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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
次世代ネットワークの意見募集に145件。ソフトバンクは独禁法違反を指摘

 総務省は7日、「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方」に関する意見募集結果を公表した。法人や個人を含め合計145件の意見が提出された。

 「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方」については、1月29日に公開した情報通信審議会の答申ではNTT東西による次世代ネットワーク(NGN)などのサービスについて、第一種指定電気通信設備制度を適用するべきであると答申。シェアドアクセス方式の光ファイバに関する1分岐単位での貸出については、複数案を検討した上でさらなる検討が必要であるとしていた。


NTTグループやウィルコムなどは品質低下などを懸念して反対

 1分岐単位での貸出(OSUの共有)については、NTT(持ち株)をはじめとしたNTTグループからは反対意見が提出されている。NTTは「他社が独自にIP網を構築できる環境は整っており、NTT東西のIP網などにはボトルネック性はない」としたうえで、「アンバンドル化や接続料設定は具体的に接続が必要な場合に限定すべきであり、接続要望が出る可能性だけでアンバンドル化することは不適当」と意見。「我が国の光サービスは諸外国と比べ最も低廉な料金水準にある」として「現在の分岐方式サービス競争の阻害や設備競争の否定に繋がるものであり、長期的な視点での料金低廉化にならない」と反対している。

 NTT東日本は「OSU共有によって今後の新サービスの提供が困難となりユーザーの利便向上に支障が生じるほか、異なる事業者間で共通のルール作りが困難なことが想定されユーザーへの安心・安全・信頼性の高いサービスの提供にも支障が生じる」としているほか、「他事業者は当社と同様なアクセスサービスを提供することが可能である中で、当社だけがルータなどの情報をサービス開始に先立って開示するよう義務づけられ、当社だけサービス提供が遅れることが極めて競争中立性を欠く」と意見している。

 NTT西日本も、光ファイバについては「電力系事業者やCATV事業者らが旺盛にケーブル敷設を行なっており、光ファイバを独占できる状況にはない」と意見。サービスについては、「OSU共有を実際に共用するには運用ルールを事業者間で取り決める必要があり、実質的に事業者間の業務提携を強いる構造が競争の否定につながり、サービス・コスト面で大きな制約を受けることになる」「ヘビーユーザなどの影響により、その他ユーザーの通信品質が劣化するほか、故障修理などに多大な時間を要することが想定されサービスのレベルダウンを招く」として反対意見を提出している。

 NTTグループ以外では、ウィルコムが「回線品質の確保や迅速かつ柔軟な新サービスの提供に課題があり、ユーザーの利便を損なうことを懸念しており、分岐回線単位の利用は弊害が大きい」と意見しているほか、Bフレッツによる動画配信サービス「スカパー!光」を提供しているオプティキャストも、「OSU共有は、スカパー!光のサービスの品質低下及びコストアップを招く恐れがある」として反対意見を提出。USEN、UCOM、アッカ・ネットワークス、ケイ・オプティコム、エネルギア・コミュニケーションズ、東北インテリジェント通信、STNet、九州通信ネットワーク、社団法人電信電話工事協会なども反対意見を表明している。


ソフトバンクグループはNTT東西のOSU共用拒否は独禁法違反と批判

 一方、ソフトバンクBBをはじめとしたソフトバンクグループは、OSU共有について賛成意見を提出している。ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルの3社による意見では、答申について「分岐端末回線単位接続や接続料の算定方法に関する記述については、現状の問題を解決するための具体的な方策が打ち出されておらず内容は不十分」として「OSU共用による分岐端末回線単位接続を実現し、事業者間の競争を喚起すること明確に方向づけることが必要」「具体的には、NTT東西に対する分岐か分離かのいずれかの措置の実現が必要」と意見している。

 また、KDDI、アッカ・ネットワークス、イー・アクセス、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB、TOKAI、ビック東海が実施した実証実験に基づき、NTT東西に1分岐単位での接続を申し入れたものの拒否された件を挙げ、「NTT東西には他事業者とのOSU共用を義務付けられる理由がないとしているが、競争促進による一般消費者の利益増進とNTT東西が受ける制約を適切に比較衡量すればNTT東西の主張は妥当性を欠くもので、NTT東西は事業法における接続義務を受忍すべき責務を負っている」と指摘。2007年に公正取引委員会がNTT東日本のBフレッツ・ニューファミリータイプについて、独占禁止法に基づく違反宣言審決を下した件を例に「NTT東西による1分岐単位での提供拒否は、FTTH市場において自己の優位性を確立しようという明確な意図を背景になされたものと認められる」と批判したうえで、「1分岐単位での接続拒否は独占禁止法の観点からも違法の疑いが強い」と指摘している。

 このほか、FTTH市場については「NTT東西が2007年9月末で77.8%のシェアを占めており、市場は独占的状態になっている。NTT東西が当初計画した2010年のFTTH契約獲得見込みを3,000万回線から2,000万回線に下方修正したことも、FTTH市場において競争が充分に進展しなかったことに起因して拡大すべき市場が拡大しなかったものと言わざるを得ない」と指摘。また、下方修正についても「NGNへの接続構成に関して、地域IP網のNGNの共用ではスイッチにおいても接続事業者からNGNと同様の接続を求められることを危惧し、地域IP網とNGNを共用しない構成に変更したため下方修正に至ったのではないか」との推定を示し、「仮に事実であれば電気通信事業法、および独占禁止法に抵触する」とNTT東西を批判している。なお、ソフトバンクグループではこのほかヤフー、ソフトバンクIDC、モビーダ・ソリューションズ、カービューなどが賛成意見を提出している。

 ソフトバンクグループ以外では、KDDIが「他事業者の要望があり技術的に可能な場合には、アンバンドルして提供しなければならないという考え方は踏襲すべき。NTT東西以外の利用実績や要望がないことなどをもって、アンバンドルの要否が判断されるべきではない」と賛成意見を提出。このほか、イー・アクセス、イー・モバイル、フュージョン・コミュニケーションズ、ジュピターテレコム、ビック東海などの企業もOSU共有について賛成意見を表明している。


 このほか、社団法人日本ケーブルテレビ連盟は「OSU共有は競争が促進されて消費者に取って望ましいこ」としながらも、「CATVの投資負担がハンディキャップとなって不利益を被る懸念がある。投資リスクを負わない方が競争条件が有利となる不公正な状況を生じさせることを許してはならない」として慎重な検討を求めている。

【お詫びと訂正】
 初出時、STNetは賛成意見を表明していると表記しましたが、反対意見を表明しております。お詫びして訂正いたします。


関連情報

URL
  総務省 報道資料
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080306_2.html

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(大久保有規彦)
2008/03/07 15:59


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