米Intelは28日、企業や大学、政府研究機関で技術開発や標準化策定に携わる研究者などを対象にした技術セミナー「Intel R&D Day」を東京都千代田区にある帝国ホテルで開催した。セミナーでは、Intel インテル・フェロー兼コミュニケーション・テクノロジ・ラボ ディレクタのケビン・カーン氏が「インテルにおけるワイヤレス研究戦略」と題した講演を行なった。
講演では、Intelのワイヤレス分野における課題について、大きく4つに分けて話が進められた。1つ目としてケビン・カーン氏は、CMOS実施技術やラジオフリーMEMESなど「実装に関する課題」について語った。
■ 1台の機器で複数の無線機能が利用可能なアジャイル無線の実現
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Intel インテル・フェロー兼コミュニケーション・テクノロジ・ラボ ディレクタのケビン・カーン氏
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ケビン・カーン氏は、現在の無線機能を搭載した機器は、BluetoothやIEEE 802.11aなど数ある無線機能のうち1つの機能しか搭載されていないものが多いと指摘。しかしながら、その状況にも変化が生じてきており、今後はCMOSによって複数の無線機能が統合されることで、1台の機器で複数の無線機能を利用することが可能となるとした。その上で、長期的にはどの様な無線機能に対しても、いつでも対応できる「真のアジャイル無線の実現が行なわれるのではないか」とも語った。
また無線技術の技術プロセスは、メモリーなど他の技術と比べると違いがあると語り、無線機能の統合を行なっていくためには、他の技術と同様にムーアの法則に沿った曲線に持っていくことで、システムの統合が行なわれるとともにコストダウンの実現ができるとした。
続けてケビン・カーン氏は、無線技術の改良やスマート・アンテナに関する研究など「無線技術に関する課題」について話を進めた。IEEE 802.11や11a、11bといった技術は他の無線との干渉を避けるよう安全性を重視しているため、パフォーマンスについて課題があると語った。そのため、チャンネルのキャパシティーを上げるため、通信距離や収容容量、データ転送速度を向上させるスマート・アンテナの研究を進めていくという。
さらにIntelは、継続的にチャンネルの使用状況を確認するための高度なOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)といった技術の実現や、チャンネルのアイドルタイムを減らすためのMAC(Media Access Control)の効率性を改善するため貢献していくとした。
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無線機能の進化過程
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スマート・アンテナに関する研究
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■ 全ての無線機器がルーティング機能を持つメッシュ・ネットワーク
ケビン・カーン氏は、新しい無線技術のアプローチとしてUWB(Ultra Wideband)を挙げた。UWBの周波数帯域は、アメリカでは7.5GHzとなっている。同氏は、この周波数帯域を利用した場合には短距離での転送効率が非常に高いとし、特に5メートルの通信距離では500Mbpsでの通信が可能だと説明した。
また、今後のUWB標準化については、MAC層や物理層といったプラットフォームの共通化をはかり、同一のプラットフォーム上でBluetoothやワイヤレスUSBなど複数のアプリケーションが共存可能とすることで電子産業のニーズに応えてられるのではないかと語った。
ケビン・カーン氏は、アジャイル無線の実現について、GPSからIEEE 802.11a、WCDMAなど数多くの規格に対応するために、いかに1つのシリコンで柔軟性を持って対応していくことができるかどうかが重要となっていくとした。このためIntelでは、異なる無線機能への対応について、いくつかの処理を組み合わせて、複数の無線機能に対応する再構成可能な通信ベースバンドやアーキテクチャの研究を進めているという。
3番目の課題としては、他よりも高いレベルの課題として、ワイヤレスの利点を最大限に活用するワイヤレス・ネットワークの定義と開発について語った。その中で、現在の無線LANネットワークはハブを介したネットワークの代替手段として利用されている第1世代の無線LANネットーワークであると指摘した。
ケビン・カーン氏は、今後の無線ネットワークに関した1つの考え方として、無線機能をもつ機器自体にルーティング機能を持たせ、機器間で通信を行なうメッシュ・ネットワークを挙げた。メッシュ・ネットワークでは例えば、現在の無線LANアクセスポイントを中心としたネットワークは1つの家庭の中でも通信できない場所が存在していたが、メッシュ・ネットワークが実現した場合にはリレーノードをネットワークの途中に置くことで、接続性やスループットの改善が可能になるとした。
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UWBについて
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UWBの標準化について
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メッシュ・ネットワークについて
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メッシュ・ネットワークの実現により、無線機器の接続性の改善が見込まれる
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■ 無線技術の開発から法規制への対応まで幅広くカバー
最後の課題としてケビン・カーン氏は、法規制などへの対応にIntelが持っている考え方を語った。現在、アメリカで利用されている無線に関連した規制は1920年代から30年代にかけて作成されたもので、あらゆる機器が無線や通信機能を持った現在においては、柔軟な対応は難しいとした。
しかしながら、連邦通信委員会(FCC)ではスペクトラム・ポリシーを定めるためのタスクフォースを立ち上げ、すでにレポートの提出が行なわれているという。ケビン・カーン氏によれば、提出されたレポートは規制当局が作成したものとしては「非常に内容の良い進歩的なレポート」と評価した。
レポートには、無免許で使用できるスペクトラムの割り当てや、すでに割り当てられているスペクトラムの非干渉部分についての使用の検討、使用されていないスペクトラムの利用などについての記述がなされているという。
同氏は、レポートの正確性はともかくとして、FCCが本レポートに基づいて今後の規制に対応しする可能性が高いとしたほか、各国の規制当局もこれを元にした対応を行なう可能性もあると述べた。そのため、Intelでは将来のスペクトラム・ポリシーの策定に向けて当局と協力を積極的に行なっていくとした。
ケビン・カーン氏は講演の締めくくりとして、Intelではワイヤレス分野において、技術開発から法規制への対応まで幅広くカバーしていると述べた上で、今後も業界一丸となってワイヤレス分野を前進させていきたいと語った。
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法規制への対応
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FCCの対応状況
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■ URL
Intel
http://www.intel.com/
インテル(日本法人)
http://www.intel.co.jp/
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(村松健至)
2003/10/28 19:11
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