総務省情報通信審議会は19日、電気通信事業部会を開催し、固定電話の施設設置負担金の廃止について「容認されるべき」とする「平成17年度以降の接続料算定の在り方」を答申した。これを受けて、NTT東日本と西日本では、「早急に抜本的な見直し内容を決定・公表する」としている。
■ 施設設置負担金の廃止は容認。周知から廃止までには5~6年かけて
答申では、施設設置負担金について、「契約者が増えていた時代には、ネットワークの円滑な拡張のため、資金調達という観点から一定の意義があった」「会計上、施設設置負担金は圧縮記帳が認められており、圧縮記帳分に相当する資産については減価償却費が発生しないことから、基本料水準が低く抑えられてきた」と一定の効果があったことを認めた。
しかし、「電話網が全国に整備された現在、新規架設は減少しており意義は失われている」「固定電話加入時の費用が高いため、新規加入や回線増設の妨げになっている」などと指摘。携帯電話やIP電話が普及したことに加え、今後NTT東西の加入者線を利用した直収電話サービスとの競争も視野に入れていく必要がある現在の状況において、「施設設置負担金はNTT東西が自らの料金戦略として、廃止も選択肢とした見直しを欲するのであれば、それは容認されるべきものと考える」との見解を示した。
ただし、NTT東西に対しては施設設置負担金の見直しには、既存の電話加入者や電話加入権取引市場の動向などへの影響に配慮するよう要請。7月27日から募集されたパブリックコメントで否定的な意見も多数提出されたことは事実であるとし、十分な周知および実施までの期間を取り、段階的に実施することとした。具体的には、電話担保金融における貸付期間の約8割が5年以下であること、携帯電話の新規加入料の廃止は5~6年かけて段階的に値下げし、実施されたことなどを例示した。
■ パブリックコメントに関する見解
なお、施設設置負担金見直しのパブリックコメントでは、賛否両論の意見が寄せられた。否定的な意見としては、1)「電話加入権質に関する臨時特例法」(質権法)など税制上で電話加入権が財産として認められていること。2)施設設置負担金を支払った利用者と支払わなかった利用者の負担に不公平が生じること。3)すでに施設設置負担金が不要なライトプランが選択できることなどがあった。
これらに対して答申では、そもそも現在の電話加入者には、電電公社時代に80,000円を支払ったもの、民営化以後に72,000円を支払ったもののほかに、過去に72,000円より安い設備料を支払ったもの、電話加入権者から安価に調達したものなどがおり、施設設置負担金を支払ったが解約した後も返金を受けていないものもいると加入者の状況を説明。
その上で、1)に対しては、施設設置負担金を見直したからといって電話加入権が消滅するわけではなく、既存の権利を剥奪したり、制限するものではないと前置きした上で、質権法などにおける電話加入権の取り扱いは、市場の需給関係に応じた価格で売買されることを前提としており、質権法によって価格が保障されるものではないこと、施設設置負担金の額は電話加入権の価格ではなく、電話加入権の市場価格まで保障すべき義務は契約上存在しないことなどを挙げた。
2)に対しては、電気通信事業法に規定する「利用の公平」「不当な差別的扱いの禁止」は、特定の利用者を正当な理由なく差別して有利または不利に取り扱ってはならないという主旨を説明。合理的な理由で施設設置負担金の見直しを行なった結果であれば、既存加入者と新規加入者とで費用負担に差が生じても、「利用の公平、あるいは不当な差別的取扱いに当たるとは言えない」とした。
3)については、「そもそもライトプランは施設設置負担金の存在が前提になっている」とコメント。「施設設置負担金が本来の意味を失っているにも関わらず、引き続き現行の額を設定し続けた場合は、ライトプランを選択した加入者にとっても必要以上の額を支払うことになりかねない」とした。なお、施設設置負担金を見直す場合は、ライトプランについても取り扱いを見直す必要があるとの見解を示している。
■ 接続料は2005年以降も「東西均一が適当」
「平成17年度以降の接続料算定の在り方」ではこのほか、接続料の算定方法や基本料の在り方についても答申されている。接続料については、2004年6月に公表された「長期増分費用モデル研究会」による接続料算定方法の新モデルを評価。2005年から3年間にわたり新モデルを接続料算定に適用することとした。なお、接続料の東西格差については「固定電話がユニバーサルサービスとして広く認識されているため、東西別接続料は社会的コンセンサスが得られていない」とし、2005年度以降の接続料についても「東西均一とすることが適当である」とした。
基本料の在り方に関しては、「費用構造がブラックボックス化しており、透明性を欠いていることから、結果として効率化が進まず、料金が据え置かれているのではないかとの指摘もある」とコメント。NTT東西に対して、基本料に関わる費用についても一定の情報開示を求めた。また、日本テレコムやKDDIの直収サービスにも言及。これまでNTT東西が独占的に提供していた基本料も競争が進展すると分析した。さらに、NTT東西の級局区分や事住区分についても、「今後の競争環境への対応という点で一部適していない面を有しており、自らの戦略に基づく料金設定が期待される」とした。
■ URL
報道資料(総務省)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/041019_7.html
ニュースリリース(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/release/0410/041019.html
ニュースリリース(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/news/0410/041019.html
■ 関連記事
・ NTT東西の“電話加入権”問題、10月19日以降に正式発表
(鷹木 創)
2004/10/19 21:17
|