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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
「IEEE 802.11nはなぜ速い?」アセロスが技術説明会を開催

 アセロス・コミュニケーションズは27日、IEEE 802.11nドラフトに関する技術説明会を開催した。2006年1月にドラフト版が採択されたIEEE 802.11n技術への理解を深めることを目的としており、アセロス代表取締役の大澤智喜氏が技術の解説を行なった。


データを束ねるMIMOに加えて物理層やMAC副層でも高速化

アセロス代表取締役の大澤智喜氏
 IEEE 802.11nは、100Mbps以上のスループット実現を目的として策定が進められている無線LAN規格。すでに2006年1月にはIEEE 802.11nのドラフト版が採択されており、相互運用性プランの提出やスポンサー投票といった手順を踏まえ、2007年4月には正式にIEEE 802.11nが批准される見込みだという。

 IEEE 802.11nによる高速化を実現するための最も大きな要素は、複数のデータストリームを束ねて送受信する「MIMO」と呼ばれる技術。ただし、大澤氏によれば高速化はMIMOだけで実現しているのではなく、物理層やMAC層の仕様変更でも速度向上を図っているのだという。

 物理層では、従来まで52のサブチャネルで利用していた20MHz幅を56のサブチャネルで利用することで20MHz幅あたりの速度を向上。さらにガードインターバルと呼ばれるデータ送受信の空き時間を従来の800ナノ秒からオプションで規定されている400ナノ秒とすることで、MIMOを利用しない1ストリームでも速度向上が図れるという。

 物理層では速度向上だけでなく互換性も規定。既存の11a/b/gと同じフレームフォーマットを利用する「レガシーモード」、下位互換性が考慮された既存11a/gが理解できる11nのフレーム「ミックスモード」が必須の仕様として定められている。また、11n同士での通信でのみサポートされる「グリーンフィールド」というフレームもオプションで規定されており、同じ11n間でもミックスモードと比較してより効率の高い通信が可能とした。

 MAC副層においても、上位のデータをサブフレームとして多重化し、さらにそのデータを物理層へ送る際にも多重化することでデータの伝送効率向上を実現。実際のスループットはTCP/IPに依存するが、オーバーヘッドの削減は従来に比べて約20倍近く効率化できるという。


IEEE 802.11nにおける物理層の改正内容 20MHz幅で利用するサブチャネルの拡張でスループットを向上

MAC層では約20倍近いオーバーヘッドの削減効果が見込める MAC層の概要図

最大4ストリームの高速化で最大600Mbpsも実現できる

周波数やフレームフォーマットによるスループットの理論値

IEEE 802.11nのまとめ
 これら物理層、MAC層の仕様変更に加え、MIMOによるデータストリームの多重化でIEEE 802.11nは100Mbpsを超える高速化を実現。IEEE 802.11nでは2ストリームを必須として規定しているが、オプション規定では最大4ストリームでの高速化が可能だという。物理層オプションとして規定されているガードインターバルの短縮や、40MHz幅の帯域を利用することで、2ストリームで最大300Mbps、4ストリームで最大600MbpsまでがIEEE 802.11nとして実現できる。

 日本では40MHz幅での利用が認められておらず、現状利用できる20MHzでは2ストリームで最大144.4Mbps、4ストリームで最大288.9Mbpsに止まるが、大澤氏は「5GHz帯開放などの政府の方針から考えれば、40MHz幅も認められる方向にあるのではないか」とコメント。「日本でも使えるようになると楽観的に期待している」との考えを示した。

 なお、これまでMIMOでは3×3、2×3といった「n×m」形式で構成方法が表現されてきたが、大澤氏は「IEEE 802.11nでは構成方法ではなく、空間を多重化するストリーム数で定義する」と指摘。「3×3構成のアンテナや送受信機で2つのデータストリームを作るという場合もあり、構成方法とストリーム数は一致しない場合がある」と説明した。

 さらに大澤氏は「n×mがアンテナの構成を表すのか、送受信機の構成を表わすのかは明確には規定されていない」と指摘。「アンテナを増やせば選択ダイバーシティ効果、送受信機を増やせば合成ダイバーシティ効果が得られる」とそれぞれのメリットを説明し、「アセロスでは送受信機を複数利用した合成ダイバーシティを採用している」との立場を示した上で、「メーカーごとに表記が異なるn×mの方式が、今後誤解を招く可能性もある」との問題点を挙げた。

 実際、IEEE 802.11nに準拠して200Mbps近いスループットを実現しようとした場合、「ストリーム数や帯域幅によって28通りもの方式がある」と大澤氏はコメント。「すでにIEEE 802.11n準拠のチップをアナウンスしているメーカーも相互接続を意識しているが」と前置いた上で、「Wi-Fiによる相互接続性も重要なポイント」と語った。

 すでにアセロスではIEEE 802.11nドラフトに準拠した無線LANチップセット「AR5008」を発表しているが、こちらは3×3の送受信機による2ストリームの構成を採用し、40MHz幅のシングルバンド時でスループット300Mbpsを謳っている。大澤氏は「コストの面から300Mbpsがちょうどいいバランス」と説明、「他メーカーもまずは300Mbps対応のものがリリースされるのではないか」と語った。


11nドラフトではストリーム数で定義 アンテナを増やせば選択ダイバーシティ効果、送受信機を増やせば合成ダイバーシティ効果

関連情報

URL
  Atheros Communications(英文)
  http://www.atheros.com/

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(甲斐祐樹)
2006/03/27 17:54
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