Mozilla Japanは17日、米Mozillaスタッフを交えた説明会を開催した。モバイル向けFirefox「Fennec」の概要や今後の展開に加え、Mozilla Labsで提供中のサービスも紹介された。
■ コードネーム「Fennec」のWindows Mobile版公開は2008年末以降に
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Mozilla Corporationのモバイル担当バイスプレジデントを務めるJay Sullivan氏
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E810でFennicを表示したところ
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「Fennec」は、サハラ砂漠に生息するというキツネから命名された開発コードネーム。PC向けFirefoxと同様にGeckoレンダリングエンジンを採用し、Ajaxサポートやプラグインの対応など、PCと遜色ない機能性を持ったブラウザを目指しているという。
すでに海外ではNOKIAの端末「E810」向けにFennecのアルファ版をリリースしているほか、Windows、Mac OS、Linux向けのテスト版も公開。E810が800×480ピクセルのタッチパネルを搭載しているため、現在公開中のFennecも800×480の画面サイズに準じ、タッチパネル操作にも対応しているが、次期バージョンではタッチパネル以外のインターフェイスにも対応予定なほか、QVGA版も2008年末までにリリース予定だという。
画面はシンプルを追求し、URL入力欄のスマートバーはタイトル表示とURL、検索を共通化。通常はWebサイトのタイトルが表示されるが、スマートバーをクリックするとURLを表示する。また、スマートバーに直接キーワードを入力し、画面下部のアイコンをクリックすることでGoogleやYahoo!、Wikipediaなどの検索が利用できる。インクリメンタルサーチにも対応し、スマートバーの文字入力ごとに履歴やブックマークの候補を表示する。
タブお気に入りや設定画面などは通常画面には表示されず、画面をドラッグ操作することで表示可能。画面右には現在開いているタブがサムネイルで表示され、画面右にはお気に入りや進む/戻る、設定機能が用意されている。
ダブルクリックで画面に最適なサイズへ拡大する機能や、SSL対応サイトの識別情報を表示する機能も搭載。Firefoxと同様にアドオンで機能拡充できる機能も搭載し、URLフィルタ機能やTwitter機能などを追加できるアドオンが公開されている。
現在はE810のみに提供されているFennecだが、2008年末から2009年始めにはWindows Mobile対応のアルファ版をリリース予定。なお、iPhone向けのブラウザについては「SDKの関係で開発できない」とした上で、「OperaもiPhone版のブラウザをリリースしようとしたが、Appleに拒否されたと聞いている」と付け加えた。
提供方法はプリインストールに加え、キャリアによる提供やユーザーによるダウンロードという3種類の方法を想定。すでに2億人以上のユーザーを持つというFirefoxのブランド力を活かして展開するとともに、SSL対応サイトの識別情報といったセキュリティ面やアドオンによる機能強化、Firefoxと同等のレンダリング機能などで他のモバイル向けブラウザと差別化を図っていく方針。「Firefoxでは60カ国以上の言語に対応しており、Fennecでもほぼ同数の言語に対応する予定。こうした対応言語の多さも強みだろう」とした。
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ドラッグすると左画面にタブが表示される
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右側はお気に入りや設定画面などを表示
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スマートバーに文字を入力するごとにブックマークや履歴を表示。検索は画面下のアイコンから行う
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ダブルクリックで任意の部分を拡大
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SSL対応サイトの識別情報を表示
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アドオン機能も搭載
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■ ブラウザ情報を同期できる「WEAVE」などLabsの取り組みを紹介
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Mozilla LabsのAza Raskin氏。日本のラーメンが大好物という
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Mozilla Labsについては、現在提供しているサービスのうち、ブラウザ情報の同期サービス「WEAVE」、位置情報機能「Geode」、コマンド入力でFirefoxのカスタマイズや各種サービスとの連携機能が利用できる「Ubiquity」が紹介された。
WEAVEは、ブックマークや履歴、タブ情報などをオンラインで保存し、複数のPC上で同期できるサービス。現在はPC向けサービスとして試験的に公開されているが、今後はFennecでもWEAVEの機能をサポートし、PCとモバイルでデータを同期できるようになるという。
WEAVEに保存された情報は、自分のPC以外でもWEAVEにログインすれば利用可能。保存された情報はプライバシーを重視してすべて暗号化されており、Mozilla自身でも情報を閲覧することはできないため、ユーザーの情報を広告に利用するといったことはないという。
また、Mozillaのサーバーではなく自分のサーバーへWEAVEをインストールしてデータを管理することも可能。企業が自社サーバーにインストールして利用することも可能で、その場合も料金などを徴収することはないという。
収益面については「ユーザー体験の向上が最も重要で、収益の検討は二の次」とし、「良いサービスを作れば収益は後からついてくるだろう」とコメント。「Mozilla Labは新規のものを実験していく場であり、それは製品だけでなくビジネスモデルも含まれている」とし、「これまでと異なるビジネスモデルかもしれないが、それ自体はさほど気にしていない」とした。
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Geodeに対応した地域情報サイト「30min.」
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Geodeは、位置情報を特定するためのアドオン。現在公開されているアドオンではSkyhookの無線LANによる位置情報検索技術を利用し、対応サービスと連携することで周囲の店舗情報などを検索できる。日本国内では「30min.」がGeodeに対応しており、アドオンをインストールしたFirefoxを利用して周辺の情報を検索できる。
現在はSkyhookを採用しているために無線LANでの接続が必要になるが、Skyhook以外の位置情報特定機能とも連携が可能で、Firefox 3.1では位置情報を提供するプロバイダーを選択できるようになるという。また、ハードウェアがGPSに対応していればGPSの利用も可能とした。
最後に紹介されたUbiquityは、コマンド入力によってWebサービスの機能やブラウザのカスタマイズが可能になるアドオン。UbiquityをインストールしたFirefoxで「Ctrl+Space」を押すとキーワード入力欄が現われ、特定のキーワードを入力することで機能を呼び出せる。
Ubiquityのデモでは、「map」と入力して地図検索を呼び出し、地図の画面をGmailに添付して送る機能や、ブラウザのテキスト情報をドラッグで選択し、「translate」で指定した言語に翻訳するといった機能を紹介。翻訳結果はそのままブラウザ上で翻訳前の言語と置き換えることが可能なほか、「edit」と入力すればWebページのリンクやアイコンなどを削除するといったカスタマイズも可能になる。
Ubiquityで提供する機能はJavascriptとXMLベースで作られており、JavascriptとXML知識があればUbiquity対応機能の開発は容易だという。Ubiquityが公開されて2カ月の間に、Firefoxのアドオンと遜色ないほどのUbiquity対応機能が開発されており、「アイコンではなく自然な言語でブラウザの機能を拡張できる」。現在は英語のみ対応しているが、今後はさまざまな言語に対応し、ユーザーにとってより自然に使えるようになるとした。
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Ubiquityで検索した地図をGmailで送信
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翻訳結果をブラウザでそのまま表示できる
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Ubiquityの開発デモも公開。Ubiquityで「Ramen」と入力すると「I love Ramen!!」と自動で表示するUbiquity対応コードを数十秒で書き上げた
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■ URL
Mozilla Japan
http://mozilla.jp/
Fennec(英文)
http://www.mozilla.org/projects/fennec/1.0a1/releasenotes/
30min.
http://30min.jp/
関連記事:Mozilla Labs、「Firefox」の設定を複数PCで同期できる「Weave」v0.2を公開[窓の杜]
http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/07/02/weave.html
関連記事:Mozilla、Firefoxをコマンド入力で操作できる拡張機能「Ubiquity」を試験公開[窓の杜]
http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/08/27/ubiquity.html
■ 関連記事
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(甲斐祐樹)
2008/11/17 18:35
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