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動画や音楽も楽しめる韓国のPSP向けコンテンツ配信サービスを体験

 韓国では、プレイステーション・ポータブル(PSP)の無線LAN機能を利用したコンテンツ配信サービスが展開されている。現在のところ日本では利用できないサービスだが、今回はソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の社内テスト環境を利用し、実際にPSP向けコンテンツ配信サービスを体験したレポートをお送りする。


韓国限定のPSP向けコンテンツ配信サービス

韓国版PSPとネットワークユーティリティディスク

ネットワークユーティリティーディスク。パッケージには「NESPOT」のロゴが
 日本から約半年遅れての発売となった韓国のPSP。日本や米国で発売されているPSPとの最大の違いは、「ネットワークユーティリティディスク」の存在だろう。本体に同梱されている専用のUMD(ユニバーサル・メディア・ディスク)を使うことで、無線LANからソニー・コンピュータエンタテインメント・コリア(SCEK)などが用意しているPSP向けコンテンツをインターネット経由で楽しめる。

 なお、ネットワークユーティリティディスクを使用した無線LANサービスは、韓国の大手通信事業者KTのPSP専用公衆無線LANサービス「Nespot Service for PSP」の加入が必要だ。7月まではキャンペーン期間として無料で利用できるサービスで、8月以降の料金は月額基本料金、コンテンツ料金ともに現在検討を進めているという。

 Nespot Service for PSPの登録には、KTから提供される用紙に名前や住所、韓国内の銀行口座といった個人情報と、サービスを利用するPSP本体のMACアドレスとシリアル番号が必要になる。WebサイトやEメールでの登録には対応しておらず、事実上韓国のユーザーしか利用できないサービスだ。

 サービスの認証はPSP本体のMACアドレスとシリアル番号で行なっているため、登録したユーザーはKT以外に家庭のアクセスポイントからもNespot Service for PSPを利用できる。技術的には日本からのアクセスも可能だが、前述の登録は韓国在住でなければ難しく、さらには海外からのアクセスとなるためにネットワーク環境も保証はされていない。

 こういった事情から日本では利用が難しいサービスだが、今回は特別に許可をいただき、SCEI内のネットワークを利用してNespot Service for PSPを試すことができた。公衆無線LANサービスが広く普及している韓国ならではの、PSP向け無線LANサービスをレポートする。


コンテンツはSCEKの「PSP Club」、KTの「NESPOT」の2種類

ネットワークユーティリティディスクの起動画面
 SCEI内で試用したPSP本体は、すでにKTへの登録が済ませてあるため、ネットワークユーティリティディスクと無線LAN環境があればNespot Service for PSPを利用できる状態だ。ディスクをPSPに挿入して電源を投入すると、自動的に起動画面が立ち上がる。タイトル画面に表示される項目は、上から「ENTER」「HELP」に相当する機能で、一番下で背景色を変更できる。

 「ENTER」を選ぶと、次はネットワークの設定画面だ。この設定はユーティリティディスクではなくPSP本体の機能を呼び出して利用する。今回は日本版のPSPをKTに登録して利用しているため、設定画面はすべて日本語で表示された。ここからあらかじめ設定されたSCEIの無線LANネットワークを利用し、Nespot Service for PSPに接続する。なお、繰り返しになるがこれはあくまでSCEI社内のテスト環境であり、一般の環境では利用できない。

 無事にネットワーク接続が終了すると、ユーティリティディスクのポータル画面「PSP ONLINE」が表示される。コンテンツはSCEKが運営する「PSP Club」、韓国KTが運営する公衆無線LANサービス「NESPOT」向けコンテンツの両方が利用可能だ。


ネットワーク接続の設定はPSP本体の機能を呼び出して利用する ネットワーク接続後に表示されるポータル画面。「PSP Club」「NESPOT」の2サービスが利用できる

動画や音楽がストリーミングで楽しめる

PSP Clubで最初に表示される「Game」。PSP向けのゲームソフトが動画を交えて紹介されている
 まずはPSP Clubから見てみよう。コンテンツは「Game」「News」「Guide」「Fun」の4カテゴリから構成されている。「Game」はPSP向けゲームソフトを個別に紹介、「News」はSCEKが発信するハードやソフトのゲーム情報だ。「Guide」ではPSP本体の紹介やFAQなどが、「Fun」はPSP、プレイステーション 2(PS2)のCFやプロモーションムービーが用意されている。

 また、画面右上の「Sony family」からは、ソニーグループの「UMD Video」対応映画ソフトのプレビューや音楽ビデオコンテンツが楽しめる。音楽ビデオはフルレングスのミュージッククリップが視聴可能だ。


SCEKの情報が読める「News」 PSPの紹介やFAQなどが用意された「Guide」

PSPやPS2のプロモーションムービーが視聴できる「Fun」 UMD Videoの映画や音楽コンテンツが楽しめる「Sony family」

 動画コンテンツは、ユーティリティディスクに搭載された専用プレーヤーで再生する。操作は×ボタンが一時停止、□ボタンが停止で、Rボタンが早送り、Lボタンが巻き戻し。再生の基本画面はコンテンツ情報やキー操作、再生時間なども表示されるが、△ボタンで画面の最大化も可能だ。なお、RボタンとLボタンには、ブラウザ画面の「進む」「戻る」機能も割り当てられている。

 動画はストリーミングのみでPSP内に保存はできないが、ストリーミング再生時の早送り/巻き戻しの操作は良好で、ボタンを押すとほぼ同時に早送り/巻き戻しがスタートし、数秒程度で再生画面に復帰できた。PCのストリーミングコンテンツと比較してもレスポンスが良く、海外サーバーに接続していることも考慮に入れれば、韓国ではさらに快適に使えそうだ。


動画の再生画面。右側に操作方法が表示される 動画は△ボタンで最大化が可能

 動画コンテンツは、「Image Coverter」などで作成できるメモリースティックビデオ形式ではなく、UMD Videoに準拠したH.264 / AVC MP Level3形式で配信されている。配信帯域は400kbpsもしくは500kbpsと数値こそさほど高くないが、視聴には十分なクオリティで、少なくとも視聴している最中に画質を気にすることはなかった。画像サイズはコンテンツによって異なり、テレビ向けの4:3と映画向けの16:9が混在している。


KTではコミックや電子書籍、テレビ番組などコンテンツが豊富

NESPOTのポータルTOPページ
 一方のNESPOTは、韓国KTがNESPOT向けに提供している動画コンテンツをPSP向けにも提供するもの。NESPOTは単なる公衆無線LANサービスではなく、動画コンテンツなども充実している点が特徴だ。なお、NESPOTの詳細は以前にレポートしたこちらの記事を参照して欲しい。

 元々PCなど向けにコンテンツを提供していることもあり、コンテンツの充実度はPSP Clubよりも格段に上。動画や音楽(オーディオのみ)のほか、教育系のコンテンツ、電子書籍、コミック、ゲーム情報番組やテレビ番組のオンデマンド配信なども用意されている。映画に関しては前後編に分けて本編をストリーミング配信しており、日本の映画「座頭市」なども用意されている。

 ただし、NESPOTのPC向けサービスと比較するとコンテンツは少なめ。テレビ番組のオンデマンド配信もPC向けには常に最新のものが用意されるが、PSP向けには現在4番組程度という。「今後人気を集めるようであれば、コンテンツも拡大されていくだろう(SCEI広報)」。


教育コンテンツ「Education」。日本ではNHK教育の番組に近いイメージ


音楽コンテンツ「Music」
 動画や音楽の再生は、PSP Clubと同じくユーティリティディスクの専用プレーヤーを使用するため、操作方法などは変わらない。ただし、サイト画面の表示や動画の再生は、PSP Clubよりもやや時間がかかった。PSP Clubは海外ながらもSCEIと同グループのSCEKのネットワークであるのに対し、NESPOTはネットワークも異なる上に海外サーバーへの接続であることから、PSP Clubと比べて接続が難しい環境にあると推測される。

 また、NESPOTの音楽コンテンツの一部は歌詞表示に対応しており、楽曲の再生中にボタン操作で歌詞表示画面に切り替えられる。歌詞はテキスト表示で、楽曲と同期はしておらず手で操作する必要があるが、楽曲を聴きながら歌詞を楽しめるのはなかなか便利だ。


楽曲再生画面 一部の楽曲は歌詞画面に切り替えられる

 コミックは日本のようなコマ割りではなく、縦に連なったコマを順々に読んでいく方式。画面操作はコマごとではなく、十字キーで少しずつ進めていく。電子書籍はコミックが文字のみになっただけで、操作などはほぼ同様だ。


コミックコンテンツ「Cartoon」は縦読みスタイル 電子書籍コンテンツ「E-book」

日本での展開を期待したい

 動画や音楽、電子書籍にコミックと非常に充実したサービス内容に加え、海外サーバーへ日本からアクセスするという環境ながらも快適に利用できたPSP向け無線LANサービスだが、現状のところ日本でのサービス展開はまったくの未定。韓国に比べて、日本の無線LANインフラがそれほど整ってはいないためだという。

 しかし、最近ではライブドアが低価格の公衆無線LANサービスを打ち出し、総務省が屋外でも利用できる5GHz帯の割り当てを進めているなど、国内の公衆無線LANサービスにも動きが見られる。また、機器の低価格化や高速化、レンタルサービスの提供といった要素から、家庭内での無線LAN環境も充実しつつある。

 コンテンツに関しても、フジテレビがインターネット向けの番組配信を7月からスタート。さらにUSENは無料で視聴できるストリーミング放送「GyaO」を開始し、ユーザーの注目を集めている。もちろん韓国と比較すれば、日本でのコンテンツ配信の取り組みはまだ始まったばかりに過ぎないかもしれないが、PSPが発売されてから半年の間でも、少しずつコンテンツ配信を取り巻く環境が変化しつつあるように感じられる。

 ゲームとしての機能以外にも、動画や音楽、静止画再生機能を搭載し、PCと親和性の高い無線LAN機能を持っているPSP。業界全体のインフラやコンテンツの促進も含め、PSPのマルチメディアプレーヤーとしての機能を活用したサービスを日本でも期待したい。


関連情報

URL
  PSP
  http://www.playstation.jp/psp/

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(甲斐祐樹)
2005/07/01 10:55
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