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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
NHK、NHKオンデマンドの現況や運用室を公開。PC会員は約1.1万

 日本放送協会(NHK)は16日、12月1日に開始した映像配信サービス「NHKオンデマンド」の利用状況などに関する説明会を開催した。合わせて、「NHKオンデマンド運用室」も公開された。


PC版の会員数は約1.1万人。半数以上が番組を購入

「NHKオンデマンド」。PC版のニュースではチャプタ単位の視聴も可能

テレビ向けサービスの1つ「ひかりTV」版の画面
 NHKオンデマンドは、NHKが12月1日に開始した有料の映像配信サービス。現在放送中の番組を放送から24時間以内に1週間程度配信する「見逃し 見放題パック」と、過去の番組を配信する「特選ライブラリー」の2メニューをラインナップし、Windows PCに加え、テレビ向けサービスの「J:COM オン デマンド」と「アクトビラ ビデオ・フル」、「ひかりTV」を通じた配信を行っている。

 NHKオンデマンド室の清水裕子副部長は、PC版サービスの利用状況に関しては「すでに1万1000人にご登録いただき、このうち半数が1本以上の番組を購入している」と説明。また、購入層のうち、約3分の1が「見逃し 見放題パック」に加入しているとした。なお、テレビ系サービスでの課金ユーザー数は先週末の段階で約1000名程度だという。

 「見逃し 見放題パック」では、ドラマやドキュメンタリー、バラエティー、ニュース番組など合計93番組が対象。今週予定する配信数は合計122番組。当初は1日10~15本を見込んでいたが、1日17本のペースで配信できているという。2009年1月からは新作大河「天地人」などドラマ3作品がラインナップに加わるとした。

 「特選ライブラリー」は、サービス開始時点で約1200本を用意し、12月にはNHKスペシャル「ワーキングプアII」や「激流中国」、鉄道関連番組を追加する。また、1月には大河ドラマ「武田信玄」「翔ぶが如く」の後半パート、NHK特集「日米開戦不可ナリ ~ストックホルム 小野寺大佐発至急電~」など、100本超の追加を予定する。

 清水氏は人気を集める番組に関して、見放題パックでは「ドラマ作品のほか、BSで平日放送する『経済最前線』も人気を集めている」と紹介。また、特選ライブラリーでは「『地球大進化』や『映像の世紀』などの大型シリーズが人気を集めているようだ」と述べた。

 その上で、清水氏は「どれが売れ筋の作品かどうかは手探りの状態」とコメント。「さまざまな分野の作品を配信し、利用者の反応を確かめながら、ラインナップを拡充してきたい」と述べた。なお、大河ドラマ第1作目となる「花の生涯」に関しては権利処理が完了すれば、現存する一部話のデータを配信したい考えという。


オンデマンド運用室を公開。原則自動制御でコンテンツを作成

(左から)NHKオンデマンド室の所氏と清水氏

オンデマンド運用室に設置されたサーバー。奥2台のラックが原盤作成用になる
 技術面の説明は、NHKオンデマンド室で同じく副部長を務める所洋一氏が担当。NHKが直接運営するPC版サービスに関して、「サービス開始から3年後の規模で、同時30万アクセスに耐えうるシステムを構築している」と述べた。

 NHKオンデマンドのサービス提供にあたっては、NHKの渋谷放送センターに配信用動画や各プラットフォーム向けに動画形式を変換する「オンデマンド運用室」と、配信期間や料金情報などのメタ情報を付加する「オンデマンド室」を設置。また、埼玉県川口市の「NHKアーカイブス(川口)」に保管する番組テープをファイル化、HDDに保存した変換作業もオンデマンド運用室で実施されている。

 今回公開されたオンデマンド運用室では、NHK総合や教育、BS3波で放送した番組の配信までのフローを紹介。「見逃し 見放題パック」「特選ライブラリー」のファイル作成作業は24時間体制で、自動制御で実施される。システム監視や一部編集作業などで数名程度の人員は配置されているという。

 動画ファイル作成には、原盤動画作成用に2ラック、各プラットフォーム用にファイル形式を変換するトランスコーダー用ラックを4ラック設置。原盤動画にあたっては48時間連続で放送同時録画した素材から配信番組を切り出し、著作権処理などの編集作業、各項目に問題がないかを確認する自動検査が行われる。

 その上で、トランスコーダー用の機器で各プラットフォーム用に合わせた動画形式へ変換。再度、自動検査を行い、問題がなければアップロード作業へと移行する。なお、原盤となる動画ファイルはMPEG-2形式で、ビットレートは25Mbpsになる。

 なお、NHKアーカイブス(川口)では54万超の番組を用意しているが、「NHK施設内で無料公開するのを条件に許諾を得ているため、NHKオンデマンドでは改めて許諾を得る必要がある」という。また、NHKオンデマンドの配信にあたっては画質面で違いがあるため、原盤から作り直す必要があるとした。


オンデマンド運用室外観。ファイル作成は自動制御となりスタッフ数は数名程度 NHKオンデマンド配信にあたっての全体概要

番組配信にあたっての権利処理や今後の機能拡充案も言及

NHKオンデマンドでのサービス概要

配信にあたって編集が加わった映像にはアイコンマークを付与。ニュースではスポーツ映像が多いという
 説明会ではまた、番組配信にあたっての権利処理や今後のサービス方針などに関しても説明が行われた。

 大河ドラマ作品では、12月14日に最終回を迎えた「篤姫」が配信作品に入ってない。この点に関して清水氏は「大河ドラマは2年前から権利処理を含めた出演交渉を行っており、『篤姫』の場合は契約スキームがすでに成立していた」と説明。このため、「見逃し 見放題パック」には加えられなかったが、「特選ライブラリーの交渉を進めていく形になる」と述べた。

 配信にあたっての権利処理は、「見逃し 見放題パック」と「特選ライブラリー」では権利料の支払いが異なるため、別個の契約を結ぶ必要があるという。所氏は「最初の1回で契約がすべてOKとなるケースは多くはない」といい、清水氏は「実演者側でパッケージ販売を予定している場合、『特選ライブラリー』の許諾がうまくいかない場合もある」と語った。

 清水氏は「『見逃し 見放題パック』の契約交渉を通じて、交渉相手の権利者がわかる」と説明し、そこから「特選ライブラリー」の交渉に繋げていく流れを示した。一方で、過去に放送した番組は権利者の名簿を揃えるのに費用がかかり、所氏は「単年度黒字が目標の3~4年後で見た場合、3分の1が権利関係費用になるだろう」述べた。

 サービス面に関しては、PC版で3Mbpsのダウンロードレンタル配信も検討していたが、所氏は「画質の主観評価の結果、1.5Mbpsのストリーミング配信との差異がなく、現時点で導入を見送っている」という。一方、「将来的に8MbpsのHD画質で視聴できる環境が整えば、再検討していきたい」とした。

 テレビ向けサービスでは、TSUTAYAが12月19日よりダウンロードによる売り切りおよびレンタルサービスの開始を予定している。この点に関して所氏は「仮にダウンロードサービスを行うにしても、レンタルモデルになるだろう」と述べた。

 PC版サービスは現時点でWindows OSに限定されている。所氏はDRMを選定する目的として「コンテンツの保護」と「ビジネスルールの成立」の2つを挙げ、サービス開始にあたって両方の目的に合致するものが「Windows Media DRMだった」とした。Macintoshなど他OSの対応に関しては、費用対効果を踏まえて検討していく考えという。

 モバイル端末への対応は、「現在の携帯電話ではストリーミングで長時間の映像コンテンツを流すのは難しい」と述べ、「3.9G世代で対応できるのであれば、展開を考えたい」と語った。なお、その際には「新たな権利処理の枠組みを結ぶ必要ある」という。

 このほか、利用者に合わせた番組レコメンド機能などの準備も進めているという。また、字幕や副音声の対応に関しては技術面を含めて現時点で実現していないが、将来的な対応を検討していきたいとした。


関連情報

URL
  NHKオンデマンド
  https://www.nhk-ondemand.jp/

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(村松健至)
2008/12/16 15:37


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