ミクシィは5日、2009年3月期(2008年4月~2009年3月)第1四半期の決算短信(非連結)を発表した。ミクシィの笠原健治代表取締役社長が業績や今後の展開、新たに開始したサービスについて説明を行った。
■ 第1四半期が好調で業績予想を上方修正
第1四半期の実績は、売上高が前年同期比34.1%増の28億8300万円、営業利益が10.9%増の10億1000万円。同社によれば第1四半期は予算に対して順調に進捗しており、データセンターに関する費用削減を行ったことから利益額が当初計画を上回ったため、第2四半期累積期間の業績予想を営業利益で3億円、四半期純利益で1億5000万円上方修正した。
事業別ではSNS「mixi」の売上高が26億2000万円で、このうち広告売上が24億7000万円、課金売上が1億4900万円と広告収入が圧倒的な割合を占めている。インターネット求人事業については求人広告市場で有効求人倍率が低下を続けているといった状況から事業環境が悪化しており、売上高は2億6300万円と前年同期の3億3,362万円から減少。ただし、応募者数自体は好調に推移しているという。
■ モバイルは好調ながらPCのPVやアクティブ率は減少傾向
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ミクシィの笠原健治代表取締役社長
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2008年6月30日現在のmixiユーザー数は1490万人で、7月14日には1500万突破が発表されている。前四半期から引き続きモバイル分野が好調であり、モバイルのPVは前四半期の83.1億PVから88.5億PVへとさらに向上。広告収入の面でもモバイルは好調だという。
一方、PCのPVは前四半期の54.8億PVと比較して48.1億PVと減少し、50億PVを割り込んだ。滞在時間は2時間27分と前四半期と同数値だったが、3日以内にmixiへログインするアクティブ率は前四半期の57%から55%と微減している。
四半期でのユーザー数純増は89万人と100万を割り込んだが、ミクシィの笠原健治代表取締役社長によれば、これはスパム目的の事業者対策が大きな要因だという。具体的にはこれまで携帯電話の登録が不要だった海外ユーザーの登録にも携帯電話登録を必須としたほか、mixi内での行動パターンが異常値となった場合にチェックを行うシステムも導入しており、「ユーザー数の伸びは若干弱くなったが、その分悪意を持った業者の数は激減できており、mixiの健全性は評価されたのでは」と語った。
PCのPVやアクティブ率が減少傾向にある点については「PC向けの施策がまだ4~6月では十分に発揮できていないのでは」とコメント。「7月にリリースした機能などもあり、今後はmixiのコアとなる部分を中心に改善していきたい」との方針を示したほか、「前述の業者対策も若干ながら影響している」と補足した。
業者対策のため、海外在住の日本ユーザーは日本の携帯電話を持たない限り原則としてmixiに新規登録できないことになったが、「この現状を良いこととは思っていない」(笠原氏)。行動パターンを検知する前述のプログラムの精度を上げるといった対策も行うことで、海外ユーザーの登録にも対応していきたいという考えを示した。
■ 中国で6月にSNSのテスト版を開始。国内は課金サービスを拡充
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新たな有料課金サービスの1つとして提供された「mixi Radio」
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第1四半期のロードマップとしては「収益モデルの多様化」「広告価値の最大化」「メディア力の強化」を柱として事業を展開。収益モデルについてはmixi Radioやキャラクターミクコレといった有料課金サービスを開始しており、「現状は85%が広告収益だが、課金収益の比率も上げていき、広告に次ぐ柱にしたい」とした。
mixi Radioについては、「コンセプトは自分専用にカスタマイズできるラジオ」とした上で、「楽曲数も十分ではなかったり、インターフェイスももっと直感的でシンプルにしたいとは考えている」とコメント。他のユーザーに楽曲をプレゼントできるギフトソング機能も「サービスへの導線が少なく、本来はメッセージ機能や誕生日バナーと一緒にギフトソングがあってもいいのでは」とし、「まだ始まったばかりのサービスなので、改善しながらチューニングしていきたい」とした。
収益モデル多角化の一環としては、5月に中国に子会社を設立。現地のスタッフも採用した上で、6月にはSNSサービスのテスト版を開始したという。中国でのサービス名称は非公開で、「2008年内には正式サービス化の予定だが、その時も日本で大々的に発表する予定はない」とコメント。2008年度中の収益化は見込んでおらず、今後に向けた施策の1つとした。
広告に関してはゲームコンテンツ「ピコピコmixi」への新たな広告メニュー追加、Webドラマ「Tokyo Prom Queen」の配信、企業タイアップのプロモーション広告といった事例を紹介。広告掲載者数は微減したものの1社あたりの利用金額は増加傾向にあり、人材サービスやインターネットメディア、化粧品・通販コスメといった分野の広告が好調だとした。
メディア力強化の面では日記の公開範囲機能や紹介マイミクシィ機能、インディーズ機能として提供していた「コミュニティブラウザ」機能の正式提供、ニコニコ動画との連携機能などを紹介。オープンプラットフォーム化の一環として予定しているAPI公開についても、「2008年度中に公開の予定だが、もう少し早い段階で公開できるのでは」と語った。
■ 新機能「エコー」は「新たなコミュニケーション手段として期待」
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一言でコミュニケーションできる新機能「エコー」
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8月4日に期間限定機能として公開した「エコー」については、「mixiのコアとなるコミュニケーション機能の1つとして、ユーザー同士でより気軽にコミュニケーションして欲しい」とのコンセプトを説明。同様の一言コミュニケーションで人気を集める「Twitter」については「参考にさせてもらった部分もある」とした上で、「自分の状況や気持ちを気軽に書いたり、誰かに一言でレスを返したりと、日記とは違ったコミュニケーション手段として期待している」とした。
現在、エコーで投稿された内容はmixi内での公開範囲設定に関わらず全体に公開されているが、「現状はベータ版との位置付け」と断った上で、「気軽に使えるシンプルなサービスを目指しているため、公開範囲設定などを導入すると複雑になってしまうのではないか」とコメント。ユーザーの利用動向や要望を踏まえて検討していくとした。
同様に公開期間についても「ユーザーの反響次第で延長する可能性もある」と説明。「今までにないコミュニケーション手段として成立すると考えており、基本的には続けていきたい」との方向性を示した。
現状はPCや携帯電話のブラウザからのみ利用できるエコーだが、クライアントソフトでの対応については「すでにユーザーがエコー対応クライアントを開発してくれている」とコメント。「フィッシングの問題などもあるため、mixiが公認することはできないが、こうしたユーザーが開発してくれる動き自体は嬉しい話」とし、「我々としても公式クライアントでの対応を検討していく。また、mixiとしてAPIを公開する方針の一環として、エコーのAPIを公開する可能性も十分にある」とした。
7月30日に公開されたiPhone 3GとiPod touch向けのmixiアプリケーションについては、「現状はiPhoneから使えるサービスを出したにすぎない状態。今後はアプリケーションの中で完結できるようにバージョンアップしていきたい」とコメント。ユーザー発のiPhone向けアプリケーションの可能性については「悪意を持ってIDとパスワードを抜き取られる可能性も無いと言えず、そのあたりのリスクを見ながらケースバイケースで対応していきたい」とした。
なお、iPhoneに関しては現在のところmixiの新規ユーザー登録ができない状態だが、笠原氏は「iPhoneではSafariでアクセスするために端末IDが取れないのが課題」と説明。「ユーザーからも要望はあり、対応は検討している」とした。
■ URL
2009年3月期第1四半期 決算短信(PDF)
http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=624474
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(甲斐祐樹)
2008/08/05 18:15
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