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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
電波産業会、11aチャネル変更など5GHz帯の新規開放に関する説明会

 電波産業会は10日、「5GHz帯無線アクセスシステム委員会報告概要」に関する懇話会を開催した。本会では、総務省 総合通信基盤局電波部基幹通信課の中西悦子課長補佐が、新たに開放される5GHz帯や、IEEE 802.11aのチャネル変更などについて講演を行なった。


11aの5.15~5.25GHzに加えて5.25~5.35MHz、5.47~5.725GHzを新たに開放

総務省 総合通信基盤局電波部基幹通信課の中西悦子課長補佐
 中西氏ははじめに、「なぜ基幹通信課で無線LANを担当しているのかとよく聞かれるが」と前置いた上で、自身が所属する基幹通信課と無線LANの関連性を紹介。「同じ電波部の中でも移動系は移動通信課が担当し、基幹通信課は基本的に移動のない基幹通信を担当しているが、無線LANについては2.4GHz帯を移動通信課が、5GHz帯を基幹通信課が担当している」との区分を説明した。

 続いて中西氏は、日本における5GHz帯の検討の歴史を紹介。1999年9月27日に答申を受けた電気通信技術審議会(郵政省時代の名称)では、5.15~5.25GHzの小電力データ通信システムが認められ、この帯域が現在日本国内で利用されているIEEE 802.11aで使われている。また、1999年からは屋外でも利用できる無線システム用に5.25~5.35GHzも検討が進められたが、「気象レーダーと屋外で使う無線システムの共用ができないかと考えていたものの、答申は出たが答えが出なかったという記念すべき答申(中西氏)」という状態であり、電波開放には至らなかったという経緯を説明した。

 中西氏によれば、5GHz帯の屋外利用に対するニーズは強く、2002年5月7日には4.9~5.0GHz、5.03~5.091GHzを開放する答申が行なわれた。ただし、この周波数は高出力の無線アクセスシステム用途として開放されており、無線LANで利用できる周波数ではない。また、5.03~5.091GHzはMLS(Microwave Landing System)で予約されている帯域のために2007年までの暫定使用であり、2007年からは現在4.9~5.0GHzを利用している電気通信事業者用の中継用固定局を廃止、この帯域に移行することになるという。

 日本国内で無線LAN用途として利用できる5GHz帯は、IEEE 802.11aで利用する5.15~5.25GHzのみが開放されていたが、欧州では5.25~5.35MHzを屋内用途に、5.47~5.725GHzを屋内外用途に開放している。中西氏は「今回の世界無線通信会議(WRC-03)で決められた5GHz帯開放はほぼ欧州の仕様に沿ったもの」と説明した上で、「米国では5.47~5.725GHzを軍事用に利用していたため、この帯域が国際的な開放の焦点となっていた」と語った。


日本の5GHz帯利用状況 日本の5GHz帯に関する利用検討の経緯

WRC-03前の5GHz帯周波数分配状況。☆印が米国で軍事利用されている帯域 WRC-03後の5GHz帯周波数分配状況

国内の11aは国際標準に合わせるためチャネルを変更

 WRC-03を受けて、日本国内ではすでにIEEE 802.11aとして利用可能であった5.15~5.25GHzに加えて、屋内のみの5.25~5.35GHz、屋内外で利用可能な5.47~5.725GHzが追加して開放される。ただし、追加開放される帯域はレーダーと共有するため、レーダーの発する電波を検出して同じ周波数帯を使わないための仕組み「DFS(Dynamic Frequency Selection)」が必要になる。中西氏は「DFSは親局の許可なしに電波を利用することができないため、この帯域では原則としてアドホックモードは利用できない」と補足した。

 なお、IEEE 802.11aで利用している5.15~5.25GHzは、日本国内では気象レーダーへの影響を考慮し、5.24GHz~5.25GHzという10MHz幅のガードバンドを設けているが、欧米ではガードバンドを設定していないために日本とはチャネルが異なる。中西氏は「国際的な電波開放ということに加えて、航空機内で無線LANを使う環境ができているため、国際的に無線LANのチャネルを共通化するほうが良いというニーズが生まれた」と説明。気象レーダーへの干渉について実験を重ねた上で、ガードバンドを外してチャネルを国際標準に変更することになったという経緯を説明した。

 航空機内の無線LAN利用について中西氏は「欧米では電子レンジを搭載していないが、アジア系では乳児のミルクを温めるといった用途から搭載されており、飛行機内での通信は(電子レンジと同じ周波数帯の2.4GHz帯よりも)5GHz帯が必要だと飛行機関係から要望があった」とコメント。「そもそも飛行機の中が屋内かどうかという議論があった」とした上で、「ボーイングと協力して実測した機体データは建物の遮へい損失とほぼ同等だった」との理由から、屋内利用に限られる5.15~5.25GHz帯は航空機内での利用を認める方針とした。なお、追加開放される5.25~5.25GHz、5.47~5.725GHzについてはDFSの対応が必要な帯域であり、DFSは時速700kmのような高速移動では感知できないため、現在のところ航空機での利用は検討段階だという。


5.15~5.25GHz帯における日本と欧米のチャネルの違い 航空機内における無線システムの利用について

現行の11a対応機器のチャネル移行は「メーカー側の管理が必要」

5.15~5.25GHz帯のチャネル変更に関する課題
 IEEE 802.11aのチャネル変更については「マスコミなどを通じて話題になっているようだ」と前置いた上で、「問題となっているのは新旧チャネルが混在した場合で、検討したところ全体の利用効率が下がることが明らかになっている」と説明。「できるだけ新チャネルへ移行して欲しいが、無線LANカードのような免許不要の機器は『使うのを止めてください』というのも難しい。そのため旧チャネルについては『壊れるまで使っていい』とするしかない」とした上で、「業界全体として新チャネルの魅力を高めていって欲しい」との要望を示した。

 このため、チャネル変更された場合も既存のIEEE 802.11a機器は継続して利用できるが、新チャネルに対応したIEEE 802.11a機器とは接続できない。この点についてはコレガやバッファローといった無線LAN機器メーカーが「ファームウェア更新などで旧チャネル製品を新チャネル対応にできるよう意見提案を行なっていく」との見解を表明している。

 中西氏は「周波数の変更は簡易な変更ではなく、免許不要局でなければ変更工事が必要になるほど本質的な変更」とコメント。「無線LAN製品には旧規格の適合証明が表示されているが、チャネルが変わればこの表示も変更する必要がある。また、チャネル変更後は工事設計に合致しているかを検査しなければならないが、ユーザーが任意にダウンロードしてアップデートする方式ではその合致が確認できない。工事設計の合致は製品出荷時に行なっているので、チャネル変更の際の工事設計合致についてメーカー側が責任を取れるのか。このあたりの解釈も大きな問題」と説明した。

 現在は無線LAN機器メーカーは技術基準適合証明の担当者などと相談し、できるだけユーザーに負担がない方法を検討しているという。なお、チャネルの変更そのものは「事業者側で回収してチャネル変更することは可能であり、ネットワーク経由のチャネル変更も工事設計の合致や適合証明の変更などをメーカー側で管理できれば可能」と説明、旧チャネルの対応製品が新チャネルに対応できなくなるわけではないとした。


既存の11a対応製品をチャネル変更する際の課題 5GHz帯開放に関する今後の課題

関連情報

URL
  電波産業会
  http://www.arib.or.jp/

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(甲斐祐樹)
2004/12/10 18:42
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