アッカ・ネットワークスは14日、2007年12月期(2007年1月~12月)の決算説明会を開催した。説明会では、今後の新規事業展開に加え、イー・アクセスの株主提案に対する考えが示された。
■ イー・アクセス提案に改めて「反対」。大株主の一部はアッカに賛同意向
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(左から)アッカの木村社長、湯崎副社長、廣野取締役
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アッカの筆頭株主であるイー・アクセスは、1月16日に現在常勤する木村正治 代表取締役社長と湯崎英彦 取締役副社長、廣野公一 取締役 財務経理部長の3氏を不再任とする株主提案を発表。アッカではこれに対して、1月29日付で同提案に反対する意向を発表している。
木村社長は「イー・アクセスの提案は常勤取締役の不再任が主体であり、株主価値向上の施策が現時点で見られない」と述べ、改めて提案に反対する考えを示した。すでに大株主を含めた10社以上に対して反対意向を説明したほか、一部企業はアッカに賛同の姿勢を示したという。また、個人株主を含めて自社の考え方を説明する考えも示した。
3月28日に予定する定時株主総会に向けて木村社長は、「我々が考えるベストの体制や企業価値向上策を提案していきたい」と発言。イー・アクセスは株主総会に向けた委任状勧誘を行なっているが、湯崎副社長は「当社が委任状を集めるか否かも含め、イー・アクセス側の動向を見ながら最終的に考えていきたい」と語った。
また、公募価格45万円だった株価は、2月14日の終値で14万7,000円となっている。決算説明会では今後の事業展開も述べられており、木村社長は「しっかりと利益を出せる新規事業などを通じて、株価上昇に努めていきたい」とした。
■ 個人サービス加入者数は96.2万人。法人光サービスは堅調に推移
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2007年12月期の連結決算概況
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2007年12月期の連結決算は、売上高が前年同期比9.7%減の350億7,900万円、営業利益は5.9%増の19億9,100万円、経常利益は0.1%増の19億900万円、純利益は39.0%増の14億7,500万円。なお、同期にはWiMAX免許取得に向けて要した5億5,000万円の費用を特別損失として計上している。
事業別では、個人向けサービスが前年同期比14.4%減の269億1,000万円。FTTHが大きなトレンドとなる中で、木村社長は「DSLの縮小傾向は免れず、売上げは低下傾向にある」と説明。また、個人向けサービス加入者数は前年同期比13.9万人減、第3四半期比3.3万件減の96.2万人で、ARPU値は2,136円となった。
一方、企業・その他サービスでは前年の73億8,100万円から81億6,800円と売上高が上昇。特に法人向け光サービスで10%以上の伸びがあったとし、加入者数は前年の501件から2,050件へと約4倍に増加。アッカでは今後も大口案件獲得に注力する考えで、堅調な伸びを期待している。
また、利益創出施策として中継回線や通信設備利用料の削減などによって売上原価を35.9億円削減の268億6,800万円にしたほか、販売促進費の効率化によって販売費・一般管理費を約2.6億円削減の62億1,900万円になったとしている。
木村社長はアッカの現状について、「DSLホールセールを中心にビジネスを展開した結果、ユーザーを直接管理することができずにIP電話や携帯電話というように他のサービスとの連携ができなかった」と言及。その上で、中期的な売上の維持・拡大に向けて選択と集中を進める考えを示し、「WiMAXの免許申請やADSLサービスで得られたノウハウを活かして新規事業にに参入する」と説明した。
なお、2008年12月期の業績予想は、売上高が昨期比40億円減の310億円と減収を見込む。一方、営業利益や経常利益、純利益は昨期と同等の数値を維持するとした。また、年間配当も昨期の5,000円から7,500円に増配を予想するという。
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個人および法人・その他サービス別の売上高推移
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法人向け光サービスの加入者推移
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■ HSDPAやWiMAX、無線LANなどの新規事業で売上高の底上げを図る
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ワイヤレスブロードバンド事業への参入形態イメージ
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アッカでは決算発表に合わせて、NTTドコモとHSDPA方式による企業向けデータ通信サービス開始に向けた基本合意を発表。また、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)およびウィルコムとは、OCNやPHSサービス、アッカのサービスを組み合わせた「ブロードバンド・マルチアクセス・サービス」の実現に向けた共同検討を開始したと発表している。
木村社長は「ブロードバンド・マルチアクセス・プロバイダーとして成長するため、ワイヤレスを中心としたブロードバンドサービスに参入する」と表明。「すでに無線技術や製品、サービスを持つパートナー企業と連携を進め、適正な投資規模範囲でリターンが狙えるよう展開していきたい」とした。
加えて、ニンテンドーDSやPSP、iPod touchのような無線LAN機能を持った製品が普及している点を踏まえ、公衆無線LANサービスの参入も目指す。公衆無線LAN参入時には、ADSL網を活用したスムーズな展開が可能だとしており、当初はトリプレットゲートと協業して横浜地区を対象にニーズ検証や共同実験を進めていく。
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ドコモのMVNOによるサービスイメージ。付加価値サービスにより、法人や他キャリアへの提供を想定する
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NTT Comおよびウィルコムとの共同検討案。1IDでのマルチアクセスサービス提供なども検討する
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WiMAX事業について
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WiMAX事業に関しては、免許申請時に得られたノウハウを活用して、固定系地域バンドで免許申請を目指すCATV事業者に対してコンサルティングを行なう考え。すでに5社程度に接触しており、課金プラットフォーム構築なども目指すという。なお、全国バンドはKDDI系のワイヤレスブロードバンド企画が認定を受けたが、アッカでは「MVNOの利用や、課金プラットフォームなどを提供するMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)的なサービスも視野に入れていきたい」という。
アッカではこれら新規事業によって売上高の底上げを図りたい考え。詳細は2008年半ば以降に確定させるが、木村社長は「2010年には新規事業で60~70億円の売上高を目指し、総売上高で350億円を超えたい」と語った。
■ URL
アッカ・ネットワークス IR情報ページ
http://www.acca.ne.jp/ir/index.html
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(村松健至)
2008/02/14 19:32
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