ソフトバンクは10日、都内で2006年第3四半期(2005年10月~12月)の決算説明会を開催した。EBITDA(減価償却前営業利益)ベースでは過去最高益を記録したという。
■ 「本格的にトンネルを抜けた」と孫社長
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「本格的にトンネルを抜け、ようやく春が来そうだ」と孫社長
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売上高は前年同期比293億円増の2,874億円。営業利益は同310億円増の235億円、当期純利益は485億円増の220億円と増収増益を記録した。2005年4月~12月の連結業績では、売上高が前年同期比2,484億円増の8,102億円。営業利益では同422億円増の279億円、当期純利益も504億円増の178億円と、こちらも増収増益を達成した。また、EBITDAでは1997年に記録した年間過去最高益(880億円)を9カ月間の連結業績だけで949億円と更新した。
「本格的にトンネルを抜け、ようやく春が来そうだ」と孫正義代表取締役社長。売上高やEBITDA、営業利益、純利益などすべてのセグメントで大幅に業績を回復しており、「営業利益では5年半ぶりに黒字になった。今回は235億円のうち、モデムの売却益が74億円なので、161億円が実力ベースの利益。前四半期と比較しても倍増している」と順調ぶりをアピールした。
連結業績の売上高内訳は、ブロードバンド・インフラ事業が1,963億円、日本テレコムなどの固定通信事業が2,576億円、ヤフーなどのインターネット・カルチャー事業が1,133億円、イーコマース事業が1,921億円など。「当初は四半期ごとに大幅な赤字を出していたブロードバンド・インフラ事業がようやく黒字になった。日本テレコム買収以来、固定通信事業も赤字だが、おとくラインの初期投資も終わり、黒字目前だ」。
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第3四半期の業績
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こちらは2005年4月~12月の連結業績
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連結業績の内訳
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EBITDAは過去最高益を更新した
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■ BBTV、おとくラインで300億円超の特損も、英Yahoo!など売却で1,500億円の利益
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BBTV、おとくラインで300億円超の特損を計上したが、英Yahoo!など売却で1,500億円の利益を得た
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Yahoo! BB向けVODサービス「BBTV」に関しては、ヤフーと共同でTVバンクを設立したことから事業戦略の見直しを行ない、今期の業績に特別損失として147億円を計上した。BBTVは、PCではなくSTBを通じてテレビで視聴するYahoo! BBユーザーしか利用できないクローズドなサービスだ。当初ソフトバンクでは、STBなどのハードウェアによる動画配信を行なう方針だったが、ソフトウェアでサービスが提供できるようになったため、STBからソフトウェアへ方針を転換した。このため、「過剰に納入しすぎたSTBなどのハードを一括償却することにした」という。
また、おとくラインに関しても販売代理店戦略の見直しを行ない、188億円を特別損失に計上している。孫社長は「個人向けや中小企業の営業部隊や設備投資で特損を出した。そこはあまり無理すまいとして、一気に縮小した」とコメント。一方で、「3~5回線以上の法人顧客は利益が出ることもはっきりした」と、法人向けおとくラインは十分に利益が出ると強調する。「NTTと接続のための手続きで手間取った。話せば長くなるが、これらもだいぶ解消した」と、今後は接続も順調に進むとアピールした。
一方、Yahoo!の英・仏・独・韓の法人や、中国のインターネットオークション事業者TaoBaoなどの有価証券を売却。約2,000億円を回収し、そのうち約1,500億円を特別利益として計上した。
■ ボーダフォンの回線を利用したMVNOの可能性も「否定はしない」
会場では、携帯電話事業や光ファイバ事業に質問が集中した。一部で報じられたボーダフォントの回線を利用したMVNOの可能性に関しては、「常にあらゆる選択肢の可能性を否定はしない」とコメントし、MVNOによる事業展開もあり得るとの考えを示した。その一方で、「あらゆる方向で検討している。確定したら正式に発表する」とし、料金や価格、機能についても「まだ確定していない」と述べ、慎重な姿勢を見せた。
「ブロードバンド事業では一か八かの賭けに出たが、携帯電話事業は先行3社が20年前から事業を行なっている。そのなかで短期間でひっくり返すような大技は考えていない。ナンバーポータビリティやワンセグはチャンスだと思うが、我々の携帯電話事業参入には間に合わない。1年、2年を焦るよりは一歩一歩積み上げて行きたい。技術の変化はチャンスと捉えているが、直近の1年や半年の変化に右往左往していきたくない。」
光ファイバについては「新しい技術で実験を行なっている」ことを明らかにした。この新しい技術が、基地局からノードまでを光ネットワークで構築し、ノードからユーザー宅を同軸ケーブルで接続するFTTN(Fiber To The Node)か、光ファイバとxDSLを組み合わせて伝送するFTTR(Fiber To The Remote terminal)か、もしくはまったく別の技術であるかは明らかにしなかったが、「その結果次第では本格的に展開していく可能性もある」とコメントした。
なお、会場では2月中旬に公開を予定しているTVバンクの新インターフェイスを披露。入力したキーワードで検索した動画コンテンツを並ぶ新画面で、動画のサムネイルにマウスオーバーすると動画のさわりの部分も見られるようになっている。「(TVバンクは)キーワードを入れるとチャンネルを構築し、30分でも1時間でも見続けられるサービスだ。『小泉首相』と入力すれば『小泉チャンネル』になるし、『タイガーウッズ』と入力すれば『タイガーウッズチャンネル』になる。おすすめキーワードも表示する。米Googleや米Yahoo!よりも先行して技術開発している」と、技術面もアピールした。
インターネット上での動画配信については、「以前の規制やルールでは、インターネット上でこれほど動画を見られるようになるとは想定していなかった。『インターネットでテレビが見れないのか』という素朴な疑問に応えるためにも、規制緩和が必要だ」と主張した。
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現在のTVバンクの検索画面
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2月中旬に予定している新しいインターフェイス
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■ “ライブドアショック”がIT業界に与える影響は一時的
質疑応答では、ライブドアについての質問もあった。ターボリナックスやメディアエクスチェンジなどライブドア関連企業に関しては、「(ソフトバンクとして)特段必要としている企業はない」と、買収する意向がないことを明言した。
「報道を通じて知った限りでは、(堀江氏は)問題のある行為を多くやられたのだなと思う」と残念そうにコメント。「どの国でもいつの時代でも間違いを犯す人はいる。残念なことは2度と繰り返してはいけない。証券取引法などのグレーゾーンをもっと明確にしていなかなければならない」と述べた。
ただし、“ライブドアショック”がIT業界に与える影響は一時的だという。「中には成長を急ぎすぎることが問題と言われる人もいるが、中国、韓国、米国などとの熾烈な技術競争がある。これを機会に日本の業界が萎縮してしまうのが心配だ。ひるむことなく勝負を挑んでほしい」とIT業界にエールを送る一幕も。「ITバブルの際も、投資家の評価は上下したが、一貫してユーザーは増え続けた。技術も進歩し続けた。騒いでいるのは投資家だけだ」とコメントした。
このほか、好調な決算を背景に「後は孫社長の体調だけが心配」との声もあった。これに対して孫社長は「前髪は危機的状況だが、健康状態は至って健康。表面的にはワンマンのように映るかもしれないが、実際は組織で動いている。私もそう簡単にはいきたくないが、関連会社にも社長は存在していおり、(私に)万が一のことがあってもやっていける」と会場を笑わせた。
■ URL
ソフトバンク
http://www.softbank.co.jp/
関連記事:「ソフトバンク、MVNOでボーダフォンと交渉」報道に両社ノーコメント[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/02/09/10823.html
■ 関連記事
・ ソフトバンクが中間決算で黒字化、携帯事業は「無理をせず着実に」
(鷹木 創)
2006/02/10 21:24
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