フジテレビジョンは、現在提携事業者を通じて運営している動画配信サービス「フジテレビ On Demand」について、4月1日から自社による配信を開始すると発表した。また、4月7日には携帯電話版「フジテレビ On Demand モバイル」も開始する。
■ 当初は無料視聴タイトルを中心に配信。「ショーパン」連動コンテンツも
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フジテレビ On Demand
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フジテレビ On Demandは、2005年7月に発表、同年9月に本サービスを開始したフジテレビジョン運営の動画配信サービス。フジテレビで放送した番組や番組連動コンテンツ、オリジナルコンテンツなどを配信しており、累計コンテンツ数は約80タイトル1,500本程度で、常時コンテンツは約30タイトル200本程度になるという。
4月1日に開始する自社サービスでは、フジテレビの会員制サービス「フジテレビID」を利用。ID登録は無料で、同社では現在60万人いる登録ユーザーをベースに、自社版「フジテレビ On Demand」の会員数を増やしたいとしている。
コンテンツは、自社サービスによる運営で可能になったという無料タイトルを中心に用意する考えで、これに加えて地上波放送と連動したコンテンツも拡充。4月には、毎週月曜日から木曜日まで放送している生野陽子アナウンサーを起用したテレビ番組「ショーパン」と連動する「ショーパンFriday(仮)」を、毎週金曜日に配信していく。また、有料コンテンツの料金は各100円程度からになる。
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4月以降のラインナップ。「スカルマン」なども配信する
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無料視聴可能なタイトルも拡充する
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4月7日には「フジテレビ On Demand モバイル」を、NTTドコモ向けに開始。PC版と同様に映像全編の配信も実施するほか、海外ドラマ「24」のアナザーストーリーをモバイル限定で配信するなどの施策も実施する。また、PC版と同様に無料視聴タイトルも多数用意する。
料金は月額315円/525円/1,050円。各料金メニューに応じて付与されるポイントを使用してコンテンツを視聴できる。なお、auやソフトバンクに関しては全編配信ではなく、一部内容を配信する形になるという。
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フジテレビ On Demand モバイル
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携帯電話上で動画を視聴しているところ
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■ 自社運営でユーザーと直接向き合ったサービスを展開
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フジテレビの塚本氏
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フジテレビジョン デジタルコンテンツ局 デジタル事業センター デジタルビジネス推進部の塚本幹夫部長は、「収入は微増ながらも右肩上がりに推移している。また、権利処理や配信ノウハウも蓄積できた」とコメント。「売れるコンテンツ、売れないコンテンツもわかったほか、地上波放送の直後にコンテンツを配信する『ニアライブ配信』も手応えを感じてきている」とした。
一方で、「提携事業者を通じた配信では、ユーザーの直接の顔が見えず、フジテレビのWebサイトにユーザーをダイレクトに取り込めない」とのデメリットも見えてきたという。これら課題に対応するため、塚本氏は「本店化計画として自社による課金、顧客管理、コンテンツ配信の準備を進めてきた」と説明し、「ビジネスの最大化を目指して、ユーザーと直接向き合ったサービスを展開していく」と抱負を語った。
ビジネスモデルは有料コンテンツの売上がベースで、塚本氏は「無料コンテンツからの誘導も図っていきたい」とした。なお、事業部全体としては、Webサイトやモバイル、Podcast事業も手がけており、「これらを有機的に組み合わせた、広告のセット販売も考えている」と付け加えた。
デジタルビジネス推進部 企画担当部長の奥津信弘氏は、「フジテレビ On Demandは4月に新しいステージに旅立つが、何より大事なのは視聴者に喜んでもらえるサービスを提供することが重要」と発言。自社サイト版でのみ視聴できるオリジナルコンテンツも用意する考えだが、「ライセンシー可能なコンテンツは、提携事業者向けにも配信していく」と述べた。
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自社による新サービス開始の狙い
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自社配信イメージの概要。新たに携帯電話も提供範囲に入る
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「アイドリング!!!」をはじめとしたオリジナル企画も強化する
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同社デジタルビジネスへの取り組み
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■ 塚本氏「違法動画サイトが幅をきかせている」。事前パトロール体制を要望
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国内外放送局によるVOD事情も紹介
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塚本氏は国内外におけるVOD事業の現況も説明する中で、「YouTubeなどの違法動画投稿サイトが幅をきかせている」と指摘。これに対して、「NBCとNews Corporation、BBCといった海外放送局が動画配信ビジネスに積極的に取り組んでいる」と述べ、「日本国内でも、当社や日本テレビ、NHKなどが動画配信ビジネスへの取り組みをはじめている」と説明した。
動画共有サービスに違法に投稿されるコンテンツに関して塚本氏は、「YouTubeの担当者とミーティングをしたことがあるが、GoogleとしてもYouTubeを合法なサービスにしていきたいようだ」とコメント。また、「NBCやNews Corporationのスタッフが来日した際に意見交換したが、『違法状態が出発点にある状態で、それを見逃すこと自体が放送事業者の精神にもとる』という考えは同じだった」とした。
こうした動画共有サービス事業者との正式な話し合いに関しては、「違法動画がアップロードされないような事前パトロール体制が整ってから」という。なお、「ニコニコ動画」を運営するニワンゴの親会社ドワンゴは、番組の著作権侵害動画を削除する申入書を提出しているが、「申入書の提出によって、当社の対応が変わることはない」と述べた。同社では事前チェック方式による動画共有サービス「Watch me!TV」を提供しており、「こうした体制のサービスが他にもあれば、話し合いの場を持ちたい」との考えを示した。
■ URL
フジテレビ On Demand
http://fod.fujitv.co.jp/
関連記事:ニコ動がテレビ局に宣言「番組の著作権侵害動画はすべて削除します」[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/11/18750.html
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(村松健至)
2008/03/26 14:48
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