサービスは、データ通信としてのFMCに近い」と指摘。音声サービス面でも「企業内でPBXの代わりにPHSが導入し、音声定額によって内線的にも外線としても使える」など、企業内の固定網とPHSを一体化するという事例を紹介した上で、「その先のステップとして、音声端末でもPCでもW-ZERO3でも、グループウェアを含めた業務アプリが同じように動くというサービスを提案していく」とした。
フルブラウザを搭載した音声端末や、そのフルブラウザを活用するためのデータ定額サービスも、FMCに向けたウィルコムの取り組みの1つだという。また、ウィルコムによる固定サービスとして、「ウィルコムADSLサービス」を開始、合わせてウィルコムサービスの複数契約による割り引きサービス「マルチパック」も投入した。
喜久川氏は「ユーザーニーズに合わせてFMCを展開しようとするとブロードバンドは必須だった」と語り、「ADSLを始めることでVoIPについても問い合わせがあるが、もちろんVoIPによる固定網との定額パッケージも視野に入れている」とコメント。また、マルチパックの投入により、ブロードバンドと音声定額をセットで安価に提供するという取り組みも行なわれている。
すでにウィルコムの音声網はIP化が進められており、VoIPの提供に関しては「相互接続型かIP電話サービスを仕入れるかになるだろう」(喜久川氏)。現状のIP電話相互接続やホールセールは従量制であり、技術的な検証が必要になるなどの課題も大きいものの、具体的に話を進めているIP電話事業者もあるという。また、「IP電話事業者ではなく、企業内のVoIP網とウィルコム網を直接接続するという考えもあるのではないか」との考えも示された。
1.7GHz帯や2GHz帯が割り当てられた新規参入の携帯電話事業者に対しては「同じようなビジネスモデルでマーケットを失う可能性というマイナス面もあるが、新たなビジネスチャンスや市場活性化につながるプラス面もある」とした上で、「携帯電話事業のポイントはエリアと料金。各社の事業計画を見ていると初期段階では狭いエリアで展開せざるを得ないようだ」と指摘。音声定額に関しても「我々にはマイクロセルによる周波数効率の高さという理由付けがあるが、携帯電話で音声定額は工夫が必要では」とした上で、「エリアと定額の問題が解決されれば、我々にとっても脅威になるだろう」と述べた。
他社の状況も踏まえ、今後はウィルコムも通信速度の高速化を図る。前日に発表された次世代PHSの実証実験に関しては「通信速度の高速化というユーザーニーズに応えるもの」とした上で、「高速化で通信料金が高くなり、定額制を実現できないのではニーズに応えられていない」と、次世代PHSでも定額制を目指す方針。通信速度に関しては「20Mbps、30Mbpsという数字を目指して実験を進めていく。我々には16万カ所に設置したマイクロセルという強みがあり、それに対して高速のIPバックボーンをどう活かしていくかが課題だ」と語った。
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ユーザーの求めるFMCの実現を目指す
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次世代PHSの実証実験も開始
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■ URL
ウィルコム
http://www.willcom-inc.com/
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(甲斐祐樹)
2005/11/30 15:18
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