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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
IPTVの規格を一本化する「IPTVフォーラム」設立

IPTVフォーラムの技術仕様策定スケジュール
 有限責任中間法人IPTVフォーラムは24日、同法人の設立に関する説明会を開催した。

 IPTVフォーラムは、ブロードバンドを利用したコンテンツ流通促進を検討する民間協議会「次世代ブロードバンドコンテンツ流通フォーラム」の中で、前身となる同名の任意団体が2006年に発足。このフォーラムでは通信事業者や家電メーカー、放送事業者などの参加を受け、約1年半に渡ってIPTVに関する技術検討を重ねていた。今回は有限責任中間法人としてIPTVフォーラムを設立することで、恒久的かつ継続的なIPTVの技術およびサービスの基盤を整えていくとしている。

 法人登記は5月12日、事務所開所および対外発表は6月24日で、設立時の社員はNTTぷらら、KDDI、ソフトバンクBBなど通信事業者、テレビ朝日、東京放送、日本テレビ放送網、日本放送協会(NHK)、フジテレビジョンな放送事業者、シャープ、ソニー、東芝、日立製作所、松下電器産業など家電メーカーが参加。また、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授、Dpa(社団法人デジタル放送推進協会)の技術委員長を務めるフジテレビジョンの関祥行氏も設立時社員として名を連ねている。

 IP技術を利用して番組を配信するいわゆるIPTVサービスにおいては、国内で複数の事業者から異なる規格でサービスが展開されているが、IPTVフォーラムではIPTVにおける共通の技術仕様を策定。事業者やメーカーがIPTVフォーラムの仕様に準じたサービスや製品を開発することで、1つの映像受信機で複数のサービスを利用する、もしくは1つのサービスがメーカー各社の映像受信機に対応するといった汎用性が期待できるという。

 すでに前団体のIPTVフォーラムで1年半を費やして検討した技術仕様に基づき、7月中旬には0.95版のドラフトを作成した上で技術委員会によるレビューを実施。8月には産業財産権を行い、8月末には第1版を公開。9月より第1版を公開する予定だ。


総務省や通信事業者がIPTV共通仕様に大きく期待

理事長を務める慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授
 IPTVフォーラムの理事長を務める村井教授は、国内のIPTVを巡る動きとしてテレビ向けにポータルや番組のVOD配信を行うアクトビラが採用する「デジタルテレビ情報化研究会」、地上デジタル放送のIP再送信も含む「IPSP」の2つがあったと説明。「どちらも独立したアプローチとして出発しているが、IPTVフォーラムではこれらの財産を継承しつつ、2つの大きな流れを調整しながら大きな新しい力を育てていくプロセスを作るための大きな可能性が生まれた」とIPTVフォーラムを評した。

 また、日本のIPTVは世界からも大きな注目を集めているとし、「フォーラムの成果は透明かつオープンに、理解されやすい形で展開することを期待されている」とコメント。「IPTVフォーラムは地球全体での新しい分野への大きな貢献が期待できる」とし、「IPTVフォーラムの趣旨をご理解いただくとともにアドバイスを頂戴したい」と語った。

 総務省情報通信政策局総合政策課長の鈴木茂樹氏は、「総務省は従来よりブロードバンドのもっとも有力なアプリケーションとしてIPTVに期待している」とコメント。「IPTVフォーラムは我が国初のIPTVに関する規格団体であり、これがテレビに実装されることで通信事業者のネットワークに関係なくIPTVのサービスが受けられ、利用者の利便性はことのほか向上するだろう」とし、「通信と放送の融合の1つの証がここに誕生した」と高く評価。「1日も早く規格が実装された製品が市場に出回ることを期待している」とした。

 同フォーラムの設立呼掛け人であるNTT、KDDI、ソフトバンクBBもフォーラム設立に関してコメント。NTT 研究企画部門長の花澤隆取締役は、「我々もひかりTVや地上デジタル再送信などIPTVに取り組んでいるが、規格統一によって市販製品を買えばどの事業者のネットワークも問題なく使えるということはIPTVの普及や利便性に向けて大変意義深い」とコメント。KDDI プラットフォーム開発本部長の吉満雅文氏は、「今後のIPTV普及拡大を考えると、テレビ受信機やサービス基幹部分の規格が市販のテレビやレコーダに搭載されていくことは非常に重要。この会は意義深いもので、一緒にIPTVを発展させていきたい」とした。

 任意団体の際は途中参加だったというソフトバンクBBは、接続企画本部長の弓削哲也常務執行役員がコメント。「我々はADSLを中心に500万のユーザーがいるが、海外でのIPTVはADSLが多く、我々もADSLで40本以上のIPTVと数千本のVODを提供している」とした上で、「IPTVの規格が統一化されることでさらにチャンスが広がる。我々は光のサービスも持っており、ADSLと合わせて新しいサービスを手がけられるのではないか」と期待を示した。


総務省情報通信政策局総合政策課長の鈴木茂樹氏 NTT 研究企画部門長の花澤隆取締役

KDDI プラットフォーム開発本部長の吉満雅文氏 ソフトバンクBB 接続企画本部長の弓削哲也常務執行役員

技術採用はメーカーや事業者の判断に委ねる

技術委員会の主査を務めるフジテレビの関祥行氏
 技術委員会の主査を務めるフジテレビの関祥行氏は、技術仕様策定の概要について説明。「市販の受信機を対象として想定し、主にHD映像配信の運用仕様や受信機の開発・製造に必要な技術情報を策定し、それを公開することを目的とする」と説明した。

 策定した技術仕様をすべて満たす必要はなく、「昨今ではサービス側と受信機側を1つに統一しつつ、実際にはさまざまなことができる規格が求められている」とコメント。IPTVフォーラム仕様に準拠した製品の開発においても、搭載する機能の選択はメーカー各社の商品企画に委ねるとした。IPTVフォーラムに準拠した製品の認定についても「テレビでもそんな認定を行っていない」(関氏)と、同フォーラムでは行わない方針だ。

 技術委員会は規格検討会議のほか、「VODWG」「ダウンロードWG」「IP放送WG」「IP再送信WG」「CDNスコープWG」「インターネットスコープWG」「放送連携WG」という7つのWG(ワーキンググループ)を設置。8月末を予定する1.0の策定には「7つのWGすべての仕様が揃うかはわからないが、まとまったところから公開していきたい」とコメント。仕様の公開方法は理事会で検討した上で決定するが、基本的には一般向けに公開する方針だという。

 フォーラムへの新規加入は理事会の承認を踏まえた上で受け付けるが、1.0までは2300ページに及ぶという任意団体時代に検討された仕様をベースとして策定作業を進める方針。1.0策定後には、新規会員の意見も盛り込んだ仕様策定を行うとした。

 IPTVフォーラム仕様に準拠した製品の市場投入については「通常は規格策定から長めに見て1年半」(関氏)と一般的な見解を示した上で、「これまで旧フォーラムで検討した2300ページの資料もあり、メーカーとしても準備が進んでいるだろう」とコメント。

 IPTVフォーラムの規格はメーカーごと任意に搭載できるという方針のため、機器やサービスごと使えないケースが発生するのでは、という質問については「そもそも今回のフォーラムは共通仕様の精神で集まっており、わざわざ違うやり方をして端末も別になってしまうという想定はあまりしていない」(IPTVフォーラムメンバー)。また、ITU-Tへの提案などを含め、国際標準との協調も図るとした。

 アクトビラやひかりTVなど現行サービスへの対応については「フォーラムの検討も既存サービスの仕様をベースに行っている」とコメント。「サービス事業者ごと最低限は共通で守らなければいけない仕様部分はある」とした上で、基本的には既存サービスもカバーできるとした。なお、ひかりTVはサービス発表時点でIPTVフォーラム仕様の準拠を表明しており、正式規格化の際にも対応予定としている。

 IPTVの市場規模については「サービス各社の契約者数合計は50~60万程度で、100万には届いていない程度」とコメント。IPTVフォーラムによる共通仕様の策定により、IPTV市場の大きな成長を期待できるとした。


技術仕様策定にあたっての考え 仕様検討体制

関連情報

URL
  IPTV FORUM JAPAN
  http://www.iptvforum.jp/

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(甲斐祐樹)
2008/06/24 22:09


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